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これが60万円のゲーミングノートだ!GeForce RTX 4090を載せた「ROG Strix SCAR 18」を検証

2024年モデルのROG Strix SCAR 18。最上位モデルの価格は60万9,800円

 ASUSのROG Strix SCAR 18はゲーミングノートの中でも最上位に位置するモデルで、ハイエンドなスペックかつ大画面が特徴だ。「ROG」らしい豪華な冷却技術も導入され、定格を超えたOCによる性能や快適なゲーミングも約束される。持ち運んで移動することも可能な、超ハイエンドゲーミング環境と言えるだろう。

 なお、価格はGeForce RTX 4090 Laptop GPUを搭載する最上位モデルが60万9,800円、下位のGeForce RTX 4080 Laptop GPU搭載モデルでも52万9,800円と非常に高価だ。今回は最上位モデルで検証を行なったので、ゲーミングノート最高峰の性能を見せていきたい。

2024年版ではCPUが第14世代にアップデート

 ROG Strix SCAR 18には2023年モデル「G834JY」もあって、まずそれと2024年モデル「G834JYR」のスペックを比較し何が新しくなったのかを把握しておこう。

 ROG Strix SCAR 18(2024)はCPUが第13→第14世代に更新されたアップグレードモデルだ。2023年モデルはCore i9-13980HX、2024年モデルはCore i9-14900HX。どちらもRaptor Lakeなので、CPUスペックもコア数を始め多くは共通のまま、Core i9-14900HXはCore i9-13980HXよりも最大クロックが一段引き上げられている。

 こう見ると大きな変化はないように見えるが、CPUもGPUも一般向けでは現在入手できる最上位のものを搭載していることは間違いない。

 それに、クロックが引き上げられただけとは言え、そのクロックはゲーミングにおいても重要な要素だ。ゲーミングでは特に高フレームレートでプレイしようというとき、画質設定や解像度を抑えてGPU負荷を引き下げるが、一方でフレームレートが高くなりすぎるとそれをさばくCPU側の処理が追いつかなくなりボトルネックとなる。CPUクロックが上がれば、その分ボトルネックが緩む方向に働いてフレームレートも引き上げられる。

 ROG Strix SCAR 18のディスプレイのリフレッシュレートは240Hzに対応しており、より高いフレームレートで楽しみたいハードコアゲーマー向けだ。たとえGPUが更新されていなくても、CPUクロックが引き上げられたことで、同じタイトルでも2023年モデルより高フレームレートで楽しめる。

ROG Strix SCAR 18の新旧スペックを比較
年式2024年モデル2023年モデル
製品名ROG Strix SCAR 18(G834) G834JYRROG Strix SCAR 18(G834) G834JY
CPU名Core i9-14900HXCore i9-13980HX
コアPコア8基、Eコア16基、計24コア32スレッドPコア8基、Eコア16基、計24コア32スレッド
TB最大クロック5.8GHz5.6GHz
Eコア最大クロック4.1GHz4GHz
キャッシュ36MB36MB
PBP55W55W
MTP157W157W
iGPU名Intel UHD Graphics for 14th Gen Intel ProcessorsIntel UHD Graphics for 13th Gen Intel Processors
GPU最大クロック1.65GHz1.65GHz
実行ユニット32基32基
メモリタイプDDR5-5600/5200 64/32GBDDR5-4800 64/32GB
dGPU名GeForce RTX 4090 Laptop GPUGeForce RTX 4090 Laptop GPU
CUDAコア数9,728基9,728基
ブースト クロック1,455~2,040MHz1,455~2,040MHz
ビデオメモリ16GB GDDR616GB GDDR6
メモリバス幅256bit256bit
GPUサブシステム電力80~150W80~150W
ストレージPCI Express 4.0 x4 1TB×2(RAID 0)PCI Express 4.0 x4 1TB×2(RAID 0)
ディスプレイ18型、ノングレア18型、ノングレア
解像度2,560×1,600ドット2,560×1,600ドット
リフレッシュレート240Hz240Hz
Webカメラ92万画素92万画素
ネットワーク2.5GbE、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.12.5GbE、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.1
インターフェイスHDMI、Thunderbolt 4、USB 3.1 Type-C、USB 3.1×2、マイク/ヘッドフォンコンボHDMI、Thunderbolt 4、USB 3.1、USB 3.1×2、マイク/ヘッドフォンコンボ
ACアダプタ330W330W
バッテリ4セル/90Wh4セル/90Wh
サイズ(W×D×H)399×294×23.1~31.1mm399×294×23.1~31.1mm
重量約3.1kg約3.1kg

