西川和久の不定期コラム
Quadro T500を搭載した15.6型モバイルワークステーション「ThinkPad P15s Gen 2」
2021年4月26日 06:55
レノボ・ジャパンは3月2日、第11世代Core iとQuadro T500を搭載した15.6型ThinkPad、「ThinkPad P15s Gen 2」を発表した。編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けしたい。
第11世代Core iとQuadro T500を搭載した15.6型ThinkPad
現在ThinkPadはさまざまなサイズ、そして多彩なGPU搭載モデルが用意されている。一般的にはIntel UHD Graphics/Intel Xe GraphicsのiGPU、RyzenのiGPU、そしてゲーム系に強いディスクリートのGeForceとRadeonとなるが、今回ご紹介するのは、ワークステーション系に使われるQuadroを搭載しているモデルとなる。
基本仕様はプロセッサが第11世代のCore i5もしくはi7、メモリ/ストレージはカスタマイズ可能。そしてパネルもフルHD、UHD、タッチの有無で3タイプ用意されている。LTEにも対応可能だ。
今回ご紹介するのは、Core i7ながらフルHD/タッチなしのパネルを搭載した比較的ベーシックなモデルとなる。主な仕様は以下のとおり。
レノボ・ジャパン「ThinkPad P15s Gen 2」の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Core i7-1165G7(4コア8スレッド/2.8GHz(cTDP-up)~4.6GHz/キャッシュ 12MB) |
メモリ | 16GB(8B×2)/DDR4 3200MHz |
ストレージ | M.2 PCIe NVMe SSD 512GB |
OS | Windows 10 Pro(64bit) |
ディスプレイ | 15.6型フルHD(1,920×1,080ドット)、非光沢、300cd/平方m |
グラフィックス | Intel Xe Graphics/Quadro T500(4GB GDDR6)、HDMI/Thunderbolt 4 |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6対応、Bluetooth 5.2、LTE(オプション) |
インターフェイス | Thunderbolt 4×2、USB 3.0/Type-A×2、IR&720pカメラ(ThinkShutter)、指紋センサー、音声入出力、microSDカードスロット、バックライト付きキーボード |
バッテリ/駆動時間 | 3セルリチウムイオンバッテリ(57Wh)/最大約15.3時間 |
サイズ/重量 | 365.8×248×19.95mm(幅×奥行き×高さ)/約1.75kg |
価格 | 今回の構成で258,280円。Eクーポン適応後187,748円 |
プロセッサは第11世代のCore i7-1165G7。4コア8スレッドで、クロックは2.8GHz~4.6GHz。キャッシュ12MB。メモリはDDR4 3200MHz 16GB(8B×2)。ストレージはM.2 PCIe NVMe SSD 512GB。OSは64bit版Windows 10 Pro(20H2)を搭載する。
グラフィックスは、プロセッサ内蔵Intel Xe GraphicsとQuadro T500(4GB GDDR6)。外部出力用にHDMI/Thunderbolt 4を備えている。ディスプレイは15.6型フルHD(1,920×1,080ドット)、非光沢、300cd/平方m。
なおカスタマイズで、プロセッサCore i7-1185G7(i7モデルの場合。i5モデルはCore i5-1135G7/i5-1145G7)、メモリ32GB、ストレージSSD 256GB/1TB、そしてパネル15.6型フルHD液晶(1,920×1,080ドット) IPS、300cd/平方m、マルチタッチもしくは、15.6型UHD液晶(3,840×2,160ドット)IPS、光沢なし、600/平方m、HDRも選ぶことができる。
ネットワークは、Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6対応、Bluetooth 5.2。オプションでLTEにも対応する。そのほかのインターフェイスは、Thunderbolt 4×2、USB 3.0×2、IR&720pカメラ(ThinkShutter)、指紋センサー、音声入出力、microSDカードスロット、バックライト付きキーボード。
3セルリチウムイオンバッテリ(57Wh)を内蔵し最大約15.3時間。サイズ365.8×248×19.95mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.75kg。今回の構成で258,280円だが、Eクーポン適応後187,748円。内容を考慮すると少し安めだろうか。
