西川和久の不定期コラム

AMDとIntelを選べる23.8型液晶一体型「ASUS Zen AiO 24」

 ASUSは4月23日、プロセッサにAMDもしくはIntelを採用し、メモリやストレージ容量などの違いで計5モデルの23.8型一体型を発表した。一足早くAMDモデルを試す機会に恵まれたのでレポートをお届けしたい。

Ryzen 7とIntel Core iを選べる一体型

 ここ数年、ノートPCの新製品/レビューがかなりの割合を占めるが、今回は久々の一体型モデルだ。iMacを代表とするこの手のマシンは、ノートPCのように持ち運びこそできないものの、デスクトップPCのようにあれこれ接続することもなく、机の上にポンと置き、キーボード/マウス、そして電源ケーブルを接続すれば即利用可能な手軽さがある。

 発表のあった「Zen AiO 24」は、大きくわけて搭載しているプロセッサが、Ryzen 7 5700U、Core i7-10700T、Core i3-10100Tの3タイプ。実際はメモリ、ストレージ容量、MS OfficeかWPS Officeかなどの違いで5モデル用意され、Intel搭載機は8万9,800円から15万4,800円と、意外と安い。以前からZen AiOシリーズはあったが、今回新筐体になっての登場だ。

 一方でRyzen 7搭載は、ご紹介する1モデルのみ。またIntelモデルにはない外付けDVDドライブも付属する。おもな仕様は以下のとおり。

ASUS「Zen AiO 24 A5401(A5401W-R75700LU)」の仕様
プロセッサRyzen 7 5700U(8コア16スレッド/1.8GHz~4.3GHz/L3キャッシュ 8MB/TDP 15W)
メモリ16GB(8GB×2)/DDR4-2666
ストレージSSD 512GB(PCIe 3.0)
OSWindows 10 Home(64bit)
ディスプレイ23.8型フルHD(1,920×1,080ドット)、非光沢、sRGB 100%、ベゼル幅約6mm
グラフィックスRadeon Graphics(8コア、1,900MHz)/HDMI in/out
ネットワークGbE、Wi-Fi 5対応、Bluetooth 4.2
インターフェイスUSB 3.0 Type-C×1、USB 3.0×2、USB 2.0×2、HD Webカメラ(シャッター付き)、音声入出力、スピーカー3W×2(harman/kardon認定)
サイズ/重量約541×202×453mm(幅×奥行き×高さ)/約7kg
その他Microsoft Office Home and Business 2019、ワイヤレスキーボード/マウス、外付けDVDスーパーマルチドライブ付属
価格149,800円

 プロセッサはRyzen 7 5700U。少し前に“「Ryzen 7 5800U」はApple M1を上回る性能で…”の記事が載ったこともあり、一瞬お! っと思ったが、このプロセッサ世代はZen 3ではなくZen 2だ。AMDのSKUは、Ryzen 5 5600U(Zen 3)/5500U(Zen 2)など、パッと見で世代がわからないので要注意。

 とはいえ、リリースは2021年第1四半期と新しく、8コア16スレッド、クロックは1.8GHz~4.3GHz、L2キャッシュ4MB/L3キャッシュ8MB、TDP 15W。高性能が期待できる。メモリはDDR4-2666 16GB(8GB×2)、ストレージはPCI Express 3.0接続のSSD 512GB。そしてUSB接続の外付けDVDドライブが付属する。OSは64bit版Windows 10 Home(20H2)。

 グラフィックはプロセッサ内蔵Radeon Graphics(8コア、1,900MHz)。外部出力用にHDMIを備えている。ディスプレイは非光沢の23.8型フルHD(1,920×1,080ドット)。sRGB 100%、ベゼル幅約6mmの特徴に加え、HDMI入力も備えている。サイズの割にフルHDなのは残念だが、このHDMI入力でそれを帳消しにできるほどポイントが高い。

 ネットワークは、GbE、Wi-Fi 5対応、Bluetooth 4.2。今時としてはWi-Fi 6、そしてBluetooth 5.x未対応なのはコストの関係だろうか(据置型なので、GbEに接続もできるためとくに問題はない)。そのほかのインターフェイスは、USB 3.0 Type-C×1、USB 3.0×2、USB 2.0×2、HD Webカメラ(シャッター付き)、音声入出力、スピーカー3W×2(harman/kardon認定)。

