西川和久の不定期コラム
Intel「NUC Kit D54250WYK」
~TDP 15WのHaswellを搭載版、Samsung mSATA SSDもテスト
(2013/12/10 06:00)
IntelのNUC(UCFFフォームファクタ)は、これまでIvy BridgeやSandy BridgeベースのマザーボードやPCキットが発売されているが、本命とも言えるHaswell搭載機がIntelから登場した。すでに発売されてから数週間が経過しているが、編集部から実機やパーツが送られて来たので試用レポートをお届けする。
TDP 15WのHaswellを搭載し約11cm角
Haswellを搭載したIntelのNUCキットは、Core i3-4010U(2コア/4スレッド、クロック1.7GHz、キャッシュ3MB、TDP 15W)の「D34010WYK」と、今回ご紹介するCore i5-4250U(2コア/4スレッド、クロック1.3GHz/Turbo Boost:2.6GHz、キャッシュ3MB、TDP 15W)の「D54250WYK」の2種類がある。実勢価格はそれぞれ34,980~36,480円、44,480~46,480円(僚誌AKIBA PC Hotline!より、以下同)。またマザーボードのみの単体モデル「BLKD34010WYB」(31,980円)と、「BLKD54250WYB」(41,480円)も併売されている。
全てプロセッサはオンボード。メモリとmSATA版のSSD、そして必要に応じてWi-Fiモジュールをセットすることもできる
【表】Intel「NUC Kit D54250WYK」の仕様 | |
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プロセッサ | Core i5-4250U(2コア/4スレッド、クロック1.3GHz/Turbo Boost:2.6GHz、キャッシュ3MB、TDP 15W) |
メモリ | DDR3L-1600/1333 SO-DIMM/2スロット(最大16GB) |
拡張スロット | Mini PCI Expressフルサイズスロット(mSATA対応)、Mini PCI Expressハーフサイズスロット |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Intel HD Graphics 5000(Mini HDMI出力×1、Mini DisplayPort×1) |
ネットワーク | Gigabit Ethernet |
インターフェイス | USB 3.0×4(前面×2/背面×2)、赤外線センサー、音声入出力 |
サイズ/重量 | 116.6×112.0×34.5mm(幅×奥行き×高さ) |
実勢価格 | 44,480~46,480円 |
プロセッサは先に書いた通り。メモリはDDR3L-1600/1333のSO-DIMMで2スロットあり、最大16GBまで対応する。グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 5000。Mini HDMI出力とMini DisplayPortを装備している。
インターフェイスは、Gigabit Ethernet、USB 3.0×4(前面×2/背面×2)、赤外線センサー、音声入出力。拡張スロットは、mSATA用のMini PCI Expressフルサイズと、Wi-Fiモジュールなどを取り付けるMini PCI Expressハーフサイズスロットの2本ある。本体サイズは116.6×112.0×34.5mm(幅×奥行き×高さ)。主な付属品は、ACアダプタ、ネジ、VESAマウンターとなる。
【お詫びと訂正】初出時にUSBメモリが付属するとしておりましたが、これは評価機に同梱されていたもので、製品には付属いたしません。お詫びして訂正させて頂きます。
この小さい筐体でUSB 3.0×4、Gigabit Ethernet、Mini HDMIとMini DisplayPortに対応しているのはかなりポイントが高いと言えよう。
筐体は約11cm角と、iPhone 5sと比較している写真からも分かるように非常に小さい(iPhone 4Sとほぼ同じ)。トップカバーは光沢アリで透明のブラック、周囲はアルミ素材と質感も抜群だ。
前面にはUSB 3.0×2、音声入出力、赤外線センサー。背面には電源入力、Mini DisplayPort、Mini HDMI出力、Gigabit Ethernet、USB 3.0×2。左側面には何もなく、右側面にロックポートが配置されている。裏面はネジ4本で止められているだけで、パネルを簡単に外すことができる。ACアダプタは約105×43×30mm(同)と、本体の大きさを考えると大きめだ。
内部は、メモリスロットが2つ。フルサイズ(mSATA対応)/上側、ハーフサイズ/下側の各Mini PCI Expressスロットと、Wi-Fi用のアンテナ線や増設用USB 3.0コネクタがある。
メモリは通常通りセットすればいいが、Mini PCI Expressスロットは、下側のWi-Fiモジュールを付ける部分は基板をネジ止め出来ず浮いた状態になっている。これを上側のSSD基板で押さえ込んで、1本のネジで2枚の基板を固定する方法だ。Wi-Fi用のアンテナ線は、SSD基板を固定する前に取り付ける。後はパネルを付け直せば作業完了となる。
キットと言うとハードルが高く感じられるかも知れないが、これだけの作業なので、初心者でも簡単に組み立てることができるだろう。裏のパネルを付けなくても動作するので、テスト起動ならそのままでもOKだ。仕上げに外付けのUSB接続DVDドライブなどを使い、OSをインストールすれば作業完了となる。
発熱や振動、ノイズなどは試用した範囲では全く気にならないレベル。SSDからの起動も含め動作は速く、メモリも今回は4GB×2の8GBを搭載しているので、全体的に余裕がある。こんな小さいマシンでこれだけ動くのだから非常に魅力的だ。
【補足】本文中にWi-Fiモジュールをネジ止めできなかったと記述している点について、試用個体ではネジ止めができなかったためにそのように記しましたが、マニュアルによると製品版では固定できる可能性がありますので、補足いたします。
パフォーマンスはSurface Pro 2と同じ!?
