買い物山脈
今年も着るエアコン「REON POCKET 4」買った。“3”から何が進化した?
2023年7月31日 06:17
- 製品名
- REON POCKET 4
- 購入日
- 4月20日
- 購入価格
- 1万8,700円
- 試用期間
- 約3カ月
梅雨も終わり夏本番。通勤からオフィスでの仕事、旅行などとにかく辛い日々が続くことになるが、そんな時役立つのが冷却グッズだ。
今回はその中でも注目されているソニーの「REON POCKET 4」を紹介する。
筆者は昨年「REON POCKET 3」を購入しているが、そのときの記事も参照していただきたい。
とはいえ結論から言えば、コア技術の進化はほとんどないため、こちらのレビューでも一部文言を流用している。
REON POCKETとは
REON POCKETとは、「本体接触部分の体表面を直接冷やしたり温めたりすることのできるウェアラブルサーモデバイス」のことで、今回のREON POCKET 4はその名の通り第4世代に位置する製品となる。初代はクラウドファンディングから始まっており、ソニーブランドを冠した製品としては挑戦的なシリーズだ。用途としては激しい運動で使うようなものではなく、日常生活や軽い運動を想定した製品となる。
今回の世代では、主にバッテリが強化されたほか、別売のREON POCKET TAGとの連携により、今まで手動で切り替えが必要だった冷却と温熱について、自動で切り替えを行なう「SMART COOL⇔WARM MODE」に対応した。
キーとなるサーモモジュール
この「サーモモジュール」というのは、またの名を「ペルチェ素子」や「ペルチェモジュール」と呼ばれているものとなり、異なる金属や半導体を直列に接合して電流を流すと接合部分で吸熱もしくは放熱が行なわれる。極性(プラスとマイナス)を交換すると熱の方向が変わるため、冷却することも温熱することもできる。REON POCKET 4も冷却に加えて温熱もできるが、これも極性を交換させることで実現している機能となる。
ただ冷えるだけなのであれば夢のようなモジュールなのだが、そこまで都合の良い話はなく、冷えている面の反対側は逆に熱くなる。ここで発生した熱が冷えている面へ逆に浸透すると効果が落ちてしまうため、いかに放熱するかが重要となる。
今回のREON POCKET 4では放熱フィンに加えて小型ファンが搭載されている。ノートパソコンに搭載されているような放熱構造を想像すると分かりやすいだろう。
よく冷蔵庫で使われているとたとえられることもあるが、一般的な家庭用冷蔵庫はコンプレッサー方式を採用しており、サーモモジュールを使ったペルチェ方式の冷蔵庫は、少しマイナーな小型タイプの物がほとんどとなっている。
REON POCKET 4で何が変わったのか
本体形状の変更
REON POCKETは初代からREON POCKET 3までデザインを踏襲してきた。今回のREON POCKET 4からは基本デザインこそ変わらないものの、大きなバッテリを搭載するために厚みに変更が入っている。また、表面も光沢の成形色からシボ入りのギザギザな表面に変更されたことにより、傷が付きにくくなった。
バッテリが大きくなった影響でREON POCKET 3からREON POCKET 4の質量(本体のみ)は約92gから約109gと17g重くなっている。しかしながら筆者の感覚で言えばこの質量差で気になるほどではなかった。たったの17gで動作時間が2倍になるのであれば歓迎できるアップデートだ。筆者はSMART COOL⇔WARM MODEを普段使用しているが、だいたい7時間くらいは持つ印象だ。
また、吸気口部分のデザインは大きく変わっている。従来は正面から空気を吸い込むデザインでそのまま隠してしまうと効率が下がってしまうためネックバンド側でリブを立てることで対処していた。
今回のREON POCKET 4では下向きに吸気口部分を持ってきたため、ネックバンド側のリブは消滅。服にREON POCKET 4本体が直接当たることになるのだが、形状の工夫で吸気口を塞がないようなデザインになっている。
REON POCKET 4では専用ネックバンド3が同梱
REON POCKET 4単体では人体に固定することが困難な形状をしているが、今回より専用のネックバンド3が取り付けられて一体化された状態で販売されるようになった。
なぜこれまで最初から一体化されていないのかと言えば、専用の装着用アイテムが数種類準備されているからで、REON POCKET 3まではネックバンドはあくまでも装着用アイテムの1つでしかなかった。
