西川和久の不定期コラム

15.6型4Kワークステーション、「エルザ VELUGA 5000」

~8コアi9とQuadro、64GBメモリにNVMe SSD 1TB×2の超高速ノート

製品写真

 株式会社エルザジャパンは10月4日、Core i9、Quadro RTX 5000 with Max-Q Designなどを搭載した15.6型4KノートPC「VELUGA 5000」を発表した。2モデル中の上位モデルが編集部から送られて来たので試用レポートをお届けしたい。

15.6型4K、Core i9、Quadro RTX 5000 with Max-Q Design、メモリ64GB、NVMe SSD 1TB×2のノートPC型ワークステーション

 前回、爆速「VAIO S15 ALL BLACK EDITION」をご紹介したが、ノートPCとしてCPUは最速ながらGPUがiGPUのみで、オプション扱いでdGPU搭載モデルがなかったのは惜しいと思った人も多かったのではないだろうか。

 今回ご紹介する「VELUGA 5000」は、その要求(以上)に応えたマシンであり、dGPUに「Quadro RTX 5000 with Max-Q Design」を搭載。加えてメモリ64GB、NVMe SSD 1TB×2という、「ここまで凄いマシン、誰が使うの?」と思ってしまうほどの超爆速モバイルワークステーションだ。

 上位「ELVLG5K93221TB24K3WR」、下位「ELVLG5K73221TB24K3WR」と2モデルある中、届いたのは上位モデル。おもな仕様は以下のとおり。

ELSA「VELUGA 5000/ELVLG5K93221TB24K3WR」の仕様
プロセッサCore i9-9880H(8コア16スレッド/2.3~4.8GHz/キャッシュ16MB/TDP 45W)
メモリ64GB(32GB×2)/DDR4 SO-DIMM
ストレージNVMe SSD 1TB×2
OSWindows 10 Pro(64bit)
ディスプレイ15.6型4K(3,840×2,160ドット)、非光沢、AdobeRGB 100%準拠、タッチ非対応
グラフィックスIntel UHD Graphics 630/Quadro RTX 5000 with Max-Q Design(16GB/DDR6)、Mini DisplayPort/HDMI/Thunderbolt 3(Type-C)
ネットワークGigabit Ethernet、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.0
インターフェイスThunderbolt 3、USB 3.1、USB 3.0×2、Webカメラ、音声入出力、指紋センサー
その他米軍MILスペック(MIL-STD-810G)準拠、キーボードバックライト
サイズ/重量約358×248×17.9mm(幅×奥行き×高さ)/約1.94kg
店頭予想価格698,390円前後

 プロセッサは第9世代Coffee LakeのCore i9-9880H。8コア/16スレッドでクロックは2.3GHzから最大4.8GHz。キャッシュは16MB、TDP 45W。モバイル用のSKUとしては最上位クラスのものだ。メモリはDDR4 SO-DIMMで32GB×2の計64GB。ストレージはNVMe SSD 1TB×2。ここだけ見ても、一般的なマシンであれば数台分に相当するスペックだ。OSは64bit版Windows 10 Proを採用している。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel UHD Graphics 630と、Quadro RTX 5000 with Max-Q Design(16GB/DDR6)。CUDAコア3,072基だけでなくRT Core 48基、Tensor Core 384基で、深層学習やリアルタイムレイトレーシング処理にも専用コアを使用できる。Quadroなのでゲーミング用ではなくワークステーション用だ。VR Readyで、出力はMini DisplayPort(1.4)、HDMI(2.0)、Thunderbolt 3(Type-C)の3系統を装備。

 ディスプレイは15.6型非光沢4K(3,840×2,160ドット)。AdobeRGB 100%準拠、タッチ非対応。色域がAdobeRGB 100%準拠なので、色に厳しい作業もこなすことができる。

 ネットワークは、有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11ac対応。Bluetooth 5.0も搭載している。そのほかのインターフェイスは、Thunderbolt 3×1、USB 3.1×1、USB 3.0×2、Webカメラ、音声入出力、指紋センサー。またキーボードバックライト対応だ。

 4セルリチウムポリマーバッテリを内蔵し、MILスペック(MIL-STD-810G)準拠の本体サイズは約358×248×17.9mm(幅×奥行き×高さ)。重量約1.94kgで店頭予想価格は698,390円前後。かなり高価であるが、このマシンが必要な人にとっては、存在しているだけで正義だと思われる。

 なお下位モデルとしてプロセッサにCore i7-9750Hを採用した「ELVLG5K73221TB24K3WR」もあり、店頭予想価格は623,920円前後。シリーズ違いでQuadro RTX 3000 with Max-Q Designを搭載した「VELUGA 3000」も2モデル用意されている。