OSは64bit版Windows 8.1を使用した。ここで通常であれば、初期起動時のスタート画面、デスクトップ画面、アプリ画面を掲載しているが、今回はリテール版のWindows 8.1をそのままインストールしているので、標準アプリ以外に追加されるものもなく、これらの画面キャプチャは掲載していない。
使用したSSDは180GBの「Intel SSDMCEAF180A4」。C:ドライブのみの1パーティション構成にすると、約167GBが割り当てられる。
Gigabit Ethernetは「Intel Ethernet Connection I218-V」。追加で用意したWi-FiモジュールはBluetoothも含んでおり、デバイスマネージャ上では「Intel Dual Band Wireless-AC 7260」と、「Intel Wireless Bluetooth 4.0+HS」の表示になっている。
ベンチマークテストはWindows 8.1からWindows エクスペリエンス インデックスがなくなったため同等の結果が得られる、「winsat formal」コマンドを実行後、C:\Windows\Performance\WinSAT\DataStoreの下に収納されているxxxx-xx-xx xx.xx.xx.xxx Formal.Assessment (Recent).WinSATの情報掲載する。PCMark 7は既にWindows 8.1にも対応したPCMark 8があるものの、スコアの互換性がないため、当面は7のまま様子をみたい。CrystalMarkの結果も掲載した(2コア/4スレッドなので条件的に問題ない)。
winsat formalの結果は、総合 5.3。プロセッサ 7.3、メモリ 5.9、グラフィックス 5.9、ゲーム用グラフィックス 5.3、プライマリハードディスク 8.15。PCMark 7は5041 PCMarks。CrystalMarkは、ALU 37198、FPU 36542、MEM 39864、HDD 43787、GDI 14276、D2D 5794、OGL 12118。
どこかで見たことがある数値に近いと思ったところ、Core i5-4200U(2コア/4スレッド、クロック1.6GHz/Turbo Boost:2.6GHz、キャッシュ3MB、TDP 15W)を搭載した「Surface Pro 2」と酷似した結果だった。winsat formalとPCMarksは全く同スコアだ。この小さい筐体でこれだけのパワーがあるとはなかなか面白いキットと言えよう。
mSATA版Samsung SSD 840EVO
ところで、2.5インチSSDで定評のある「Samsung SSD 840EVO」に、高速性や省エネなどの特徴はそのまま受け継ぐmSATA版が12月9日に発表された。NUC Kit D54250WYKにピッタリなこのデバイスが編集部から送られて来たので、ベンチマークテストを併せて実施したい。
パッケージは、ロゴはそのままだが、パッと見てmSATA版だと分かるデザインが採用されている。今回手元に届いたのは250GB版だ。基板を見ると、表も裏も、メモリに相当する部分は隠されており、実装パターンは分からないようになっている。
OSは同じく64bit版Windows 8.1を使用した。C:ドライブのみの1パーティション構成で、約233GBが割り当てられる。
Intel SSDMCEAF180A4との比較のため、CrystalMark/HDDのみと、CrystalDiskMarkの結果を掲載する。参考までにwinsatのプライマリハードディスクの結果は8.2だった。
CrystalMarkはIntel SSDMCEAF180A4:Samsung SSD 840EVO mSATAの比較で、43787:44773。
CrystalDiskMarkは、Intel SSDMCEAF180A4:Samsung SSD 840EVO mSATAの比較で、シーケンシャルリードが418.5:508.4、シーケンシャルライトが263.3:492.1、512Kランダムリードが342.6:457.9、512Kランダムライトが259.7:351.4、4Kランダムリードが25.96:31.93、4Kランダムライトが99.87:63.17、4Kランダム(QD32)リードが194.7:335.5、4Kランダム(QD32)ライトが239.7:300.0。
4Kランダムライトを除いて全般的にSamsung SSD 840EVO mSATAが勝っており、特に書き込み速度は1.5~2倍近い差が付いている。これだけ違うと体感速度もかなり違い、マシンの動作速度が1クラスアップしたような雰囲気だ。
以上のようにIntel「NUC Kit D54250WYK」は、HaswellコアのCore i5-4250Uを搭載し、約11cm角の小型PCキットだ。USB 3.0が4ポート、Gigabit EthernetやMini HDMI出力、Mini DisplayPortも装備し、サイズの割りに実用に十分耐えうる製品となっている。
キットなので、メモリ、SSD(mSATA)、必要であればWi-Fiモジュールを別途用意する必要があり、OSも含めて合計すると、同等のデスクトップPCを組むより割高になってしまうが、この小ささにグッと来た人にお勧めの1台と言えよう。