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こんなに薄くてGeForce RTX 4070搭載。あまりゲーミングノートっぽくないゲーミングノート「ROG Zephyrus G16 GU605」

ROG Zephyrus G16 GU605。レビューしたのは型番がGU605MIのGeForce RTX 4070 Laptop GPU搭載モデル

 ASUSから16型ゲーミングノート「ROG Zephyrus G16 GU605」が登場した。高性能なCPUとGPUを搭載したROGらしい製品だが、スリムで軽量、そしてシンプルなデザインから、ゲーマーだけでなくクリエイターまで視野に入れた作りとなっている。

 どれくらいスリムかつ軽量になったかというと、前モデルでは本体の厚みが22.34mm、重量も約2.1kg程度だったが、今回の新モデルは厚みが14.95~17.43mm、重量が約1.85~1.95kgにまで減らされた。

 さらに内部スペックではCPUがCore Ultraシリーズが採用され、新たに統合されたNPUによるAI用途を含め、幅広い用途で使えるフットワークのよいハイパフォーマンスPCに仕上がっている。

 今回は、Core Ultra 9 185HとGeForce RTX 4070 Laptop GPUを搭載するモデル(型番:GU605MI-U9R4070G)をレビューする。

【表】ROG Zephyrus G16 GU605のラインナップとスペック
型番GU605MZ-U9R4080WGU605MI-U9R4070WGU605MI-U9R4070GGU605MV-U7R4060GS
本体カラープラチナホワイトエクリプスグレー
CPUCore Ultra 9 185HCore Ultra 7 155H
GPUGeForce RTX 4080 Laptop GPUGeForce RTX 4070 Laptop GPUGeForce RTX 4060 Laptop GPU
メモリLPDDR5X-7467 32GB
ストレージSSD 1TB(PCIe 4.0 x4)
ディスプレイ16型有機EL(OLED)
2,560×1,600ドット/240Hz
16型液晶
2,560×1,600ドット/240Hz
通信機能Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.1
インターフェイスThunderbolt 4、USB 3.1 Type-C、USB 3.1、HDMI、SDXCカードスロット、音声入出力
OSWindows 11 Home
バッテリ駆動時間JEITA 2.0:約13.6時間
JEITA 3.0:約6.9時間(動画再生時)、約11.9時間(アイドル時)
付属Xbox Game Pass Ultimate(3カ月利用権)
サイズ354.95×246.95×14.95~17.43mm354.95×246.95×14.95~16.43mm354.95×246.95×16.45~17.45mm
重量約1.95kg約1.85kg
価格44万9,800円39万9,800円43万9,800円26万9,800円

ROG Zephyrus G16がさらにスリム&軽量、スタイリッシュに

 まずデザインを見ていくと、ROG Zephyrus G16 GU605はフラット面を多用し装飾は少なめ。ゲーミングノートPCでよく見られる自動車のマフラーのような排気口や、追加アーマーのようなベゼル部の補強といった意匠はない。職場やカフェであっても溶け込む見た目と言えるだろう。

ROG Zephyrus G16 GU605はゲーミング感を抑えたデザイン

 冒頭の通り、スリムかつ軽量でもある。厚みで2cmを切り、重量では2kgを切るスペックを実現している。ゲーミングノートPCの本来なら分厚く重い冷却機構を、ここまでスリム、軽量に仕上げているわけだ。これだけでもROG Zephyrus G16が技術の粋を尽くしたシリーズだと伝わるだろう。

スリムで軽量。モバイルも視野に入る

 キーボードはRGB LEDバックライトを搭載している。そしてもう1つゲーミングらしさを感じるとすれば、天板のLEDイルミネーション「SLASH LIHGHTING」がある。

 前モデルではドットパターンが並んだ天板デザインだったが、SLASH LIHGHTINGはLEDの列が斜めに入った装飾だ。アルミニウム+CNCのユニボディで作られたこの外観は「クラフトマンシップデザイン」と呼ばれる。

キーボードはRGB LEDバックライトを搭載
天板部に搭載されたSLASH LIHGHTING

 そして全体のデザインとしては前モデルのコンセプトを踏襲しているものの、細部を見ていくと変更点は多い。キーボード左右のスピーカー部分のデザイン、大型化したタッチパッド、ヒンジ部分、インターフェイスなど。

