西川和久の不定期コラム

ECS「LIVAZ-4/32-W10(N3350)」

~Apollo Lakeを搭載した小型ファンレスデスクトップPC

製品写真

 ECSは2016年12月1日、“Apollo Lake”を搭載した小型デスクトップPC「LIVAZ-4」を国内投入すると発表した。プロセッサの違いとOSの有無により4モデルある中、編集部からCeleron N3350/Windows 10 Home搭載機が送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。

自作するより安く用途と予算に応じて4モデル選択可能!

 今回国内投入されるモデルは、「LIVAZ-4/32(N3350)」、「LIVAZ-4/32-W10(N3350)」、「LIVAZ-4/32(N4200)」、「LIVAZ-4/32-W10(N4200)」の4種類。

 ネーミングから分かるように、順にCeleron N3350搭載ベアボーン(価格は23,800円)、Celeron N3350/Windows 10 Home搭載機(同26,800円)、Pentium N4200搭載ベアボーン(同29,800円)、Pentium N4200/Windows 10 Home搭載機(同32,800円)となる。全モデルとも4GBメモリ、eMMC 32GB搭載だ。

 今回手元に届いたのはLIVAZ-4/32-W10(N3350)。主な仕様は以下の通り。

ECS「LIVAZ-4/32-W10(N3350)」
プロセッサCeleron N3350(2コア/2スレッド、1.10GHz/最大2.40GHz、cache 2MB、TDP/SDP 6W/4W)
メモリ4GB SO-DIMM DDR3L (2スロット/最大16GB)
ストレージeMMC 32GB
OSWindows 10 Home(64bit)
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 500、Mini DisplayPort、HDMI出力
ネットワークGigabit Ethernet×2、IEEE 802.11ac対応無線LAN、Bluetooth 4.0
インターフェイスUSB 3.0×4(内1つはType-C)、M.2×1、音声入出力
サイズ/重量117×128×33mm(幅×奥行き×高さ)/約365g
価格26,800円

 プロセッサは、先に書いたようにApollo Lake世代のCeleron N3350。2コア2スレッドで、クロックは1.1GHzから最大2.4GHz。キャッシュは2MBで、TDPとSDPはそれぞれ6W/4Wと非常に低く、本製品もファンレス仕様となっている。

 メモリは、SO-DIMM DDR3Lの4GBが1枚。メモリスロット自体は2つあり、最大16GBまで対応可能だ。後から4GB×2の計8GBにすれば、動作に余裕が出るのはもちろんだが、デュアルチャネル作動となるため、グラフィックスも含め少し速くなる。ストレージはeMMCで32GB。OSは64bit版のWindows 10 Home/RD1がインストール済だ。

 グラフィックスは、プロセッサ内蔵のIntel HD Graphics 500。出力にHDMIとMini DisplayPortを備えている。なお、HDMIは最大4K/30Hz、Mini DisplayPortは最大4K/60Hzの対応で、同時出力も可能。また、Intel HD Graphics 500には、HEVC(H.265)10bitとVP9のハードウェア再生支援も含まれている。

 ネットワークは、Gigabit Ethernet×2、IEEE 802.11ac対応無線LAN、Bluetooth 4.0。ノートPCはもちろん、デスクトップも含め、Gigabit Ethernetを2基備えるのは珍しい。Windows以外の対応OSとして、Ubuntu 16.04 LTSがあるので、ベアボーンモデルを購入してサーバー的に使うのも面白そうだ。

 そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×4、M.2×1、音声入出力。USBの内1つはType-Cとなっている。先のネットワークも含め、コンパクトな筐体に、これだけのポートがあれば文句なしだ。

 サイズは117×128×33mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約365g。VESAマウント(75mm/100mm)にも対応し、アダプタが付属する。電源はACアダプタ式で、出力は19V/2.1A。

