ソニー「VAIO F VPCF219FJ/BI」
~4倍速3D液晶搭載のプレミアムAVノート



ソニー「VAIO F VPCF219FJ/BI」

3月下旬 発売

価格:オープンプライス(実売249,800円前後)



 ソニーは、プレミアムAVノート「VAIO F」シリーズの2011年春3Dモデルを発表した。地デジダブルチューナーやBlu-ray Discドライブを標準搭載するなど、従来からの優れたAV性能を受け継ぎつつ、Sandy Bridgeベースのシステムを採用することで、更なる進化を遂げている。また、最大の特徴としてシリーズ初となる3D液晶を採用し、大きく魅力が向上している。今回、VAIO F 3Dモデルの店頭販売モデルとなる「VPCF219FJ/BI」の試作機を試用する機会を得たので、詳しく紹介していこう。

●シリーズ初、4倍速駆動対応の3D液晶を採用

 VAIO Fシリーズ3Dモデルとなる「VPCF219FJ/BI」の最大の特徴は、なんといってもシリーズ初となる3D液晶を採用している点だ。採用している3D表示方式は、アクティブシャッターメガネを利用する、いわゆるフレームシーケンシャル方式で、NVIDIAの3D Visionをベースとしている。ただ、一般的な3D Visionとは、仕様面が若干異なっている。

 まず、利用しているアクティブシャッターメガネが、3D Visionで広く利用されているものではなく、ソニーの液晶テレビ「3D BRAVIA」シリーズで利用されている、ソニー独自のアクティブシャッターメガネ「TDG-BR100」を採用し、トランスミッターも本体に内蔵。TDG-BR100は、一般的なアクティブシャッターメガネよりも、偏光膜を省くことで光の透過率が高められており、3D視聴時の輝度低下が少ないという特徴がある。実際にTDG-BR100を利用し、VPCF219FJ/BIでBlu-ray 3Dなどの3Dコンテンツを視聴してみたが、輝度の低下はかなり少なく、非常に明るい3D映像が楽しめた。

 また、3D表示時に映像が2重に見えてしまう、いわゆるクロストークもほとんど感じられない。ここにも、VPCF219FJ/BI独自の特徴がある。VPCF219FJ/BIでは、3D表示時に120Hz駆動で左右の目に対応する映像を交互に表示するのではなく、左右の画像を1/240秒間表示するとともに、左右の映像の間に黒の画像を1/240秒間表示させ、黒の画像を表示させている間はバックライト輝度を低下させることで、クロストークを大幅に低減している。そのためVPCF219FJ/BIでは、240Hz駆動に対応する液晶パネルを採用している。実際に3D映像を見ても、非常にくっきりとした3D映像が楽しめた。

 ただ、偏光膜のないアクティブシャッターメガネを採用しているために、見る角度が変わると若干色味が変わったり、頭を動かした時などにクロストークが感じられる。これは、3D BRAVIAでも指摘されていることだ。そのため、一般的な3D Visionと比べると、きれいに立体視できる範囲が若干狭く感じられる。それでも、定位置では明るくクロストークの少ない3D立体視が楽しめる点は大きな特徴であり、数多く登場している3D対応PCの中でも、3D表示品質は高い部類に入ると考えていい。

 3D表示に対応するコンテンツは、Blu-ray 3Dや、BSやCS放送で行なわれている3D放送などの映像に加え、ソニーのデジタルカメラ「サイバーショット」シリーズの一部で撮影できる3D静止画の表示に対応。また3D Visionをベースとしていることから、多くのゲームでも3D表示が楽しめる。さらに、2D-3D変換機能も用意されており、DVDや内蔵地デジチューナのTV放送も3D表示で楽しめる。2D-3D変換は、キーボード上部の3Dボタンを押すだけでよく、すぐ切り替えられる点も嬉しい。

 液晶パネルの仕様は、1,920×1,080ドット表示対応の16型パネルで、従来モデル(16.4型)よりわずかに小さくなっている。パネル表面は低反射コートが施されており、光沢パネルに比べると若干、発色の鮮やかさで劣る印象を受ける。とはいえ、その差はわずかなもので、発色は十分に鮮やかで表示品質は十分に満足できるレベルだ。ただ、上下の視野角はやや狭い。また、液晶パネル上部中央には、有効画素数131万画素のWebカメラ("Exmor" CMOSセンサー)を搭載している。