 サイズ約541×202×453mm(幅×奥行き×高さ)、重量約7kg。Microsoft Office Home and Business 2019、ワイヤレスキーボード/マウス、外付けDVDスーパーマルチドライブが付属して価格は14万9,800円。ノートPCでもこのクラスは同程度するため、Microsoft Office Home and Business 2019込みでこの価格は感覚的に安く感じる。

前面。パネル中央上にWebカメラ。ベゼル幅約6mmと狭額縁
背面。Gigabit Ethernet、HDMI入力/出力、電源入力、USB 2.0×2、USB 3.0。スタンドが各種コネクタを邪魔しないように、中央からズレている
左側面。HDMI切替ボタン、USB 3.0、USB 3.0 Type-C、音声入出力、電源ボタン。パネルの傾きはこれが最大。高さは調整できない。右側は何もない
スタンドの足。裏から5本のネジで止める
付属のキーボード/マウス。どちらもワイヤレス式。キーボードは10キー付き
キーピッチは実測で19mm
Webカメラのシャッター
付属のDVDドライブとACアダプタ。ACアダプタはサイズ約75×75×30mm、重量233g、出力19V/4.74A/90W
放熱用のスリット。負荷がかかると、このスリットから暖かい熱が結構上がる
キーボードとマウスの裏側。バッテリはキーボード側が単4形×2、マウス側が単3形×1。マウス側にUSBのドングルを収納

 パッケージから取り出したあと、机などに設置する前に足を付ける必要がある。ネジは5つ。簡易ドライバも付属するためとくに何も用意する必要はない。足の後ろ側にロックポートもある。全体的にホワイトなのはいいとして、スタンドの部分が薄いゴールドなのは好みが分かれるところだろうか。重量約7kgと、そこそこ重たいものの設置自体は容易だ。

 前面は中央上にWebカメラ。その上側面にシャッタースイッチがある。ベゼル幅約6mmと狭額縁。下側にスピーカーが仕込まれている。背面は、Ethernet、HDMI IN/OUT、電源入力、USB 2.0×2、USB 3.0。スタンドが各種コネクタを邪魔しないように、中央からズレているのが分かる。左側面にHDMI切替ボタン、USB 3.0、USB 3.0 Type-C、音声入出力、電源ボタン。

 右側面にはなにもない。パネルの傾きは写真が最大だ。ただし高さは調整できない。個人的には少し高い感じで、机と椅子のバランスで微妙になるケースもあるだろう。

 ディスプレイは非光沢の23.8型フルHD(1,920×1,080ドット)。最近では11型前後でもフルHDのパネルが使われることもあり、このサイズでフルHDだと全体的に荒い感じがする。明るさ、コントラスト、視野角は良好。発色はsRGB 100%と言うこともあり、安心して観ることができる。

 i1 Display Proを使い特性を測定したところ、最大輝度は260cd/平方m。写真を観るのに適していると言われる明るさ120cd/平方mは、最大から-4が126cd/平方m、-5が100cd/平方m。従って前者で計測した。黒色輝度は0.111cd/平方m。つまり、(目視可能かは別として)若干黒が浮く。リニアリティは、上の方が少しばらけているがおおむね良好だ。

測定結果1/白色点と黒色輝度
測定結果2/R・G・Bのリニアリティ

 付属のキーボードとマウスは無線式だ。バッテリはキーボード側が単4形×2、マウス側が単3形×1。マウス側にUSBのドングルが収納されている。無線式なのでBluetoothのようなペアリングの必要もなく、即利用可能になる。キーボードはテンキーありの日本語配列でキーピッチは実測で約19mm。写真からもわかるように少し大きめ(幅が広い)だ。打鍵感は、ストロークは深めだがクリック感もあり、付属のキーボードとしては悪くない。

 ノイズや振動は試用した範囲では十分許容範囲。発熱はベンチマークテストなど負荷がかかると、背面のASUSのロゴとスタンドの間にあるロジックボードを収めている部分の上側のスリットから熱くはないものの、暖かいレベル熱気が上がる。

 harman/kardon認定のスピーカー3W×2は、「DTS Audio Processing」で音楽/映画/ゲーム/カスタマイズの選択でずいぶん出方が変わる。オフにすると平凡な音になるため、オンのままが望ましい。一般的なノートPCよりはいい音だが、筐体が大きい分、もう少し頑張って欲しいところか。

 昨今、ビデオ会議で必要となるためWebカメラを軽く試したところ、解像度がHDなので、写りは荒い。また位置がパネル中央上と言うこともあり、一般的と思われる位置/距離に座って撮ると、周囲がかなり空いた日の丸構図(顔が中央)になる。構図的にはパネルがマイナス側(写真とは逆方向)にも少し傾くのでそれで調整することになるだろう。いずれにしても、被写体とほぼ平行の位置となるため、ノートPCのローアングル気味な映りよりはマシになる。

通常用途なら十分なパフォーマンス!