前面。狭額縁で非光沢、色域AdobeRGB 100%のパネル。中央上にWebカメラ
斜め後ろから。マットブラックで左側にロゴ。バッテリは内蔵式で着脱できない
左はロックポート、Ethernet、USB 3.0×2、音声入出力
右は電源入力、HDMI、Mini DisplayPort、Thunderbolt 3(Type-C)、USB 3.1
キーボードはテンキーなしのアイソレーションタイプで日本語キーボード。バックライト付き。[Enter]キーの外側にキーがある。タッチパッドは1枚プレート式。左上に指紋センサー
キーピッチは実測で約19mm。[ろ][]など一部ピッチが狭い
裏には前後に1本バー式のゴム足。手前左右のスリットにスピーカー
横から。厚み17.9mmと、このクラスの割に薄い
重量は実測で1,934gと2Kgを切っている
付属のACアダプタは、サイズ約150×72×30mm(同)、重量729g、出力19.5V/11.8A

 筐体は写真からもわかるようにマットブラック。電源ボタン/タッチパッド/音声入出力の周囲、スリット裏側の金属などが真鍮色でアクセントになっている。MILスペック準拠だけあって、ガッシリしておりカッコいい。(構成も含め)その割に重量は2Kgを切る1,934g。これだけのパワーを持ち運ぶことができるのは、なかなか凄いことだ。

 前面はパネルが狭額縁。中央上にWebカメラ。左側面にロックポート、Gigabit Ethernet、USB 3.0×2、音声入出力。右側面に電源入力、HDMI、Mini DisplayPort、Thunderbolt 3(Type-C)、USB 3.1を配置。裏は前後に1本バーのゴム足と手前左右のスリットにスピーカー。横から見てもなかなか薄型なのがわかるが、キーボードが手前に傾くような仕掛けはない。付属のACアダプタは、サイズが約150×72×30mm(同)、重量729g、出力19.5V/11.8A。さすがに結構大きめだ。

 15.6型4Kディスプレイは、起動した瞬間に感じるほど綺麗で色域が広い。確認したところ、やはりAdobeRGB 100%準拠だった。明るさ、発色、コントラスト、視野角すべて良好。非光沢なので目にも優しく、かなり高品位なパネルを使っていると思われる。

 キーボードはテンキーなしのアイソレーションタイプでバックライト付きだ。15.6型とフットプリントが広い割に10キーがないため、かなりゆったりしたレイアウトとなっている。打鍵感も硬過ぎず軟らか過ぎず、ストロークも適度にあり入力しやすい。主要キーのキーピッチは約19mm。[ろ]、[]など一部ピッチが狭いものもあるが許容範囲だろう。ただ[Enter]キーの外側にもキーがあるため、こちらが気になる人もいるかもしれない。

 タッチパッドは1枚プレート式だ。左上に指紋センサーがある。パームレストも含め十分面積が確保されているため使いやすい。

 振動やノイズに関しては、試用した範囲ではとくに気にならなかった。じつは貸し出しにあたり、編集部からファンの音が結構するといった話を聞いていたが、試用前にすべてのWindows Updateを当ててベンチマークテストなどを行なったところ、ファンの音はほとんどしなかった。発熱も負荷をかけると、おもに左側のスリットから暖かい空気が出て、キーボード上のメッシュ部分が熱を持つなど、それなりに熱くはなるものの、構成を考えると普通以下だ。パームレストまではほとんど熱が降りて来ない。冷却システムがうまく作動しているのだと思われる。

 サウンドはスピーカーが下にあるため、反射するものによって音質が変わるが、驚くほどパワーがあり、ステレオ感も十分。とくにナレーションなど人の声が前に出る。ただ低音があまり出ないので、どうしても中域から高域のバランスになってしまうのは仕方ないところ。とはいえ今年試用した15.6型の中では良い方に入る。

異次元の性能で驚きの1台

 初期起動時のスタート画面(タブレットモード)は1画面。追加したグループや、プリインストールのアプリはとくにない。デスクトップもWindows 10標準のままとシンプルだ。もちろんこれだけの構成なので、書くまでもなく動作は快適だ。

 ストレージはNVMe SSD 1TBの「WDC PC SN720 SDAPNTW-1T00」×2。仕様によるとシーケンシャルリードとライトが3,400MB/s、2,800MB/s。ベンチマークテストでもほぼ同速が出ており、かなり速い。CドライブとDドライブの2ドライブ構成となっており、Cドライブは953.27GBが割り当てられ空き903GB。Dドライブが953.87GBが割り当てられ、すべて空きだ。