サイズ感はほぼ17.3型。ROGならではのデザインも魅力

 ROG Strix SCAR 18は、18型ディスプレイを搭載するハイエンドゲーミングノートPCだ。18型というサイズ感に注目されるが、本製品は解像度が2,560×1,600ドットなのでアスペクト比が16:10。一般的な17.3型で2,560×1,440ドットのアスペクト比16:9のパネルと比べると縦は拡大するが幅についてはほぼ同じだ。

 机の上の専有スペースについては、奥行きがやや拡大するとは言え、通常の17.3型相当として検討すればよいだろう。スタンダードな15.6型、16型パネルと比べて迫力ある映像を楽しめるのは言うまでもない。

ROG Strix SCAR 18は18型と、ノートPCとしては大サイズのディスプレイで、解像度は2,560×1,600ドット

 フルHDよりも高解像度であることに加え、アスペクト比16:9のパネルと比べても縦が160ドット増えており、一画面に表示できる情報量は多い。これは普段使いでもゲーミングでも効果を発揮することだろう。パネル品質も非常に高い。視野角は上下・左右とも170度。斜めから見ても色味の変化はほとんど感じられない。

視野角が広く、斜めから見ても色味の変化がほとんど感じられない
筐体サイズは399×294×23.1~31.1mm。奥行きがあるものの、幅は400mm弱なので17.3型に近い

 外装は一部がスモークの半透明となっており、ヒンジ手前、キーボードの奥の部分はちょうど内部の冷却機構が見える。側面にもスモークの部分がある

内部の冷却機構がうっすら見える一部半透明な筐体

 LEDイルミネーションは、キーボードバックライトのほか、天板部ROGエンブレム、背面排気口の上の部分、パームレストの裏にあたる部分にある。

パームレスト裏にもLEDイルミネーション
天板部はシンプルにフラットだがROGを主張するデザイン。ヒンジ裏にLEDイルミネーション

 LED制御は同社Armoury Crateのライティング設定ページのほか、評価機ではWindowsの動的ライティングが適用されていた。

Windowsの動的ライティングにも対応

 天板部はフラットだが、ROGエンブレムと斜めに入ったラインが個性をアピールする。ヒンジ裏、排気口の上部にあたるスモーク部分は交換パネル「Armorキャップ」が付属している。

交換パネル「Armorキャップ」でデザイン変更もできる

 キーボードはテンキー付きの日本語配列。ゆとりある筐体サイズではあるが、Enter周辺のキーは、たとえばバックスラッシュ、右Shift、¥などがほかより幅の狭いキーになっており、隣り合わせのキーとの隙間も詰まっているので使い始めは入力時に気を使う。基本的にゲーミング向けのキーボードと割り切るのがよいだろう。

キーボードはテンキー付きの日本語配列

 なお、F1~F5キーの上には、ハードウェア制御のための5つのファンクションキーがある。

M1~M5まで、ハードウェア制御のための5つのファンクションキーがある

 主要キーのピッチは19mmほど。ゲーミングキーボード仕様なので打鍵感はよかった。浅いなりにもストロークもしっかりと感じられた。タッチパッドはかなり大きく、およそ縦85m×横130mm。このくらい大きいとこまかな操作もしやすい。