 初期起動時スタートメニューにASUSグループが追加されている。全体的にまったく問題のないパフォーマンスなのだが、とくに起動が速い。スタンバイしなくてもいいのではと思うほどだ。

 ストレージはPCIe 3.0接続のSSD 512GB「SAMSUNG MZVLQ512HALU」。仕様によるとシーケンシャルリード2,200MB/s、シーケンシャルライト1,200MB/s。CrystalDiskMarkでも同等の値が出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約475GB割り当てられ空き431GB。

 Gigabit EthernetはRealtek製、Wi-FiとBluetoothはIntel製だ。Radeon SoftwareからRadeon Graphicsが8コアなのがわかる。なお、外付けDVDドライブは「ASUS SDRW-08U7M-U USB Device」となっていた。

起動時のデスクトップ。壁紙の変更のみ
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージはPCIe 3.0接続のSSD 512GB「SAMSUNG MZVLQ512HALU」。GbEはRealtek製、Wi-FiとBluetoothはIntel製
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約475GBが割り当てられている
Radeon Software。8コア

 おもなプリインストールのソフトウェアは、「DTS Audio Processing」、「i-フィルター6.0」、「MyASUS」、「PhotoDirector for ASUS」、「PowerDirector for ASUS」、「マカフィーインターネットセキュリティ」、そして「Microsoft Office Home and Business 2019」。

 MyASUSは、同社製PC固有のシステムツールだ。カスタマイゼーションでは、ファンモード(スタンダード/ウィスパー)、Splendid(通常/ビビッド/手動/ブルーライト低減)、また画面キャプチャからは切れているが、コネクティビティ/帯域調整などの設定ができる。

MyASUS / Home
MyASUS / システム情報
MyASUS / カスタマイゼーション
MyASUS / カスタマーサポート

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R23、CrystalDiskMark。手持ちのIntel「NUC10i5FNH」(Intel Core i5-10210U/iGPU)と比較したところPCMark 10からCINEBENCH R23まで、すべての項目で勝っていた。とくに3DMarkは3倍前後と圧倒的だ。通常用途ならまったく問題ないパフォーマンスだろう。

【表】ベンチマーク結果
Zen AiO 24NUC10i5FNH(参考)
PCMark 10 v2.1.2508
PCMark 10 Score5,4763,963
Essentials9,2458,024
App Start-up Score11,35010,460
Video Conferencing Score8,2826,370
Web Browsing Score8,4087,754
Productivity8,2256,335
Spreadsheets Score10,1376,792
Writing Score6,6755,909
Digital Content Creation5,8603,325
Photo Editing Score9,0393,972
Rendering and Visualization Score6,0222,260
Video Editting Score3,6974,098
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.04,5723,630
Creative Accelarated 3.04,8823,715
Work Accelarated 2.05,3894,936
Storage5,0344,964
3DMark v2.17.7137
Time Spy1,423482
Fire Strike Ultra816306
Fire Strike Extreme1,662587
Fire Strike3,6461,205
Sky Diver13,3754,870
Cloud Gate22,6179,790
Ice Storm Extreme90,96547,713
Ice Storm109,25068,713
CINEBENCH R23
CPU8,992 pts(5位)4,040 pts
CPU(Single Core)1,232 pts(3位)919 pts

 以上のようにASUS「Zen AiO 24 A5401」は、Ryzen 7(Zen 2)、第10世代Core i3/i7を選べる23.8型の一体型だ。フルHDと解像度は一般的だが、HDMI入力を備えほかのデバイスを接続できるのはポイントが高い。予算や用途に応じて89,800円から154,800円と、選択の幅があるのも購入しやすいだろう。

 Zen 3のRyzen 7 5800Uでないのは残念だが(Intelも第10世代)、試用した範囲で気になる部分はなく、先の予算範囲で一体型を考えているユーザー、とくにパネルがsRGB 100%で、i1 Profilerでの結果も悪くないので、色を気にする用途を考えているユーザーにおすすめしたい1台だ。