西川和久の不定期コラム

ルックス/パワー/使いやすさの三拍子揃ったASUS製12.5型Chromebook

~Chromebook Flip C302CA

Chromebook Flip C302CA

 ASUSは7月に、10.1型/11.6型/12.5型でヒンジが360度回転するChromebook Flipシリーズを3モデルを発表。個人向けは9月上旬から順次販売を開始した。今回はこのなかから12.5型「Chromebook Flip C302CA(型番: C302CA-F6Y30)」の試用レポートをお届けしたい。

Core m3を搭載したChromebook

 3モデルのパネルサイズ以外の違いは、おもにプロセッサ/メモリ/ストレージで、10.1型の「Chromebook Flip C101PA」はOP1 Hexa-core(2GHz、ARM)/4GB/16GB、11.6型の「Chromebook Flip C213NA」はCeleron N3350(1.1GHz)/4GB/32GB、12.5型の「Chromebook Flip C302CA」はCore m3-6Y30(900MHz)/4GB/64GBの構成となる。ただしこれは個人向けで、法人/教育機関向けは一部仕様が変わる。

 3モデルの共通点としてはヒンジが360度回転し、クラムシェルモード、スタンドモード、テントモード、タブレットモードに変身できる。実際「Chromebook Flip C100PA」を使うときは、クラムシェルモードとタブレットモードが多いだろうか。キーボードがあるので少し厚めになるものの、意外とタブレットモードも使いやすい。

 今回レビューするChromebook Flip C302CAのおもな仕様は以下のとおり。

【表】Chromebook Flip C302CAのスペック
Chromebook Flip C302CA
プロセッサCore m3-6Y30(2コア4スレッド、900MHz~2.2GHz、キャッシュ4MB、TDP 4.5W)
メモリ4GB/LPDDR3-1866
ストレージeMMC 64GB
OSChrome OS(Android 7.1.1)
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 515、USB Type-C
ディスプレイ12.5型IPS式1,920×1,080ドット(光沢あり)、タッチ対応
ネットワーク機能IEEE 802.11ac無線LAN、Bluetooth 4.0
インターフェイスUSB 3.0 Type-C×2、microSDカードスロット、92万画素Webカメラ、2W+2Wスピーカー、音声入出力、キーボードバックライト
サイズ/重量304.4×210.2×13.7mm(幅×奥行き×高さ)/約1.2kg
バッテリ駆動時間約10.2時間
税別価格69,800円

 プロセッサはCore m3-6Y30。2コア4スレッドでクロックは900MHzから最大2.2GHz。キャッシュ4MB、TDPは4.5W。最近一般的なノートPCではあまり見かけなくなったが、パワーと省エネを両立させているCPUだ。

 メモリはLPDDR3-1866で4GB。ストレージはeMMCで64GBを搭載している。OSがChrome OSなので、WindowsやmacOSでのメモリ搭載容量と使った感じは異なるものの、やはり2GBより4GBのほうが余裕がある。今回Androidアプリも同時に動くため尚更だ。

 ストレージの64GBは、PCの感覚だと少ないが、筆者が所有する「Chromebook Flip C100PA」の16GBでもあまり困ってないので問題にはならないだろう。Chrome拡張機能を使えば、SMB(Windowsファイル共有)、Dropbox、OneDriveなど、ネットワーク/クラウドストレージもマウントできる。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 515。USB Type-C/DisplayPortアダプタを使って外部ディスプレイへの出力も可能だ。ディスプレイは12.5型。光沢ありでIPS式のフルHD(1920×1,080ドット)。タッチ操作にも対応する。

 このタッチ操作対応が意外と重要で、結構多くのAndroidアプリがキーボードやタッチパッドでは操作できず、画面をタッチする必要がある。Googleはずいぶん前からキーボードやタッチパッドへの対応を呼びかけているが、主力のスマートフォン/タブレットで使用する分には困らないため、なかなか浸透していないようだ。おそらく多くのボックスタイプがAndroid対応にならないのもこのためだろう。

 そのほかのインターフェイスは、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.0、USB 3.0 Type-C×2、microSDカードスロット、92万画素Webカメラ、2W+2Wスピーカー、音声入出力。キーボードバックライト搭載だ。USB Type-Cは本体給電用も兼ねている(2つあるどちらでもできる)。

