西川和久の不定期コラム

小さな巨人?Ryzen AI 9 HX 370+高速メモリ搭載のミニPC「GMKtec EVO-X1」

GMKtec EVO-X1

 今回は前回に引き続きRyzen AI 9 HX 370搭載ミニPCを紹介する。製品はGMKtecの「EVO-X1」だ。ただプロセッサは同じでもほかが結構異なり、対照的に面白い仕上がり具合になっている。編集部から実機が送られてきたので試用レポートをお届けしたい。

ACアダプタありの小型化+LPDDR5X-7500でメモリを高速化

 前回ご紹介したMINISFORUM「AI X1 Pro」の特徴は何と言っても、Ryzen AI 9 HX 370を搭載した上で電源内蔵になっていることだろう。その分、筐体は大きいものの(旧Mac miniとほぼ同フットプリント)、USB4が2基などポートも多く結構パワフルなミニPCだ。

 対して今回ご紹介するGMKtec「EVO-X1」は、同じプロセッサ搭載でもミニPCとしてはありがちのACアダプタ式。しかし扉の写真からも分かるように本体はコンパクトに仕上がっている。加えて、USB4、OCuLink、2.5GbE x2、M.2スロット2基など、拡張性も十分だ。

 これだけでも面白いなのだが、さらにメモリはオンボードでLPDDR5X-7500を計32GBを使用。当然SO-DIMMのDDR5よりアクセス速度が速く、パフォーマンスに期待できる。欠点はオンボードなので増設不可なこと。とは言え一般的に32GBあれば十分なので特に問題ないだろう。主な仕様は以下の通り。

GMKtec「EVO-X1」の仕様
プロセッサRyzen AI 9 HX 370(12コア24スレッド、クロック最大5.1GHz、キャッシュ L2:12MB/L3: 24MB、TDP 28W、cTDP 15~54W)
メモリLPDDR5X 7500MHz 8GB x4(オンボード/64GBモデルあり)
ストレージ1TB(M.2 2280)、2スロット(PCIe 4.0 x4/1つ空き)
OSWindows 11 Pro(24H2)
グラフィックスAMD Radeon 890M(16コア)/HDMI 2.1、DisplayPort 2.0、Type-C
ネットワーク2.5GbE 2基、Wi-Fi 7、Bluetooth 6
インターフェイスUSB4、USB 3.2 Gen 2 4基、3.5mmジャック、OCuLink
サイズ/重量約110×107×63mm、590g/実測
価格13万802円(Amazonでクーポンコード「EVO23OFF」利用)

 プロセッサはRyzen AI 9 HX 370。12コア24スレッド、クロックは最大5.1GHz。キャッシュ L2: 12MB/L3: 24MB、TDPは28W(cTDP 15~4W)。コアはZen 5 x4+Zen 5c x8の構成になっている。NPU(INT8とBlock FP16対応)を内蔵し最大50TOPS、システムで最大80TOPSを実現。モバイル用としてはかなり強力。

 メモリは上記のようにLPDDR5X-7500MHzで32GB。オンボードなので増設できないが、その分アクセス速度は向上する。同社のサイトnを見ると64GBモデルもあるようだ。

 ストレージはM.2 2280のSSD 1TB。スロットが2つあるので増設可能。32GB+2TBモデルも用意されている。グラフィックスはプロセッサ内蔵、AMD Radeon 890M(16コア)。外部出力用にHDMI 2.1、DisplayPort 2.0、USB4を装備。

 OSはWindows 11 Pro。24H2だったのでこの範囲でWindows Updateを適応し評価した。

 ネットワークは2.5GbE 2基、Wi-Fi 7、Bluetooth 6。そのほかのインターフェイスは、USB4、USB 3.2 Gen 2 4基、3.5mmジャック、OCuLink。このサイズでUSB4とOCuLink対応はありがたい。

