井上繁樹の最新通信機器事情

ネットギア「Nighthawk X4 R7500」

~11ac-1733Mbps対応、USB 3.0&eSATA端子、DDNSドメイン1つ無料

 ネットギアの「Nighthawk X4 R7500」は、最大接続速度1,733MbpsのIEEE 802.11acに対応した無線LANルーターだ。搭載しているUSBポート2つがすべてUSB3.0で、さらにeSATA端子を搭載するなど、NAS機能の速度にも重点が置かれている製品だ。

概要

 「Nighthawk X4 R7500(以下「R7500」)」は、最大接続速度1,733MbpsのIEEE 802.11ac(以下「11ac」)と、最大接続速度600MbpsのIEEE 802.11n(以下「11n」)に対応した無線LANルーター製品だ。有線LANポートはすべて1Gbps対応で、WAN×1、LAN×4となっている。ストレージなどを接続できる外部接続端子は、USB 3.0端子を2つ、eSATA端子を1つ搭載している。

 価格はオープンプライスで、実売価格は26,000円前後だ。CPUにデュアルコアのCortex-A15を備えており、外部ストレージ用インターフェイスにUSB 3.0やeSATAを備えるなど、ハイエンドな部類に属する。

R7500本体。天面中央にロゴ、正面に近い側に動作ランプとボタンが1列に並ぶ。左から、電源、ネットワーク、2.4G、5G、USB1、USB2、mSATA、有線LAN 1~4、無線ボタン、WPSボタン
正面は排気口
背面。アンテナ端子が2つ等間隔に並ぶ。アンテナ端子の間に、左から、LEDスイッチ、Resetボタン、有線LAN端子1~4、有線WAN端子、DCコネクタ、電源ボタン
正面から見て右側面。左からmSATA端子、アンテナ端子。それ以外の面は排気口
左側面。左からアンテナ端子、USB 3.0端子1と2。右側面と同じく、それ以外は排気口
底面。SSID、暗号化キー、シリアル番号、MACアドレス、ルーター管理者名とパスワードが印刷されたシールが貼られている。中央には壁掛け時に使用する穴が2つ並んでいる
アンテナを取り付けた状態(横置き時イメージ)。アンテナは90度折り曲げることができ、回転も自在
同じくアンテナを取り付けた状態(壁掛け時イメージ)
同梱のアンテナには番号シールが貼られている。取り付け位置は、背面2本が「1」、正面から見て左側面が「2」、右側面が「3」
同梱物一覧。専用アンテナ4本、冊子類、有線LANケーブル、ACアダプタ

 大きさは、285×184.5×50mm(幅×奥行き×高さ)、本体重量は750gとなっている。アンテナは刀剣のような形状で4本。本体背面(横置き時)に2本、側面後部側にそれぞれ1本ずつ装着する。本体デザインはスポーツカーのボンネットより前を切り取った箱のような形状で、天面以外すべてに排気口がある。横置き時に底面にあたる部分には、釘の頭等を引っ掛けて使う壁掛け時用の穴が2つある。

 本体天面にあるランプ類白色LEDでかなり明るい。点灯のさせ方は、点灯、トラフィックに応じて点滅、電源ランプ以外は消灯の3種類から選んで設定できる。設定次第で、壁掛け時などちょっとした常夜灯としても使えそうだ。

 搭載されている主な機能として、接続したストレージを使う、LAN内のファイル共有、メディア(DLNA)サーバー、HTTPサーバーやFTPサーバーを使ったオンラインストレージ、無料で利用できる専用サービスを含む3つのサービスに対応したダイナミックDNSクライアント、サービスの種類に応じて優先度を自動で設定するダイナミックQoS、スケジュール設定可能なアクセス遮断機能など。

管理画面、アプリと速度設定

 R7500はWebベースの管理画面(「www.routerlogin.net」で開ける)に加え、PC、Mac、Android、iOSに対応した専用のアプリ「genie」から操作できる。アプリ版のgenieではネットワークマップがグラフィカル表示されるほか、AndroidやiOS版では接続設定をQRコード表示できたり、メディアプレイヤー機能も組み込まれるなど、環境に合わせた機能面の強化がされている。アプリはほかに、R7500に接続したストレージに対応したバックアップ&リストア「ReadySHARE Vault」(Windows版のみ)が無料で利用できる。