 サイズは304.4×210.2×13.7mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.2kg。バッテリ駆動時間は最大約10.2時間。税別価格は69,800円。

 以前から本機にかぎらずChrome OS搭載機全般に気になっている点は価格。海外モデルと比較してかなり高価に設定され、“安価で使いやすい”というChromebook本来の良さがスポイルされている。このモデルだと同じ構成で$499(実際は値引きでさらに安い)。キーボードが日本語化されているものの、それでも59,800円あたりがいいところではないだろうか。先日AMDのRyzen Threadripperも国内と海外で価格差があり過ぎて問題になり、値下となったのは記憶に新しい(発売2週間で値下がりのThreadripper。AMDが公式対応を行なう事態に参照)。国内ではいろいろなコストが海外とは異なるのでたいへんかもしれないが、もうひとがんばりしてほしいところだ。

パネル中央上に92万画素Webカメラ
底面は四隅にゴム足のみ。メモリなどにアクセスできる小さいパネルはない
左側面は、USB 3.0 Type-C、バッテリLED、音量±ボタン、電源ボタン、音声入出力、左スピーカー
右側面は、USB 3.0 Type-C、microSDカード、右スピーカー
バッテリは内蔵式で着脱できない。全体的にスリムなのがわかる
スタンドモード
テントモード
タブレットモードは縦表示にも対応(自動回転/ロック可)
筆者が所有する10.1型「Chromebook Flip C100PA」との比較。「Chromebook Flip C100PA」にはβチャンネルのOSをインストールしているので現在61系。ログインパネルやアプリランチャーのデザインが異なり半透明になっている
キーボードはアイソレーションタイプ。[英数]/[かな]キーはMacと同じ。いびつな並びは一切ない。タッチパッドは1枚プレート型
キーボードはオフ/5段階のキーボードバックライト付き。設定は[alt]+[明るさ]キーで行なう
キーピッチは実測で約19mm。[space]キー周辺以外でピッチが狭いものはなく非常に優秀
重量は実測で1,159g
付属のACアダプタはサイズが50×50×27mm(同)、重量178g。出力は5V/3A、9V/3A、15V/3A、20V/2.25A

 筐体は天板、裏も含めすべてシルバー。質感も高く、Macbook Airといった筐体に近い雰囲気だ。Windowsマシンだとこの価格でこの雰囲気を持ったも製品はなかなかないのではないだろうか。重量は実測で1,159g。見た目とほぼ一致しており、持ち上げたとき、重いとも軽いとも感じさせずバランスが良い。

 前面はパネル中央上に92万画素Webカメラ。左側面にUSB 3.0 Type-C、バッテリLED、音量±ボタン、電源ボタン、音声入出力、左スピーカー。右側面にUSB 3.0 Type-C、microSDカード、右スピーカーを配置。ノートPCとしてはめずらしくセキュリティ用のロックポートがない。付属のACアダプタはUSB Type-Cへ接続するタイプだ。

 12.5型のディスプレイは、明るさ、コントラスト、発色、視野角、すべてがかなりハイクオリティだ。筐体の質感同様、同価格帯のWindowsマシンで同程度のものは見たことがない。タッチも良好に反応する。

 キーボードはオフ/5段階に明るさが調整可能なバックライト付きのアイソレーションタイプだ。打鍵感も良い。またご覧のように([space]キー周囲以外)キーピッチがすべて約19mmに揃っており非常に快適だ。日本語関連としてはmacOS式とWindows式混合で、[space]キーの両脇に[英数]、[かな]キー。それに加え左上に[かな/英数]キーがある。どちらか慣れたほうを使えばいい仕掛けになっている。タッチパッドによる操作は、マウスカーソルや画面スクロールなど、macOS並みにスムーズに動く。

 ノイズはファンレスではないのであるにはあるがまったく気にならないレベルだ。振動は皆無。発熱はキーボード上と右側が少し暖かくなる程度だろうか。サウンドは左右の手前に外向きスピーカーがあるので正面で聴くと音が逃げる感じとなる。とはいえパワーはそれなりにあり、レンジも一般的なノートPCのようにシャリシャリした雰囲気でもなく、しっかり鳴る。

