西川和久の不定期コラム
上位モデル並みの画質が魅力。ダブルレンズ搭載のファーウェイ製スマホ「honor 9」
2017年10月23日 06:00
ファーウェイ・ジャパンは10月10日、ダブルレンズ搭載の5.15型スマートフォン「honor 9」を発表し、12日より販売を開始した。
これまでhonorシリーズは楽天モバイルでのみ販売していたが、今回からIIJmio、OCNモバイルONE、goo、イオンモバイルなど、より多くのルートでも扱われるようになった。編集部から実機が送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。
ダブルレンズを搭載し、上位モデルP10とほぼ同じ仕様のミドルレンジ
同社は「HUAWEI P10 Plus」、「同P10」などのスマートフォンのラインナップを持っており、今回ご紹介する「honor 9」もその1つだ。冒頭に書いたとおり従来honorシリーズは楽天モバイルのみが扱っていたが、「honor 9」からは販売ルートが増え、より入手しやすいSIMロックフリー機となった。
また、SoCやダブルレンズ搭載など、上位モデルのP10とほぼ同じ仕様で、ミドルレンジとしては高性能であり、加えて、背面が15層のレイヤーコーティングによる独特の光沢感、3D曲面ガラスにより両サイドがカーブした形状など、デザイン的にも凝ったものに仕上がっている。
おもな仕様は以下のとおり。
honor 9 | |
---|---|
SoC | kirin 960(2.4GHz/4コア、1.8GHz/4コア) |
メモリ | 4GB |
ストレージ | 64GB |
OS | Android 7.0 + Emotion UI 5.1 |
ディスプレイ | 5.15型IPS式フルHD/1,080×1,920ドット(428ppi) |
ネットワーク | IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.2 |
SIM | Nano SIMカードスロット×2 |
対応バンド | FDD-LTE: B1/3/5/7/8/19/20 TD-LTE: B38/40 W-CDMA: B1/2/5/6/8/19 GSM: 850/900/1,800/1,900MHz ※下り(受信時):最大150Mbps(LTE)/上り(送信時):最大50Mbps(LTE) |
インターフェイス | USB 2.0 Type-C、microSDカードスロット(Nano SIMカードスロット兼)、NFC、ステレオミニジャック |
カメラ | 前面: 800万画素(開口部F2.0, FF)、背面: 1,200万画素カラーセンサー+2,000万画素モノクロセンサー(開口部F2.2) |
センサー | GPS/Glonass/Beidou、加速度、コンパス、環境光、磁気、近接、ジャイロ、指紋、ホール |
サイズ/重量 | 約70.9×147.3×7.45mm(幅×奥行き×高さ)/約155g |
バッテリ | 容量3,200mAh(一体型) / 急速充電対応9V/2A |
カラーバリエーション | サファイアブルー、グレイシアグレー、ミッドナイトブラック(楽天モバイル限定) |
税別店頭予想価格 | 53,800円前後 |
SoCはCortex-A75/A53ベースのKirin 960。2.4GHz/4コア、1.8GHz/4コアという構成だ。メモリは4GB、ストレージは64GB。OSはAndroid 7.0 + Emotion UI 5.1。
ディスプレイは5.15型IPS式フルHD(1,080×1,920ドット/428ppi)。USB Type-Cによる画面出力には対応していない。
ネットワークは、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.2。SIMはNano SIMカードスロット×2。ただし片方はmicroSDカードとの排他となる。対応バンドは表のとおり。下り(受信時):最大150Mbps(LTE)、上り(送信時):最大50Mbps(LTE)。CA(キャリアアグリゲーション)やVoLTEには非対応。
そのほかのインターフェイスは、USB 2.0 Type-C、microSDカードスロット(Nano SIMカードスロット兼)、NFC、ステレオミニジャック。センサーは、GPS/Glonass/Beidou、加速度、コンパス、環境光、磁気、近接、ジャイロ、指紋、ホールを搭載している。
カメラは、前面に800万画素((F2.0, FF)と、背面にF2.2のダブルレンズを搭載。構成が変わっていて、1,200万画素カラーセンサーと2,000万画素モノクロセンサーとなっている。この構成は同社のP9/P10とも同じで、レンズをワイド/標準もしくは標準/望遠ではなく、同じレンズでカラーかモノクロかセンサーを分け、さらにモノクロセンサーのほうが解像度が高い。
一般的にモノクロセンサーはカラーセンサーと比較して、カラーフィルタがないぶん、同じ解像度であれば、解像感は向上する。加えて解像度が倍ほどあるので、さらに解像感は上がる。モノクロモードはもちろんのこと、色補完時の輝度情報、ワイドアパーチャの演算用にも使われ、後述するカメラの写りを大幅に向上させている。