1,920×1,080ドット表示対応の16型液晶。240Hz駆動に対応しており、3D表示時でもクロストークが大幅に低減されているソニー独自のアクティブシャッターメガネ「TDG-BR100」が付属。偏光膜が省かれており、3D視聴時でも明るく見えるのが特徴。ただし、首を曲げたりすると若干色味が変わるなどの問題もある3D表示システムは、NVIDIAの3D Visionが利用されている
キーボード上部の「3D」ボタンを押すと、2D-3D変換表示が行なわれる。DVDや地デジ放送などで利用可能だBlu-ray 3Dの表示はもちろん、サイバーショットで撮影した3D静止画の表示も可能。また、3D Visionを利用したゲームの3D表示にも対応液晶中央上部には、有効画素数131万画素のWebカメラ("Exmor" CMOSセンサー)を搭載

●優れたAV性能を標準搭載

 VAIO Fシリーズは、優れたAV性能を備える点が特徴だが、もちろんVPCF219FJ/BIにもその点はしっかり受け継がれている。

 光学式ドライブにはBlu-ray Discドライブを標準採用。先ほど紹介した3D液晶と合わせ、Blu-ray 3Dの再生ももちろん可能。

 また、地上デジタルダブルチューナを搭載し、裏番組録画や2番組の同時録画に対応するとともに、VAIO AVC トランスコーダーを2系統搭載しており、2番組同時の長時間AVC録画をサポート。TVの視聴・録画ソフトには、VAIOシリーズでおなじみの「Giga Pocket Digital」が採用され、好みのジャンルやキーワードを登録しておけば自動的に番組が録画される「おまかせ・まる録」、録画番組を盛り上がりシーンのみを抽出して再生する「ダイジェスト再生」といった機能にも、もちろん対応している。録画番組は、BD-Rなどにダビングするのはもちろん、メモリースティックに書き出してPSPや他のVAIOで再生したり、ウォークマンなどの携帯機器に転送して楽しむことも可能だ。

 さらに、HDMI出力はHDMI 1.4に対応しており、3D映像信号の出力に対応。3D TVに接続すれば、大画面で3Dコンテンツが楽しめる。この点も、従来モデルにはない特徴の1つだ。

Blu-ray Discドライブを標準搭載。Blu-ray 3Dの再生や、内蔵地デジチューナで録画した番組のダビングが可能地デジダブルチューナを搭載するとともに、VAIO AVC トランスコーダーも2系統搭載しているため、2番組同時の長時間録画も可能だ内蔵地デジチューナ用のアンテナは、専用の変換ケーブルを利用して接続する
バッテリスロット奥にminiB-CASカードスロットが用意されている付属のリモコンを利用すれば、民生用のBDレコーダ感覚でTVが楽しめる
付属リモコンだけでなく、キーボード上部の「AVタッチセンサー」でもAVファイルの再生コントロールが可能左側面に用意されているHDMI出力は、HDMI 1.4対応で、3D映像信号の出力が可能。3D TVに接続すれば、大画面で3Dコンテンツを楽しめる

●Sandy Bridge採用で優れたパワーを実現

 では、基本スペックを確認していこう。

 CPUは4コア8スレッド処理に対応するCore i7-2630QM(2GHz)を、チップセットはIntel HM65 Expressをそれぞれ採用。メインメモリは、PC3-10600準拠DDR3 SDRAMを標準で4GB搭載し、最大8GBまで搭載可能。メインメモリ用のSO-DIMMスロットは2スロット用意されているが、標準で2GBモジュールが2枚搭載されているため、8GB搭載するためには標準搭載モジュールを外して交換する必要がある。

 GPUには、NVIDIA GeForce GT 540M(ビデオメモリ1GB)を採用。CPUにはIntel HD Graphics 3000が内蔵されているが、外部GPUとの切り替えは行なえず、GeForce GT 540Mのみが利用される。