 サイズ約110×107×63mm、重量590g(どちらも実測)。価格はAmazonで32GB+1GBで16万9,900円だが、現在は23%オフクーポン「EVO23OFF」が利用でき13万823円となる。32GB+2TBモデルは18万9,999円だが、クーポンコード「L59NZZ8R」の利用で14万599円、64GB+1TBモデルは19万3,999円だが、ページ上のクーポンと5%オフクーポンコード「5DDKOBTF」の併用で15万2,900円になる。

 同社のサイトだと執筆時割引中で32GB+1GBが13万2,700円、32GB+2TBが13万8,600円、64GB+1TBが15万1,900円と、こちらで購入した方がお買い得だ。一般的なミニPCと比較して少し高めだが、後半のベンチマークテストを見れば納得ではないだろうか。

 筆者的には64GB+1TB+2TB(後で増設)、OCuLinkに強力なGPUを接続しAIミニPCとして使いたいところ(笑)。

前面はUSB4、OCuLink、USB 3.2 Gen 2 2基、3.5mmジャック、電源ボタン
背面はUSB 3.2 Gen 2、HDMI、DisplayPort、2.5GbE 2基、電源入力、ロックポート
裏面とiPhone 16 Pro。かなりコンパクトなのが分かる
付属品はACアダプタ(約133×57×33mm/407g/19V, 6.32A, 120.08W)、縦置きスタンド、HDMIケーブル
BIOS / Main。起動時[DEL]キーで表示
BIOS / Advanced
重量。実測で590gと軽い
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続。USB4があるのでUSB Type-Cケーブル1本で接続可能

 筐体は扉の写真などからも分かるように、約110×107×63mm(実測)と非常にコンパクト。重量も590gと、余裕でカバンに入れ持ち運べる範囲だ(ただしACアダプタ/407gも必要)。付属の縦置きスタンドを使えば机の上どこにでも設置できる。ただ筐体が軽いので、ちょっと押すと倒れるかも知れないが……。

 前面にUSB4、OCuLink、USB 3.2 Gen 2 2基、3.5mmジャック、電源ボタン。背面にUSB 3.2 Gen 2 2基、HDMI、DisplayPort、2.5GbE 2基、電源入力、ロックポートを配置。裏は四隅にゴム足。

 付属品は、ACアダプタ(約133×57×33mm/407g/19V、6.32A、120.08W)、縦置きスタンド、HDMIケーブル。筐体の割にACアダプタが大きく重いのは仕方ないところか。いつものキーボード付きモバイルモニターへの接続は、USB4があるのでUSB Type-Cケーブル1本でOK。BIOSは起動時[DEL]キーと一般的だ。

 内部へのアクセスは、まず裏にあるゴム足を外す。これ自体がネジになっているため、回せば簡単に外すことができる。次に内部パネルがあり、ネジ4本を外すとM.2 2280が見える。メモリはオンボードなので増設できない。残念と言えば残念だが32GBあれば十分だろう。

裏の足がネジになっているのでそのまま回すと外側のフレームが外れる
次に内部パネル4つのネジを外せばM.2スロットにアクセスできる。Crucial製が使われている。メモリはオンボードなので増設不可
内部のファンが7色に光る

 ノイズや発熱は、筐体が小さい分、CPUに負荷をかけるとファンがそこそこ回りだし若干音がする。ただし筐体に耳を近づければ……なので、普通に設置していれば問題ないレベル。発熱はこれもそこそこ。暖かい程度だ。面白いのはファンが7色に光ること。綺麗なのだが、隙間からしか見えないのがもったない感じだ(笑)。

Ryzen AI 9 HX 370とLPDDR5X 7500MHz 8GB x4でハイパフォーマンス!