今回のREON POCKET 4からネックバンドが同梱された理由として、家電Watchのインタビュー記事では「既存のREON POCKETのユーザーが、ほぼ100%専用ネックバンドを使っているから」とのことだ。なお、同梱した分本体価格も上がっているため、セットだから安いということはない。
正直なところ、専用のワイシャツ(実売7,700円)やインナーウェア(実売1,980円)を買うのであれば洗濯の手間も考えると、ネックバンド(実売1,980円)しか選択肢はなかった。それにおしゃれな人は自分の好きなものを着たいだろうし、筆者のような全身ユニクロな人は、もっと安いものを選ぼうとするだろう。
今回同梱される専用ネックバンド3については、新設計のバンドが採用されている。ワイヤーフレームとメカニカルフレキシブルチューブによって装着しやすさが向上し、表面はシリコンラバーで覆われているため首へのフィット感が向上している。
前機種のREON POCKET 3向けの専用ネックバンド2では、バンドを含めてすべてプラスチック製(ABS)だったため、肌への感触の違和感やパーツとパーツの継ぎ目から「キコキコ」とした音がして不快だった。ここは良い進化と感じた。
なお、専用ネックバンド3で首に合わない場合は、首まわり29㎝~35㎝用の専用ネックバンド3(SMALL)も用意されている。この場合同梱の専用ネックバンド3が無駄になってしまうが、そこまで数は出ないとみているのだろう。
REON POCKETが1年中使えるようになるREON POCKET TAG
REON POCKET TAGのハードウェア構成と存在意義
REON POCKETのアクセサリという位置づけだが、今回のREON POCKET 4にあわせてREON POCKET TAGが発売された。REON POCKET 4とREON POCKET TAGを同梱したセットも販売されていたため、今回筆者はこちらのセットを購入している。
REON POCKET TAGは、簡単に言えば外付けセンサーで、加速度センサー、照度/近接センサー、温湿度センサーの合計3つが搭載されている。
照度/近接センサーはセンサー部分が覆われていないか確かめる用途にしか現状活用されていないため、実質加速度センサーと温湿度センサーの2つがREON POCKETの動作に影響するセンサーとなる。
そもそもREON POCKET 4自体にもこれらのセンサーは搭載されているのだが、なぜ外付けにする必要があるかと言えば、温熱時のSMART WARM MODEを使用できるようにするためだ。冬は厚着になり、REON POCKETの位置から外の温湿度が計測できないための措置という。
SMART COOL MODEとSMART WARM MODEが使えるようになることで、冷感と温熱を行き来することができるSMART COOL⇔WARM MODEが使用できるようになった。これによりREON POCKETが1年中使える製品になる。機能については後ほど紹介する。
なお、REON POCKET TAGについては、前機種のREON POCKET 3でも使用可能で、SMART COOL⇔WARM MODEが使用できるようになる。わざわざREON POCKET 4に買い換えたくない読者も安心だ。
温度表示はデータの補正に注意
REON POCKET TAGの温湿度センサーについてはデータ補正中なのか、それとも直射日光の関係なのかは定かではないが、時よりかなりズレた温度で表示されることがある。どちらかといえば、高めの温度が表示される印象だ。
センサーの仕様上仕方がないところではあるが、今予測しているのか、数値が安定した後なのかくらいはアイコンなどで表示してほしいところだ。
紛失しやすいデザイン
REON POCKET TAG最大の欠点はそのデザインと筆者は考える。
REON POCKET TAGにはクリップが搭載されており、それをワイシャツのポケットに挟むようなシーンが想定されている。しかし、3,850円する上に、執筆時点で入手困難になっているデバイスを雑に「クリップだけ」で固定しようとするのはいただけない。
というのも、筆者は購入日にワイシャツの胸ポケットに固定して寿司屋へ行ったところいきなりワサビの山へREON POCKET TAGがダイブしてしまったため、クリップへの信頼は初日からゼロになってしまった。
結局、ダイソーでスプリングストラップを購入。REON POCKET TAGのクリップに加えてジョイントクリップを使い二重で固定させることでなんとか運用している。
Apple Watchで温度と湿度も見られる
REON POCKET TAGはApple Watchにも対応する。AppStoreでREON POCKETのアプリをインストールしておくと、Apple Watch上で気温と湿度の表示が可能になる。
