買い物山脈
ソニーの着るエアコン「REON POCKET 3」を買った!使った!感じた!
2022年8月9日 06:13
- 製品名
- REON POCKET 3(RNP-3/W)
- 購入金額
- 1万4,850円(ネックバンドは1,980円)
- 購入日
- 4月26日
- 試用期間
- 約3カ月
外からセミの鳴き声が聞こえるようになるといよいよ夏も本番。
普段であればPCやスマホへの冷却を真剣に考える時期だが、今年は人間の冷却に手を出すことにした。
一般的に、ゴールデンウィークを過ぎたあたりから夏が終わるまではUSB接続型の扇風機や携帯型扇風機が家電売り場を賑やかにしているが、今回筆者が選んだデバイスはソニーのウェアラブルサーモデバイス「REON POCKET 3」だ。
筆者は4月の発売直後のタイミングで購入し、約3カ月間使ってきたが、効果や使用感をレビューしていきたい。
REON POCKETとは
REON POCKET とは、「本体接触部分の体表面を直接冷やしたり温めたりすることのできるウェアラブルサーモデバイス」のことで、今回のREON POCKET 3はその名の通り第3世代に位置する製品となる。初代はクラウドファンディングから始まっており、ソニーブランドを冠した製品としては挑戦的なシリーズだ。用途としては激しい運動で使うようなものではなく、日常生活や軽い運動を想定した製品となる。
今回の世代では新開発のサーモモジュールやセンシングの強化といった基本性能の底上げが行なわれている。
キーとなるサーモモジュール
この「サーモモジュール」というのはまたの名を「ペルチェ素子」や「ペルチェモジュール」と呼ばれているものとなり、異なる金属や半導体を直列に接合して電流を流すと接合部分で吸熱もしくは放熱が行なわれる。極性(プラスとマイナス)を交換すると熱の方向が変わるため、冷却することも温熱することもできる。REON POCKET 3も冷却に加えて温熱もできるが、これも極性を交換させることで実現している機能となる。
ただ冷えるだけなのであれば夢のようなモジュールなのだが、そこまで都合の良い話はなく、冷えている面の反対側は逆に熱くなる。ここで発生した熱が冷えている面へ逆に浸透すると効果が落ちてしまうため、いかに放熱するかが重要となる。
今回のREON POCKET 3では放熱フィンに加えて小型ファンが搭載されている。ノートPCに搭載されているような放熱構造を想像するとわかりやすいだろう。
よく冷蔵庫で使われていると例えられることもあるが、一般的な家庭用冷蔵庫はコンプレッサー方式を採用しておりサーモモジュールを使ったペルチェ方式の冷蔵庫は少しマイナーな小型タイプの物がほとんどとなっている。
REON POCKET 3に加えて専用ネックバンドは必須アイテム
REON POCKET 3は単体だと人体に固定することがかなり困難な形状をしている。そのため、専用のポケットが付いた専用のワイシャツやネックバンドのどちらかは必須と言えるだろう。筆者としては汎用性の高い専用ネックバンドがおすすめだ。
REON POCKET 3の発売にあわせて「ネックバンド2」も発売されている。従来モデルと比較して吸排気効率が+40%向上しているという。今回はこちらも同時に購入した。
確かに冷えるが、課題は人間の“慣れ”
まずは「MANUAL MODE」を使い一定の冷却の強さで冷やしてみる。接触面にひんやりとした確かな冷たさを感じREON POCKET 3がしっかりと動作していることが分かる。ただ、それも5分程度使用しているとひんやりとした効果が減少してしまう。
REON POCKET 3自体に異常はないのだが、原因は人間の感覚の慣れである。
人間側がREON POCKET 3の冷たさに慣れてしまうため、いくら同じ場所を冷やしたところで何も感じなくなってしまうのだ。
そんなわけでメーカーからいきなり温度を最大に上げるのではなく少しずつ上げていくテクニックがアプリ上で頻繁に表示される。
快と不快のサイクルで解決するWAVE MODE
冷たさを感じなくなってしまうのであれば、段階的に上げてレベル4になれば打つ手なし? と思うだろう。そこで解決方法として用意されているモードが「WAVE MODE」だ。
