買い物山脈

日本未発売で激レアのIntel Arc A770を買いに台湾へ赴く。ただし、自分用ではない

製品名
PREDATOR BIFROST Intel Arc A770 OC
購入日
2022年10月14日
使用期間
0日
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです

 新型コロナウイルス感染症によりここ3年近く台湾は近くて遠い国となっていたが、2022年9月29日より台湾は日本人向けの観光ビザを免除。そして2022年10月13日に新型コロナウイルス感染症の水際対策として求められていた3日間の居家検疫(外出できない)と4日間の自主防疫、いわゆる3+4ポリシーが7日間の自主防疫のみとする0+7ポリシーに移行した。これにより本格的な観光が再開されたことになる。

 台湾といえばPC Watch読者にとって馴染みのあるメーカーが多いと思うが、今回は執筆時点でまだ日本で発売されていない「あるパーツ」を求めて、筆者は10月13日に台湾へ飛んだ。

約3年ぶりの桃園空港

自主防疫とは何だろう

 本題に入る前に現在の台湾で実施されている自主防疫について確認しておきたい。

 2022年10月13日より入境時から外出できるようになったが、空港で配布される家庭用簡易検査キットによるテストを自ら行なう必要がある。

 とはいえ難しいものはなく以下の2点を頭に入れておけば大丈夫だ。

  • 入境日を0日目として、0日目もしくは1日目に1回実施
  • 外出時には2日以内の陰性結果が必要

 例えば、入境日の0日目にテストを実施。3日目に外出する場合は2日以内の陰性結果の範囲外になるため再度テストが必要になる。

 また、テスト結果についてアプリや電話等で報告する必要もない。

 台湾の玄関口となる桃園空港ではこのURLへの誘導しか案内されない。また、ページのリンク先となるこちらのページも併せて確認しておきたい(英文)。

衛生福利部 疾病管制署のWebページより
入国前に家庭用簡易検査キットが配布されるので受け取る
今回配布されたキットはアボット製

 余談だが、コロナ前より運用されていたオンライン入国カードは現在も有効だった。こちらも活用していきたい。

お目当てはIntel Arc A770を買いに行くこと

 今回の目的は10月13日より発売開始されたが、日本ではまだ発売が開始されていないビデオカード「Intel Arc A770」を編集部向けに購入するためだ。

 実は、Intel Arcについては編集部とJD.comやTaobaoでどう買うか相談を受けていたのだが、筆者が「そういえば明日台湾行くeチケあるんだよね」とぼやいたら、台湾で買うことになってしまった。筆者の台湾旅行はこの時PCパーツ色で染まることになる。

 なお、今回狙うのはAcer製の「PREDATOR BIFROST Intel Arc A770 OC」となる。

 台湾で取り扱っているPCショップの原價屋では早期購入割引で9,990台湾ドル(執筆時点で約4万7,000円)となっており、A770にもかかわらずA750並の価格となっている。これを逃す手はない。

原價屋のシステム

 原價屋(日本語で書くと原価屋)は、台湾のPCショップの中でも勢いがあり、台湾全土に店舗が展開されているほか、最新パーツのベンチマーク等PCメディアとしても筆者が参考にしているサイトの1つである。

 一般的なショップと言えば、CPUや商品が陳列されており、客が商品を手に取って購入するスタイルが多いが、原價屋は店頭にあるPCに表示されている画面で欲しいものをリストから選んで選択していく。リスト完成後、店員さんを呼べば在庫を倉庫から持ってきてくれる。

 日本で言えばヨドバシカメラの「ネットで注文 店舗で受け取りサービス」を、“店舗で注文+店舗で受け取り”しているようなイメージだ。

もちろん店員さんに相談しながら購入することも可能

 なお、この画面だが日本からでもアクセス(リンク先はスマホ版)ができるため、事前に予習していくことが可能だ。

 台湾のPCショップは近づくだけで話しかけられることが多いため、筆者のような「ファンイン グゥァンリン~~~~~」と話しかけられると3秒で店を出たくなる小心者でも、このリストさえあればスムーズに購入まで進むことが可能だ。

 実際のところ、ほとんどのショップは日常的にGoogle翻訳を使いコミュニケーションすることに慣れているため、言語の不安は一昔前と比べるとハードルは低くなっていると言えるだろう。

 なお、上記URLからそのまま注文して台湾の店頭で直接受け取ることも可能だが、台湾の電話番号が必要な上に、お客様相談室からのコールバックに対応する必要がある。これらの条件がクリアできる読者なら活用するのも1つの手だ。

高雄 -長明商圏-

 「PREDATOR BIFROST Intel Arc A770 OC」については、Intel純正のArc A770 Limited Editionの1日後に入荷という話だったため、10月14日に行動を開始した。