 GbEはQualcomm製。Wi-FiとBluetoothはIntel製だ。NVIDIAコントロールパネルで、Quadro RTX 5000 with Max-Q DesignはCUDAコア3,072、メモリ16GBなのが分かる。

スタート画面(タブレットモード)は1画面。追加したグループや、プリインストールのアプリはとくにない
起動時のデスクトップはWindows 10標準とシンプル
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージはNVMe SSD 1TBの「WDC PC SN720 SDAPNTW-1T00」×2。GbEはQualcomm製。Wi-FiとBluetoothはIntel製
ストレージのパーティション。Cドライブが953.27GB、Dドライブが953.87GB割り当てられている
NVIDIAコントロールパネル。Quadro RTX 5000 with Max-Q Design。CUDAコア3,072、メモリ16GB

 おもなプリインストールのソフトウェアは、コントロールパネルも含め確認したが、NVIDIAコントロールパネルなどシステム系以外は入っていない。

 上記のように、ファンの音はとくにうるさくもなく、ゲーミングPCのようにキーボードバックライトをカスタマイズできるわけでもないため、このままでもとくに困らないものの、CPU/GPUの負荷、ファンコントロールなどが可能なツールがないか探したところ、MSIの「Dragon Center 2」が見つかった。

 編集部も筆者も動作を保証するものではないため自己責任で試して欲しいが、CPU/GPU/メモリ/ディスクの監視やファンコントロールなどが行なえるツールで、同社の製品にまったく同じ構成のマシンはないが、恐らくシステムボードが同じ系列なのだろう。

Dragon Center 2(1/4)
Dragon Center 2(2/4)
Dragon Center 2(3/4)
Dragon Center 2(4/4)

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R15/R20、CrystalDiskMark、PCMark 10/BATTERY/Modern Office。結果は以下のとおり。

ベンチマーク結果
PCMark 10 v2.0.2144
PCMark 10 Score5,366
Essentials8,796
App Start-up Score11,229
Video Conferencing Score7,823
Web Browsing Score7,748
Productivity6,697
Spreadsheets Score8,293
Writing Score5,409
Digital Content Creation7,121
Photo Editing Score10,167
Rendering and Visualization Score9,441
Video Editting Score3,763
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.03,460
Creative Accelarated 3.03,831
Work Accelarated 2.04,387
Storage5,079
3DMark v2.10.6799
Time Spy6,896
Fire Strike Ultra4,326
Fire Strike Extreme8,442
Fire Strike16,194
Sky Diver35,094
Cloud Gate34,427
Ice Storm Extreme69,558
Ice Storm50,376
CINEBENCH R15
OpenGL204.74 fps(1位)
CPU1476 cb(1位)
CPU(Single Core)196 cb(1位)
CINEBENCH R20
CPU3242 pts(5位)
CPU(Single Core)466 pts(2位)
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード3,399.751 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト2,792.095 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード1,623.687 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト1,695.602 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード621.310 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト515.287 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード34.899 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト129.278 MB/s
PCMark 10/BATTERY/Modern Office5時間56分(キーボードバックライトOFF、明るさ50%、バッテリー節約機能)

 PCMark 10はとくにDigital Content Creation、Photo Editing Score、Rendering and Visualization Scoreが速い。逆にPCMark 8はそれほど大きな差はない。テスト内容の違いだろう。

 3DMarkは多くがiGPUとは桁違いだ。CINEBENCHは今回からR20も追加した。R15ではすべて1位。R20はOpenGLがなくなり、CPU 5位/シングルCPU 2位という結果となった。CPUだけでもモバイル用としては最高速クラスとなる。

 バッテリ駆動時間はキーボードバックライトオフ、ディスプレイの明るさ50%、電源モード: バッテリー節約機能で5時間56分。昨今のノートPCとしては短いが、構成が構成なだけにバッテリ駆動は移動用と思われるのでとくに問題はないだろう。


 以上のように、ELSA「VELUGA 5000/ELVLG5K93221TB24K3WR」は、15.6型4K(AdobeRGB 100%準拠)、8C/16TのCore i9、Quadro RTX 5000 with Max-Q Design、メモリ64GB、NVMe SSD 1TB×2を搭載したノートPC型ワークステーションだ。これまで連載でいろいろなノートPCを扱ったが、これほど高性能なものは初めてだ。価格も凄いが、性能も桁違いで、その割に2Kgを切り薄型の筐体、あまり熱を持たないなど、何も知らなければ普通のノートに思える仕上がりも魅力的だ。

 価格は張るが、この性能をノートPCで実現したかったユーザーには、ぜひ試して欲しい1台と言えよう。