WAVE MODEでは選択した温度設定レベルで冷却の強さを上下させることが可能となる。これにより温度変化のタイミングで何度もひんやりとした感触を得ることが期待できる。ただ、ひんやりとした温度を下げる「快」を得るためには逆に動作を止めて温度を上げる“不快”もセットになっていることも忘れてはいけない。
エアコンが効いた室内の場合だと特に何も感じないが、屋外など汗ばむシーンではREON POCKET 3と肌との間に汗が入り込み「ぬるさ」が発生する。その不快感はなかなかのものである。
REON POCKETの評価が人によってまちまちなのはこの不快を受け入れられるか否かと筆者は考えている。
センサーを駆使して自動的に制御するSMART COOL MODE
REON POCKET 3では従来機から2つ増えた4つの温度センサーと1つの加速度センサーを内蔵しており、これらのセンサー情報を元に温度と行動を検知して制御をする「SMART COOL MODE」を搭載するようになった。具体的には衣服内の温度とサーモモジュールの温度、体表面の温度や加速度を検知して制御を行なっているようだ。
アプリ上にはターゲット温度が表示されているが、ここのエリアに向かって上げ下げを繰り返し、さらにセンサーの情報も考慮する。なお、ターゲット温度は5段階から切り替えができる。結論から言えばこのSMART COOL MODEを使えばそれなりに冷たく、それなりに長く動作させることが可能になる。
ただ、センサーを使うとはいえ、すべての生活パターンに適応できるわけではない。例えば飲食店に入って椅子に座っていると、静止していることに加えて店内エアコンによる温度変化によって「省電力で冷却中」になる。省電力とはいえ冷却はされていると思うかもしれないが、実際は付けないほうがマシなレベルに留まる。そして実際に食事をしている最中も通常の冷却動作に戻ることはなかった。
筆者が人間Cinebenchと勝手に位置づけている二郎系ラーメンの場合、食べ始めると一気に汗が吹き出るのだが、こういった時動き出してくれると「コイツ、わかっているな」と思うのだが、現在のセンサー構成では難しいのかもしれない。
電池切れが把握できない
REON POCKET 3は従来機からよりもバッテリの持ちが長くなったが、それでも単体での動作時間は長くても3~4時間程度。よって多くのユーザーがどこかで電池切れと遭遇することになると言えるだろう。
ただ、本体は首元にありインジケータの確認は困難、かつスマホへ通知もされない。電池切れのタイミングでアプリを開かなければ把握できないのは大きな問題だと筆者は感じる。単純な電池切れなのか、次の冷却に備えて温度を下げているもしくは一時停止しているのか判断がつかないため、「いつになったら温度を下げるのかな?」と期待して待っていたら電池切れだったという悲しい事件はすでに何度も遭遇している。
こういったにことならないためにモバイルバッテリとの併用も視野に入れる必要があるが、それはそれでスマートじゃないな……と悩んでいるところだ。
シリコンコーティングシートを使うと落ちない汚れが付く
REON POCKET 3は人体と接触する部分にステンレススチールが用いられているが、肌に直接触れないようにしたいユーザーのために、シリコンコーティングシートが1枚付属している。使い捨てタイプとなっているため必要であればオプションで購入が可能だ。
このシリコンコーティングシートだが、表面のメンテナンスだけで良いと思い1カ月ほど使用してから新しいシリコンコーティングシートへ貼り替えをしようとしたところ、内部のステンレス部分の間で拭いても落ちない汚れが発生していた。この正体はおそらくステンレス鍋などでも発生するミネラルが付着しているのではないかと考えるが、対処法の記載も見つからないため、念のためサポートへ問い合わせることにした。
保証内で修理が可能かサポートに問い合わせ、最終的に修理を依頼する形となった。修理の場合、配送業者を使用した方法か直接サービス拠点へ持ち込むか選択ができる。筆者は週1程度のペースで秋葉原へ通っているため、秋葉原のソニーサービスステーション秋葉原へ持ち込むことになった。
そして今後シリコンコーティングシートは使わないと筆者は心に誓った。
もし次回同様の状態になったらクエン酸や酢で対処してみたいと思うが、できればメーカー側から情報を発信するべきだとは思う。
なお、現在REON POCKETのよくある質問に
“冷温部に貼ったシリコンコーティングシートを剥がすと、汚れのような跡が付着していました。使用上の問題はないでしょうか?”