スピーカー部分も前モデルからデザインが変わったところ
タッチパッドはパームレストの縦方向をすべて使った大型のものに
スリム化実現のため採用されたステルスヒンジデザイン

ゲーマーニーズもクリエイターニーズも満たすディスプレイ。インターフェイスも一新

 ROG Zephyrus G16 GU605のディスプレイは16型サイズで、アスペクト比16:10の2,560×1,600ドット表示となっている。標準的な16:9のWQHD(2,560×1,440ドット)から縦方向に広く、得られる情報量が多い。

 縦に長いと、クリエイティブ用途では写真を表示した際の相性が向上、映像編集ではタイムライン表示、音楽制作ではトラック表示などでより快適に感じられるだろう。

16型、2,560×1,600ドットで光沢(型番がGU605MVのモデルのみ非光沢)
上部ベゼルには207万画素Webカメラ、IRカメラ(顔認証対応)も備えている
下ベゼルにROG Zephyrusロゴ

 クリエイティブ分野では色味などのパネルスペックも重要だ。型番の頭が「GU605MZ」および「GU605MI」は有機ELパネルを採用(GU605MVのみ液晶)し、コントラスト比1,000,000:1、輝度500cd/平方m、DCI-P3 100%といったスペックを実現している。

 ASUSの上位ディスプレイという点で、Pantone認証も取得。一方、ゲーミングで重要なリフレッシュレートは240Hz、応答速度は0.2ms。G-SYNCにも対応しておりテアリングやスタッタリングを抑えたゲーム映像を楽しめる。

有機ELパネルで視野角が広く色再現性も高い

 キーボードは86キーの日本語(JIS)配列。テンキーレスなので窮屈感が少なかった。電源ボタンは右上部分に独立している。また左上部分にはスピーカー音量やマイクオン/オフ、Armoury Crate呼び出しキーなどがまとめられている。

キーボードはテンキーレスの日本語配列
スピーカーボリュームとマイクオン/オフ、Armoury Crate起動ボタン

 インターフェイスは前モデルから大きく変わったところだ。左右に1基ずつUSB 3.1(USB 3.2 Gen 2)、Thunderbolt 4とUSB 3.1 Type-Cも備え、ゲーミングやクリエイティブ用途で十分なポート種、ポート数を確保しているが、前モデルとの大きな違いは有線LAN(Gigabit Ethernet)非搭載となった点だ。

 有線LANを利用したい場合は、Thunderbolt 4やUSBにLANアダプタを差して代替することになる。また、無線LANはWi-Fi 6Eとなっている。

左側面には電源ジャック、HDMI、Thunderbolt 4、USB 3.1(USB 3.2 Gen 2)、オーディオ入出力
右側面にはSDカードスロット、USB 3.1、USB 3.1 Type-C

 底面についても触れておこう。底面は面積の3分の2ほどが吸気口となっており、前後にゴム脚を置いて左右から吸気を行なう。その一方、後部寄りゴム脚の後ろにもスリットがある。ここは排気口で、ゴム脚によって遮られて排気が吸気側スペースへ流入するのを防いでいる。もう1箇所、ベゼルによって隠れる部分も排気口になっている。

背面は中央に大きな吸気口。前後に一列ずつゴム脚を設けて整流する。排気口は後部に搭載
本体後部にも排気口をレイアウト。この内部にフルワイドヒートシンクを置く

 これだけのスリム化を実現した冷却機構も紹介しておこう。CPUやGPUなどの熱は、ROGのゲーミングノートではおなじみとなった液体金属グリス、ベイパーチャンバーが熱を奪い、7本のヒートパイプが輸送、後部の幅いっぱいに設けられたフルワイドヒートシンクに導かれる。

 ファンは一般的なゲーミングノートPCよりも多い3基を搭載。そのファンはエアフローを13%向上させたというArc Flow Fanを採用し、同時にダスト対策としてダストフィルタ、遠心力で塵を自動排出するアンチダストトンネル2.0を備えている。

ACアダプタは大きめで本体よりも厚みがある。定格出力は200Wだ

AI時代の新プロセッサ「Core Ultra」を搭載

 内部の大きなトピックは、Core Ultraシリーズを採用している点だ。コア/スレッド数で言えば第14世代Core(Core i9)のほうが多く、ゲーミングの本流としてはおそらくそちらが採用されるだろう。一方、Core UltraシリーズはPコアが減る一方でEコアは継続、さらにULコアと呼ぶ低電力に特化したコアが追加されている。