 最初に訪れた都市は台湾の南にある台湾第2の都市とも言われている高雄だ。日本からも直行便が設定されており、ここから旅行を開始する読者もいることだろう。

 高雄では台湾鉄道の高雄駅近くにある長明商圏が電脳街として栄えている。

 今回筆者は台北で宿を取っていたが、まずは遠くのショップから攻めていくことにした(決して高捷少女のグッズを買いに行きたかったからではない……買ったけれど)。

 移動手段としては台湾高速鉄道を利用した。現在高雄手前の左営が終点となっておりMRTに乗り換える必要があるが、将来的には長明商圏に近い高雄駅まで直接アクセスできるようになる。所要時間はおおよそ2時間程度だ。

台湾高速鉄道で台北から左営まで移動
MRTで左営から高雄まで移動。高雄のMRTはクレジットカードのタッチで乗車できる
高雄駅から東の方角へ15分ほど歩くと長明商圏に到着

 長明商圏にある原價屋、原價屋高雄建国一店に到着。早速PREDATOR BIFROST Intel Arc A770 OCを買いたいと伝えると。ちょっと在庫用意するから待ってねという回答。

 これはいきなり勝ちか? 案外あっけないな、と思いながら近くの全家(ファミリーマート)で現金を引き出し(ちなみに原價屋はクレジットカード払いだと2%ほど金額に上乗せされる)店に戻ると……在庫がまだ入っていないと申し訳なさそうな店員さん。

 入荷は最短で明日になるとのことだ。これは困った。

 ただ、店員さんにほかの店舗に在庫がないか調べてもらうと、台北であれば在庫が「入った」という確かな情報を得ることができた。取り置きはできないとのことだったので、再び台北へとんぼ返りである。

原價屋高雄建国一店
店員さんのおすすめ「ASUS ROG STRIX B660-A GAMING WIFI D4」は、DDR4世代の終着点として注目したいマザーだ。なお日本未発売

台北 -八徳商圏-

 台北の電気街といえばここが思い浮かぶ読者も多いだろう。有名な光華商場もこのエリアに存在している。

 原價屋はこの八徳商圏で製品を販売する店舗が執筆時点で5店舗ほどあり、店舗によってPCパーツを主力としているところもあれば、ノートPCを主力としている店もある。

台北駅からMRTの板南線で「忠孝新生駅」で降り、1番出口を目指す
忠孝新生駅から最も近い原價屋八徳二店

 今回はPCパーツを扱っている店舗でPREDATOR BIFROST Intel Arc A770 OCの在庫を確保してもらう。

 店員さんが倉庫へ取りに行って数分……ようやく確保することができた。台湾のショップは21時近くまで営業しているところが多いため、今回のように台北-高雄間で往復4時間使ったとしても十分間に合う。

PREDATOR BIFROST Intel Arc A770 OCの在庫確保の瞬間
その場で開封し保証用のシールを貼ってもらう。これがないと保証されないので注意が必要だ
原價屋新現代館の店員さんのおすすめ「GIGABYTE RTX4090 WINDFORCE 24G」RTX4090シリーズで最安クラスの製品となる。日本ではほぼ30万円だが、台湾では27万円程度で購入できる。また、原價屋新現代館ではGeForce RTX 4090が棚一列に埋まっており、ただただ在庫力に圧倒される

 八徳商圏にはほかにもおすすめできるショップが数多くあるが、外国人ならではのメリットを活かすことができる店舗も存在する。それがいわゆる「免税」だ。同一店舗で2,000台湾ドル以上であれば消費税の5%分が還元されるシステムだ(還元額から手数料が20%引かれる)。

 ただ、免税はどこの店舗でも対応しているわけではなく限られている。その中でも家電量販店の「順發(SUNFAR)」は台湾の免税システムとなるTRSに対応した店舗の1つだ。

 八徳商圏の順發はそこまで数は多くないがPCパーツも取り扱っているため、もし欲しいものがあれば、ほかよりも安く購入することができるかもしれない。例えばメモリやCPUといったパーツは、ほかの店舗へ行く前に価格や在庫を確認してみても良いだろう。

PCパーツでTRS(Tax Refund Store)を狙える数少ないショップ

 もっと店がギュッと集まったモールが良い……そんな読者はおなじみ光華商場がおすすめだ。元々は光華橋にあったのだが取り壊され、仮設店舗を経て現在に至る。

 PCパーツショップについては2Fおよび3Fに集まっているため一通りまわって眺めているだけでも楽しくなるだろう。今回主に紹介している原價屋の店舗の1つも光華商場内にある。