また、REON POCKET本体は1つのREON POCKETに対して1台のスマートフォンが必要になるが、REON POCKET TAGについては1台のREON POCKET TAGに対して複数台のスマートフォンから接続することができる(1台のスマートフォンに複数のREON POCKET TAGは接続できない)。
筆者の場合、1つのREON POCKET TAGに対してiPhone、Android、Apple Watchの3台とペアリングをしているが、温度と湿度の表示は3台同時のタイミングで更新される。
冷却機能について
確かに冷えるが、課題は人間の慣れ
まずはMANUAL MODEを使い一定の冷却の強さで冷やしてみる。接触面にひんやりとした確かな冷たさを感じREON POCKET 4がしっかりと動作していることが分かる。ただ、それも5分程度使用しているとひんやりとした効果が減少してしまう。
REON POCKET 4自体に異常はないのだが、原因は人間の感覚の慣れである。
人間側がREON POCKET 4の冷たさに慣れてしまうためいくら同じ場所を冷やしたところで何も感じなくなってしまうのだ(冷却慣れ)。
そんなわけでメーカーからいきなり温度を最大に上げるのではなく、少しずつ上げていくテクニックがアプリ上で頻繁に表示される。
なお、通常MANUAL MODEでは1~4の強さから選択ができるが、USBから給電中に限り、4が4+となりより強力な冷却モードを利用することができる。
快と不快のサイクルで解決するWAVE MODE
冷たさを感じなくなってしまうのであれば、段階的に上げてレベル4になれば打つ手なし? と思うだろう。そこで解決方法として用意されているモードがWAVE MODEだ。
WAVE MODEでは、選択した温度設定レベルで冷却の強さを上下させることが可能となる。これにより温度変化のタイミングで何度もひんやりとした感触を得ることが期待できる。ただ、ひんやりとした温度を下げる「快」を得るためには逆に動作を止めて温度を上げる「不快」もセットになっていることも忘れてはいけない。
エアコンが効いた室内の場合だと特に何も感じないが、屋外など汗ばむシーンではREON POCKET 4と肌との間に汗が入り込み「ぬるさ」が発生する。その不快感はなかなかのものである。
REON POCKETの評価が人によってまちまちなのは、この不快を受け入れられるか否かと筆者は考えている。
センサーを駆使して自動的に制御するSMART COOL MODE
REON POCKET 4では、REON POCKET 3で採用されていた4つの温度センサーと1つの加速度センサーのうち、1つの温度センサーが温湿度センサーにアップグレードされている。これらのセンサー情報を元に温度と行動を検知して制御をするSMART COOL MODEが引き続き利用できるが、今回温湿度センサーにアップグレードされたことにより、温度、体表面の温度や加速度に加えてユーザーが汗をかいているか判断ができるようになった。
アプリ上にはターゲット温度が表示されているが、ここのエリアに向かって上げ下げを繰り返し更にセンサーの情報も考慮する。なお、ターゲット温度は5段階から切り替えができる。結論から言えばこのSMART COOL MODEを使えばそれなりに冷たく、それなりに長く動作させることが可能になる。
ただ、常時冷たさを感じられるわけではなく、「たまに」というレベル。動作中に「ひたすらスマホゲームのガチャを引いて、SSRが出たら冷える」くらいの感覚だ。REON POCKET 4自体がサボっているわけではなく、指で触ればちゃんと冷えている。温度や湿度、動きによって自動で制御しても、人間の冷感慣れを克服することはなかなか難しいようだ。
筆者の利用シーンで言えば、暑い日中よりは少し涼しい夜の方が効果を感じたり、静止しているときよりは、動き出したタイミングの方が効果を感じたりする。
温熱機能について
しっかりとした効き目を感じられるWARM MODE
WARM MODEは温熱を感じることができるモードだ。
温熱の場合はサーモモジュールを冷やす必要はないためファンは回らない。
さらにAUTO MODEを指定すると、歩行や静止などの動きにあわせて温度を調整しながら動作する。ただしこのモードは1時間で自動停止する仕様となっている。
冷却慣れに悩まされるCOOL MODEとは違い、こちらは断続的に暖めてもしっかりと効果を感じられることだろう。実際に5月に突然寒くなるときがあったが非常に役に立った。正直に言えば、冷却よりも温熱の方が実用性は高いのではないか? と思ったほどだ。
例年冷却グッズが展開される夏が終わると、冬に向けて電子カイロのような製品が登場するが、REON POCKET 4はどちらにも対応できる製品と考えて良いだろう。
