西川和久の不定期コラム

Quadro T500を搭載した15.6型モバイルワークステーション「ThinkPad P15s Gen 2」

ThinkPad P15s Gen 2

 レノボ・ジャパンは3月2日、第11世代Core iとQuadro T500を搭載した15.6型ThinkPad、「ThinkPad P15s Gen 2」を発表した。編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けしたい。

第11世代Core iとQuadro T500を搭載した15.6型ThinkPad

 現在ThinkPadはさまざまなサイズ、そして多彩なGPU搭載モデルが用意されている。一般的にはIntel UHD Graphics/Intel Xe GraphicsのiGPU、RyzenのiGPU、そしてゲーム系に強いディスクリートのGeForceとRadeonとなるが、今回ご紹介するのは、ワークステーション系に使われるQuadroを搭載しているモデルとなる。

 基本仕様はプロセッサが第11世代のCore i5もしくはi7、メモリ/ストレージはカスタマイズ可能。そしてパネルもフルHD、UHD、タッチの有無で3タイプ用意されている。LTEにも対応可能だ。

 今回ご紹介するのは、Core i7ながらフルHD/タッチなしのパネルを搭載した比較的ベーシックなモデルとなる。主な仕様は以下のとおり。

レノボ・ジャパン「ThinkPad P15s Gen 2」の仕様
プロセッサCore i7-1165G7(4コア8スレッド/2.8GHz(cTDP-up)~4.6GHz/キャッシュ 12MB)
メモリ16GB(8B×2)/DDR4 3200MHz
ストレージM.2 PCIe NVMe SSD 512GB
OSWindows 10 Pro(64bit)
ディスプレイ15.6型フルHD(1,920×1,080ドット)、非光沢、300cd/平方m
グラフィックスIntel Xe Graphics/Quadro T500(4GB GDDR6)、HDMI/Thunderbolt 4
ネットワークGigabit Ethernet、Wi-Fi 6対応、Bluetooth 5.2、LTE(オプション)
インターフェイスThunderbolt 4×2、USB 3.0/Type-A×2、IR&720pカメラ(ThinkShutter)、指紋センサー、音声入出力、microSDカードスロット、バックライト付きキーボード
バッテリ/駆動時間3セルリチウムイオンバッテリ(57Wh)/最大約15.3時間
サイズ/重量365.8×248×19.95mm(幅×奥行き×高さ)/約1.75kg
価格今回の構成で258,280円。Eクーポン適応後187,748円

 プロセッサは第11世代のCore i7-1165G7。4コア8スレッドで、クロックは2.8GHz~4.6GHz。キャッシュ12MB。メモリはDDR4 3200MHz 16GB(8B×2)。ストレージはM.2 PCIe NVMe SSD 512GB。OSは64bit版Windows 10 Pro(20H2)を搭載する。

 グラフィックスは、プロセッサ内蔵Intel Xe GraphicsとQuadro T500(4GB GDDR6)。外部出力用にHDMI/Thunderbolt 4を備えている。ディスプレイは15.6型フルHD(1,920×1,080ドット)、非光沢、300cd/平方m。

 なおカスタマイズで、プロセッサCore i7-1185G7(i7モデルの場合。i5モデルはCore i5-1135G7/i5-1145G7)、メモリ32GB、ストレージSSD 256GB/1TB、そしてパネル15.6型フルHD液晶(1,920×1,080ドット) IPS、300cd/平方m、マルチタッチもしくは、15.6型UHD液晶(3,840×2,160ドット)IPS、光沢なし、600/平方m、HDRも選ぶことができる。

 ネットワークは、Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6対応、Bluetooth 5.2。オプションでLTEにも対応する。そのほかのインターフェイスは、Thunderbolt 4×2、USB 3.0×2、IR&720pカメラ(ThinkShutter)、指紋センサー、音声入出力、microSDカードスロット、バックライト付きキーボード。

 3セルリチウムイオンバッテリ(57Wh)を内蔵し最大約15.3時間。サイズ365.8×248×19.95mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.75kg。今回の構成で258,280円だが、Eクーポン適応後187,748円。内容を考慮すると少し安めだろうか。

前面。パネル中央上にThinkShutter付きのWebカメラ
斜め後ろから。なにも変わらないThinkPadテイスト
左側面Thunderbolt 4、Dockコネクタ兼のThunderbolt 4、USB 3.0、HDMI、音声入出力、microSDカードスロット
右側面。ロックポート、Gigabit Ethernet、USB 3.0
キーボード。テンキーありの日本語配列。打鍵感はいつものThinkPad。上のメッシュにスピーカー
キーピッチ。実測で約19mm。右上[-]、[^]、[¥]、手前右の[ひらがな]、[Alt]、[PrtSc]、[Ctrl]キーのピッチが狭いのは気になる
底面。内部へアクセスできる小さいパネルなどはない。四隅にゴム足。同じ高さなので手前へは傾かない
横から。各コネクタのサイズからもわかるように、15.6型としては薄い
重量は実測で1,887g
ACアダプタのサイズ約108×47×30mm(同)、重量249g、出力5V/2A、9V/2A、15V/3A、20V/3.25A(65W)
キーボードバックライトはOFF+2段階