 以上のように税別69,800円の価格を考えると、かなりがんばった内容になっている。おそらく同価格帯でこの品質のWindowsマシンはないだろう。海外価格と比較して高いとはいえそれでも非常にコストパフォーマンスの高い1台に仕上がっている。

Chrome OS 60系でAndroidアプリも同時作動

 Chrome OSは結構頻繁にOSのアップデートが行なわれるので、届いた状態でいったん初期設定、アップデート、Powerwashでリセットしたあと、再度初期設定を行ない、最新の状態で評価している。

 初期設定は、ログイン前なので画面キャプチャは撮れないが、おもにGoogleアカウント、Wi-Fiの設定と、非常に簡単だ。またすでに同じアカウントでほかのChromebookを使っていれば、ブックマークはもちろん、拡張機能、Androidアプリも引き継がれ、同じ環境が構築される。これが理由で、今回筆者いつものアカウントを使うと、標準アプリなどがわからなくなるため、ほかのGoogleアカウントを使用してログインしている。

 起動直後は、画面キャプチャからもわかるように、下にタスクバー、左にメニューボタン、右に各種ステータスと、Windowsに非常に良く似ている。標準でインストール済みのアプリは、「Chrome」、「ウェブストア」、「Playストア」、「ヘルプ」、「YouTube」、「Gmail」、「Googleカレンダー」、「Googleマップ」、「Googleドライブ」、「Googleドキュメント」、「Googleスプレッドシート」、「Googleスライド」、「Google+」、「Google Photos」、「ファイル」、「Googleフォーム」、「Play Books」、「Playムービー」、「Googleマイマップ」、「Google図形描画」、「カメラ」、「Google Keep」、「Googleサイト」、「Googleリモート」、「ASUS」。

 「電卓」や「ファイル」、「カメラ」など、一部別ウィンドウで開くアプリもあるが、Chrome OSの性格上、ほぼサービスへのURLとなる。

ログイン直後のデスクトップ
アプリランチャー(1/3)
アプリランチャー(2/3)
アプリランチャー(3/3)
コントロールパネル
別ウィンドウで開く電卓とファイル

 Chromeのレンダリング速度の目安となるGoogle Octane 2.0のスコアは20,004。Core m3を搭載しているだけに、AtomやArm系CPUなどとは段違いの高性能だ。また、Chrome OSバージョン60系(執筆時のバージョンは60.0.3112.112)ではAndroidアプリが動作する。Androidスマートフォン育ちのユーザーであれば、WindowsやmacOSより、この環境のほうがわかりやすいだろう。

 ゲームはしないので不明だが、普段、FacebookやTwitterなどソーシャル系、Spotifyなど音楽系、Office Mobileといったところを使っている。動かず困っているのはradiko.jpアプリ程度だろうか。ただ先にも書いたように、アプリ側の問題であるが、結構な割合でキーボード(文字入力以外)やタッチパッドに反応せず、タッチのみで作動するため、少し使い辛い面もある。

 またローカルストレージ以外のネットワーク/クラウドストレージは、Google Driveはもちろん、SMB(Windowsファイル共有/NAS)、Dropbox、OneDriveなども拡張機能でマウントできるのでファイルの扱いに関してはWindows/macOSと遜色ない。

Google Octane 2.0のスコアは20,004
AndroidアプリとChromeが共存できる
Windowsなどの共有フォルダへアクセスするには「Network File Share for Chrome OS」拡張を使う
ファイルにDATAがマウントされた
Office Mobileも作動する(新規/編集するにはOffice 365のアカウントが必要)

 設定画面は、Windows版/macOS版のChromeとほとんど同じだ。違う部分は、ネットワーク、Bluetooth、デバイス(トラックパッド/キーボード/ディスプレイ/ストレージ管理/電源)など、おもにハードウェア系と、Playストアの項目となる。

 トラックパッドは、スクロールの向きを変更可能。ディスプレイの解像度は、960×540ドット、1,200×675ドット、1,536×864ドット(標準)、1,920×1,080ドット(ドットバイドット)、2,400×1,350ドットの5段階に設定可能だ。普通ならドットバイドットの1,920×1,080で良さそうだが、文字サイズやAndroidアプリのウィンドウサイズとの相対的な関係から、標準の1,536×864ドットが個人的には一番使いやすかった。

