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もっさりや発熱とおさらば!Androidゲーム機「AYANEO Pocket EVO」
2025年2月12日 06:17
「AYANEO Pocket EVO」はゲームコントローラを搭載した7型のAndroidゲーム機だ。2024年7月に発売された「AYANEO Pocket S」の上位モデルにあたり、このほど発売された。価格はメモリ12GB/ストレージ256GBモデルが10万4,800円、16GB/512GBモデルが11万9,800円となっている。今回発売前にお借りできたので、簡単レビューをお伝えしよう。
本製品は先行モデルであるAYANEO Pocket SのSnapdragon G3x Gen 2プロセッサによる高性能はそのままに、ディスプレイが1,920×1,080ドット/165Hz表示対応の7型OLEDへと進化。高性能プロセッサによる高いゲーム没入体験をより一層引き上げるものとなっている。
本シリーズの概要は、既にAYANEO Pocket Sのレビュー記事で詳しく紹介している。そのため今回はやや趣向を変え、スマホゲーム全盛のこの時代において、あえてゲームに特化した本シリーズの存在意義について改めて確認とおさらいをしながら、AYANEO Pocket EVOの特徴を紹介していこうと思う。
性能面
スマートフォンには多くのバリエーションがあり、ユーザーが使っている端末がたとえ普段の動作が快適であったとしても、必ずしもゲームに向いたスペックであるとは限らない。
その点、AYANEO Pocket EVOは現在Androidゲーム機としては最高峰のSnapdragon G3x Gen 2を採用しており、ほとんどのゲームを快適にプレイできることが保証されている。以下に3DMarkの結果を示すが、一線級の性能が発揮されていることが分かる。
なお、Snapdragon G3x Gen 2はスマートフォンで言うとSnapdragon 8 Gen 2相当のCPU/GPUコアが搭載されているが、GPUコアは最大1GHzで駆動するため性能が高くなっている。残念ながら、新アーキテクチャ採用のSnapdragon 8 Gen 3やSnapdragon 8 Eliteには絶対性能で敵わないが、後述の放熱面での優位性の評価を見てほしい。
Snapdragon G3x Gen 2 | Snapdragon 8 Gen 2 | Snapdragon 8 Gen 3 | Snapdragon 8 Elite | |
---|---|---|---|---|
CPUコア | Cryo 8コア | Cryo 8コア | Cryo 8コア | 第2世代Oryon |
プライムコア | Cortex-X3(1コア) | Cortex-X3(1コア) | Cortex-X4(1コア) | Oryonプライム(2コア) |
パフォーマンスコア | Cortex-A715(2コア)/Cortex-A710(2コア) | Cortex-A715(2コア)/Cortex-A710(2コア) | Cortex-A720(5コア) | Cryon高性能(6コア) |
高効率コア | Cortex-A510(3コア) | Cortex-A510(3コア) | Cortex-A510(2コア) | - |
L3キャッシュ | 8MB | 8MB | 12MB | 不明 |
プライムCPUコア最大クロック | 3.36GHz | 3.2GHz | 3.3GHz | 4.32GHz |
GPUコア | Adreno A32 | Adreno 740 | Adreno 750 | Adreno 830 |
GPU最大クロック | 1GHz | 680MHz | 903MHz~1GHz | 1.1GHz |
TDP | 15W | 7~8Wまたは11~12W | 不明だがGen 2同等だと思われる | 不明だがGen 2同等だと思われる |
CPU | Snapdragon G3x Gen 2 |
---|---|
メモリ | 8GB/12GB/16GB |
ストレージ | 128GB/256GB/512GB |
ディスプレイ | 1,920×1,080ドット/165Hz表示対応7型OLED |
