買い物山脈

実測約8Gbps!自宅回線をNTTの10Gbpsサービスに変更したらSSD並みの爆速に

「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです
筆者のメインマシン環境

 NTT東日本が提供する最大10Gbpsの光回線「フレッツ光クロス」を自宅に引いた。結果、約8Gbps(1GB/s)というSSD並みの回線速度を得ることができた。持て余すほどの速さであり、個人宅でこれだけのサービスが受けられるようになったことに感動すら覚える。本稿では、申し込みから開通までの流れや、実際に試してみて分かった超高速回線の実態などを説明する。

回線速度計測の結果

1Gbpsのフレッツ光ネクストから10Gbpsのフレッツ光クロスに移行

 筆者は自宅回線として長らくNTT東日本のフレッツ光を利用している。当初は最大100Mbpsの速度だった。基本的に数十Mbps出ていれば、仕事をしたり動画などのエンタメを楽しむのにもほぼ支障はないが、回線混雑で10Mbpsを切るようなことが起き始めたので、2017年に最大1Gbpsのフレッツ光ネクストに変更し、加えて回線混雑が少ないv6プラスサービスを追加契約。これで直近は平均して700Mbps速度を得られるようになっていた。

 700Mbpsは87.5MB/sで、ちょっと世代の古いHDD並みの速度だ。4K動画視聴で推奨される帯域はNetflixの場合で15Mbps、YouTubeの場合で20Mbpsとなっているので、700Mbpsあれば、4K動画を複数人/複数デバイスで同時視聴しても全く問題ない。ゲームの場合は帯域よりも遅延の方が重要だが、v6プラスで有線接続なら速度テストでの遅延(ping)は3~4ms程度で、これも非常に優秀だ。

1Gbpsのフレッツ光ネクストでの速度計測結果は700~800Mbps程度。これでもかなり高速な部類だ

 ただ、それでも、19~22時くらいのゴールデンタイムになると、日によっては100Mbpsを切ることもあった。筆者は、eスポーツ関連の配信を毎週行なっている。現在、リモートで各演者をつないでいるのだが、ワイプの画質を上げるのと、レイアウトの柔軟性などの観点から、VDO Ninjaというサービスを使っている。

 VDO Ninjaは、各映像フィードのビットレートを自由に指定できるので、1人につき3Mbpsを割り当て、4人分を表示させているのだが、この際に、ネットが重い日だと帯域が足りず、映像が荒くなることがあった。ニッチな問題だが、仕事でやっている以上、できることなら改善したいと考えていた。

 そんな中、これまで戸建て向けだけに提供されていたNTT東日本の10Gbps回線接続サービスであるフレッツ光クロスが、集合住宅向けにも9月から提供開始となったのだ。

契約/回線のスムーズな移行ができないなど注意点も

 フレッツ光クロスの回線引き込みにあたって、マンションの共有設備の変更が必要な場合もあると聞いていたので少し様子を見ていたのだが、特に設備変更しなくても行けそうだという情報が得られ始めたので、9月中旬に筆者も現在契約しているniftyに「@nifty光プロバイダコースv6高速10ギガプラン」の申し込みを行なった。ちなみに、v6高速10ギガプランの申し込みはWebでは受け付けておらず、電話のみとなっている。

 そこで係の人から伝えられたのが、現在の1Gbpsの回線を、即座に10Gbpsに切り替えることはできないということだった。どういうことかと言うと、現在の契約をそのままに10Gbpsに移行すること自体はできるのだが、新回線への切り替え処理に2~3日かかるという。つまり、数日間、ネットを使えなくなってしまうのだ。

 在宅で毎日仕事をしている筆者としてこれは受け入れられない。その数日だけスマホでテザリングということも一瞬考えたが、容量や速度の点で不十分だ。

 そこで、niftyの人から提示されたのが、10Gbps回線を2つ目の回線として新規に契約し、開通したら元の1Gbps回線を解約するというものだ。これなら、不通の期間はなくなる。