 ROG Zephyrus G16 GU605の「GU605MZ」および「GU605MI」はCore Ultra 9 185Hを搭載。Pコアは6基、Eコアは8基、ULコアは2基で計16コア22スレッドとなる。「GU605MV」はCore Ultra 7 155Hを搭載。コアレイアウトやスレッド数は185Hと同じだがクロックを抑え、プロセッサベースパワーを抑えた設定となっている。

 また、Core Ultraシリーズでは統合GPU機能がXeベースのものへと進化した。GPUコアは8基、クロックはCore Ultra 9 185Hが最大2.35GHzに対しCore Ultra 7 155Hは2.25GHzと設定されている。併せてAI用のNPU(Intel AI Boost)も新たに搭載している。これは両CPU、同スペックだ。

デバイスマネージャーからもIntel AI Boostが確認できる

 こうしたCore Ultraシリーズを採用したことで、ROG Zephyrus G16 GU605は用途をゲーミング以外にも拡大している。もともと高性能CPU、高性能外部GPUを搭載しつつデザインも落ち着いたROG Zephyrus G16はゲーミング以外に3D関連のクリエイター分野も視野に入れた製品だったが、特にNPUが統合されたことでAI分野もターゲットに入った。

 冒頭の表にある通り、ディスクリートGPUは、最上位の「GU605MZ」がGeForce RTX 4080 Laptop GPU、「GU605MI」がGeForce RTX 4070 Laptop GPU、「GU605MV」がGeForce RTX 4060 Laptop GPUを採用している。1グレードずつ3モデルとなったため、パフォーマンスとコストの選択肢は広がった。最上位モデルはCPU、GPUともかなり強力でゲーミング寄り、一方、電力バランスがよい「GU605MV」はクリエイター寄りと言えるだろうか。

 メモリは共通でLPDDR5X-7467、容量32GB(増設不可、オンボードとされている)。ストレージも共通でPCI Express 4.0 x4で容量1TBのM2 SSD。

性能と温度、静音性を電力プリセットで試す

 それではベンチマークを用いてROG Zephyrus G16 GU605「GU605MI」のパフォーマンスを見ていくが、先に電源モードを確認したい。

 ROG Zephyrus G16 GU605ではArmoury Crateからプリセットを選ぶ形になる。マニュアルモードに加えていくつかのプリセットが用意されている中から、静音向けの「Silent」、通常用いる「Performance」、一段高い性能で楽しめる「Turbo」の3プリセット時のベンチマークスコア差を確認しよう。

 Turbo時とSilent時ではスコアにして2,550ポイントほどの差がついた。Performanceはその中間、ややTurbo寄りに位置する。パフォーマンスを稼ぎたいときはTurbo、十分なパフォーマンスを得られているならPerformance、Silentと引き下げてもよいだろう。

 高負荷時の動作音はTurboが50dBA、Performanceが43.5dBA、Silentは39.3dBAだった(いずれも暗騒音31.3dBA、室温17℃、騒音計をディスプレイから60cmの位置に設置して計測)。Turboはさすがゲーミングノートといった音量、一方でSilentは40dBAを下回っており、ゲーミングノートとしては比較的静かだった。

 また、TurboとSilentでFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク、WQHD、高品質時のCPU・GPUの温度を見ると、TurboはCPU・GPUとも比較的安定した温度変化(同時に近い温度域でもある)、SilentはGPU温度は比較的安定しているがCPU温度は変化が激しかった。

 Turboはファンが高回転を続けるが、Silentは低回転を維持しようとするため、比較的負荷の変動が激しいCPU側で急に負荷が高まった際などの対応にラグが生じるのではないかと推測される。

 なお、Performanceは温度推移としてはTurboの挙動に近かったので割愛する。

 こうしたベンチマークはV-SYNCオフ、フレームレート上限なしで計測しているが、普段ゲームを楽しむ際、特にノートPCでは必要なフレームレートが得られる解像度・画質設定を見つけたならV-SYNCオンまたはそのゲームのフレームレート上限を設けてプレイするのがおすすめだ。

 そうすることで、不必要な負荷が抑制されて熱量も減り、より静かになる。急な負荷変動にも温度マージンがとれるので、より快適なプレイが可能だ。

 とは言え、十分なフレームレートが得られる解像度・画質設定の組み合わせは何度も試してみるほかない。次項では5つのタイトルでフレームレートを計測した。最適な解像度・画質設定を探り出すヒントになれば幸いだ。

