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プログラミングとかに便利そうな縦配置も楽勝!変幻自在なフル2画面ノート「Zenbook DUO UX8406」

Zenbook DUO UX8406MA。価格は34万9,800円で、発売日は3月13日

 キーボード面までディスプレイを拡張した、一見変わりダネなモデルを次々にリリースしてきているASUS。折り曲げディスプレイの「Zenbook 17 Fold OLED」や、キーボード面に横長のサブディスプレイを組み込んだ「Zenbook DUO」シリーズで、我々ユーザーの土肝を抜いてきた。

 今回リリースされたのは後者「Zenbook DUO」シリーズの2024年型新モデル「Zenbook DUO UX8406MA」(以降、Zenbook DUO)だ。サブディスプレイはついにキーボードがあるはずの面全体に広がり、完全なフル2画面ノートとなった。ユニークながらもまさに七変化と言えるその使い勝手をお伝えしていきたい。試用機と同等スペックの価格は34万9,800円で、発売日は3月13日だ。

高解像度、高リフレッシュレート、広色域の有機EL×2画面

 新しいZenbook DUOは、メインディスプレイとセカンドディスプレイの2画面を備えるノートPC。2画面とも同一の仕様となっており、14型有機ELのタッチスクリーンで、解像度は2,880×1,800ドット(アスペクト比16:10)、リフレッシュレートは120Hz。Display HDR True Black 500(最大500nits)に対応し、DCI-P3の色空間を100%カバーする。

上下2画面のZenbook DUO
180度開いて使うこともできる
写真だと分かりにくいが、天板はラインと小さなロゴがデザインされたシンプルなもの

 OSはWindows 11 Homeがプリインストール。CPUはCore Ultra 9 185H(16コア22スレッド、最大5.1GHz、Processor Base Power 45W)、GPUはCPU内蔵のIntel Arc Graphicsを搭載する。メモリ32GB(LPDDR5X-7467)、ストレージ1TB(NVMe M.2 SSD PCIe 4.0 x4接続)を内蔵し、ネットワークはWi-Fi 6E対応となっている。

高品質なIntel Core Ultra搭載モデルであることを示すIntel Evo Editionに準拠

 外部インターフェイスは多くはないが、Thunderbolt 4を2ポートと、USB 3.0(Type-A、5Gbps)を1ポート用意し、拡張性は確保した。Thunderbolt 4ポートはDisplayPort Alt Modeによる映像出力とUSB PDによる高速給電に対応。また、HDMI出力端子とヘッドセット端子も備えている。Webカメラは207万画素で、Windows Helloの顔認証に対応する。

左側面にThunderbolt 4×2と、USB 3.2×1
右側面にHDMI出力とヘッドセット端子

 本体とは別に外付けの薄型キーボードと、4,096段階の筆圧検知に対応するASUS Pen 2.0も付属する。キーボードはセカンドディスプレイの上に載せることで通常のノートPCらしい物理キーボードとして利用でき、取り外した状態でもBluetoothキーボードとして使うことが可能だ。

付属の外付けBluetooth対応キーボード
セカンドディスプレイ上に載せて使うときはポゴピンで物理接続される
キーボードを載せると普通のノートPCらしい見映えに
ASUS Pen 2.0も付属する

 畳んだときの本体サイズは約313.5×217.9×19.9mmということで、標準的な14型ノートと比べれば厚みがある。この数字はスペックシート上のもので、底面のゴム脚を除いた厚みと考えられる。ゴム脚を含めるとおおよそ+5mm、実質25mm程度の厚みと考えておくと良さそうだ。

標準的な14型ノートよりは厚みがあり、実質25mmほど
キーボードを載せて閉じた状態
キーボードを載せずに閉じると奥側に隙間ができる

 重量は本体のみで約1.35kg(実測約1.39kg)、キーボード込みで約1.65kg(実測約1.70kg)と少し重めだ。とはいえ、通常のノートPCで2画面にしたいときはモバイルモニターなどを別に持ち運ばなければならないから、トータルではZenbook DUOの方が軽くなるかもしれない。

本体のみの重量は実測約1.39kg
キーボード込みの重量は実測約1.70kg
本体底面にはスタンドが取り付けられている
付属ACアダプタはコンパクトながら65W出力
【表】ASUS Zenbook DUO UX8406のスペック
OSWindows 11 Home
CPUCore Ultra 9 185H
(16コア22スレッド、最大5.1GHz、Processor Base Power 45W)
GPUCPU内蔵Intel Arc Graphics
メモリ32GB (LPDDR5X-7467、最大32GB)
ストレージ256GB (NVMe SSD M.2、PCIe 4.0 x4)
ディスプレイ14型有機EL(2,880×1,800ドット、120Hz、DCI-P3 100%、タッチ対応)
インターフェースThunderbolt 4×2、USB 3.0、HDMI出力、ヘッドセット端子
通信機能Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3
カメラ207万画素 (Windows Hello顔認証対応)
サウンドステレオスピーカー (Dolby Vision・Atmos対応)
キーボード84キー日本語Bluetoothキーボード
バッテリリチウムポリマー
同梱品ACアダプタ (最大65W)
サイズ約313.5×217.9×19.9mm
重量本体約1.35kg(キーボード込みで約1.65kg)
価格34万9,800円