 ただし、回線が二重に存在する期間はその分料金が増す。また、筆者の場合、niftyのメールアドレスを全くと言っていいほど使っていなかったので個人的には問題にならなかったが、niftyのIDも変わるので、メールアドレスも基本的に変更になり、いろいろな契約にそのアドレスを使っていると変更手続きに煩わされることになる。

 結論として筆者は、2つ目の回線としてフレッツ光クロスを申し込むことにした。お金を払って不通期間をなくす形だ。なお、筆者は@nifty光3年プランを契約している。ちょうど12月に満3年となるので、12月に解約することで違約金は発生しなくなるが、そうでない場合、最大2万2,000円の違約金が発生する点にも注意が必要だ。

申し込みから開通までの流れ

 最初の申し込みはniftyに行なったが、回線工事の申し込みは別途NTT東日本にしなければならないと伝えられた。こちらはWebからでも申し込みでき、翌日NTT東日本の担当者から電話があった。

 そこで伝えられたのが、2回線目を引き込むにあたり、マンションの管理会社から許諾を得る必要があるということだった。と言うことで、マンションの管理会社に電話したところ、無事許可をもらえた。マンションによっては、ここでダメになる場合もあるかもしれない。

 後日、2回線目の許諾を得られたことをNTT東日本の担当者に電話で伝えたところ、工事日を決める段取りへ進んだ。この電話をしたのが9月25日だったが、マンションの共有設備への工事もあるため、管理人が立ち会えることも前提となり、最速で10月25日の工事が可能とのことだったので、それで申し込んだ。また、その工事費として1万6,500円がかかることも告げられた。

 後日、NTT東日本から契約について封書が届いた。今度は、ここに記載されている「お客様ID」と工事日をniftyに電話で伝える必要がある。その後、niftyからも新規契約の封書が届く。

 また、それぞれの封書に同封の書類を元に、支払い契約も行なう必要がある。フレッツ光ネクストの時は、回線利用料もまとめてniftyからの請求だったが、フレッツ光クロスでは、回線利用料はNTT東日本に支払い、プロバイダ利用料をプロバイダ(nifty)に支払う形となる。それぞれ月額で、6,600円と2,200円となる。

 フレッツ光ネクストの時は3年契約による割引きもあって4,268円だったが、それと比べると月額の負担は2倍ほどになる。個人的には10倍の帯域なので、妥当なところだと思う。

 工事日当日についてだが、まず、本来10月25日の予定だったものが、前日に工事業者から電話があり、共有設備についてのなにかしらの事前段取りがうまくいかなかったので延期させてほしいと言われ、3日後の28日に工事となった。

 たいていの場合は、コンセントを光ファイバーの差し込み口と電気のコンセントが一体化した光コンセントへと取り替えるのだが、筆者宅はすでに光コンセントになっており、そこから光ファイバーが1本出ていたので、光コンセントの隙間から2本目を引き出し、別途光ファイバー専用のコンセントを横に取り付ける形となった。

左側の「光」と記されたケーブルはもともとの光ファイバー。この光コンセントの中から、増設した光ファイバーを引き出し(赤丸のところ)、もう1つの光コンセントを右側に増設した。やや無理やり感はあるが、言われなければさほど不自然ではないし、2回線を引くときは基本的にこうなるらしい
元のルーター(左側)と比べるとかなり大きいが、設置面積はさほど変わらない
新たに設置された10Gbps対応ONU(左)も、旧ONU(右)より一回り大きい

 実は、1本目を引き込んだ際、配管が狭いとかで業者の方が苦労していたので、果たして2本目が通せるのか一抹の不安があったのだが、30分ほどで無事光ファイバーの引き込み工事はすんなりと終わった。

10Gbps対応のルーター、LANカード、スイッチを購入

 工事日にあわせて、事前に10Gbps対応のルーター、LANカード、スイッチを購入していた。ルーターはNECプラットフォームズの「Aterm WX11000T12」、LANカードはASUSの「XG-C100C V2」、スイッチはTP-Link「TL-SX105」で、購入価格はそれぞれ約5万5千円、約2万円、約3万3千円だった。