 初期起動時、プリインストールのアプリや壁紙の変更などは特になし。Windows 11 Pro素のまま。やはり触った感じは従来のハイエンドより少し速い気がする。

 M.2 2280 1TB SSDはCrucialの「CT1000P3PSSD8」。仕様によると、シーケンシャルリード5,000MB/s、シーケンシャルライト3,600 MB/s。CrystalDiskMarkもほぼ同じ値になっている(ライトが高め)。C:ドライブのみの1パーティションで約930GBが割り当てられ空き890GB。本機はBitLockerを使っていない。

 2.5GbEはIntel Ethernet Controller I226-V x2、Wi-FiはIntel Wi-Fi 6 AX200、BluetoothもIntel製。すべてIntelなのでほかのOSでも使いやすいだろう。

初期起動時のデスクトップ。Windows 11 Pro/24H2標準
デバイスマネージャー/主要なデバイス。M.2 2280 1TB SSDはCrucialの「CT1000P3PSSD8」。2.5GbEは Intel Ethernet Controller I226-V x2、Wi-FiはIntel Wi-Fi 6 AX200、BluetoothもIntel製
C:ドライブのみの1パーティションで約930GBが割り当てられている
タスクマネージャにNPUの項目が用意されている

 さて、前回のMINISFORUM「AI X1 Pro」と比較した場合、1つ大きな違いとして、Copilot+ PC対応か非対応かが挙げられる(本機は対応が謳われていない)。個人的にCopilot+ PCの機能には現時点で興味がなく、気にならない部分であるが、この点は読者の判断となるだろうか。

 逆に、それに付随する形で、BitLocker(Windows 11 Homeではデバイスの暗号化)がデフォルトでは有効になっておらず、OCuLinkでデバイスを接続してもBitLocker回復キーの入力が求められることはないのはメリットだと言える。

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。

 MINISFORUM「AI X1 Pro」と比較しながら眺めていると、PCMark 10については項目で凸凹があり差は出ていない。しかし3DMarkは、iGPUがメモリを共有するため、LPDDR5X-7500の効果か、全体的に少し高めになっている。

【表】ベンチマーク結果
PCMark 10 v2.2.2704
PCMark 107,543
Essentials11,126
App Start-up Score14,672
Video Conferencing Score8,773
Web Browsing Score10,702
Productivity9,905
Spreadsheets Score14,092
Writing Score6,963
Digital Content Creation10,568
Photo Editing Score14,836
Rendering and Visualization Score11,376
Video Editting Score6,994
3DMark v2.31.8372
Time Spy4,135
Fire Strike Ultra2,768
Fire Strike Extreme4,894
Fire Strike9,100
Sky Diver30,663
Cloud Gate40,956
Ice Storm Extreme145,478
Ice Storm158,086
Cinebench R23
CPU(Multi Core)21,085
CPU(Single Core)2,041
CrystalDiskMark 8.0.5
[Read]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1):  5194.816 MB/s [   4954.2 IOPS] <  1611.88 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1):  3006.333 MB/s [   2867.1 IOPS] <   348.66 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):   681.472 MB/s [ 166375.0 IOPS] <   186.21 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):    73.399 MB/s [  17919.7 IOPS] <    55.73 us>

[Write]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1):  4752.796 MB/s [   4532.6 IOPS] <  1761.70 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1):  4644.988 MB/s [   4429.8 IOPS] <   225.59 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):   438.415 MB/s [ 107034.9 IOPS] <   289.99 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):   267.090 MB/s [  65207.5 IOPS] <    15.26 us>

非BitLockerなので、OCuLinkを接続してもサクッとOSが起動する。GeForce RTX 3090(24GB)を接続してみたところ3DMark/Time Spyが4,135から17,712へ

 以上のようにGMKtec「EVO-X1」は、Ryzen AI 9 HX 370/32GB/1TBを搭載したミニPCだ。パフォーマンスは上記のベンチマークテストからも分かるように、ミニPCとしてはかなり速い。これはメモリが高速の効果もあるだろう。オンボードなので増設はできないものの、その分アクセス速度が上がる。

 特に欠点らしい欠点もなく、コンパクトな筐体でハイパワー。さらににOCuLinkでより強力なGPUを接続することも可能。Ryzen AI 9 HX 370を搭載したミニPCを探しているユーザーにお勧めしたい1台だ。