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これぞ最高峰の日本式キースイッチ。(ちょっと)安くなったZENAIM KEYBOARD2、今こそ買うべきか?
2025年10月31日 06:31
東海理化から、新型のゲーミングキーボード「ZENAIM KEYBOARD2」が発売された。従来機種となるZENAIM KEYBOARDでは、無接点磁気検知方式の独自キースイッチを採用。プロeスポーツチームのZETA DIVISIONが監修し、1.9mmのショートストロークキーを搭載した。ZENAIM KEYBOARD2でも、この点は踏襲している。
今回はテンキーレスの「ZENAIM KEYBOARD2 TKL」(以下「TKL」)と、よりコンパクトな60%キーボード「ZENAIM KEYBOARD2 mini」(以下「mini」)を同時展開。しかも日本語配列と英語配列もそれぞれに用意されている。ゲーマーには人気が根強い英語配列が、2つのサイズから選べるのも魅力だ。
価格は「TKL」が3万9,600円、「mini」が3万2,780円。価格帯としては最高級クラスの製品となる。2代目ということでどんな製品に仕上がったのか、従来機種との比較も含めて見ていきたい。
ゲーミングデバイスらしからぬ大人向けの外見は健在
筐体は従来機種から継承したアルミ合金フレームを採用。シンプルな曲面のみで構成されたミニマルなデザインは、何かと派手さが目立つゲーミングデバイスらしからぬ雰囲気がある。キーボードバックライトは搭載しており、文字部分が透過して光る。実用性重視なスタンスが見えるデザインだ。
キー配列は、「TKL」は一般的なテンキーレスとは異なり、最上段のファンクションキーの列が隙間なく詰まった形。またF12キーの横に2つの特殊キーが追加されている。奥行きを減らして設置の利便性を高めた形だ。
「mini」はそこから最上段のファンクションキー列と、右側のカーソルキーなどを省いた配列。「TKL」と比べてキーボードの左右の余り部分も削られており、省スペースでの設置を意識している。一般的に、コンパクトなキーボードほど左右の手の距離が近くできるため、マウスを扱えるスペースが広く取れるようになり、ゲームプレイが快適になる。
接続はUSB接続の有線のみで、付属のケーブルは本機側がType-C、PC側がType-Aとなっている。ケーブルは編組で、簡単に曲がる柔軟性がありつつ、曲げた後の形状を保つ硬さもあって使いやすい。
USBケーブルの接続位置は両機種で明確に異なる。「TKL」が右寄りなのに対し、「mini」は左寄りになっている。これは小型レイアウトのゲーミングキーボードの場合、左を上にして斜めに置いて、W/A/S/Dキーを自然に押しやすい角度にすることから、その際にケーブルが邪魔にならないよう左側に配置されているようだ。
裏面にはチルトスタンドが内蔵されており、4度、8度の2段階に角度を調整できる。本機はチルトスタンドを使わない場合はフラットな0度になるので、一般的なキーボードから移行する際には最初に4度を選んでから、好みで上げ下げすることをおすすめしたい。
シルバーの筐体にブラックのキートップという配色は、落ち着いているがオリジナリティも強く、大人向けの製品であることを感じさせる。ビジネスでもプライベートでも気にせず自由に使えるだろう。機能よりもこの見た目がいいと言って選ぶ方がいてもおかしくない。
優れたデザインなのであえて小さい不満を述べると、キーの奥に覗き見える筐体部分で、ネジの色が黒になっている。キーの隙間からいかにもネジですと主張しているようで安っぽさが出るので、せめて筐体と同じか近い色にしておいてほしかった。実用上で気になる部分ではないが、価格帯を考えれば配慮がほしい。
極めて良質なタッチのキースイッチ
本機の最大の注目点は、やはり独自のショートストロークキーだ。一般的なキーボードのストロークはおよそ4mmなので、1.9mmは半分ほど。ノートPCに比べれば深く、打鍵感はしっかりある。
キーの押下圧は50gとされており、スペック上では一般的な部類になる。しかし実際にキーを叩くと、5~10gほど軽く感じる。ショートストロークだからというのもあると思うが、キーのなめらかなストロークによるところも大きいと感じる。