バッテリ | 8,600mAh |
インターフェイス | USB 3.2 Type-C(DP Altモード対応) microSDカードスロット Wi-Fi 7、Bluetooth 5.3 |
本体サイズ | 約260.5×100×17~33.9mm |
重量 | 約478g |
価格 | 8万9,800円/10万4,800円/11万9,800円 |
放熱面
スマートフォンは持ち運び重視であるため、実装スペースが限られている。近年のハイエンドスマートフォンは、ベイパーチャンバーやヒートパイプ、グラファイトシートといった放熱機構にさまざまな工夫を取り入れているが、絶対的な面積/体積が限られている関係で、半導体の動作上限温度に近づいた場合は、ソフトウェア制御などにより動作速度を低下させる(動作クロックを下げる)しか手段がなかった。
AYANEO Pocket EVOは7型という余裕のある筐体を採用しているため、ファンおよびヒートシンクを組み合わせた“PC級の放熱機構”の搭載が謳われている。Snapdragon G3x Gen 2の上限である15Wの性能を引き出すことができる。このため、高性能を長時間維持できる。
たとえば以前に「iPhone 16 Pro Max」の性能を試した記事では、3DMarkの「Steel Nomad Light Stress Test」を走らせると70.1%という結果になる。つまりiPhoneにおいて長時間のゲームプレイでは、性能が実質7割になるということだ。Androidのゲーミングスマホでも(記事内におけるテスト項目こそ異なるが)同様の傾向(7割程度)を示す。
一方、AYANEO Pocket EVOで同じテストを実施すると、ファン速度が最大のMax設定で93.9%を維持できる。また、ファンをLowの設定にしても91.8%という高い安定性を実現していた。ちなみに本機のSteel Nomad Lightの負荷テストでワーストとなる1,324は、iPhone 16 Pro Maxの1,330とほぼ同等なので、「世代が古いからと言ってゲーム性能が低い」というわけではない(なお、このスコアは異なるプラットフォーム間の比較が可能)。
また、ファンによって強制的に放熱され、全体にプラスチックを採用していることも相まって、高負荷が続いても熱が手のひらに伝わることがなく非常に快適。スマートフォンでは熱くなって不快になることも多いが、AYANEO Pocket EVOはその点心配はない。
ちなみにAYANEO Pocket Sはファンを搭載していても、側面がそれなりに熱くなってしまったが、AYANEO Pocket EVOはさすがに筐体サイズに余裕があるためそういったことはなかった。また、ファンの速度も「Low」程度なら深夜でもほとんど気にならないと感じた。
バッテリ寿命とストレージ容量
スマートフォンのバッテリ容量は年々向上しており、ハイエンドで5,000mAh~6,000mAh前後となっていることが多い。負荷の高い3Dゲームのプレイとなるとおおよそ2~3時間程度になり、十分実用的だ。
しかしスマートフォンであるなら、ゲームのみならずメールやSNSのチェック、Webブラウジング、動画/音楽視聴に使うことも考えられる。そのためバッテリ残量との兼ね合いを見ながらゲームをプレイすることになり、集中力が削がれることも少なくない。
AYANEO Pocket EVOはそもそもゲームプレイが前提なので、バッテリ残量に神経質になることはない。カメラに加えGmailやGoogleフォトといった基本的なアプリもデフォルトではすべて削ぎ落とされており、もちろん必要に応じて入れることもできるが、やはりメインのスマートフォンと併用することが前提だ。ゲームをAYANEO Pocket EVO側でプレイすれば、スマートフォンのバッテリ充電サイクルを減らせるので、寿命増加にもつながる。
ちなみに本機のバッテリは8,600mAhと大容量であるのだが、大型のディスプレイやプロセッサの性能を引き出すセッティングになっていることもあり、そこまで駆動時間に優位性があるわけではない。あくまでも「必然的に8,600mAhになった」と考えたほうが良いだろう。