筐体はなにも変わらない昔ながらのマットブラック。The ThinkPadという感じだ。15.6型で重量1,887gは軽い方ではないものの許容範囲だろうか。前面はパネル中央上にThinkShutter付きのWebカメラ。狭額縁ではないが、カッコ悪いほどでもない。左側面にThunderbolt 4、Dockコネクタ兼のThunderbolt 4、USB 3.0、HDMI、音声入出力、microSDカードスロット。右側面にロックポート、Gigabit Ethernet、Type-Aを配置。裏は特に内部へアクセスできるような小さいパネルはなく、四隅のゴム足のみ。
付属のACアダプタのサイズは、約10.8×4.7×3cm、重量249g、出力出力5V/2A、9V/2A、15V/3A、20V/3.25A(65W)。試しに手持ちのAUKEY 65Wタイプ(Model PA-B3)で試したところ問題なく充電できた。この辺りはPDのメリットだ。
15.6型の非光沢フルHDパネルは、明るさ、コントラスト、発色ともにクラス相当。特別良くも悪くもない。
i1 Display Proを使い特性を測定したところ最大輝度は275cd/平方m。写真を見るのに適していると言われる明るさ120cd/平方mは、最大から-2が152cd/平方m、-3が119cd/平方m。従って前者で計測。黒色輝度は0.107cd/平方m。つまり、(目視可能かは別として)若干黒が浮く。リニアリティは、全体的に狭い範囲だがばらつきがある。また補正前と後で結構発色が異なる。従って、色を気にする作業では同種のツールを使い補正することをお勧めしたい。
キーボードはテンキー付きの日本語配列。OFF+2段階のキーボードバックライトを備えている。タッチパッドとTrackPointの2段構えだ。加えてタッチパッドの右側に指紋センサーを配置。パームレストも含め、フットプリントに余裕がある分、十分な面積を確保している。
打鍵感自体はThinkPadそのものでまったく問題ないのだが、気になるのは、このサイズでキーボード面が机と平行というのは打ちにくく、足などで傾ける機構もない。もう1つはテンキーを入れた関係で、主要キーのキーピッチが約19mmに対して、右上[-]、[^]、[¥]、手前右の[ひらがな]、[Alt]、[PrtSc]、[Ctrl]キーのピッチがかなり狭くなってる点。
ThinkPad系に関してはキーボードに不満があることが少ないだけに、残念な部分と言えよう。個人的には無理にテンキーを入れなくてもいいのでは!? (空いた左右のスペースにスピーカー)と思っている。
ノイズや振動は許容範囲。発熱もベンチマークテストなど負荷をかけると、キーボード上側の空きスペースが主に熱を持つだけでパームレストまでは影響しない。
サウンドは、キーボード上のメッシュの部分にスピーカーが埋め込まれ、耳へダイレクトに音が届く。ThinkPadとしては珍しく鳴りっぷりも良く、一般的な用途であれば問題ないレベルだ。
Webカメラを少し試したところ、荒いのは720pなので仕方ないとしても、それにしても荒い上、ノイズも多い。肌色もオートホワイトバランスが半端で妙な色だ。昨今、ビデオ会議用途が急激に増えているため、他社も含めノートPC搭載Webカメラの画質はもう少し頑張って欲しいところだろうか。
OpenCL性能はQuadro T500 > M1 Mac mini > i7-7700+RX560 > Intel Xe
初期起動時、スタートメニューに新しく追加されるグループはない。デスクトップは壁紙の変更のみとシンプルだ。構成が構成なので、GPUの特性的にゲーミングとまでは行かないものの、快適に操作できる。
ストレージはM.2 PCIe NVMe SSD 512GBの「SAMSUNG MZVLB512HBJQ」。仕様によると、シーケンシャルリード3,500MB/s、シーケンシャルライト2,900MB/s。CrystalDiskMarkの結果もほぼそのまま出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約475GBが割り当てられ空き437GB。BitLockerで暗号化されている。
Gigabit Ethernet、Wi-Fi、BluetoothすべてIntel製。NVIDIAコントロールパネルからCUDAコア896、メモリGDDR6 4096MBなのがわかる。
おもなプリインストールのソフトウェアは、「Commercial Vantage」、「レノボ・ジャパン Quick Clean」など。
Commercial Vantageはレノボ・ジャパン ThinkVantageと同様、システム系のツールだ。画面キャプチャからわかるように、システムアップデート、デバイスとして電源/オーディオ/ディスプレイとカメラなどの設定が可能だ。カメラは明るさコントラスト、自動露出のオン/オフの調整ができる。
レノボ・ジャパンQuick Cleanは、一見、スマホによくある、メモリやキャッシュのクリアか? と思ったが、調べてみると、ディスプレイやキーボード、タッチパッドなどを掃除する間、物理的に無反応にする機能だった。たしかにちょっとキーボードが汚れた時など(電源オフは面倒)、そのままで掃除すると、反応してしまい場合によっては困ったことになるが、これなら安心して掃除できる。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R23、CrystalDiskMark、PCMark 10/BATTERY/Modern Office。