キー入力の感触は特筆すべきものだ。キーの端を打ってもストロークが真っすぐに保たれるというのは、他社製品でも高級キーボードなら当たり前のこと。本機はその中でも、ストローク途中の引っかかりがほぼなく、一定の抵抗感のまま底打ちにいたる。
また、指をホームポジションに置いた時の感覚も優秀。多くのキーボードは、キーの上に指を置いた時に若干、キートップが傾いたり揺れたりする挙動がある。本機はそれがかなり少なく、指を置いた時の安定感がとても高い。瞬間的な操作を求められるゲームプレイでは、この点が高い信頼感を生むはずだ。
筆者は1日中キーボードを叩く仕事をしているが、ホームポジションに指を置いてもブレがない感覚というのが、思いのほか快適だ。指を邪魔する感覚がほとんどなく、正確に入力できる。リニアでなめらかなストロークと、ショートストロークの軽快さもあいまって、文字入力用キーボードとしても最高のキーだと感じた。
ただし、キートップの形状と素材は好みが分かれそうだ。ゲーミング向けに開発された本機のキートップはほぼフラットで、左右の端だけがわずかに上がった独自形状になっている。曲面のキートップと比べて、指のおさまりが悪いと感じる方は多いと思う。
しかし、それを補うようにキートップにはすべり止め効果のあるコーティングがなされている。キートップにコーティングを施す製品は極めて珍しいが、これもゲームプレイに求められるグリップ効果を求めてのものだろう。実際に誤入力をする感覚はほとんどなく、ほかのキーボードから移行してすぐ快適に入力できている。本稿の執筆もまさに本機を使用しており、快適そのものだ。
ストローク読み取りのわずかなブレも強力に補正
次にソフトウェアも見ていこう。専用ソフトウェア「ZENAIM SOFTWARE」は従来から継続しての採用となる。
ゲーミングキーボードとして一通りの機能を備えているが、その中にほかでは見かけないユーザーキャリブレーション機能がある。環境によって微妙に異なる入力感覚を補正するというものだ。
やり方は、各キーを底まで打って離すだけ。すべてのキーを底打ちしたらキャリブレーション終了となる。なおユーザーキャリブレーションを行なうことで、キー入力を認識する最低距離(デッドゾーン)を、出荷時の0.2mmから短縮し、0.1mmに設定できるようになる。
実際に試してみたところ、すべてのキーで入力後に「OK」という表示になった。これで補正が完了したようだ。これは購入時の初期設定としてだけでなく、長く使用した後の経年変化にも対応しうるもので、安心感がある。なお表示されている数字は入力の深さで、この画面で各キーを押すと入力量を確認できる。
また本機には温度変化によるキー入力精度のブレを補正するため、筐体内に温度センサーを内蔵。温度に合わせて適切なストローク量判定になるよう、自動調整するプログラムが導入されている。髪の毛ほどのストロークを高精度で見分けるために、キャリブレーションを含め、徹底して管理されているのが分かる。
その他の項目を見てみよう。アクチュエーションポイントとリセットポイントの設定は、0.1~1.8mmの範囲で、0.05mm刻みで設定が可能。1キーごとに個別の設定も可能だ。
ラピッドトリガー機能となる「MOTION HACK」は、入力を有効とする範囲を0.05~1.75mmの範囲で調整可能。その上で、オンストローク長を0.05~1.75mmに設定できる。つまり最短では0.1mmから入力判定にできる。オフストローク長は0.05~1.3mmの範囲。
アクチュエーション設定画面の左下にある「プロ設定の読み込み」では、ZETA DIVISIONのLaz氏とXQQ氏の設定ファイルをダウンロードできる。自分でどう設定するか迷った際には、彼らの設定を読み込んでからカスタマイズするのもいいだろう。
移動キーの同時入力を適切に処理する「SOCDクリーナー機能」も搭載。同時入力の際に先入力と後入力のどちらかを優先、両キーを入力、両キーの入力オフと、任意の挙動を選べる。
ほかにもキー割り当ての変更や、マクロ設定機能、フルカラーで設定可能なLEDバックライトなども搭載している。なお「TKL」のキーボード右上にある2つの独自キーは、左側が特定キーの無効化設定を発動させる機能、右側は入力後の一定時間、画面を録画する「キルクリップ」機能となっており、各機能の詳細設定も本ソフトで行なえる。
従来機種から何が変わった?