サイズは約70.9×147.3×7.45mm(幅×奥行き×高さ)、重量約155g。急速充電に対応した3,200mAhのバッテリを内蔵し、カラーバリエーションは、サファイアブルー、グレイシアグレー、ミッドナイトブラック(楽天モバイル限定)。税別店頭予想価格は53,800円前後。
SoCなどほとんどの部分が、上位シリーズとなるP10と同じスペックだ(パネルサイズとUSB、前面カメラなど一部異なる)。一方でレンズも含めてカメラがLeicaの技術提携品ではないことが大きな違いとなる。
筐体はご覧のように特殊なガラス加工で独特の雰囲気を醸し出す。各コーナーも綺麗な弧を描き、持った感じが非常に良い。とても5万円台のミドルレンジには見えない仕上がりだ。
前面の中央上にカメラ、下に指紋センサー。ナビゲーションボタンはハードウェア式だ。背面は中央上にフラッシュ、左側にダブルレンズ。右側面に音量ボタンと電源ボタン。左側面にSIM/microSDスロット。奥側がSIM1、手前がSIM2/microSDとなる。下側面に音声入出力、USB Type-C、スピーカーを配置。重量は実測で156g。付属のACアダプタは約50×40×23mm(プラグ含まず)、49g、出力5V/2Aと9V/2A。
5.15型のパネルはとにかく明るく綺麗だ。輝度最大だと眩しいほど。428ppiあるので文字などもスムーズに表示される。IPS式なので視野角は問題なし。発色は少し派手だがコントラストも高く非常に見栄が良い。タッチも快適に反応する。
振動やノイズが皆無なのはもちろんだが発熱も低く、YouTubeの連続再生やカメラによる連続撮影を行なってもあまり本体が熱くならなかった。
サウンドは、スピーカー出力時のレンジはカマボコだが、このサイズのスマートフォンとしてはパワーがある。イヤフォン接続時は、「Huawei Histenサウンド効果」が機能し、ヘッドセットタイプやイコライザー、3Dオーディオなどを調整でき、より好みの音にすることができる。ピラミッドバランスでどっしりとした雰囲気だが、高域の伸びや繊細さは今一歩と言ったところだろうか。
少し気になる点としては、ナビゲーションボタンの反応が敏感なこと。慣れの問題もあるとは思うが、何かでちょっとふれるとタスク一覧になったり、Android 7.0の画面分割モードになったりする。とくにカメラ撮影時に持ち替えたりすると、頻繁に発生した。もう少し鈍感でもいいように思う。
画質も良くワイドアパーチャなど実用的な機能搭載
背面カメラはデュアルレンズ/F2.2でカラー1,200万画素、モノクロ2,000万画素。最大出力はそれぞれ3,840×5,120/2,976×3,968ピクセルとなる。
モードは、写真、プロ写真、動画、プロビデオ、3Dパノラマ、モノクロ、HDR、3Dクリエータ、夜間撮影、パノラマ、ライトペインティング、コマ抜き、スロー、アーティストモード、フィルタ、ウォーターマーク、音声写真、文書スキャン。
設定は、解像度(20M/12M/9M/8M/6M)、RAW形式(DNGフォーマット/プロ写真のみ)、GPSタグ、ウォーターマーク自動追加、カメラグリッド、ミラー反射(前面カメラのみ)、タイマー、音声シャッター、タップして撮影、スマイルキャプチャ、オブジェクトトラッキング、シャッターボタンを長押し、音量ボタンの機能、ウルトラスナップショット、画像調整。プロ写真では、AF補助ライト、カメラグリッド、水準器が追加される。
プロ写真の撮影画面では、ISO auto/50~3200、シャッタースピード1/4000~30秒、露出補正±4。AF-C/AF-S/MF、5つのホワイトバランス(温度指定可)を設定できる。
ズームはデジタル式で最大10倍だが2倍までは劣化なし。これはモノクロ側の輝度情報を使っていると思われ、12M以下のモードのみ有効。20Mモードでは機能しない。
写真モードでは(プロ写真は不可)、ワイドアパーチャ(撮影モードの上中央左の絞りのアイコン)、ポートレートモード(撮影モードの上中央右の人/インスタのようなアイコン)も使用できる。
ワイドアパーチャはiPhone 7/8Plusのポートレートモードとは違い、レンズが標準のままで背景をぼかすことができ用途が広い。さらに撮影後、編集で、ぼけ味やピンの位置を再調整可能だ。加えてエフェクトはぼけた部分にエフェクトをかけることもできる。作例を掲載したので参考にしてほしい。
ポートレートモードはワイドアパーチャとは違い、美肌モード(レベル0~10)と気持ち背景をぼかす(オン/オフ)機能になっている。どちらかと言えば自撮り用だろう。
作例を20枚掲載するので参考にしてほしい。モードは写真、解像度は最大の20M(3,840×5,120ピクセル)。シーンによって露出補正した程度でホワイトバランスはオートのままだ。白黒はモノクロモード。また1枚ワイドアパーチャも入っている(日中2枚目樽とボトルの写真)。
ただワイドアパーチャやポートレートモードを使った場合は、自動的に解像度が12M(2,976×3,968ピクセル)に下がる。とはいえ、ソーシャルなどにアップするのであれば、これでも解像度は十分事足りるだろう。先のデジタルズームの件も含め、通常は12Mモードで撮影したほうがベターだ。