ルーターセットアップ時に、ルーター管理用のアプリ「genie」とバックアップ用のアプリ「ReadySHARE Vault」のダウンロードを薦められる
genieのネットワークマップ表示。Webの管理画面には無いグラフィカル表示
こちらはiOS版アプリのネットワークマップ表示
ReadySHARE Vaultのトップ画面。R7500に接続したUSBストレージを使ってバックアップができる
初期設定中でも最新ファームウェアがあればインストールを薦めてくる
初期設定が完了すると、ユーザー登録ページにリダイレクトされる
Web版管理画面トップ。「基本」モードの表示はシンプル
iOS版アプリの画面。接続設定のQRコード表示など、スマートフォンやタブレットPCに便利な機能を搭載
こちらは「高度」モードのWeb版管理画面トップ。MACアドレスやIPアドレスが確認できる
無線LANの最大接続速度は2.4GHz帯が600Mbps、5GHz帯が1,733Mbps

 無線LAN機能についてだが、11ac(5GHz帯)の最大接続速度は347/800/1,733Mbpsの3種類、11n(2.4GHz帯)の最大接続速度は54/289/600Mbpsの3種類から選択できる。残念ながら記事執筆時点では1,733Mbpsの11acに対応した無線LAN子機は登場しておらず、600Mbpsの11nに対応した無線LAN子機もまだ少ないこともあり本領を発揮できるのは先のことになる。無線LAN親機同士を使って中継接続を行なうので無い限り、ASUS「PCE-AC68」を使った11ac-1.3Gbpsが現時点では最速だ。

ベンチマーク

 測定には2台のWindows 8.1(64bit)搭載PCを使用した。いずれもメモリは8GBでストレージはSSD。測定方法はiperf(jperf 2.0.2)を使う方法と、CrystalDiskMark 3.0.3(以降「CDM」)でネットワークドライブを測定する方法の2種類。

 測定したのは、1台を1Gbpsの有線LANでR7500で繋いで、もう1台を11ac-1.3Gbpsで接続した場合と、11n-300Mbpsので接続した場合の2パターン(いずれも無線LAN子機にASUS PCE-AC68使用)に加えて、2台とも1Gbps有線LANで接続する場合、さらに、1台が11ac-1.3Gbpsでもう1台が11ac-867Mbps(無線LAN子機はNEC Aterm WL900U)で接続する場合の計4パターン。

【表1】PC間のiperf速度測定結果(Mbps)
接続11ac-1.3Gbps11n-300Mbps11ac-1.3Gbps&
11ac-867Mbps
1Gbps
平均368Mbps155Mbps213Mbps873Mbps
最高412Mbps179Mbps230Mbps898Mbps
11ac-1.3Gbps時のiperf速度測定結果

 iperfの測定結果は表1の通りで、11ac-1.3Gbpsでは平均368Mbps、最高412Mbps、11n-300Mbpsでは平均155Mbps、最高179Mbps、11ac-1.3Gbpsと11ac-867Mbpsの無線-無線通信では平均213Mbps、最高230Mbps、1Gbpsの有線-有線通信では平均873Mbps、最高898Mbpsだった。

【表2】PC間のCDM速度測定結果(Mbps)
接続11ac-1.3Gbps11n-300Mbps11ac-1.3Gbps&
11ac-867Mbps
1Gbps
リード422Mbps86Mbps205Mbps709Mbps
ライト271Mbps153Mbps179Mbps642Mbps
11ac-1.3Gbps時のCDM速度測定結果

 CDMの測定結果は表2の通りで、11ac-1.3Gbpsでは読み込み422Mbps、書き込み271Mbps、11n-300Mbpsでは読み込み86Mbps、書き込み153Mbps、11ac-1.3Gbpsと11ac-867Mbpsの無線-無線通信では読み込み205Mbps、書き込み179Mbps、1Gbpsの有線-有線通信では読み込み709Mbps、書き込み642Mbpsだった。

新機能Dynamic QoS、セキュリティ、USBストレージ、リモートアクセス

 ネットギア製無線LANルーター製品として、新たに搭載した機能の1つが「Dynamic QoS」だ。Dynamic QoSはサービスの種類や接続機器によって通信の優先度を設定する機能だ。インターネットの速度測定や、オンラインのパフォーマンス最適化データベースを利用して、サービスごとの優先度を設定する。