もう1つはストレージの容量だ。近年のスマホゲームは大容量化が進む一方で、ハイエンドスマートフォンであっても、256GB程度の容量ではゲームを数本入れるのが限度、かつユーザーが撮影した写真や動画などですぐにいっぱいになってしまう。
その点AYANEO Pocket EVOはスマートフォンとは独立してゲームだけを集中して入れることができる。容量は下位モデルこそ128GBとやや心もとないが、256GBや512GBでは重量級のゲームでも複数インストールできるので、ヘビーゲーマーでも容量不足に悩まされることはない。
ゲーム向けの装備いろいろ
スマホゲームは(当たり前だが)タッチパネルでの操作に最適化されている。しかし移動距離やタイミングがシビアなアクションゲーム、複数のボタンの同時押しをしたいシーンなどでは、やはりボタンの感触が得られるゲームコントローラのほうが操作感が良いと感じるユーザーは多いだろう。そのため、AndroidやiOSで使えるBluetooth接続のゲームコントローラが市販で多く用意されている。
しかしAYANEO Pocket EVOであればコントローラが既に搭載されているため、別途用意する必要はない。そしてそのコントローラも性能/機能ともに満足行く仕上がりだ。ホール効果を採用しドリフト現象が発生しにくいジョイスティックをはじめ、しっかりとしたボタン、ストロークが深いアナログトリガーなどがしっかり装備されている。
また、右下のAYASpaceボタンで即座に呼び出せるウィジェットで、性能を細かくカスタマイズしたり状況を監視したり、コントローラの動作モードをカスタマイズしたりできる。ホーム画面もゲームコントローラで操作でき、ちょっとした操作でゲーム機っぽい操作感が損なわれることがない。さらに、バイブレータやスピーカーも一般的なスマートフォンより強力で、ゲームプレイの没入感を高めてくれる。
ちなみにゲームによっては(具体的には筆者がプレイしている「崩壊:スターレイル」では)、初期状態ではコントローラがなぜか認識されなかった。こういった場合はAYASettingの中の「Controller」の「Controller Style」を、デフォルトのAYANEOからXboxに変えると良いようだ。
試用中に、スクリーンキャプチャを行なうとその画像が暗くなる現象が確認できたが、AYASpaceボタンで呼び出せるウィジェットの中の「Handheld」のタブで、「AYANEO Brightness」を無効にすると改善する。もし困っている人がいたら試してみると良い。
スマホゲームは遊べども不満を抱いている人へ
スマートフォンの登場により、携帯ゲーム機はNintendo Switchを除いてほとんど絶滅したが、それだけゲームがより身近になりゲーム人口が増えたということの裏返しでもある。しかしカジュアルなゲームならまだしも、本格的な3Dゲームは一般的なスマートフォンには荷が重い。ならばそこを切り出してあえてAndroidをベースとしたゲーム機を作ってしまえば良い、というのがAYANEO Pocketシリーズのコンセプトだ。
その中で現在フラグシップとして位置られるAYANEO Pocket EVOは、期待を裏切らない性能や完成度を備えており、ゲーミングスマートフォンを含む、ヘビーゲーマーがゲームをプレイする上での不満点をうまく解消している。
本機の最大の課題は、“コントローラを使わないゲームはどうするか”、そして“縦画面向けのゲームをどうするか”だろう。たとえば「原神(まだAndroidはコントローラ非対応)」や「崩壊:スターレイル」、「ゼンレスゾーンゼロ」といったゲームなら横画面なので良いのだが、「ウマ娘 プリティーダービー」や「NIKKE」といったゲームには不向きだ。横画面モードが実装されているものもあるし、横表示を強制させることもできなくはないが、キャラクターの全身が大きく見えることがこれらのゲームの醍醐味なので、本機でプレイする魅力がスポイルされる。
しかし、一昔前の日本製の変わったギミックを持つ家電製品が大好きなAYANEOのアーサーCEOなら、もしかしたら既に解決策を見出しているのかもしれない。そこはシリーズのさらなる発展に期待したいところ。ただ、今はこのクラスの性能を必要とするゲームのほとんどが横持ち前提だと思うので、AYANEO Pocket EVOは事実上“最強のAndroidゲーム機”だと評していいだろう。