Hothotレビュー

そう、このスペックで欲しかった。Intel N100搭載の低価格14型タブレット「AEROPAD」

AEROPAD

 Amazonでは、聞き慣れないメーカーから「そうそうこういうスペックで欲しかったのよね~」的なPCが販売されるのだが、ZENAEROという中国の企業が販売しているIntel N100搭載の14型タブレット「AEROPAD」もそのうちの1台だ。今回サンプル提供があったため、簡単なレビューをお届けしたい。価格は5万6,900円だ。

昨今流行りのIntel N100と必要十分なスペックを詰め込んだ1台

 円安ドル高が進む中、PCも高価格化が進んでおり、特にハイエンドCPUやGPUは体感的に数年前の2倍以上の価格で販売されることも珍しくないのだが、その時代の流れを逆行するかのように「安いけど十分に速い」イメージしかないのが、Intel N100を搭載したPCだ。ミニPCであれば2万円台は当たり前、ノートPCでも3~4万円台で購入できる。

 そのIntel N100について、PC Watchではこれまで何度も紹介してきているので改めて詳しく紹介するまでもないと思うが、Webブラウジングや軽めのワープロ/表計算処理であれば、十分実用的な速度で運用できるのが、それまでのAtomやCeleron N系の低価格プロセッサとの大きな違いだ。

 Intel N100は第12世代Coreに搭載されているコアのうち、電力効率重視の「Eコア」のみで構成されているのだが、同じ電力であれば以前のメインストリームアーキテクチャであるSkylakeを凌駕することは、筆者が過去に行なったベンチマークでも実証されている。これがIntel N100の人気の秘密だろう。

 AEROPADではこのIntel N100を搭載し、日頃のライト作業に必要十分なプロセッサ性能を確保しつつ、メモリ16GB、ストレージ512GB、そして1,920×1,200ドット表示対応14型液晶という、日常的な作業でなんら不足のないスペックを備えているのがポイント。

 数年前までは、安価なPCというとなにかとメモリやストレージ不足気味で、普段遣いしようにも何かと工夫が必要だったイメージなのだが、今世代では何も気にしなくても良さそうだ。

AEROPAD本体と付属品など
【表】AEROPADの主な仕様
CPUIntel N100(TDP 12W前後)
メモリLPDDR5-4800 16GB
ストレージ512GB SATA SSD
ディスプレイ1,920×1,200ドット表示対応14型
インターフェイスUSB 3.1 Type-C×2(うち1基がUSB PD給電対応)、Micro HDMI、Wi-Fi 6(Intel AX101)、Bluetooth 5.2
カメラ前面約200万画素/背面約500万画素
本体サイズ317.38×214.34×10.2mm
重量990g

2in1やノートではなくあえてタブレットという大胆さ

 AEROPADは、ノートPCや2in1のフォームファクタではなく、あえてタブレットになっているのも特徴。本機は標準でマグネットにより本体にくっつけて持ち運べるキーボードが付属しているのだが、実はこのキーボードはBluetooth接続であり、本体から離した状態でも使えるため、「Microsoft Surface」のようにポゴピンなどで電気的接続があるデタッチャブル2in1というわけではない。

 また、Windowsタブレットやデタッチャブル2in1でメジャーなキックスタンドも本機には備わっておらず、キーボードと合わせてノートPCのように使いたい場合は、付属のマグネットで着脱する背面カバー兼スタンドで立たせるようになっている。そういった意味でも本機は2in1ではなく、タブレットとして見たほうが妥当だろう。

タブレットとしての背面
ほぼ中央にカメラを搭載する

 本体色はブラックとホワイトの2種類が用意されている。今回はタブレットとしては珍しいホワイト色をお願いしたが、縁はシルバーのダイヤモンドカットが入っているほか、塗装の手触りもなめらかで、かなりデザインにこだわっている雰囲気だ。なお、ホワイト筐体は汚れが目立ちやすいため、それが嫌いであればブラックモデルを選ぶと良い。

Windowsのデタッチャブルでメジャーなキックスタンド機構はなく、付属のカバー兼スタンドを利用する。角度はこのあたりで限界

 電源ボタンおよび音量ボタンは本体右側面、2基のUSB Type-C(うち下の方がUSB PD給電対応、上は非対応)とMicro HDMI出力は右側面に搭載されている。また、左右にスピーカーのスリットがあるほか、上部に吸排気口がある。底面は何もなくフラットだ。PCとしては珍しく3.5mmステレオミニジャックはないので、基本Bluetoothヘッドフォンなどを使うことになる。

