イベントレポート

第7世代Core搭載NUCや液没サーバーなど、CES会場で気になったPC関連機器

CES 2017 Intelブースは、IoT関連の展示が中心だった

 CES 2017は、ここ数年の中で特にPC関連製品の発表が多く、PC業界にとって非常に充実した内容であった。その反面、会場ブースを取材する時間が満足に取れなかったが、そういった中で目に付いた製品をいくつか紹介したいと思う。

第7世代Coreプロセッサ搭載NUC

 Intelブースは、自動車、AR/VR、ドローンなどIoT関連の展示が中心で、PC関連の展示はかなり少なく、第7世代Coreプロセッサ搭載製品が数製品展示されるだけといったものだった。そこに展示されていたのが、Intelが販売している超小型ベアボーンPC「NUC」シリーズの、第7世代Coreプロセッサを搭載する最新モデルだ。

 展示されていたのは、CPUにCore i3-7100Uを搭載する「NUC7i3BNK」。本体サイズは115×111×35mm(幅×奥行き×高さ)と従来モデルとほぼ同じ。外部接続端子は、正面にUSB 3.0×2とオーディオジャック、左側面にmicroSDカードスロット、背面にHDMI 2.0×1、Gigabit Ethernet、USB 3.0×2、USB 3.1 Gen2/Mini DisplayPort共用のUSB Type-Cポートを備える。

 展示機では内部の確認は行なえなかったが、DDR4-2133対応のSO-DIMMスロット×2と、PCIe Gen3 x4/NVMe対応のM.2スロットを用意。また、IEEE 802.11ac準拠無線LAN(2×2)も標準で搭載する。説明員によると、発売時期は「もうすぐ」とのことで、価格は未定。この他、Intelのサイトを見る限りでは、Core i7-7567U搭載の「NUC7i7BNH」や、Core i5-7260U搭載の「NUC7i5BNH」および「NUC7i5BNK」、Core i3-7100U搭載の「NUC7i3BNH」といったバリエーションモデルがラインナップされているようだ。

Intelブースに展示されていた、第7世代Coreプロセッサ搭載NUC。こちらはCore i3-7100U搭載の「NUC7i3BNK」
本体正面
左側面
背面
右側面
底面

Razer Project Ariana

 CES 2017で展示されたPC製品の中で、特に注目を集めていたのは、なんといってもRazerの3画面ゲーミングノート「Project Valerie」だろう。常に多くの来場者が足を止めて興味深そうに隅々までチェックするなど、Razerブースは大盛況で、最終日には展示されていた試作機が盗まれてしまうというオチまでついて、色々な意味で注目を集める存在となった。

 そのRazerブースでもう1つ興味深い製品が展示されていた。それが「Project Ariana」だ。見た目はプロジェクタそのもので、実際に映像を投影する機器だが、一般的なプロジェクタとは異なり、ゲームをプレイしている部屋自体をイルミネーションするものだ。事実、Razer製品に搭載されているフルカラーキーボードバックライトなどと同じように、「Razer Chroma」で制御するデバイスとして位置付けられている。

 そして、そのライトアップの方法が非常に画期的で、ゲーム映像を表示しているディスプレイにピッタリと重ねるように、より広範囲のゲーム画面を投影し、ディスプレイ奥の壁全体にゲーム画面を表示してしまうという手法を採用している。壁に投影されるゲーム画面の映像はそれほど鮮明ではないが、部屋全体がゲームの世界に入り込んだかのような雰囲気となって、その臨場感はかなりのものだ。

 プロジェクタをイルミネーションの道具として使うという発想自体、Razerらしいと感じるが、一度その臨場感を体験すると、自分もゲーム専用ルームを作りたいと思ってしまうかもしれない。なお、今回の展示はあくまでも試作で、製品化はまだ確定していないという。今回の展示などを通してフィードバックを集めた上で、製品化を検討したいとのことだ。

部屋全体にゲーム画像をイルミネーションする「Project Ariana」
見た目は一般的なプロジェクタとほぼ同じだ
通常のゲームプレイ環境がこのようなものだとしたら……
Project Arianaによって、このように部屋全体にゲーム画像がイルミネーションされる
【動画】Project Arianaでイルミネーションしながらゲームをプレイする様子

GIGABYTE、液体冷却サーバーを展示

 例年GIGABYTEは、CES会場近くのホテルで新製品を展示することが多かったが、CES 2017では会場にブースを構えて、サーバ製品を中心としたエンタープライズ向け製品を展示した。その中で、多くの来場者の興味を集めていたのが、ラックマウントサーバを専用ケースに収め、サーバ全体を特殊な液体で満たして液冷によって稼働させるシステムだ。

 利用されていた液体は、化学メーカー「3M」の「Novec」というフッ素系溶剤。実用上無毒で引火点がなく、優れた熱伝導性、絶縁性、浸透性、乾燥性などの特性を備えつつ、オゾン層破壊係数がゼロで環境にも優しい点が特徴。そしてブースでは、CPUにXeon E5-2600 v4を2基と、NVIDIA Tesla搭載GPUカードを8枚装着した2Uラックマウントサーバー「G250-S88」を用意し、専用ケースに入れた状態でマシン全体をNovecで満たした状態で稼働させていた。また、利用されているNovecは、GIGABYTEと3Mが協力して作られた特別なものとのことだったが、3MがラインナップしているNovecは沸点が34℃からと低いものもあり、ブースで稼働していたサーバーのCPUやGPU付近では液体が沸騰する様子も確認できた。

【お詫びと訂正】初出時に「Novac」としておりましたが、正しくは「Novec」です。お詫びして訂正させていただきます。

 サーバーでは、マシン全体を特殊な油で満たして冷却する手法が以前より利用されていたが、油ではメンテナンス時に油を洗浄するなど非常に手間がかかるのに対し、Novecは無害で粘性も非常に低く、すぐに蒸発して乾くため、メンテナンスが容易になる点が大きな利点になるという。また、システム全体を容易に冷却できるだけでなく、冷却にかかるコストも低減でき、データセンターなど大規模サーバーシステムに最適の冷却方式だと指摘していた。

 サーバーマシンをNovecで満たす冷却方式を採用するサーバーシステムも既に存在するようだが、動作する様子を実際に目にする機会はほとんどないこともあって、今回の展示は多くの来場者にとっても興味深いものだったに違いない。

GIGABYTEブースに展示されていた、液冷サーバーシステム
U2ラックマウントサーバーを専用ケースに収め、3MのNovecで全体を満たして冷却する
Novecは沸点が低く、CPU付近では液体が沸騰している
Xeon2基、GPU8基をシミュレーション演算でフル稼働させた状態で、液体の温度は49.3度を示していた