西川和久の不定期コラム

8コア/16スレッドのi9-9980HKを搭載した爆速15.6型4Kノート「VAIO S15 ALL BLACK EDITION」

VAIO S15 ALL BLACK EDITION

 VAIOは11月12日、「VAIO S15」の新モデルを発表した。個人向けモデルと法人向けモデルで数パターンあるなか、Core i9-9980HKを搭載した「ALL BLACK EDITION」が編集部から送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。

8コア/16スレッドのCore i9-9980HKを搭載した15.6型ハイエンドノート

 今回ご紹介する「VAIO S15 ALL BLACK EDITION」は、通常モデルとは違うプレミアムエディションとなる。Coffee Lake Refreshこと第9世代のCore i9-9980HKを搭載しており、8コア/16スレッド、2.4~5GHzのクロックを実現し、モバイル向けCPUとしては段違い性能を発揮する。

 詳細は後半のベンチマークテストをご覧いただきたいが、CINEBENCH R15のスコアはシングル/マルチコアともに高い。手軽に持ち運べるノートPCの形状ながら、高性能が欲しいユーザーにとって文句なしの1台だろう。おもな仕様は以下のとおり。

【表】「VAIO S15 ALL BLACK EDITION」の仕様
プロセッサCore i9-9980HK(8コア/16スレッド、2.4~5GHz、キャッシュ16MB、TDP 45W)
メモリDDR4 32GB(16GB×2)
ストレージNVMe SSD 256GB+HDD 1TB
光学ドライブBDXLドライブ
OSWindows 10 Pro
ディスプレイ15.6型4K(3,840x2,160ドット)、非光沢、タッチ非対応
グラフィックスIntel UHD Graphics 630
ネットワークGigabit Ethernet、Wi-Fi 11ac対応、Bluetooth 4.1
インターフェイスThunderbolt 3、USB 3.0×3、ミニD-Sub15ピン、HDMI、Webカメラ、SDカードスロット、音声入出力、顔認証センサー、指紋センサー
バッテリ駆動時間約5時間
サイズ/重量約361.4×254.3×22~26mm(幅×奥行き×高さ)/約2.25kg
税別店頭予想価格301,800円

 第9世代Core i9の8コア/16スレッドに対応するCPUは、i9-9900K、i9-9900KF、i9-9900T、i9-9900、i9-9880H、i9-9880HK、i9-9880KSとあるが、モバイル向けはi9-9880Hとi9-9880HKの2つだけだ。一般的な4コア/8スレッドのCPUと比較してマルチスレッドなら単純に倍速い。

 メモリはDDR4 16GB×2の計32GB。ストレージはNVMe SSD 256GBとHDD 1TB。そしてBDXLドライブも内蔵している。OSは64bit版のWindows 10 Proを搭載していた。

 グラフィックスはCPU内蔵のIntel UHD Graphics 630。外部出力用にミニD-Sub15ピンとHDMI、そしてThunderbolt 3を備えている。これだけ性能のあるプロセッサだとディスクリートGPUも欲しいところだが、熱処理などの問題も含め、この構成になっていると思われる。ディスプレイは非光沢の15.6型で解像度は4K(3,840×2,160ドット)。タッチ操作には非対応だ。

 ネットワーク機能は有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11ac対応。Bluetooth 4.1も内蔵する。今の時期だとWi-Fi 6、Bluetooth 5系となってほしいところだが、堅実な作りのVAIOらしく前モデルの仕様をそのまま引き継いでいる。

 そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×3、Webカメラ、SDカードスロット、音声入出力。顔認証と指紋認証センサーを備えており、Windows Helloの生体認証機能を利用できる。

 本体サイズは約361.4×254.3×22~26mm(幅×奥行き×高さ)、重量約2.25kg。バッテリ駆動時間は約5時間。税別店頭予想価格は搭載メモリ容量やストレージ構成にもよるが301,800円からとなる。プロセッサ、メモリ、ストレージ、ディスプレイなど、すべてがハイエンド構成になっているため、当然の価格と言えるだろう。