ここからは従来機種との比較で見ていく。以下、「ZENAIM KEYBOARD TKL」を「1」、「ZENAIM KEYBOARD2 TKL」を「2」と呼ばせていただく。
「1」は2023年の発売当初は4万8,180円と極めて高価だったが、現在は「2」の発売に合わせて値下げされ、3万5,200円となっている。「2」は3万9,600円なので、現状では「2」に4,400円の差額の価値があるのかが焦点になる。
キー配置はまったく同じで、外形寸法も共通。裏面にある「ZENAIM」の文字も、「2」でも変わらず「ZENAIM」とだけ書かれている。これはブランド名を書いたのであり製品名ではないということだろう。とにかく外見はほぼ同じで、見た目でどちらかを判断するのは難しい。重さは「2」が約744gで、「1」の732gより若干重くなったが、手に持っても違いは分からない程度だ。
異なる部分を見ていこう。まずキートップの塗装がアップグレードしているという。触ってみると違いは明らかで、「ZENAIM KEYBOARD2 TKL」のほうがすべり止めの感覚が強くなっている。「1」も一般的なキーボードに比べればグリップするので、より強化された形だ。
グリップすると言っても、ゴムのようにベタベタする感触はなく、上質なラバーコーティングという感じ。好みはあるとは思うが、大半の方は「2」を選ぶだろうと思える。ただ塗装となると耐久性が不安だろう。今回は短期間の試用なので答えは出ないが、試しに爪を立ててガリガリとこすってみたところ、強めに当てても跡すら残らなかった。
次は吸音材。「1」はエプトシーラーという吸音材を使っているが、「2」ではエプトシーラーに加え、吸音・制振素材のカームフレックスを追加しているという。
実際にキーを叩いてみると「1」では底打ちした際に筐体から響くような高い音がするのに対し、「2」では音の響きが減り、キーそのものの打鍵音だけが聞こえるような印象になった。比べてみると確かに静音化の効果はあると感じられる。
ただ、世にある静音をうたうキーボードと比較すると、まだまだ音は大きめ。底打ちした時のカチャカチャという音はしっかり鳴るので、静音キーボードだと思って買うべきではない。これ以上はキーの感触を変えるような加工も必要になりそうなので、できる範囲でグレードアップを目指したのだろうと思われる。
その他はスペック上の違いはない。実際に使い比べてみても、ストロークの感触などに違いは感じられず、どちらもすばらしい。ソフトウェア的な違いも、「1」もアップデートでユーザーキャリブレーション機能に対応するなど、大きな違いはない。
コーティングと吸音材の違いが4,400円の差額の正体と考えて良さそうだ。もちろん、見えない部分でハードウェア的な違いがあり、「1」には今後の新機能が入らないという可能性もあるので、一概には言えないが。それに「1」の最初の価格から見れば「2」は大幅に安いので、高機能化しつつ値下げした製品であることも確かだ。
元々の完成度の高さがあってこそのマイナーチェンジ
全体として「2」は「1」のマイナーチェンジという印象だ。これは「2」が進化していないというよりは、「1」の時点でキースイッチを含めた完成度が高く、あまり改善の余地がないということだろう。特に、現時点でも本機のキースイッチは、業界の最高峰にあると感じる。
筐体のデザインをまったく変えずに、機能面でのみ若干の進化をさせつつ、価格を下げたというのが、「2」の立ち位置と言っていいだろう。やはり「1」の5万円近い価格は、いくら良質な製品だと分かっても、ほとんどの方が二の足を踏むだろう。それが3万円台まで落ちてきたことが「2」の最大の意味と言っていい。
もちろん、若干の進化が大事なポイントでもある。長時間の利用で手汗があってもキートップが滑らないことは大切で、コーティングの強化ですべり止め効果と耐久性が上がるなら、とても有意義なことだ。
コンパクトキーボードを好むなら、より安価な「mini」を選択できるのも大きい。テンキーレスよりコンパクトな製品を好むゲーマーも多く、より手が届く価格になったことは大いに歓迎されるはずだ。また数少ない日本メーカーのゲーミングデバイスであるという点も、購買意欲を高めてくれるだろう。
筆者個人としては、本機は文字入力デバイスとしても極めて優れた製品だと感じている。何度でも言うが、キースイッチは間違いなく最高だ。ショートストロークも含めてこのままのスイッチで……できればもう少し軽荷重で、ステップスカルプチャー形状を採用した、ごく普通のキーボードレイアウトの製品が欲しい。
このスイッチを搭載した製品が東海理化からしか買えないのがもどかしい。そう言わざるを得ないほど、キータッチだけで唯一無二の魅力を放てる製品だ。

































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