ご覧のようにdGPU搭載機としては、PCMark、3DMarkともにパッとしないスコアだ。もちろん第11世代Core i7並以上の速度は出ているが、とくに3D系が関係するスコアが伸びていない。これはゲーミングなどの用途ではないQuadroの特性と言えよう。
PCMark 10/BATTERY/Modern Officeは8時間9分(キーボードバックライトオフ。明るさ、バッテリモードなどはシステム標準)。仕様上の最大約15.3時間には届かないが、15.6型でこの構成なら妥当なところだと思われる。
【表】ベンチマーク | |
---|---|
PCMark 10 v2.1.2508 | |
PCMark 10 Score | 5,373 |
Essentials | 8,950 |
App Start-up Score | 12,758 |
Video Conferencing Score | 6,413 |
Web Browsing Score | 8,765 |
Productivity | 8,675 |
Spreadsheets Score | 9,917 |
Writing Score | 7,589 |
Digital Content Creation | 5,423 |
Photo Editing Score | 7,217 |
Rendering and Visualization Score | 4,373 |
Video Editting Score | 5,054 |
PCMark 8 v2.8.704 | |
Home Accelarated 3.0 | 4,155 |
Creative Accelarated 3.0 | 4,847 |
Work Accelarated 2.0 | 5,720 |
Storage | 5,006 |
3DMark v2.17.7137 | |
Time Spy | 1,360@Intel Xe 1,684@Quadro T500 |
Fire Strike Ultra | 791 |
Fire Strike Extreme | 1,998 |
Fire Strike | 4,619 |
Sky Diver | 15,495 |
Cloud Gate | 47,047 |
Ice Storm Extreme | 71,028 |
Ice Storm | 53,619 |
CINEBENCH R23 | |
CPU | 5,707 pts(9位) |
CPU(Single Core) | 1,498 pts(2位) |
CrystalDiskMark 6.0.0 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 3,554.351 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 2,960.699 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 1,182.040 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 509.242 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 484.563 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 507.201 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 66.764 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 150.919 MB/s |
さてQuadroの場合、一般的なベンチマークテストや3DMarkなどに性能が現れにくいため、GeekBench 5のOpenCLも測定した。比較対象は本機のIntel Xeと手持ちの関係でM1搭載Mac mini、Core i7-7700+RX560。結果は以下のとおり、Quadro T500 > M1 Mac mini> i7-7700 + RX560 > Intel Xeの順となった。15.6型のノートPCで、これだけの性能が出るのでなるほど! と言ったところだろう。
GeekBench 5 / OpenCL | |
---|---|
Intel Xe | 15,096 |
Quadro T500 | 21,286 |
M1 Mac mini | 19,509 |
i7-7700 + RX560 | 19,060 |
以上のようにレノボ・ジャパン「ThinkPad P15s Gen 2」は、15.6型の筐体にCore i7-1165G7とQuadro T500を搭載したThinkPadだ。ベンチマークテストからもわかるように、ゲーム的な要素には向かないがOpenCLなど、ワークステーション系には、ノートPCとして結構なパフォーマンスとなる。予算や用途に応じて、Core i5/i7が選べ、メモリ、ストレージ、パネルも選べるのはポイントが高い。
自慢のキーボード、一部のキーピッチが狭いのは気になるものの、プロユースで安心できるQuadroを搭載したThinkPadを求めているユーザーに最適な1台と言えよう。