最強GPUではないが多くのタイトルを高画質設定でプレイ可能

 ここからのベンチマークはTurboモードとして計測した。なお、ROG Zephyrus G16 GU605のデフォルト解像度は2,560×1,600ドットだが、今回は諸事情により、一般的なWQHD(2,560×1,440ドット)とフルHD(1,920×1,080ドット)で計測した。縦解像度が若干小さい分、16:10でのプレイ時よりもフレームレートが高く出ている可能性があるので注意されたい。

 用いたベンチマークは以下の通り。

  • Diablo IV
  • Palworld
  • STREET FIGHTER 6 Benchmark Tool
  • Cyberpunk 2077
  • ARK: Survival Ascended

 まず軽量なDiablo IVは、WQHDの画質設定:ウルトラで125.1fps、フルHDの同設定なら217.5fpsとパネルスペックに迫るフレームレートを得られた。DLSSを有効にすればさらに上昇した。

 Palworldもかなり軽量で、WQHDの画質設定:最高品質で106fpsを得られた。画質設定を引き下げてもあまり大きくフレームレートが向上することはなく、フルHDに変えても10fps程度上積みされる程度だった。これならWQHD(あるいは2,560×1,600ドット)の最高品質という最高設定で楽しめばよいだろう。

 STREET FIGHTER 6 Benchmark Toolでは60fps以上を計測できるWorld Tour、Battle Hubのフレームレートを確認した。HIGHESTとHIGHの画質プリセットで解像度をWQHDまたはフルHDに指定して計測したが、おおむね100fps程度得られており、プリセットによる差も小さかった。

 特にWorld Tour側はフルHD時のHIGHESTとHIGHで逆転現象が見られるように、数fpsのブレもあるようだ。もちろんゲームプレイに必要な60fpsを大きく上回っているので、これもHIGHEST設定で問題なく楽しめる。

 Cyberpunk 2077は現在でも比較的重いタイトルだ。WQHDでレイトレーシングを使うとなると60fps超を得られたのはもっとも低いレイトレーシング:低設定。レイトレーシングオフでは中設定まで引き下げて60fps超を得られるといった感じだ。なお、フルHDならレイトレーシング:オーバードライブ(OD)やレイトレーシングオフでのウルトラ設定でも80fps超を得られていた。

 ARK: Survival Ascendedは激重タイトル。ROG Zephyrus G16 GU605「GU605MI」のGeForce RTX 4070 Laptop GPUをもってしてもWQHDではプリセット:低にDLSSを加えてようやくといった感じだ。フルHDでも同様でDLSSが必要。プリセットやDLSS以外にも軽量化の手法があるので、それらを駆使してフレームレートを上げてプレイするのがよいだろう。

 ARK: Survival Ascendedは別として、ROG Zephyrus G16 GU605「GU605MI」は重量級タイトルを高画質設定で60fps、軽量タイトルなら高画質設定でも100~200fpsが得られている。よりゲーミングに重きを置くなら1つ上、GeForce RTX 4080 Laptop GPUを搭載する「GU605MZ」も検討するとよいだろう。

アクティブかつスタイリッシュを求めるゲーマー、幅広いクリエイターに

 ROG Zephyrus G16 GU605は、スペックとしてはゲーミングだが、さまざまなシーンに溶け込むデザイン、スリム・軽量による可搬性、そしてAIによる次世代コンピューティングを可能にする製品だ。ゲーマー、クリエイター、高性能で万能な1台を求める方に最適なモデルと言えるだろう。

 生産性を重視するならフラグシップとも言えるROG Zephyrus G16の価格も受け入れられるだろう。映像編集分野のアプリケーションでもAI機能の導入が始まっており作業効率アップ、制作時間を短縮、品質の向上などメリットがある。

 一方で、性能こそすべて持ち運びもそこまで想定されない本流のゲーミングノートを求めるニーズとは若干異なる気もする。それなら可搬性や軽量さを取るのではなく、CPUが第14世代Coreを搭載するモデル、GPUもGeForce RTX 4090 Laptopまで選べるシリーズのほうが適しているはずだ。ASUSとしてはROG Strix SCAR 18(2024)のように選択肢を残しているので、総合して判断するとよいだろう。