NECプラットフォームズの「Aterm WX11000T12」。WAN/LAN用に1つずつ10Gbpsポートがあり、無線は最新のWi-Fi 6Eに対応

 ルーターが5万円超えというのは正直高いと思う。細かな違いはあるが、WAN/LANとも10Gbps対応という点で近いスペックのアイ・オー・データ機器やバッファローの製品はこれより2万円ほど安い。それでもNECプラットフォームズの製品を選んだのは、これまでも同社製品を使っていて、極めて安定していたからだ。また、Wi-Fi 6Eに対応しているというのもある。

 Aterm WX11000T12についても、これまで1カ月ほど使っていて、有線、無線とも、急に切れたり止まったりということは一度も起きていない。性能については後に詳しく述べるが、最大10Gbpsの性能をフルに発揮してくれている。

 ちなみに、想定していなかった点で役に立ったのが、Wi-Fi設定引越し機能だ。これは業界標準のWPS機能を元にしたもので、他社のルーターにも広く搭載されている。過去、筆者がルーターを買い換えた時は、さほど子機が多くないこともあって、手作業で新しいSSIDとパスワードを設定していた。

 ルーターのパスワードは十数桁の英数字で、PCやスマホであっても入力はそこそこ面倒。だが、より問題なのはIoT機器の類いだ。現在、筆者のルーターには有線/無線含め、28台の子機が接続されており、その内12台がいわゆるIoT機器だ。これらは単独でネットワーク接続できず、個別のスマホアプリ経由などで設定してやる必要がある。これを1つ1つやるのは相当面倒だ。

 ということで、Wi-Fi設定引越し機能を使ってSSIDとパスワードなどを引き継ぐことで、それらの設定作業を行なわずに済んだ。ただ、子機の接続の許可を個別に管理する「見えて安心ネット」機能については、接続している子機の名称を引き継げないので、筆者のように律儀に管理したいという人は、面倒な手入力をしなければならない。

 また、接続子機のMACアドレス制限は、以前の機種はメイン画面で設定していたが、Aterm WX11000T12では見えて安心ネットで行なうように変更されている。前のモデルでオンにしていたのだが、Wi-Fi設定引越し機能利用後、見えて安心ネットではデフォルトでそれがオフになっていたので注意が必要だ。

 プロバイダへの接続について、v6プラスでは、ルーターにユーザー名やパスワードを設定する必要はなく、電源をオンにしてケーブルを接続すればもうつながる。

ASUSのPCI Express 10Gbps対応LANカード「XG-C100C V2」

 ASUSのLANカード「XG-C100C V2」は、10Gbpsに対応するMarvell製コントローラ「AQC113CSを」を搭載する。接続はPCI Express x4で、マザーボードに取り付け、ASUSのサイトからドライバをダウンロード、インストールすればいい。

 なお、筆者はBitLockerを有効にしていたのだが、LANカードを取り付けると、起動時に回復キーの入力を求められるようになった。この時、そのまま回復キーを入力してエンターキーを押しても、次回起動時に同じ画面が出るので、一度ESCキーを押して回復オプション画面に移動してから、回復キーを入れれば、以降は入力しなくて済む。

BitLocker回復キーの画面はブルースクリーンのようで、いきなりこれが出ると、正直心臓に悪い
ネットワークのプロパティでリンク速度が10Gbpsになっている
TP-Linkの10Gbps対応5ポートスイッチ「TL-SX105」

 現状、筆者宅で10Gbps対応機器はXG-C100C V2を搭載したメインPCのみ。Aterm WX11000T12は、WANとLANに10Gbpsが1つずつあるので、PCはルーターに直結して、その他の機器は、ルーターの1Gbps LANポートに1Gbpsのスイッチをつないで、その配下に接続するのでも構わない。

 ただ、今後も10Gbps対応製品を買うかもしれないし、10Gbpsまで行かなくても、最近は2.5Gbps対応製品がゲーマー向けのものを中心に増えているので、そういったものを見据えたのと、筆者宅のPC回りの配線の理由から、スイッチも10Gbps対応のものに買い換えた次第だ。

実測で7Gbps超えを確認。Wi-Fiデバイスもギガ越え

 最大1Gbpsの回線から10Gbpsの回線になったことで、冒頭にも述べた通り、実効速度も10倍程度高速化され、上り、下りとも8Gbps近い速度が得られるようになった。