パネル中央上にWebカメラ。正面側面右側にステータスLED
天板はマットブラックにVAIOのロゴ
左側面には、電源入力、Ethernet、ミニD-Sub15ピン、HDMI、USB 3.0、Thunderbolt 3、音声入出力
右側面には、ロックポート、BDXLドライブ、USB 3.0×2
キーボードはテンキー付きのアイソレーションタイプ。タッチパッドは2ボタン式。パームレスト右上に指紋センサー
キーピッチは実測で約19mm。手前やテンキーのピッチはせまくなっているが主要キーは均一
底面のゴム足は手前が1本バーだが、後ろは閉じた時用に左右2つと、パネルを開いている時用にパネルの左右下にもある。手前左右のスリットにスピーカー。中央少し左寄りにSDカードスロット
パネルはこの角度が最大。下の部分が足になり、キーボードが傾いているのがわかる
ACアダプタのサイズは約138×64×25mm、重量320g、出力19.5V/4.62A

 筐体は名前のとおりオールブラック。天板などはマット仕上げ、パームレストは薄いヘアライン仕上げと凝った作りでかなりカッコいい。写真は掲載していないが、パッケージもマットブラックで高級感がある。BDXLドライブ搭載なので重量はそれなりだが、ここは重いというより、重厚感と表現したい。

 前面はパネル中央上にWebカメラ。正面側面右側にステータスLED。左側面に電源入力、Gigabit Ethernet、ミニD-Sub15ピン、HDMI、USB 3.0、Thunderbolt 3、音声入出力。右側面にロックポート、BDXLドライブ、USB 3.0×2を配置。底面は手前左右にスピーカーとSDカードスロット。

 また、底面手前には本体を支える1本バーのゴム足と天板を閉じた時用に後ろに2つのゴム足がある。ただし、これは横からの写真を見ればわかるように、パネルを空けると本体後ろ側のゴム足は使わず、パネル下の部分が足となり、キーボードが手前に傾く仕掛けになっている。

 ACアダプタのサイズは約138×64×25mm、重量320g、出力19.5V/4.62A。バッテリは内蔵式で着脱できない。15.6型のディスプレイは非光沢で長時間使用しても目が疲れにくい。明るさ、コントラスト、発色、視野角すべて良好だ。

 キーボードはテンキー付きのアイソレーションタイプ。キーピッチは実測で約19mm。仕様上はキーピッチ約19mm、ストローク約1.5mm。手前やテンキー部分(仕様上16mm)のピッチはせまいものの、主要キーが均一、そして15.6型でもこれだけ手前に傾いていると非常に入力しやすい。

 打鍵感は、硬過ぎず軟らか過ぎず、ストロークもそれなりで個人的には好みだ。惜しいのはキーボードバックライトがないことと、[Home]/[End]/[PgUp]/[PgDn]の位置だろうか。タッチパッドは2ボタン式だ。パームレストも含め十分面積が確保されており扱いやすい。

 パームレスト右上にある指紋センサーと、パネル中央上にあるWebカメラは、Windows Helloに対応している。PIN設定後、どちらも試したが、とくに問題なく、スムーズにログインできた(ただし眼鏡の有無に関わらず認識するには”精度を高める”が必要だった)。

 通常使用時、振動や大きなノイズはないものの、多少の音は聞こえた。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると、左側面のスリットから暖かい空気が出てくる。その分、パームレストには熱が降りて来ないので、運用上は問題ない。

 サウンドは、スピーカーが裏にあるため、反射するものによって結構変わる。左右に幅があるためかステレオ感が出て、パワーもそれなりだが、バスドラムのドスっといった量感は出ず、少しシャリシャリした感じとなる。

CINEBENCH R15のシングルコア/マルチコアともに高いスコア

 初回起動時のスタート画面(タブレットモード)は1画面。VAIOグループがプリインストールされている。デスクトップは壁紙の変更のみとシンプルだ。構成が構成なだけに、ブート、アプリ起動、シャットダウンも速く、ストレスはまったく感じない。

 ストレージはNVMe SSD 256GBでSamsungのMZVLB256HAHQが載っていた。仕様によるとシーケンシャルリード3,000 MB/s、同ライト1,300 MB/s。ベンチマークテストでもそのままの値が出ている。HDDは東芝 MQ04ABF100で容量1TB、回転数は5,400rpmタイプとなる。