実際使った感想は、起動、AF(オートフォーカス)などすべて速く、まったくストレスを感じない。加えて写りはご覧のとおり。一部iPhone 7 Plusでも同撮したが、ホワイトバランスに関しては本機のほうがより望ましい結果となった。
P10とは違い、Leicaの技術提携がないとはいえ、これだけ写れば文句なし。以前使ったP9でも思ったが、同社のカメラはいろいろな意味でかなり高性能だ。これで価格的にはミドルクラスなのだから驚くばかり。
セットアップ
初期セットアップは、SIMの設定と指紋登録をスキップ(あとで設定)して行なった。画面数は12。Googleアカウント以外のアカウント設定や、ボーナスサービス(アプリ)などの入力もなく、面倒やあとでいいのではと思う部分はなかった。Emotion UIは素直なUIなので、初心者にもわかりやすいと思われる。
指紋登録は、PINもしくはパスワードを設定した後に可能となる。登録方法はよくあるパターンでとくに難しくはない。センサーが長細いので登録は少し手間取ったものの、認識は反応も良く扱いやすい。
DSDSは、3G/4Gタイプだ。前モデルの「honor 8」にはなく、対応を望んでいたユーザーには朗報だろう。APNは一般的なものは登録済。
シンプルで使いやすいAndroid 7.0 + Emotion UI 5.1
初回起動時のホーム画面は3つ。1面目はブランク。Dockに「電話」、「連絡先」、「メッセージ」、「Chrome」。2面目は「Googleフォルダ」、「Playストア」、「ギャラリー」、「カメラ」。3面目は「端末管理」、「テーマ」、「音楽」、「ビデオ」、「ヘルス」、「時計」、「カレンダー」、「設定」、「ファイル」、「メモ帳」、「メール」、「ツールフォルダ」。
Googleフォルダに、「Google」、「Gmail」、「マップ」、「YouTube」、「ドライブ」、「Play Music」、「Playムービー&TV」、「Duo」、「フォト」、「ドキュメント」、「スプレッドシート」、「スライド」、「Google+」、「Playブックス」、「Playニューススタンド」、「Playゲーム」。
ツールフォルダに、「天気」、「電卓」、「音声レコーダー」、「懐中電灯」、「ミラー」、「スマートリモコン」、「HiCare」、「コンパス」、「バックアップ」、「ダウンロード」。
Androidのバージョンは7.0、EMUIのバージョンは5.1。じゃっかん初期設定画面の画面キャプチャが含まれているが、ストレージは48.54GBの空きがある。
プリインストールされているアプリは、わかりやすいものばかりなので、とくに説明する必要はないと思うが、「ミラー」と「スマートリモコン」はちょっと面白い。
前者は、最近電車などで女性がスマートフォンを自撮りモードにして鏡替わりに使っているのを見かけるが、それに特化したアプリだ。簡単に保存やズームもできる。
後者は、赤外線を使った汎用リモコン。デバイスタイプとして、TV、エアコン、セットトップボックス、カメラ、ネットワークSTB、DVDプレーヤー、プロジェクタ、カスタマイズがあり、選択してメーカー名を入れるとパネルが表示され、動作テストを経て登録される。仕事部屋のエアコンで試したところ問題なく動作した。
ウィジェットは、「オプティマイザ」、「カレンダー」、「ギャラリー」、「連絡先」、「スプレッドシートの新しいスプレッドシート」、「スライドの新しいプレゼンテーション」、「時計」、「ドキュメントの新しいドキュメント」、「ドライブ」×2、「Google App」、「ヘルス」、「メール」、「メモ帳」、「マップ」、「音楽」、「画面ロック」、「書籍」、「設定のショートカット」、「天気」、「電源管理」、「Chromeのブックマーク」、「Gmail」×2、「Google Play ニューススタンド」、「Google Play ブックス」、「Google Play Music」、「Google+投稿」、「Musicプレイリスト」、「Playマイライブラリ」。
ミドルレンジとしては十分以上の性能
ベンチマークテストは簡易式だが、「Google Octane 2.0」と「AnTuTu Benchmark」を使用した。スコアはそれぞれ9,252と149,541。どちらもミドルレンジとしては結構高い値となっている。実際使用してもまったく不満のない(というより快適な)レベルだ。
バッテリ駆動時間は、Wi-Fi接続、音量と明るさを50%でYouTubeを連続再生させたところ、10時間手前でバッテリが切れた。3,200mAhのバッテリとしては平均的なところだろう。
以上のようにHuawei「honor 9」は、価格はミドルレンジであるが、ルックス、性能、パネル、カメラ……すべてにおいて満足度の高いスマートフォンだ。サウンドこそクラス相当+α程度になっているものの、総じて完成度は非常に高い。
現時点でAndroid O(8.0)へのアップデートは不明ではあるが、仕様上でとくに気になる部分もなく、とくにカメラにこだわりたいユーザーに使ってほしい1台だ。