 以上の構成で、価格は26,800円。このクラスを自作(プロセッサ付きマザーボード、ケース、電源、ストレージ、メモリ、OSを別途購入)するより安価となる。

 また、上位モデルに搭載しているPentium N4200は、4コア4スレッド、クロックが1.1GHzから最大2.5GHzで、2コア増え、最大クロックが0.1GHzアップするので、6千円差ならば個人的にはこちらを選びたい(ただし、執筆時にはまだ流通していない)。

天板。右上にLIVAのロゴ、ステータス系のLEDなどは無い
底面。4隅のネジを外すと内部にアクセスできる。中央2つのネジ穴はVESAマウントアダプタ用
前面/左側面。ONで白く光る電源ボタン、USB 3.0×3、USB 3.0 Type-C、音声入出力。左側面はスリットのみ
背面/右側面。Mini DisplayPort、HDMI、Gigabit Ethernet×2、電源入力。右側面もスリットのみ
底面(カバーを外したところ)。2つのメモリスロット(1つは4GB装着済)とPCI ExpressにWi-Fi/Bluetoothモジュール
底面(コネクタ周辺)。左側Wi-Fi/Bluetoothモジュールの側にあるコネクタがM.2
底面とカバー。USBポート上とカバーにある銀色のシールドに合わせて閉じる
ACアダプタなど付属品。VESAマウントアダプタ、ドライバCD、簡易マニュアル、ACアダプタ。ACアダプタのプラグ部分はアタッチメント式

 筐体はトップの写真からも分かるように、手のひらサイズで非常にコンパクトだ。前面にオンで白く光る電源ボタン、USB 3.0×3、USB 3.0 Type-C、音声入出力。背面にMini DisplayPort、HDMI、Gigabit Ethernet×2、電源入力を配置。左右側面はスリットのみ。

 ACアダプタは、サイズ約80×40×25mm(同、プラグ部含まず)、重量140g。プラグの部分が着脱式で、3種類のプラグが付属する。また、本体が約365gなので、アダプタも一緒に持ち歩くとしても、たった500gほどだ。

 天板カバーはLIVAのロゴ、底面カバーには4隅にネジと、真ん中付近にVESAマウントアダプタ用のネジ穴が2つある。内部にアクセスするには、この4隅のネジを外す必要があるが、底面カバーがきっちり閉まっている関係で、それだけでは簡単に外れず、VESAマウント用のネジを少しねじ込み、それを手で引っ張ってやっと外れる感じだった。

 内部はメモリスロットが2つ。1つは4GB SODIMMが装着済。PCI ExpressにはWi-Fi/Bluetoothモジュールがある。M.2は空きで1つ。プロセッサなどは基板の逆側にあるのか、この状態では見ることができない。

 なお底面カバーを閉める時は、USBポートの上と、カバーにある銀色のシールドの位置を合わせる必要がある(開け方も含め、付属の簡易マニュアルに書かれている)。少しコツがあるものの、メンテナンスは容易だ。

 ファンレスで振動する部分もないので、振動やノイズは皆無。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけても(季節柄もあるだろうが)少し暖かい程度に収まっている。これなら24時間/365日、例えばサーバー用途で使っても大丈夫だろう(スリットから埃が入るのでここだけ注意)。

 製品に発表時から少し気になっていたものの、現物を試用すると「欲しいな!」と思わせる逸品に仕上がっている。

Google Octane 2.0のスコアが1万越えと普通に使える性能

 OSは64bit版のWindows 10 Home RD1。Apollo Lake世代のCeleron、メモリ4GBと、ベンチマークテストからも分かるように、少しアクセスが速めのeMMCの組み合わせで、Bay Trail世代のAtom搭載機より動作は軽い。一般的な用途なら、さほど不満無く使えそうだ。