と記載が追加されており、回答としては
“使用上の問題はありません。“
とのことだ。
そのため今後筆者と同じ修理対応はされない可能性もあるため注意していただきたい。
ほかの冷感グッズも使ってみよう
REON POCKET 3と比較するため、PCM(Phase Change Material)を使ったネッククーラーも使用してみた。筆者の購入した製品は28℃以下で自然凍結するところがポイントだ。
通電系と非通電系と異なるアプローチの製品となるが、どちらも同じ冷感を目的とした製品となる。ネッククーラーの価格帯としては1,000円台で販売されていることが多いため、REON POCKET 3の10分の1程度だ。
REON POCKET 3とネッククーラー、表面の温度としてはどちらも24℃付近となりターゲット温度としては似たようなところに落ち着いている。
ネッククーラーは冷蔵庫から取り出して使っていくうちに氷が溶け始め少しずつ温度が上昇していくが、ないよりはマシなレベルの冷感であれば、REON POCKET 3並みの時間は維持できる。こちらに関してはREON POCKET 3で体感した不快感はなく、思いのほか快適だった。
冷却するエリアについても狭い範囲しか冷やすことができないREON POCKET 3に比べて、首全体をカバーできるので使い始め時はネッククーラーの方が有利だ。
強度に関しては、ネッククーラーの外装はTPUで内部は液体となるため扱いが荒いと破損し水漏れの可能性もあるだろう。
総合的に見るとネッククーラーはコストパフォーマンスも高くREON POCKET 3の出番が少なくなるのでは? と一瞬思ってしまったくらいだ。
余談だが筆者が出社時に装備していったところ「それ、孫悟空の頭についているやつ? (笑)」と言われて軽くショックを受けたため、REON POCKET 3のスマートなデザインがいかにさり気なく素晴らしかったのかをここで再確認することとなった。
夏だけでなく冬も使える
冒頭にも書いたが、REON POCKET 3は冷却に加えて温熱もできる。
温熱の場合はサーモモジュールを冷やす必要はないためファンは回らない。
AUTOを指定すると、動きにあわせて温度を調整しながら動作する。ただしこのモードは1時間で自動停止する仕様となっている。
冷却動作とは違い、こちらは断続的に暖めても問題ない。実際に5月に突然寒くなるときがあったが非常に役に立った。正直に言えば冷却よりも温熱の方が実用性は高いのではないか? と思ったほどだ。
例年冷却グッズが展開される夏が終わると冬に向けて電子カイロのような製品が登場するが、REON POCKET 3はどちらにも対応できる製品と考えて良いだろう。
最後に
REON POCKET 3は温度を管理するデバイスとしてラストワンマイル的な位置づけの製品となるが、完成度についてはまだ改善の余地ありといったところだ。
本体の特性や仕様を理解できなければ使いこなすのは難しいだろう。そのため誰にでもおすすめできるデバイスとは言いづらい。
スマホアプリもアドバイスの文章が多いのはありがたいが、逆に言えばそれだけユーザー側で配慮しなければ使いこなせないことでもある。
筆者自身飽きっぽい性格ではあるが、それでも現時点まで使い続けることができているのはそれでもメリットを感じているからだと思う。
一番の問題は人間の冷感慣れとなるが、ここを今後どう改善していくかが焦点となっていくだろう。たとえばまだ冷却慣れしていないエリアへ集中させる技術などがあれば良いのだが、その分機体やサーモモジュールが大きくなってしまう。ここをどう対応してくるかは現行品のファームウェアアップデートはもちろん、今後の後継品にも期待したいところだ。
筆者としては一度乗ってしまった船なので、今後もチェックしていきたいと思う。