 内蔵ストレージは、640GB HDDとBlu-ray Discドライブを標準搭載。HDDは本体底面のフタを開けることで簡単にアクセス可能。無線機能は、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LANとBluetooth 3.0+HSを搭載。

 ちなみに、ソニーストアでのオンライン直販モデルとなるVAIOオーナーメードモデルでは、高速なCPUや512GB SSD、FeliCaポートやTransferJetなども搭載可能となる。

 本体サイズは、398.5×271.5×35~45mm(幅×奥行き×高さ)。わずかではあるが、従来モデルより大きくなっている。重量は約3.2kg。家庭内などで持ち歩く程度であればそれほど苦にはならないかもしれないが、TV機能を利用するにはアンテナケーブルを接続する必要があり、決まった場所に設置して利用するのが基本となるだろう。

 側面のポート類は、左側面に電源コネクタ、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、HDMI出力、Gigabit Ethernet、USB 3.0×2ポートが、右側面にヘッドフォン・マイク端子、USB 2.0×1、地デジアンテナ入力が、正面左側にIEEE 1394、メモリースティックおよびSDカード対応のメモリカードスロットがそれぞれ用意されている。また、正面左には内蔵無線機能のON/OFFスイッチもある。

 キーボードは、従来モデル同様、キーの間が開いたアイソレーションタイプのキーボードを採用。キーピッチは約19mmで、テンキーも用意されており、デスクトップ用キーボードとほぼ同等の感覚で利用できる。ポインティングデバイスは、パッド式のタッチパッドを採用。パームレスト部と一体構造となっているが、ディンプル加工により、操作できる範囲が容易に判断できる。ただ、クリックボタンが左右一体構造になっている点は、少々使いづらく感じた。

天板部分。光沢感の強いブラックボディは、高級感があるフットプリントは、幅398.5mm×奥行271.5mmと、従来モデルより若干大きくなっている。重量は約3.2kgだ本体正面。液晶パネル部分、本体部分とも側面が斜めに切り落とされたデザインが採用され、シャープなイメージとなっている
左側面。高さは、35~45mmと、奥に行くほど高くなっている背面。こちらには端子類は用意されていない。中央にはバッテリが取り付けられている右側面。前面部の、液晶面と本体部がずれたデザインが特徴的だ
左側面には、電源コネクタ、アナログRGB出力、HDMI出力、Gigabit Ethernet、USB 3.0×2ポートが用意されている右側面には、ヘッドフォン・マイク端子とUSB 2.0×1ポート、アンテナ端子が用意されている前面左側には、i.LINK(S400)端子、無線機能のON/OFFスイッチ、メモリースティックおよびSDカード対応のメモリカードスロットが用意されている
メインメモリは、標準で2GB×2枚、4GB搭載。最大8GBまで増設可能だ標準で容量640GBの2.5インチHDDを搭載。HDDには本体底面から簡単にアクセス可能だキーボードは、アイソレーションタイプのフルキーボードを搭載。テンキーも用意されており、デスクトップ用キーボードと遜色のない使い勝手を実現している
キーピッチは約19mm。変則的な配列もなく、操作性は抜群だタッチパッドはパームレスト部と一体構造となっており、操作面はディンプル加工が施されている。クリックボタンが左右一体型となっている点は少々残念付属のACアダプタはかなり大型だ

●優れたパフォーマンスで、AV用途だけでなく幅広い用途に対応

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」と「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Vantage Bulld 1.0.1 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」に加え、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】」、「バイオハザード5ベンチマーク」の6種類。比較として、3D Vision対応ノートである東芝の「dynabook TX/98MBL」と、筆者が利用しているVAIO Z VPCZ11のSPEEDモードの結果を加えてある。