 SSDがCドライブ、HDDがDドライブ。前者は約237.61GBが割り当てられ空き198GB。後者は約931.51GBが使用可能になっていた。

 BDXLドライブは日立LGデータストレージ製のHL-DT-ST BD-RE BU40N。Gigabit EthernetはRealtek製、Wi-FiとBluetoothはQualcomm製。

スタート画面(タブレットモード)。1画面。VAIOグループがプリインストール
起動時のデスクトップ。壁紙の変更のみとシンプル
デバイスマネージャー/主要なデバイス。ストレージはNVMe SSD 256GBの「Samsung MZVLB256HAHQ」と、HDDが「東芝 MQ04ABF100」。BDドライブは「日立LGデータストレージ HL-DT-ST BD-RE BU40N」。Gigabit EthernetはRealtek製、Wi-FiとBluetoothはQualcomm製
ストレージのパーティション。SSDがCドライブ、HDDがDドライブ。前者は約237.61GBが、後者は約931.51GBが割り当てられている

 おもなプリインストールアプリは、「Office 2019」(Professional、Home and Business、 Personalはモデルによる)、「CyberLink PowerDVD 14」、「マカフィーリブセーフ」(60日間体験版)、「Power2Go for VAIO」、「VIAO Clipping Tool」、「VAIOの設定」など。

 VAIOの設定は、画面キャプチャからもわかるように、電源・バッテリ、入力デバイス、ハードウェア、ネットワークなどの設定を行なうツールだ。

VAIOの設定にある電源・バッテリ
入力デバイス
ハードウェア
ネットワーク
その他
VIAO Clipping Tool

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R15、CrystalDiskMark、PCMark 10/BATTERY/Modern OfficeとBBenchを実行。結果は以下のとおり。

 内蔵GPUなので3DMarkなどGPU負荷の高いテストは並みだが、CPUとストレージ性能の出やすいテストに関しては高スコアとなった。

 CINEBENCH R15のCPU(Single Core)でも高スコア。つまりシングルスレッド性能も高いので、大がかりなmakeなども速そうだ。これよりさらに速いマシンとなると、ハイエンドゲーミングノートとなるだろうか。

【表】ベンチマーク結果
PCMark 10 v2.0.2144
PCMark 10 Score4,076
Essentials9,063
App Start-up Score11,712
Video Conferencing Score8,113
Web Browsing Score7,835
Productivity5,601
Spreadsheets Score5,141
Writing Score6,103
Digital Content Creation3,622
Photo Editing Score4,773
Rendering and Visualization Score3,183
Video Editting Score3,130
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.03,645
Creative Accelarated 3.03,954
Work Accelarated 2.02,569
Storage5,058
3DMark v2.10.6799
Time Spy531
Fire Strike Ultra340
Fire Strike Extreme656
Fire Strike1,376
Sky Diver5,365
Cloud Gate11,711
Ice Storm Extreme48,920
Ice Storm67,323
CINEBENCH R15
OpenGL62.67 fps
CPU1533 cb
CPU(Single Core)202 cb
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード3446.113 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト1591.621 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード574.098 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト1493.192 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード522.039 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト500.625 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード43.302 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト133.447 MB/s
PCMark 10/BATTERY
Modern Office 4時間9分(明るさ50%、電源モード : バッテリ節約機能)

 バッテリ駆動時間は、PCMark 10のModern Officeで4時間9分(明るさ50%、バッテリ節約機能)。昨今のノートPCとしてはかなり駆動時間が短い。これだけのパワーと引き換えなので仕方ないところだろう。


 以上のように「VAIO S15 ALL BLACK EDITION」は、8コア/16スレッドのCore i9-9980HK、非光沢15.6型4K、メモリ32GB、SSD 256GB+HDD 1TB、BDXLドライブと、ディスクリートGPUGPU以外、現在考えられるなかで最高構成のノートPCだ。加えてUSB 3.0×3、Thunderbolt 3、そして少しレガシーなミニD-Sub15ピンと、ポートの数が豊富なのもポイントが高い。

 短いバッテリ駆動時間や多少のファン音など、気になる部分もあるにはあるが、高性能ノートPCを欲しているユーザーにおすすめしたい1台と言えよう。