光華商場
小規模な店舗がビッシリと入っている

 そして光華商場の隣にある三創生活はオシャレな店舗や各社のブランドショップが集まるモールとなる。携帯電話のキャリアショップはもちろん、ASUS、Xiaomi、SAMSUNG、OPPO、realme、vivo、HUAWEIといったメーカーのショップも集まる。3年前と比べると、入り口から匂うガーリックトーストの香りがなくなってしまったのは悲しいところだ。

 PCとは関係ないが、八徳商圏に巨大な施設がオープンしており、中には1階にパナソニックのショールームと地下にドン・キホーテが営業している。

オシャレな店舗が集まる三創生活
八徳商圏の印象をガラッと変える全球人寿希望園区
エスカレータを降りると日本と同じドン・キホーテが24時間営業している。ありがたいのだが、日本のものしか扱っていないため日本人としては何も買うものがないことも事実だ

台中 -英才路-

 台北と高雄、ときたら台中だろう。もう目的の品は入手したが、ここまできたら行かなければということで再び台湾高速鉄道に乗り込んだ。台北から台中まではおおよそ1時間程度で到着できる。ただ、台中の電気街的なエリアである英才路は鉄道駅から少し離れたところにあるため台北や高雄よりアクセスは少し面倒だ。

 台湾高速鉄道の駅は、台北周辺エリアを除くと在来線のターミナル駅から離れた駅に到着するため何かしら別の交通機関で移動する必要がある。

 今回は筆者も久しぶりのため、2021年に開業した台中MRTで英才路に向かうことにした。この台中MRTは高鉄台中駅から接続している。

高鉄台中駅に到着
2021年に開業した台中MRTは自動運転
水安宮駅で下車。ここから東へ30分ほど歩く

 ひたすら東へ歩き英才路に到着。正直、歩くには少々厳しいと感じたが選択肢の1つとしてはありだと感じた。

 英才路には原價屋は2店舗あるが、基本的にどこで購入しても同じだ。そのため空いている店舗を選べば良いだろう。

原價屋 台中英才店
原價屋 台中英才二店
原價屋 台中英才二店の店員さんのおすすめ「AMD Ryzen 9 7950X」だ。こちらは日本では相場11万後半だが台湾では10万後半と約1万円安くなっている。また、原價屋でRyzen 9を購入するとRyzenヘルメットがノベルティとして貰えるそうだ

 英才路にはほかにNOVAといった台北で言う光華商場のようなモールがある。ここでもPC関係のパーツは一通りそろえることができるため活用していきたい。

NOVAといえば台北駅にあったがすでに閉店している
NOVA内のPCパーツショップ

 さて、帰路である。さすがにまた30分歩くのは厳しいため、帰りはバスと台湾鉄道(在来線)を使って移動することにした。

 バスについては、バス停の中正國小から台中駅へ向かう300番、309番、310番といったバスが便利だ。

 バスが台中駅に到着したら台湾鉄道で台湾高速鉄道に接続している新烏日駅まで移動すれば後は帰るだけだ。筆者としてはこちらのルートの方が楽なので行きも帰りもこちらがおすすめだ。

 今回筆者は台湾高速鉄道乗り放題パスを所持していたため、意地でも乗る覚悟で移動をしたが、そうでない場合は台湾鉄道(在来線)の自強号(日本で言う特急相当)で台北まで帰っても良いかもしれない。

英才路近くにあるバス停、中正國小。なお、近づくバスに手でアピールしないと止まってくれない
台湾鉄道(在来線)の台中駅

思ったより安い台湾のPCパーツ

 すでに原價屋のリストで価格をチェックした読者ならお気づきだろうが、製品によっては日本より安く買えることが分かるだろう。また、日本で入手できない製品もあるためほかの人と差別化したいという読者は台湾でのPCパーツ購入にチャレンジしてみる価値はあるはずだ。

 その一方で、基本的には並行輸入品と同じため、日本国内でのサポートは一切ない。台湾での保証はあるが修理品の発送等を考えると、台湾在住の知人が居なければ厳しい道のりになることは確かだ。このあたりのリスクを受け入れられるかどうか、購入前に覚悟をしておく必要がある。

最後に

 筆者としては久しぶりの台湾だったが、PCパーツに限らず台湾にも日常が戻ってきていると感じた。一方士林夜市など観光客で成立している場所については完全に復活しているとは言えなかったが、それも10月13日からの緩和により解消されていくことに期待していきたい。

士林夜市の地下の現状。5~6割の店舗が稼働している状況だった。

 今回は目的の商品の取り扱いの関係もあり原價屋を中心に紹介をしていったが、突然の申し出にも対応してくれた各地のスタッフの皆さんにこの場を借りてお礼を申し上げたい。

 次は筆者も自分のためのパーツを買いに再び訪れたいと思う。