本体上部
本体左側面はボタン類
本体右側面はインターフェイス類
底面には何も装備されていない

 なお、本体サイズは公称で317.38×214.34×10.2mm、重量は約990g。重量について実測したところ本体は公称値通り、キーボードスタンド込みで1,580gだった。厚みはそこそこあり、重量も軽い部類ではない。とはいえ、そもそも14型は手に持って操作するのが非現実的なサイズなので、やはりスタンドなどに固定して使うか、座った状態ではひざの上に乗せて操作することになるだろう。そういった使い方であれば不満はない。

タブレット単体の重量は990g
キーボードやスタンドを含めると1,580g

冷却ファン内蔵だが静かに冷却

 このサイズと重量になった背景には、Intel N100の性能を十分に引き出しつつ表面温度が高くならないよう、ファンとヒートシンクを内蔵したことによる影響が大きいと見られる。

通気孔が備わっている

 HWiNFO64などのユーティリティで確認したところ、本機のPL2は28W(28秒)、PL1は15Wという、10.2mm厚のタブレットとしてはかなりアグレッシブな設定がなされていた。しかしCinebench R23で継続して負荷をかけてみたところ、別のところで制限が入っているらしく、最大で15W/平均して12W前後で遷移した。

 一方CPU温度は最大で80℃になることもあったが、概ね70℃で頭打ち(室温22℃の環境)となった。この時さすがに本体にも熱を持つ(主にファンが搭載されていない右手側)が、38℃程度であり、熱くて持っていられないほどではない。なお、負荷が下がるとファンにより一気にCPUと筐体温度が下がり、このあたりもファン搭載のメリットが現れている。

背面温度は高いところで38℃程度
CPU温度はほぼ70℃で頭打ちに

 何より特筆すべきはファンノイズで、アイドル時は耳を排気口の5cm近くまで持っていってようやく聞こえるレベル、負荷時でもわずかな回転数アップでわずかな風切り音がする程度と、非常に優秀であった。これなら深夜にすぐそばで寝ている人がいたとしても、まったく気にならないレベルだろう。

 個人的には、もう少しファンノイズがあってもいいので、TDPを18W程度まで引き上げられたらいいのに、と思ったほどだ。

バックライト付きキーボードで暗所も操作しやすい

 液晶は1,920×1,200ドット表示対応の14型。色は鮮やかさ重視というより落ち着いた発色だ。周辺の輝度むらが若干気になるのだが、解像度は十分であり、左右フリからの視認性も上々なので、日常的な用途であればなんら不満はないだろう。

1,920×1,200ドット表示対応の14型液晶
反射は多めだが、視野角は広く視認性は良い

 付属のキーボードは先述の通りBluetoothタイプだが、あらかじめペアリングされておらず、ユーザーがペアリングする必要があった。なお、キーボードへの充電は専用のポゴピンで接続するタイプのケーブル(給電側はUSB Type-C)を利用する。キーボード側もUSB Type-Cにしてほしかったところだが、薄型筐体を実現する兼ね合いもあったのだと思われる。

 キーピッチは14型に合わせているということもあり19mmとゆったりしている。右上は電源ボタンがあるが、これはPCではなくキーボードの電源ボタンだ。キー配列は一見特にクセがない英語配列……ように見えるのだが、BackSpaceしかなくDeleteキーがないほか、右Windows/アプリケーションキーの代わりに、キーバックライト輝度調節ならびにバックライト発光色変更キーになっている。

 バックライトはオフと輝度3段階、発色は赤/水色/黄/緑/青/紫/白、そして各色の明暗ループとなっている。なお、キーボードやタッチパッドに5秒間ぐらい触れないと自動的に節電のためバックライトがオフになる。

付属のキーボード。
充電はポゴピン
キーピッチは19mm確保されている
バックライトをつけたところ
キーバックライトは7色にカスタマイズ可能で、ワンキーで変更できる

 タッチパッドは実測129×79mmと、こちらも余裕のある大きさとなっている。独立ボタンはなくボタン一体型のタッチパッドだが、左右クリックのスイッチ自体は独立しているため誤操作することは少ないだろう。

タッチパッドは実測129×79mm

 Bluetooth接続のため、当然本体から離した利用も可能なので、タブレットをモバイルモニタースタンドに付けて好きな高さにセットして使うのもありだし、Deleteキーがないと不便といったユーザーなら、いっそ好みのBluetoothキーボードを繋げて使うのもありだ。

キーボードはBluetooth接続のため、離した状態で利用できる

 一方背面に付ける保護カバー兼スタンドだが、こちらは全部をカバーするタイプではなく主に中央部分を保護する。そして、この保護カバー自体を折ってスタンドにするという珍しいタイプ。どちらかといえば保護目的ではなくスタンド目的が中心で、軽量化やデザインのためこのような形状になっているのだろう。なお、本機はスタイラスペン非対応なので、あえてキックスタンドなどを装備していないのだと思われる。