主要なキーについては19mmほどのキーピッチが確保されている
大型で細かな操作もしやすいタッチパッド

現在のゲーミングPCトレンドを盛り込んだ最新・高速インターフェイス

 インターフェイスを見ていこう。インターフェイスがあるのは左右側面で、左はACアダプタ用ジャックのほか2.5GbE、HDMI、Thunderbolt 4、USB 3.1(USB 3.2 Gen 2) Type-C、オーディオ入出力コンボジャック、右はUSB 3.1×2となっている。

 高速インターフェイスとしては有線ネットワークの2.5GbE、データ転送にはThunderbolt 4があり、USBもType-C/A合わせればUSB 3.1以上を4ポート利用できることになる。速度、ポート数とも多くはないが十分と言えるだろう。

 映像出力はHDMIのほか、Thunderbolt 4、USB 3.1 Type-Cも利用できる。加えて、無線ではWi-Fi 6E、Bluetooth 5.1もサポートしている。

左側面にはACアダプタ用ジャック、2.5GbE、HDMI、Type-C×2(Thunderbolt 4とUSB 3.1)、オーディオコンボジャックがある
右側面はUSB 3.1 Type-A×2

 このサイズ感で背面インターフェイスがなかったことを不思議に思うかもしれない。本製品の背面内部は端から端までヒートシンク。左右に排気口を持つのが一般的だが、本製品はずらっと排気口が一列に並んでいる。最上位のCore i9と最上位のGeForce RTX Laptop GPUを搭載可能とした冷却機構はかなり大掛かりなものだ。

背面にあるのは排気口のみ。内部も横幅いっぱいのヒートシンクが搭載されている

 まず、CPUとGPUそれぞれの熱をクーラーに伝えるグリスは、同社がほかのハイエンド製品でも用いている液体金属グリスが採用されている。そこからヒートシンクに輸送するのは極太のヒートパイプで、本製品は7本用いているとのこと。

 また、GPU搭載ノートPCでは左右にファンを置くのが一般的だが、本製品はもう1つファンを搭載して計3基。大熱量、そしてファンが増えれば動作音が大きくなるのが通常だが、本製品はゲーミングノートPCらしい音ではあるが大音量というほどではない。

底面も吸気口がかなりの面積を占める。あまり見る機会のない底面の造形にもこだわっているのがさすがROG

メモリは最大容量でSSDはRAID 0。すべてが豪華スペック

 CPUとGPUは冒頭の通り、そのほかの内部スペックも見ていこう。

 メモリはDDR5-5200で容量は64GB。2基あるSO-DIMMスロットに32GBモジュールを2枚搭載している。

メモリは64GBでSO-DIMMスロット2基の最大容量を搭載している

 ストレージは2TB。これは1TBのM.2 NVMe SSD、2基をRAID 0構成としたものだ。搭載されていたSSDはPCI Express 4.0 x4接続。PCI Express 5.0 x4ではないが、RAID 0によって通常のGen4 x4よりも高速だ。実測ではシーケンシャルリード12.65GB/s、同ライトが9.06GB/sほどを記録した。

ストレージは1TBのNVMe SSDを2基
2基のSSDでRAID 0ボリュームが作られている
CrystalDiskMarkで計測したストレージの転送速度

 再びCPUとGPUについてだが、現在のノートPCではコンフィギュラブルTDPを採用しており、シーンに合わせてTDPを可変させ、あるいは上限を設定して運用する。冷却機構が強力なら高TDPで運用でき、たとえばスリムノートなど性能を抑えてでもスリムさを追求したいような場合は定格よりも低いTDPを設定するようなこともできる。

 本製品では、Armoury Crateのホームから設定を切り換え可能だ、マニュアル(手動)設定ではCPUが最大65W、GPUは最大175Wという定格を超えてより高いパフォーマンスを引き出すことも可能となっている。

電力枠はプリセットによって可変する。TurboならGPUが175Wに、マニュアル設定ではCPUのPL1が140W、PL2が175Wといった具合でかなり過激な設定も可能
ACアダプタは出力330W。かなり大きめだ

Cinebench R23で3万点超え!