VAIO F VPCF219FJ/BIdynabook TX/98MBLVAIO Z VPCZ11 SPEED
CPUCore i7-2630QM (2.00/2.90GHz)Core i7-740QM (1.73/2.93GHz)Core i7-620M (2.66/3.33GHz)
チップセットIntel HM65 ExpressIntel HM55 ExpressIntel HM57 Express
ビデオチップGeForce GT 540MGeForce GTS 350M(1GB)GeForce GT 330M
メモリPC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2PC3-8500 DDR3 SDRAM 4GBPC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2
ストレージ640GB HDD(HM641JI)640GB HDD(MK6465GSX)SSD(64GB×4 RAID 0)
ゲーム系ベンチは500GB HDD
OSWindows 7 Home Premium 64bitWindows 7 Home PremiumWindows 7 Home Premium 64bit
PCMark Vantage x64 Build 1.0.1 0906a
PCMark Suite7526523511094
Memories Suite492438815518
TV and Movies Suite540138614542
Gaming Suite729250638488
Music Suite6334556011445
Communications Suite6587395310946
Productivity Suite5996397612493
HDD Test Suite3410318016403
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark ScoreN/A6612N/A
CPU Score906775578185
Memory Score878183156398
Graphics Score900155176034
HDD Score51694907N/A
3DMark Vantage Bulld 1.0.1 0906a 1,280×1,024ドット
3DMark Score46022254
GPU Score35951807
CPU Score287728701
3DMark06 Build 1.1.0 0906a
3DMark Score831183765637
SM2.0 Score332833582231
HDR/SM3.0 Score294233972085
CPU Score505232043027
Windows エクスペリエンスインデックス
プロセッサ7.56.56.9
メモリ7.85.55.9
グラフィックス6.56.56.4
ゲーム用グラフィックス6.56.56.4
プライマリハードディスク5.95.87.6
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】
1,280×720ドット43652790
1,920×1,080ドット21631433
バイオハザード5ベンチマーク DX10
(アンチエイリアス:8X、モーションブラー:オン、影品質:高、テクスチャ品質:高、画面クオリティ:高)
1,280×720ドットベンチマークテストA38.718.2
ベンチマークテストB42.422.7
1,920×1,080ドットベンチマークテストA219.8
ベンチマークテストB24.110.9

 結果を見ると、Sandy Bridgeシステムの採用により、処理能力が大きく向上していることがわかる。CPUパワーだけなら、ミドルレンジクラスのデストップPCを凌駕すると言ってもいいだろう。また、描画能力もノートPCとしては十分に高く、軽めの3DゲームならフルHD解像度でも十分快適にプレイできそうだ。とはいえ、非常に高い3D描画能力を要求する最新3Dゲームをプレイするには少々パワーが足りないという印象だ。

 また、3Dゲームのプレイ時のような高負荷時には、空冷ファンの音がかなり大きくなる。しかも、3Dゲームなどの極端な高負荷時だけでなく、TVを見ているときにも空冷ファンの音が大きくなってしまう。AV用途をターゲットとしているノートとしては、この点は少々残念だ。

 モバイルノートではないため、バッテリ駆動時間は重視されないとは思うが、一応バッテリ駆動時間も計測してみた。まず、Windows 7の省電力設定を「省電力」に設定するとともに、バックライト輝度を40%に設定し、無線LANのみを有効にした状態で、BBenchを利用してキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約2時間16分だった。また、Windows 7の省電力設定を「高パフォーマンス」、に設定し、バックライト輝度を100%、無線LANとBluetoothを有効にした状態で、HD動画ファイル(WMV9、ビットレート約8Mbps、1,280×720ドット)を連続再生させた場合には、約1時間22分だった。さすがにバッテリ駆動時間はかなり短いものの、家庭内で別の部屋に移動させて短時間利用するといった程度であれば、全く問題ないだろう。

 VAIO Fシリーズの2011年春モデルであるVPCF219FJ/BIは、従来モデルの特徴である優れたAV性能を受け継ぎつつ、240Hz駆動対応の3D液晶と独自のアクティブシャッターメガネを採用することによる高品質な3D表示に対応するとともに、Sandy Bridgeシステムの採用でパフォーマンスも向上しており、魅力が大きく向上している。販売価格は249,800円前後と、さすがにかなり高価なため、手放しでオススメしづらいのは事実。それでも、ダブル長時間録画対応地デジダブルチューナや3D液晶、Blu-ray Discドライブの標準搭載といった仕様を考えると、この価格も十分に納得できる。優れたAV性能に加え、高品質な3D表示機能を備えるノートPCを探している人にオススメしたい。

バックナンバー

(2011年 3月 24日)

[Text by 平澤 寿康]