REON POCKET TAG使用時のみ解放されるSMART WARM MODE
外付けセンサーであるREON POCKET TAGを登録済みの場合に解放されるSMART WARM MODEでは、動きだけのAUTO MODEの機能に加えて温度、湿度による情報も考慮される。
WARM MODEでは1時間の動作制限があり自動で停止してしまうが、このSMART WARM MODEでも1時間の動作制限こそあるが、停止して1分後温熱を再開する。この1分のインターバルはよく分からないが使い続けられるというのは大きい。
1年中使えるSMART COOL⇔WARM MODE
SMART COOL MODEとSMART WARM MODEを組み合わせたモードがSMART COOL⇔WARM MODEだ。SMART WARM MODEを使うモードでもあるため、こちらもREON POCKET TAGが必須となる。
こちらは、周辺温度の閾値をユーザーが決定し、COOLで設定した閾値を上回ればSMART COOL MODEが開始され、逆にWARMで設定した閾値を下回ればSMART WARM MODEが開始される。COOLとWARMで設定した閾値の間は適度な温度となり省電力で一時停止する。
REON POCKET 4発売当時は不安定な気候だったこともあり、外に出たら思ったより寒かった、暑かったということが多くあった。そういった時でもREON POCKET 4が自動的にCOOLとWARMを切り替えてくれるためとても助かることが多かった。
ほかにも、スーパーの冷凍冷蔵ショーケースのような寒いところのみWARMが働くなど、普段の生活で切り替えの場面に遭遇することもあり、思いのほか使える印象だ。
季節の変わり目にどんどん使っていきたいモードだ。
バッテリ切れはAndroidのみ通知設定が可能
REON POCKET 4は前機種となるREON POCKET 3と比較してバッテリ容量が2倍になっているため、使用方法や環境にも左右されるが、7時間程度動作が可能になった。筆者としては7時間動作できれば日中はカバーできるためありがたいアップデートだったが、それでもどこかでバッテリ切れには遭遇してしまう。
筆者の場合、REON POCKET 4のバッテリ残量がなくなるとREON POCKET 3に切り替えて運用しているが、いつの間にかバッテリが切れていてしばらく生ぬるい物体を首につけたままにしていることも多い。
ただ、それはiOSの場合であり、Androidの場合は通知ができるようになった。この通知についてはREON POCKET 3でも設定可能だ。Androidに続きiOSにも通知できるようにしてほしいところだ。
さいごに
REON POCKET 4は、REON POCKET 3と比べてバッテリ容量を筆頭に基本性能部分を強化したモデルと言える。その一方で、機能面での目新しさは乏しい結果となってしまった。追加要素としてはREON POCKET TAGがあるが、あくまでも別売のアクセサリであり、REON POCKET TAGの機能はREON POCKET 3でも有効にできる。
そのため、すでにREON POCKET 3を使っており、バッテリの持ちにそれほど不満を持っていない読者は、REON POCKET TAGのみの購入でも十分満足できるはずだ。
一番の問題は人間の冷感慣れとなるが、ここを今後どう改善していくかが焦点となっていくだろう。昨年(2022年)のレビューから1年で改善されたところもあるが、少なくともREON POCKET 4でこの部分は改善されていない。次回のモデルで改善を期待したい。
現在使える対処法としては、冷感慣れしている部分から少し移動させると短時間ではあるが冷たさを再び感じることができるようになる。特にREON POCKET 4の専用ネックバンド3では、バンドがワイヤーになったため位置調整もやりやすいだろう。
仕様や性能面とはまた別になるが、REON POCKET 4およびREON POCKET TAGについては昨年のREON POCKET 3に続き在庫が不安定な状況となっている。執筆時点でREON POCKET 4およびREON POCKET TAGはソニーストアおよび家電量販店ではほぼ完売状態となっている。辛うじて入手できる場所も転売価格ばかり。
特にREON POCKET TAGについては、初回出荷してから全く在庫が復活していない状況だ。
せっかく1年中使える製品に仕上げたのにもかかわらず、売り切りのようなやり方は良くないと筆者は思う。クラウドファンディング発とはいえ、もう4代目。企画から販売、サポートまで丁寧なハンドリングを期待したい。