 ちなみにこの測定結果は、speedtest.netのWindows用デスクトップアプリで計測したものだ。と言うのも、これまではアプリをわざわざインストールせず、サイト上で計測していた。10Gbpsに変更した後もそうやって測ったところ、最大で4Gbps程度の数値が出ていた。これでも十分速いのだが、計測時にCPU負荷が90%くらいにまで上がっているのに気付いた。

 何かがボトルネックになっているのではと思った。と、同時に計測アプリが公開されていることも気付いたので、ダウンロードして測ってみたところ、約8Gbpsという、おそらく10Gbps回線の実効値として最大の結果が得られたのだ。ちなみに、このアプリを使って計測して時のCPU負荷は60%程度だ。

 冒頭で紹介したVDO Ninjaについても、安定して高画質な映像が得られるようになった。

 回線変更で恩恵を得られたのは、ネットワークカードを変更したデスクトップPCだけではない。ノートPC、スマホも高速化された。というのも、最新のWi-Fi 6だけでなく、1つ前のWi-Fi 5においても、無線で1Gbpsどころか規格上は6.9Gbpsまで出せる。ノートPCやスマホでは搭載できるアンテナ数が少ないので、これよりは性能は落ちるが、それでも1Gbpsを超える速度で通信できるのだ。

 手元のノートPCで通信速度を計測したところ、回線が1Gbpsの時は、下り400Mbps、上り350Mbps程度だった。これが10Gbps回線になったことで、下り上りとも約1Gbpsにまで高速化された。また、以前のルーターはWi-Fi 5までの対応だったのだが、Wi-Fi 6にして(と言っても、ルーターがWi-Fi 6対応なら、対応するノートPCやスマホも自動でWi-Fi 6でつながる)測定したところ、下り約1.2Gbps、上り約1.8Gbpsという速度が出た。Wi-Fi 6対応のPixel 7 Proでも同等の速度が出ている。つまり、1Gbpsの回線では、ノートPCやスマホのWi-Fi帯域を生かし切れていないということだ。

1Gbps環境でのノートPC(Wi-Fi 5)での速度
10Gbps環境でのノートPC(Wi-Fi 5)での速度
10Gbps環境ででのノートPC(Wi-Fi 6)での速度

 回線速度が大幅に向上して非常に満足しているし、個人でも8Gbps近い速度の回線サービスが使えるようになったことに驚く人も多いと思う。ただ、この最大8Gbps程度という数字がそのまま従来のサービスに当てはまるのかといえばそうではないことに留意が必要だ。と言うのも、大抵のネットワークサービスは各家庭(回線)ごとに帯域を絞っているからだ。たとえば、OneDriveからのファイルのダウンロードでは、70Mbps程度しか出ない。帯域幅がかなり広いと思われるSteamでも、1.3Gbps程度だった。

Steamでのダウンロード速度は、最大で1.3Gbps(170MB/s)。約68GBのCyberpunk 2077が10分で落とせた

 それまでの最大1Gbpsの回線ではなし得なかった1Gbps超えの性能を実現していて、68GBのゲームをたった10分で落とせるなど、それ自体は非常に素晴らしいものなのだが、回線の最大速度にはほど遠い。また、Steamほど高速な一般消費者向けのネットワークサービスはかなり限られると思われる。つまり、常時インターネット経由でSSD並みの転送速度が得られるわけではない。

 ただ、10Gbps回線の強みは、5~6台のデバイスで同時に1Gbpsクラスの通信を行なってもボトルネックが発生しないことにもある。特にヘビーユーザーが複数いるような家庭ではきっとこの最大速度は重宝するだろう。

 筆者の場合は、回線工事費も含め、初期費用として約12万円ほどかかったが、有線を1Gbpsで我慢すれば、WANが10Gbps対応のルーターに買い換えるだけなので、工事費とルーター代で4万円以内に収まる。フレッツ光クロスの提供範囲はまだ大都市に限定されているが、在宅勤務者やハードコアゲーマーなどにはぜひオススメしたい。