イベントレポート

CESに帰ってきた日立と富士通。フィジカルAIソリューションを展示

日立はノースホールに、富士通はノースホールとウエストホールのAWSブースに出展

 2026年のCESでちょっとした話題になったのは、セントラルホールの展示ブースで常連だったソニーが不在だったことだ。正確にいうと、ソニーとホンダの合弁会社であるソニー・ホンダ・モビリティは出展していたため、ソニーが完全にいなくなったとは言い切れないが、一時期は巨大なブースを構えていただけにソニー不在には多くの関係者が残念がっていた。

 しかし、「去る者」がいれば、「来る者」もいる。本年のCESで新たに出展して注目された日本企業が2社ある。正確にはいずれも以前出展していたので「帰ってきた」という形になるが、日立製作所と富士通がその2社だ。日本を代表する企業でもある両社は、今回「フィジカルAI」関連のソリューションを展示した。

B2B向けソリューションが増えるCES、日立はフィジカルAI「HMAX」を展示

日立ブースではミニセミナーも開催し、HMAXについて説明した

 日立製作所(日立)は、1920年創業の歴史ある企業で、同社のWebサイトによれば2025年時点で従業員数は約2万6,000人、連結子会社までを含めると約28万3,000人という大企業だ。PC Watchでは、かつて販売されていた一般消費者向けのPC「Prius」シリーズでご記憶の読者もいらっしゃるだろう(企業向けにはFLORAという別ブランドで販売していた)。

 このほかにも冷蔵庫や洗濯機、空調機器などの一般消費者向け家電が販売されており、そうした製品に興味がある方にとってもおなじみのブランドといえる。

 しかし、現在の日立はそうした一般消費者向けよりは、企業向け各種B2Bソリューションを販売することがやや事業の中心になっている。その意味では、元々がConsumer Electronics Showの略だったCESからすると、遠い存在になってしまったこともあり、近年は出展していなかった。

 だが、産業構造とCES自体が変わりつつあり、近年はB2Bの企業も積極的に呼び込んでいる。というのも、一般消費者向けの製品もクラウドが前提になっている製品が増えつつあり、クラウド上のサービスなどのB2B向けソリューションに対しても注目が集まっている。そのため、CESの主催者であるCTAも、大企業向けのソリューションを展示の柱に据えており、状況が変わってきているのだ。

 今回日立は「HMAX by Hitachi」(以下HMAX)をCESにあわせて発表し、それに関する展示を行なった。HMAXは、産業用のデバイスなどにフィジカルAIの機能を統合的に提供するソリューションだ。

 フィジカルAIとは、コンピュータビジョンなどで「認識」し、LLMなどの生成AIで「判断」し、生成AIが機械に指示して「実行」するといったように、AIを活用して自律的に物理的なロボットや車両などを動かすことを指す。その意味においては、自動運転やロボットなどもフィジカルAIだし、冷蔵庫や洗濯機といった家電にAIが搭載されればそれもフィジカルAIといえる。そのため、今後産業構造自体を変えていく存在として大きく注目を集めている。

HMAX Mobility。電力線の弛みなどをAIがチェック
HMAX Energyのデモ
バイオ医薬品向けのAIソリューション
日立はバイオ医薬品向けのタンクも販売しており、製薬メーカーにAIとセットでソリューション提供している

 「HMAX Mobility」という鉄道向けのソリューションでは、鉄道車両などを提供する日立レール(イタリア、イギリスで展開)向けのものとして、電力線のゆるみなどがないかをAIが画像認識で検出するソリューションを展示した。

 Cosmos Reasonビジョン言語モデルというAIモデルを組み込んだNVIDIA Metropolis Blueprint for Video Search and Summarization(VSS)が利用されており、電力線がゆるんでいるのかどうかといった、これまで熟練の作業員でなければ難しかった判定を正確に行なえるようになる。日立によれば、保守コストを最大15%、エネルギー消費量を15%削減する効果があるとのことだった。

 ほかにも、日立はエネルギー産業向けのHMAX Energy、産業用途向けのHMAX Industryなどに関する展示を行なって注目を集めた。

富士通はロボットが人間の行動を予測して動くためのAIモデルをデモ

富士通ブース

 そしてもう1社、CESに帰ってきた日本の大企業が富士通だ。同社は今回2カ所に出展しており、1つはウエストホール(自動車などが集中しているエリア)のAWSブース内、もう1つはノースホール(スマートシティなどのインフラ関係のホール)の自社ブースとなっている。

Spatial World Modelを出展
既製品のロボットを利用したデモ、人間が立ち入り禁止区域に近づくとロボットがブロックしたりなどのデモが行なわれた

 このうちノースホールの自社ブースでは「Spatial World Model」と呼ばれる、人間の行動を予測するAIモデルがロボットと協調して動くことで、ロボットが能動的に動作できるようになる様子がデモされた。デモでは犬型ロボットとヒューマノイドが用意されており、人間が近づくとそれを避けて動く様子などが示された。

 なお、このデモはAIモデルを紹介するものであり、使っているロボット自体は既製品を利用しているとのことだった。来場者からは「富士通がロボットを開発して売るの?」という質問が多かったようで、開発したのはあくまでもAIモデルだと説明するのが大変だったと説明員は話していた。

AWSブース
デジタルツインでの都市シミュレーション。たとえば、駐車場の駐車料金を段階的に変えたら渋滞は減るかなどをデジタルツインの中でテストしてから実際の施策として展開できる。すでに日英で実証実験が行なわれている

 ウエストホールのAWSブースでは、2025年12月に富士通とAWSが共同で発表した協業に基づく展示で、AIを利用したSDVのソフトウェア開発、都市インフラの保全にAIを活用するソリューション、都市の渋滞回避などの社会実験をまずデジタルでシミュレーションしてから現実に応用する「ソーシャルデジタルツイン」と呼ばれるソリューションなどが説明された。