カバー兼スタンドはかなり変わった形状

SATA SSDの採用が若干惜しいがIntel N100で不満のない性能

 最後に簡単にベンチマーク結果を紹介する。エントリー向けであることを踏まえ、高度な3Dゲームのベンチマークなどは行なわず、PCMark 10、3DMarkの一部テスト、Cinebench R23、およびCrystalDiskMarkに絞った。比較参考用に同じIntel N100を搭載したBeelinkのミニPC「EQ12」の結果を並べてある(こちらはTDP 20Wが設定されているため有利)。

 結果は概ね予想通りで、PCMark 10はスコア3,000を超えた。これは一時期のUMPCで使われていたCore i5-8200YといったSkylake世代の低電力/メインストリームクラスのプロセッサの結果も凌駕し、一般的な用途では問題ない性能を示した。

PCMark 10の結果
3DMark Time Spyの結果
3DMark Fire Strikeの結果
3DMark Night Raidの結果
3DMark Wild Lifeの結果
Cinebench R23の結果
ファイナルファンタジーXIV 暁月のフィナーレ ベンチマークの結果

 また、体感速度に直結しやすいCinebench R23のシングルコアでも908となり、前世代のJasper Lakeや前々世代のGemini Lakeから大きく改善している。実際にWebブラウジングや動画視聴を中心に色々試してきたが、ストレスを感じることは一切なかった。

 一方でやや懸念点を挙げるとすればストレージ周りで、本製品にはNVMe接続のタイプではなく、UDStore製のSATA SSDが使われていた。シーケンシャルリード/ライトこそ536.52MB/sと410.03MB/sとSATA 6Gbpsの上限に肉薄する数値だが、4Kランダムアクセスは若干弱く、リードで16.79MB/s、ライトで50.17MB/s(1GiBデータブロックサイズ時)と、PCI Express 3.0対応のエントリーNVMe SSDの4分の1から3分の1程度の性能だ。

CrystalDiskMark 8.0.5の結果

 このため同じドライブ内で細かいファイルのコピーや、Windows Updateのようなファイル更新作業が発生するとやや待たされる可能性がある。とはいえ、このようなファイル操作はそれほど頻度が高くないため、実利用では特に問題にならないだろう。

 なおモバイル機としてみた時に重要なバッテリ駆動時間だが、輝度50%/キーボード非接続/Wi-Fi接続時で、PCMark 10のModern Officeバッテリ駆動テストは残り2%まで7時間19分と出た。14型のWindowsタブレットとしてみればまずまずの成績で、普段遣いなら十分だろう。

常時見ておきたい情報を表示させておくのにピッタリ?

 デザインにこだわった風変わりなホワイト筐体といい、ファン付きといい、Bluetoothキーボードといい、取り外せるカバー兼スタンドといい……さまざまなフォームファクタがある中でAEROPADは異色の1台だ。

 繰り返しとなるが、Webブラウジングや簡単な文書作成といった用途においてはほぼ不満のない性能となっているので、初心者が買う1台目として検討するのはもちろんあり……なのだが、個人的にデータを常時監視するような用途においてもアリではないか? と考えている。

 たとえば筆者の場合、サイトへのアクセス数を常時モニタリングしているのだが、その表示用としてタブレットアームに本機をつけて脇で見つつ、いざ操作が必要になったらタッチか、Bluetoothキーボードを引っ張りっ出して操作するのはありだとは思った。監視カメラやライブカメラの表示用、あるいは株やニュースの表示用端末が欲しいのなら、2台目として検討してみても面白いだろう。

机の脇に置く監視用の1台としてどうだろうか
ライバルはSurface? N100搭載の格安Windowsタブレット「AEROPAD」は実用アイテムかキワモノか?

 ミニPCで人気のハイコスパCPU、Intel N100を搭載したZENAEROのWindowsタブレット「AEROPAD」を実機紹介。

 N100だから機能、性能はミニマムかと思いきや、メモリはLPDDR5-4800 16GB、ストレージ:SATA SSD 512GB、モニターは1,920×1,200ドットの14型!しかも着脱式のキーボードも付属するから見逃せません。SurfaceのようにタブレットとしてもノートPCとしても便利に使えちゃうのでしょうか?

 このAEROPADを外観から使い勝手、ベンチマーク結果まで、まるっと評価します。

出演

劉尭(PC Watchデスク) 佐々木修司(PADプロデューサー) 【本チャンネル “PAD” について】 PC Watch、AKIBA PC Hotline!、DOS/V POWER REPORTが共同でお届けするPCハードウェアと関連情報の専門チャンネルです。完成品PC、自作PC、パーツ、周辺機器などを専門媒体ならではの視点で掘り下げます。コンテンツを続々追加予定。チャンネル登録をお願いします!