 それではベンチマークでパフォーマンスを確認していこう。用いたベンチマークソフトは以下の通り。電源設定はTurboとしている。

  • PCMark 10
  • 3DMark
  • VRMark
  • Cinebench 2024
  • Cinebench R23

 PCMark 10、ExtendedテストのOverallは12,150ポイントと高い。各シナリオのスコアもすべて10,000ポイント以上で、特にずば抜けて高いGamingスコアは28,191ポイントだった。ホームはもちろん、ビジネスもクリエイティブも快適な高性能PCだがゲーミングは特に強いという内容だ。

 3DMarkでは、Time Spyで2万点、1つ上のTime Spy Extremeで1万点と、ノートPCだがなかなか高いスコアはさすがGeForce RTX 4090 Laptop GPUといった印象。VRMarkも高スコアで、3つのテストともターゲットfps以上のフレームレートを記録していた。

 Cinebench 2024は参考程度に、R23に目を向けるとCPUは3万点超え、Single Coreも1,723ポイントを記録した。

 ゲームベンチマークは、比較のことも考慮し一般的なアスペクト比16:9の解像度で計測している。用いたのは以下の通りだ。

  • FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク
  • ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
  • Cyberpunk 2077

 FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークは比較的GPU負荷が高いタイトルだが、2,560×1,440ドット、高品質で15,333ポイント、「非常に快適」という評価だった。このベンチマークでは(ディスプレイが対応していなくても)4Kの計測が可能なのでこちらも実行してみると、高品質で「快適」、標準品質で「とても快適」、軽量品質で「非常に快適」といった具合の評価になった。4K外部ディスプレイをお持ちの方は参考にしていただきたい。

 ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークは今となっては軽量タイトル。ただし、CPU性能も重要になってくるタイトルだ。2,560×1,440ドット、最高品質で26,067ポイント、「非常に快適」評価でその際のフレームレートが184.3258fpsだった。

 1,920×1,080ドットでは最高品質よりも軽量なはずの高品質(デスクトップPC)でスコアの逆転が見られた。フレームレートではちょうど220fps前後で、逆転現象というよりはこのあたりがファイナルファンタジーXIVにおける頭打ち、CPUがボトルネックになる境界と言えるかもしれない。

 Cyberpunk 2077はかなりGPU負荷が高く、レイトレーシングやDLSSなどにも対応している。プリセット中もっとも高負荷のレイトレーシング:オーバードライブでは58.47fpsを記録。60fpsが快適ラインなのでギリギリプレイできそうではある。ひとつ下のレイトレーシング:ウルトラであれば83.38fpsと余裕のフレームレートが得られた。

価格もデスクトップの最上位構成に匹敵。ただしノートPCだからこそのメリットもある

 ROG Strix SCAR 18(2024)のゲーミングパフォーマンスはベンチマークの通りで、2,560×1,600ドット(あるいは2,560×1,440ドット)で重めのタイトルも最高の画質で60fps前後、少し引き下げれば60fpsに余裕を加えたフレームレートで楽しむことができ、あるいは軽量のタイトルなら最高画質で240Hzパネルの性能を引き出すプレイが可能だ。

 これを18型の大画面で楽しむことができ、動作音も爆音とまではいかない程度に抑えられていた。また、ファンにはホコリ対策も施されているという。

 もちろんこうしたスペックだからROG Strix SCAR 18(2024)の、今回試したGeForce RTX 4090 Laptop GPU搭載メモリが64GBの上位モデルは高価だ。価格は60万9,800円。デスクトップ・ゲーミングPCの最上位構成とほとんど同じ価格と言えるだろう。

 ラインナップには、GPUをGeForce RTX 4080 Laptop GPUとした「G834JZR-I94R4080」(52万9,800円)、16型筐体のROG Strix SCAR 16(GeForce RTX 4090 Laptop GPUを搭載して56万9,800円、53万9,800円)がある。それでも50万円超なので、ROG Strix SCARシリーズはASUSのフラグシップが欲しい、という方が選ぶモデルと言えるだろう。