 初期起動時、スタート画面(タブレットモード)は標準のまま。特にグループなどは追加されていない。デスクトップは壁紙そのまま、左側に後述するUpdate系のアプリへのショートカットが2つ追加されている程度。コントロールパネルの「プログラムと機能」を見ても、かなり素に近い状態なのが分かる。

 eMMCは32GBの「SanDisk DF4032」。Cドライブのみの1パーティションで、約27.9GBが割り当てられ、空きは16.9GBと結構少ない。メディアカードリーダが無いので、必要に応じてUSB 3.0で外部ドライブを接続するか、M.2にSSDを搭載することになるだろう。また、このサイズだと回復パーティションに1GB割り当てられているのが結構痛い。

 Wi-Fiは「Intel Dual Band Wireless-AC 3165」で、BluetoothもIntel製だ。そしてGigabit Ethernetは、Realtek製のコントローラが2つ。これは昨今、ノートPCでもデスクトップPCでもほとんど見ない構成で珍しい。

スタート画面(タブレットモード)。標準のまま。特にグループなどは追加されていない
起動時のデスクトップ。壁紙はそのまま、左側へUpdate系のアプリ2つのショートカットが追加されている
デバイスマネージャ/主要なデバイス。eMMCは32GBの「SanDisk DF4032」。Wi-Fiは「Intel Dual Band Wireless-AC 3165」、BluetoothもIntel製。Realtek製のGigabit Ethernetコントローラが2つ
eMMCのパーティション。Cドライブのみの1パーティションで約27.9GB割り当てられている

 インストール済みのソフトウェアは、Windowsストアアプリは特になし。デスクトップアプリは、eBLU(BIOS Live Update)とeDLU(Driver Live Update)、Intelなどのシステム系だ。ほとんど素のWindowsなので、玄人好みの構成となっている。

eBLU(BIOS Live Update)
eDLU(Driver Live Update)

 ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、「PCMark 8 バージョン2/Home accelerated」。また「CrystalMark」(2コア2スレッドと条件的に問題ない)と「Google Octane 2.0」の結果も掲載した。

 winsat formalの結果は、総合 2.1。プロセッサ 5.9、メモリ 5.9、グラフィックス 2.1、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 7。メモリのバンド幅は9,207.89080MB/s。PCMark 8 バージョ2/Home acceleratedは1,301。CrystalMarkは、ALU 19,442、FPU 16,342、MEM 17,559、HDD 25,918、GDI 4,399、D2D 1,164、OGL 3,467。Google Octane 2.0(Edge)は11,595。

 グラフィックスが遅いので、総合的なスコアは伸びないものの、ほかの部分はそれなりの結果だ。またEdgeでのGoogle Octane 2.0が1万を超え、(個人差もあるだろうが)これなら普通にWebブラウジングができる。少なくともBay Trail世代、Braswell世代より好印象だ。

 前半にも書いたが、メモリを増設してデュアルチャネル作動させれば、メモリのバンド幅とグラフィックスのスコアは向上するだろう。

「winsat formal」コマンド結果。スコアは総合 2.1。プロセッサ 5.9、メモリ 5.9、グラフィックス 2.1、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 7
PCMark 8 バージョン2/Home accelerated。スコアは1,301
PCMark 8 バージョン2/Home accelerated(詳細)。クロックは1.10GHzのまま変わらずだが、プロセッサの温度なども取れていないので、データが正しいか疑問。参考まで
CrystalMark。スコアはALU 19,442、FPU 16,342、MEM 17,559、HDD 25,918、GDI 4,399、D2D 1,164、OGL 3,467
Google Octane 2.0(Edge)。スコアは11,595

 以上のようにECS「LIVAZ-4/32-W10(N3350)」は、コンパクトなファンレスの筐体に、必要なインターフェイス全部入りのWindows 10マシンだ。各ベンチマークテストはそれなりの結果だが、Google Octane 2.0のスコアが1万を超えているため、ストレスなくネットを利用できる。またGigabit Ethernetが2ポートあるので、Linuxを入れ、小型サーバー的に使うのも面白そうだ。

 試用した範囲で特に問題や不満もなく、価格も安いので、手軽に色々な用途に利用できるPCを探しているユーザーにお勧めの逸品と言えよう。