QoS機能には、AndroidやiOS端末でお馴染みのスピードテストアプリの機能が組み込まれた
ワイヤレスAPとして使用する場合の図説。以前のモデルからあるが、ルーターのイラストはR7500のものになっている
接続デバイス一覧。接続形態、アイコン付きで表示
アクセス制御。デバイス名やMACアドレスを確認しながら接続の遮断設定ができる
セキュリティ機能のスケジュール設定。外出する時間帯に特定サービスをブロックする等の使い方ができる
ログ表示画面。フィルタ機能を使えば必要なログだけを表示できる

 R7500は高機能で高速な無線LANルーター製品ということで、親機として使うことがほとんだと思われるが、有線LANルーターに繋いでワイヤレスAP(アクセスポイント、無線LANブリッジ)として使うこともできる。その際に必要な設定や、ケーブルの繋ぎ方の確認は、管理画面の「ワイヤレスAP」の項目にある。

 接続している機器は接続形態とともに、コンピューター名、IPアドレス、と共にアイコンも表示されるようになった。現時点ではPlayStation 4が任天堂の旧ゲーム機状アイコンで表示されるなど、ちょっとドキッとするようなこともあるが、今後改善されていくだろう。

 セキュリティ系の機能は、特定のサイトへのアクセスを遮断する「ブロックサイト」、特定のサービスの通信を遮断する「ブロックサービス」、一覧表示された接続機器の中から選んで接続の可否を設定できるアクセス制御機能など。遮断するタイミングは週間スケジュールで設定できる。その他のセキュリティ系機能として、設定したスケジュールに従ってログを送信するメール通知機能がある。

接続したUSBストレージは共有フォルダやDLNAサーバーのほか、インターネット経由でのアクセスできるオンラインストレージとしても利用できる
インターネット経由でブラウザ上からUSBストレージに接続した画面
対応するダイナミックDNSサービスは3種類。NETGEAR DDNSを選択すると、ドメインを1つ無料で利用できる

 接続したUSBストレージはWindowsなどのPCからアクセスできる共有フォルダとして利用できるほか、DLNAサーバー機能を通じてLAN内のDLNA対応機器にファイルを配信できる。HTTPサーバーとFTPサーバーも搭載しており、インターネット経由で出先からアクセスすることもできる。

 「No-IP」や「DynDNS」などのダイナミックDNSサービスを利用すれば、固定ドメインで外部からUSBストレージにアクセスできる。また、製品ユーザーであれば末尾が「mynetgear.com」の専用ドメインを無料で1つ登録して利用できる。

【表3】USB 3.0メモリの速度測定結果(Mbps)
接続11ac-1.3Gbps11n-300Mbps1Gbps
リード156Mbps74Mbps369Mbps
ライト71Mbps69Mbps72Mbps

 接続したUSBストレージ(USB3.0対応USBメモリ)のCDM速度測定結果は表3の通り。11ac-1.3Gbpsでは読み込み156Mbps、書き込み71Mbps、11n-300Mbpsでは読み込み74Mbps、書き込み69Mbps、1Gbps有線LANでは読み込み369Mbps、書き込み72Mbpsだった。

まとめと感想

 R7500の特徴を1つ挙げるとすれば速度だろう。最大1,733Mbps対応の11ac、無線LAN親機ながらUSB端子は全てUSB 3.0対応で2ポート搭載しており、前代未聞のeSATA端子の搭載、ちょっと前のめり気味に感じるくらい速度にこだわった仕様になっている。

 ベンチマークの結果を見ると、11acについてはiperfで最高412Mbpsで、もう少し出てもいいかな?と思われる速度ではあったが、本来の性能を発揮できていない1.3Gbps接続での数字を考えれば十分納得できるだろう。USB 3.0メモリを使ったNAS機能の速度測定結果では1Gbps有線LAN接続時で読み込み369MbpsとNAS専用機並の数字も出ているのを見ると、ポテンシャルに見合った対応機器が出てきた時の伸びしろが期待できそうだ。つまり、性能を追求するハイエンドユーザーにとって、満足できる製品だと言えるだろう。

(井上 繁樹)