設定(1/6)
設定(2/6)
設定(3/6)
設定(4/6)
設定(5/6)
設定(6/6)
Chrome OSについて。執筆時のバージョンは60系の60.0.3112.112
トラックパッド。スクロールの向きを変更可能
画面解像度の変更(1,536×864/標準)
画面解像度の変更(1,920×1,080/ドットバイドット)
画面解像度の変更(2,400×1,350)
画面解像度の変更(1,200×675)
画面解像度の変更(960×540)

 話は前後するが、Androidアプリを使うには、はじめに「Playストア」をインストールする。以降は、Android搭載スマートフォンなどと同じ操作でアプリをダウンロードできる。Androidのバージョンは7.1.1相当。現行としては最新版だ。

 ただChrome OS上で動作する関係と、Android 7.0(Nougat)に対応していないアプリが多いため、ウィンドウサイズが縦長の固定サイズ(もしくは横長の固定サイズ)と、全面表示にかぎられてしまう。現状Nougatに対応しているのを確認できるのは付属の「設定」アプリのみ。アプリ起動時に縦か横かどちらを優先するかは、開発者モード(標準では非表示。[設定]→[端末詳細]→[ビルド番号]を連続タップでオン)で設定できる。

 ウィンドウサイズは画面解像度に関係なく固定されているため、解像度が上がると相対的にAndroidアプリが小さくなる。解像度にあわせてウィンドウサイズをスケーリングしてほしいところ。せめて高さの変更ができればいいのだが。この辺りはアプリ側の対応も含めじょじょに改善されると思われる。

Google Playストアのインストール
Google Playストア(フルスクリーン/横)
Google Playストア(スマホView/縦)
Android/設定
Android/設定/端末のステータス。Androidのバージョンは7.1.1
開発者向けオプションをオンにするとAndroidアプリ起動時のウィンドウのサイズなどを変更できる
USB Type-C/Display Portアダプタを使ったデュアルディスプレイ環境(左)
Feedlyなど結構多くのAndroidアプリがタッチでしか使えないこともあり、ディスプレイはChrome、本体のディスプレイにAndroidアプリを配置したほうが使いやすい

 バッテリ駆動時間に関しては、明るさ/音量ともに50%にして、YouTubeで連続再生したところ、約7.5時間だった。仕様上の約10.2時間にはおよばないが、処理的に軽い負荷ではないため、このクラスでこれだけ持てば合格点だろう。

 これまでのChromebook(Chrome OS)は、Chrome+拡張機能+α程度だったので、DLNAサーバーにアクセスできないなど、もともとOSにない機能は使えなかった。しかし今回、Androidアプリに対応したため、DLNA、いろいろなエフェクトを含む画像加工、音楽系、動画系など、それこそ豊富なアプリを使用可能になった。

 またFacebookなどソーシャル系も、基本タイムラインなので、縦画面のほうが見やすく、そして動作も軽い。総合的に強力な環境となった。

 種類の多いエントリーモデルのChromebookでも動くには動くが、Webのレンダリング(参考までに「Chromebook Flip C100PA」のGoogle Octane 2.0のスコアは5,668。ザックリ4分の1のパワーしかない)も含め、快適さを求めるとやはりCore i/m搭載機がほしいところ。そこに比較的購入しやすい価格帯で登場したのが「Chromebook Flip C302CA」となる。


 以上のようにASUS「Chromebook Flip C302CA」は、ルックス、パワー、使いやすさ、三拍子揃ったChromebookだ。WindowsやmacOSなど汎用OSと比較すると用途が絞られるものの、それでもクラウド中心であれば使い慣れたChrome+拡張機能がある上、Androidアプリを併用することにより、お馴染みのソーシャル系はもちろん、もともとOSとしてファンクションがないDLNAなども補完でき、ほとんど欠点がなくなった。

 逆にAndroidスマートフォンからのユーザーであればWindowsやmacOSより、この環境のほうがわかりやすいのではないだろうか。

 仕様の範囲で気になる部分はほとんどなく、すべての面で完成度は高い。Chromebook Flipは10.1型が約3万円台、11.6型が約4万円台となっているが、上述の三拍子を求めるなら、この12.5型の「Chromebook Flip C302CA」がベストだ。Chromeなユーザーに絶対おすすめの逸品だ。