西川和久の不定期コラム
税別2.5万円の格安iiyama PC製14型ノートは思ったより快適
2017年5月19日 06:00
4月にユニットコムのiiyama PCブランドから発売された、14型のApollo Lake搭載ノートPC「Stl-14HP012-C-CDMM」は、税別直販価格24,980円(税込26,978円)とかなり安く、以前取り上げたドンキホーテの2in1(「ドンキ、“市場最安値水準”を謳う約2万円のWindows 10搭載10.1型2in1」参照)に匹敵する製品と思われる。低価格なだけに、気になるディスプレイやキーボードのチェックも含め試用レポートをお届けしたい。
eMMC 32GB以外は今どきのノートPC
前述のドンキの2in1は、Atom x5/メモリ2GBで2万円を切る価格だった。しかし今回はApollo Lakeな4コアのCeleronと上位SKUであり、メモリも4GBでパネルサイズも大きく、インターフェイスも豊富だ。不足しているのはタッチ機能程度だろうか。この構成で約5千円のアップで収まっているのだから、コストパフォーマンスはかなり高い。
主な仕様は以下のとおり。
【表】Stl-14HP012-C-CDMMの仕様 | |
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プロセッサ | Celeron N3450(4コア/4スレッド、クロック1.1~2.2GHz、キャッシュ2MB、TDP 6W/SDP 4W) |
メモリ | 4GB(4GB×1)/DDR3L-1600 SO-DIMM/2スロット(空1/最大8GB) |
ストレージ | eMMC 32GB |
OS | Windows 10 Home(64bit) |
ディスプレイ | 14型HD(1,366×768ドット)、光沢あり、タッチ非対応 |
グラフィックス | Intel HD Graphics 500 |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.2 |
インターフェイス | USB 3.0、USB 3.0 Type-C、USB 2.0、ミニD-Sub15ピン、HDMI、100万画素カメラ、SDカードスロット、音声入出力 |
バッテリ駆動時間 | 約4時間20分 |
サイズ/重量 | 約340×243.5×22.2mm/約1.8kg |
直販価格 | 26,978円 |
搭載プロセッサはApollo LakeのIntel Celeron N3450。4コア4スレッドでクロックは1.1GHzから最大2.2GHz。キャッシュは2MBでTDP 6W、SDP 4Wとなる。
少し前にCeleron N3350を搭載した超小型のデスクトップPC、ECS「LIVAZ-4/32-W10(N3350)」を紹介した。ノートPCかデスクトップPCかだけの違いで構成は非常によく似ているものの、あちらは2コア2スレッド。本機搭載のSKUがワンランク上となる。実際ベンチマーク結果も異なっているので、興味のある方は比較してほしい。
メモリはDDR3L-1600 SO-DIMMの4GB×1。2スロットで空き1つ最大8GB。2枚にするとデュアルチャネル作動となり、若干速くなると思われる。ストレージは32GBのeMMC。Windowsは64bit版のWindows 10 Homeだ。
グラフィックスはプロセッサ内蔵のIntel HD Graphics 500。外部出力用にミニD-Sub15ピン×1とHDMI×1を備えている。ディスプレイは光沢ありの14型HD解像度(1,366×768ドット)。サイズ的にはフルHDが望ましいが、そこはコストとの兼ね合いだ。
インターフェイスは、Gigabit Ethernet、IEEE 802.11ac対応、USB 3.0、USB 3.0 Type-C、USB 2.0、100万画素カメラ、メディアリーダ、音声入出力。同社サイトの仕様表にはないがBluetooth 4.2も搭載している。Gigabit EthernetやUSB 3.0 Type-Cまで含め全部入りのノートPCとなる。
サイズは約340×243.5×22.2mm。重量約1.8kg。バッテリ駆動時間は約4時間20分。これだけの装備で価格はなんと26,978円! ドンキの2in1も21,384円ですごかったが、冒頭に書いたように今回の仕様でこの価格は驚異的だ。
筐体はプラスチック製で価格なりの見栄えだが、と言ってチープな感じではない。同社のいつもの低価格帯製品のレベルに収まっている。14型で約1.5kgは少し重く、持ち運ぶとなるとこの点は意見が分かれそうだ。ただし、約2.6万円と考えると個人的には問題ないレベルだ。
前面はパネル中央上に100万画素Webカメラ。正面側面左に各種ステータスLED。裏面は手前左右にスピーカー。ただしメモリなどにアクセスできる小パネルはない。左側面にロックポート、電源入力、HDMI、USB 3.0、USB 3.0 Type-C、音声入出力。右側面にEthernet、ミニD-Sub15ピン、メディアリーダ、USB 2.0を配置。バッテリは着脱式。
各コネクタの配置からもわかるように、ディスプレイやGigabit Ethernetは奥、USB系が手前と、机の上でデスクトップ化して使うときもケーブルが手元で邪魔にならないように工夫されている。
付属のACアダプタは、サイズが約90×35×25mm(幅×奥行き×高さ)、重量150gと小型。出力は19v/2.1Aだ。
14型光沢ありのHDディスプレイは、明るさとコントラストは少し浅め、発色は色温度が若干高め(青っぽい)だろうか。視野角は広くないとは言え許容範囲だ。液晶は当初予想していたよりはよく、これならストレスなく操作できる。パネルの傾きは写真の状態が最大だ。