 筐体はなにも変わらない昔ながらのマットブラック。The ThinkPadという感じだ。15.6型で重量1,887gは軽い方ではないものの許容範囲だろうか。前面はパネル中央上にThinkShutter付きのWebカメラ。狭額縁ではないが、カッコ悪いほどでもない。左側面にThunderbolt 4、Dockコネクタ兼のThunderbolt 4、USB 3.0、HDMI、音声入出力、microSDカードスロット。右側面にロックポート、Gigabit Ethernet、Type-Aを配置。裏は特に内部へアクセスできるような小さいパネルはなく、四隅のゴム足のみ。

 付属のACアダプタのサイズは、約10.8×4.7×3cm、重量249g、出力出力5V/2A、9V/2A、15V/3A、20V/3.25A(65W)。試しに手持ちのAUKEY 65Wタイプ(Model PA-B3)で試したところ問題なく充電できた。この辺りはPDのメリットだ。

 15.6型の非光沢フルHDパネルは、明るさ、コントラスト、発色ともにクラス相当。特別良くも悪くもない。

 i1 Display Proを使い特性を測定したところ最大輝度は275cd/平方m。写真を見るのに適していると言われる明るさ120cd/平方mは、最大から-2が152cd/平方m、-3が119cd/平方m。従って前者で計測。黒色輝度は0.107cd/平方m。つまり、(目視可能かは別として)若干黒が浮く。リニアリティは、全体的に狭い範囲だがばらつきがある。また補正前と後で結構発色が異なる。従って、色を気にする作業では同種のツールを使い補正することをお勧めしたい。

測定結果1/白色点と黒色輝度
測定結果2/R・G・Bのリニアリティ

 キーボードはテンキー付きの日本語配列。OFF+2段階のキーボードバックライトを備えている。タッチパッドとTrackPointの2段構えだ。加えてタッチパッドの右側に指紋センサーを配置。パームレストも含め、フットプリントに余裕がある分、十分な面積を確保している。

 打鍵感自体はThinkPadそのものでまったく問題ないのだが、気になるのは、このサイズでキーボード面が机と平行というのは打ちにくく、足などで傾ける機構もない。もう1つはテンキーを入れた関係で、主要キーのキーピッチが約19mmに対して、右上[-]、[^]、[¥]、手前右の[ひらがな]、[Alt]、[PrtSc]、[Ctrl]キーのピッチがかなり狭くなってる点。

 ThinkPad系に関してはキーボードに不満があることが少ないだけに、残念な部分と言えよう。個人的には無理にテンキーを入れなくてもいいのでは!? (空いた左右のスペースにスピーカー)と思っている。

 ノイズや振動は許容範囲。発熱もベンチマークテストなど負荷をかけると、キーボード上側の空きスペースが主に熱を持つだけでパームレストまでは影響しない。

 サウンドは、キーボード上のメッシュの部分にスピーカーが埋め込まれ、耳へダイレクトに音が届く。ThinkPadとしては珍しく鳴りっぷりも良く、一般的な用途であれば問題ないレベルだ。

 Webカメラを少し試したところ、荒いのは720pなので仕方ないとしても、それにしても荒い上、ノイズも多い。肌色もオートホワイトバランスが半端で妙な色だ。昨今、ビデオ会議用途が急激に増えているため、他社も含めノートPC搭載Webカメラの画質はもう少し頑張って欲しいところだろうか。

OpenCL性能はQuadro T500 > M1 Mac mini > i7-7700+RX560 > Intel Xe

 初期起動時、スタートメニューに新しく追加されるグループはない。デスクトップは壁紙の変更のみとシンプルだ。構成が構成なので、GPUの特性的にゲーミングとまでは行かないものの、快適に操作できる。

 ストレージはM.2 PCIe NVMe SSD 512GBの「SAMSUNG MZVLB512HBJQ」。仕様によると、シーケンシャルリード3,500MB/s、シーケンシャルライト2,900MB/s。CrystalDiskMarkの結果もほぼそのまま出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約475GBが割り当てられ空き437GB。BitLockerで暗号化されている。

 Gigabit Ethernet、Wi-Fi、BluetoothすべてIntel製。NVIDIAコントロールパネルからCUDAコア896、メモリGDDR6 4096MBなのがわかる。