キーボードは10キーなしのアイソレーションタイプ。14型とフットプリントが広く、10キーがないのためかなり余裕のあるレイアウトとなっている。主要キーのキーピッチは実測で約19mm。とくに、「Enter」、「Backspace」、「」、「{」、「}」キーは狭くなる機種が多く、ここが広いのは(プログラミングなどで)使いやすい。強く押すと若干たわむものの許容範囲。
タッチバットは物理的な2ボタンタイプで、パッドもパームレストも広く、伸び伸びと使うことができる。
発熱や振動、ノイズに関しては、試用した範囲で気にならないレベルだった。サウンドは手前下にスピーカーがあるので、机などに音が反射するタイプだ。取り立ててパワーがあるわけでなく、音はカマボコレンジ。価格相応と言ったところだろう。
Atom x5/x7より頭一つ抜けた性能
OSは64bit版のWindows 10 Home。正直なところ価格が価格なので性能についてはあまり期待していなかったが、電源をオンにして操作を始めると予想以上に速い。
もちろんCore iのような速さではないものの、手持ちやレビューでいつも使っているAtom x5/x7、BraswellなCeleron/Pentiumよりワンランク上の印象だ。理由は後半のベンチマークテストのスコアを見てほしいが、winsat formalのCPUとGoogle Octane 2.0が頭一つ抜けている。なるほどと納得した次第。
初回起動時のスタート画面(タブレットモード)はWindows 10標準のまま。デスクトップは壁紙だけの変更とシンプル。
ストレージはeMMC/32GBの「Kingston M52532」。C:ドライブのみの1パーティションで約28GBが割り当てられ、空きは15.7GB。データ類はメディアに逃がさないと、本格的な運用は厳しいかもしれない。
無線LANのコントローラは「Intel Dual Band Wireless-AC 3168」。Bluetoothの仕様に関しては同社サイトのスペック表には載っていないが(説明文の中にはある)、AC 3168はWi-FiとBluetooth両対応のチップであり、Bluetooth 4.2にも対応している。Gigabit EthernetはRealtek製だ。
プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリはとくになし。デスクトップアプリは、本機固有のものとして「CONTROL CENTER」。一般的なものとして「ノートンセキュリティ」がインストールされている。ほかはドライバのツール系なので、ほぼ素に近いWindowsと言える。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2/Home accelerated、CrystalDiskMarkの結果も取った。バッテリ駆動時間テストはBBench。またCrystalMarkの結果も掲載した(は4コア4スレッドと条件的に問題ない)。
winsat formalの結果は、総合 4.2。プロセッサ 7.1、メモリ 5.9、グラフィックス 4.2、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 6.5。メモリのバンド幅は14021.63614MB/s。PCMark 8 バージョ2/Home acceleratedは1,869。
CrystalDiskMarkは、Seq Q32T1 Read 205.0/Write 110.3、4K Q32T1 Read 17.98/Write 25.51、Seq Read 234.5/Write 131.3、4K Read 13.52/Write 20.53(MB/s)。CrystalMarkは、ALU 35765、FPU 31611、MEM 25606、HDD 26765、GDI 5772、D2D 3518、OGL 5172。
予想どおりeMMCの性能が全体の足を引っ張っている。PCMark 8 バージョン2のスコアも割とストレージの速度に重みを置くので、winsat fromalのCPUが7.1のわりにスコアが伸びない。メモリを2スロット使いデュアルチャネル作動にすれば、バンド幅が稼げ、メモリとグラフィックスのスコアが少し上がると思われる。
参考までにGoogle Octane 2.0は11,752と、1万を超えた。Atom x7はもちろんBraswellなPentiumでも超えられなかった壁だ。個人的にこのスコアが1万超えると、Webをアクセスしてもストレスを感じないレベルだと思っている。従って本機はネットに関しては合格レベルだ。
BBenchは、バッテリ節約機能オン、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残5%で24,286秒/6.7時間。仕様より2時間ほど伸びている。ただしバックライト最小だと暗いので、実際は仕様の範囲に落ち着きそうだ。
以上のようにユニットコム「Stl-14HP012-C-CDMM」は、4コアのCeleron N3450、メモリ4GB、ストレージ32GBを搭載した14型HD解像度のノートPCだ。約2.6万円と、価格が価格なだけに使う前はパネルや筐体などの品質が不安だったもののいたって普通。加えてGoogle Octane 2.0のスコアが1万Over、Windowsの動きもAtom系よりもいい。インターフェイスはUSB 3.0 Type-Cも含む全部入りだ。
仕様の範囲内で特に気になる部分もなく、安価に購入できるノートPC(少し重めでストレージ32GBでも大丈夫であれば)を探しているユーザーへお勧めできる逸品と言えよう。