起動時のデスクトップ。壁紙の変更のみとシンプル
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージはM.2 PCIe NVMe SSD 512GBの「SAMSUNG MZVLB512HBJQ」。Gigabit Ethernet、Wi-Fi、BluetoothすべてIntel製
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約475GBが割り当てられている。BitLockerで暗号化
NVIDIAコントロールパネル。CUDAコア896、メモリGDDR6 4,096MB

 おもなプリインストールのソフトウェアは、「Commercial Vantage」、「レノボ・ジャパン Quick Clean」など。

 Commercial Vantageはレノボ・ジャパン ThinkVantageと同様、システム系のツールだ。画面キャプチャからわかるように、システムアップデート、デバイスとして電源/オーディオ/ディスプレイとカメラなどの設定が可能だ。カメラは明るさコントラスト、自動露出のオン/オフの調整ができる。

 レノボ・ジャパンQuick Cleanは、一見、スマホによくある、メモリやキャッシュのクリアか? と思ったが、調べてみると、ディスプレイやキーボード、タッチパッドなどを掃除する間、物理的に無反応にする機能だった。たしかにちょっとキーボードが汚れた時など(電源オフは面倒)、そのままで掃除すると、反応してしまい場合によっては困ったことになるが、これなら安心して掃除できる。

Commercial Vantage / ダッシュボード
Commercial Vantage / システムアップデート
Commercial Vantage / デバイス
Commercial Vantage / デバイス設定 / 電源
Commercial Vantage / デバイス設定 / オーディオ
Commercial Vantage / デバイス設定 / ディスプレイとカメラ
レノボ・ジャパン Quick Clean

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R23、CrystalDiskMark、PCMark 10/BATTERY/Modern Office。

 ご覧のようにdGPU搭載機としては、PCMark、3DMarkともにパッとしないスコアだ。もちろん第11世代Core i7並以上の速度は出ているが、とくに3D系が関係するスコアが伸びていない。これはゲーミングなどの用途ではないQuadroの特性と言えよう。

 PCMark 10/BATTERY/Modern Officeは8時間9分(キーボードバックライトオフ。明るさ、バッテリモードなどはシステム標準)。仕様上の最大約15.3時間には届かないが、15.6型でこの構成なら妥当なところだと思われる。

【表】ベンチマーク
PCMark 10 v2.1.2508
PCMark 10 Score5,373
Essentials8,950
App Start-up Score12,758
Video Conferencing Score6,413
Web Browsing Score8,765
Productivity8,675
Spreadsheets Score9,917
Writing Score7,589
Digital Content Creation5,423
Photo Editing Score7,217
Rendering and Visualization Score4,373
Video Editting Score5,054
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.04,155
Creative Accelarated 3.04,847
Work Accelarated 2.05,720
Storage5,006
3DMark v2.17.7137
Time Spy1,360@Intel Xe
1,684@Quadro T500
Fire Strike Ultra791
Fire Strike Extreme1,998
Fire Strike4,619
Sky Diver15,495
Cloud Gate47,047
Ice Storm Extreme71,028
Ice Storm53,619
CINEBENCH R23
CPU5,707 pts(9位)
CPU(Single Core)1,498 pts(2位)
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード3,554.351 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト2,960.699 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード1,182.040 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト509.242 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード484.563 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト507.201 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード66.764 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト150.919 MB/s

 さてQuadroの場合、一般的なベンチマークテストや3DMarkなどに性能が現れにくいため、GeekBench 5のOpenCLも測定した。比較対象は本機のIntel Xeと手持ちの関係でM1搭載Mac mini、Core i7-7700+RX560。結果は以下のとおり、Quadro T500 > M1 Mac mini> i7-7700 + RX560 > Intel Xeの順となった。15.6型のノートPCで、これだけの性能が出るのでなるほど! と言ったところだろう。

GeekBench 5 / OpenCL
Intel Xe15,096
Quadro T50021,286
M1 Mac mini19,509
i7-7700 + RX56019,060

 以上のようにレノボ・ジャパン「ThinkPad P15s Gen 2」は、15.6型の筐体にCore i7-1165G7とQuadro T500を搭載したThinkPadだ。ベンチマークテストからもわかるように、ゲーム的な要素には向かないがOpenCLなど、ワークステーション系には、ノートPCとして結構なパフォーマンスとなる。予算や用途に応じて、Core i5/i7が選べ、メモリ、ストレージ、パネルも選べるのはポイントが高い。

 自慢のキーボード、一部のキーピッチが狭いのは気になるものの、プロユースで安心できるQuadroを搭載したThinkPadを求めているユーザーに最適な1台と言えよう。