 ここで軽くベンチマークテストの結果も紹介しておこう。現在のところ最新世代のCore Ultraの中でも上位のCPUを搭載していることもあり、実用性能はもとよりデザイン・ゲーム用途においても優れたパフォーマンスを発揮してくれるようだ。ディスクリートGPUには及ばないが、3Dゲームでもライトなものなら不満なく遊べるレベルだろう。

2画面をフルに活かす工夫の数々

 開くと画面が2つ現れるという見た目のインパクトが強いZenbook DUOだが、ただ単純に縦にデュアルディスプレイにした製品ではない。この2画面を有効活用できるようにする独自の機能やユーティリティが満載だ。

指6本のゼスチャーでキーボードが出現

 まず、手前側のセカンドディスプレイには入インターフェイスとして使える数種類のツールを配置できる。計6本の指でゼスチャー操作すると仮想キーボード(と仮想タッチパッド)が出現し、セカンドディスプレイ全体に表示することも、画面の半分だけに表示することも可能。

さらに6本指で上方向にスワイプすると大きなタッチパッド付きの仮想キーボードに

 追加で手書き入力用のウィンドウも表示してASUS Pen 2.0(または指先)で文字入力が行なえるほか、テンキーも表示できる(仮想キーボード・タッチパッド以外はメインディスプレイ側にも表示可能)。

小さなタッチパッド付きのパターンもある
仮想キーボードは半透明にすることもできる
ASUS Pen 2.0や指先で手書き文字入力
仮想テンキーで数字入力が楽に

 現在アクティブになっているアプリケーションに応じて機能が変化する「ControlPanel」も表示しておける。たとえばデスクトップを表示している状態だと音量をダイヤルで操作したり、画面の明るさをスライダーで調整したりでき、Webブラウザだとコンテンツのズームイン・アウトをダイヤル操作できたりする。

入力サポート系の機能は独自ユーティリティ「ScreenXpert」から起動・設定が可能
アクティブなアプリケーションによって機能を変えられる「ControlPanel」
ダイヤルで直感的に音量調整

 Adobe Photoshopの使用中は、レイヤーの拡大・縮小・透明度設定、ブラシの変更、各種描画・選択ツールの切り替えなどなど、多くの機能がセカンドディスプレイ上のダイヤル・ボタン操作で手早くこなせる。これに限らず、アプリケーションごとにどんな機能を使えるようにするかはユーザーの手でカスタマイズ可能だ。

Adobe Photoshop使用中のControlPanel(デフォルト設定)。まるでDJ
ユーザー自らカスタマイズもできる

 ワンタップでショートカットを実行できる「Quick Key」という機能も用意されている。指先の感覚で位置を把握しにくい仮想キーボードだと、複数キーを同時押しするショートカットキーの操作が難しいときがあるが、それを補助する機能だ。

 コピー&ペーストや全選択、取り消しといったショートカットボタンがあらかじめ登録されており、もちろんこちらもユーザーの好きなショートカットを登録しておける。

ワンタップでショートカット実行できる「Quick Key」
2つの画面の明るさを個別に設定することもできる

 Windows標準のスナップ機能を拡張したような機能も用意されている。ウィンドウをドラッグするとメインとセカンドのディスプレイを表わすアイコンなどが現れ、その上にドラッグすることでウィンドウを狙った画面・位置にレイアウトできるものだ。

 それぞれのディスプレイ全体にレイアウトしたり、一方のディスプレイの隅や下半分にレイアウトしたり、といった操作ができ、2画面にまたがる形で最大化させるのもOK。

ウィンドウをドラッグしている間は、狙った画面・位置に一発でレイアウトできるアイコンが表示される

2画面ノートの7つの活用例

 2画面活用を支援するこうしたソフトウェアと、本体底面に設けられたスタンドにより、Zenbook DUOは今までになかったいろいろな面白い使い方ができるようになる。参考までに7つの活用例を写真とともに挙げてみよう。

2画面にフルスクリーン表示してWebブラウジング

 最もオーソドックスと思われる2画面活用の例がこれ。Webブラウザなど縦スクロールがメインのアプリケーションを2画面全体に表示する使い方だ。

 スタンドで立てて開き気味にして置くと、なかなかに圧巻。実質20型に匹敵する縦長画面で効率よくブラウジングしていける。画像が中央のベゼルで切れると少し違和感があるが、テキスト主体のコンテンツならさほど気にならない。

2画面“オフィス”で素早く文書作成

 業務でオフィス文書を作成するときは、複数の資料を参考にすることがよくある。必要なデータをコピー&ペーストしたり、グラフをリンクさせたり、といった操作が頻繁に発生することもあるだろう。

 そんなとき2画面のZenbook DUOなら、全画面表示したアプリケーションを2つ同時並行で操作できるので、資料間を行ったり来たりするのも苦にならない。メインディスプレイはキーボード&タッチパッドで操作し、セカンドディスプレイはタッチで操作する、といった二刀流的な使いこなしもおすすめ。

プレビューとタイムラインを別画面に分けて動画編集

 動画編集時は大画面、もしくはマルチモニター環境が欲しくなるもの。タイムラインやそのほかのツールが画面の大部分を専有し、肝心のプレビューが小さくなってしまうと、細部のミスや余計な映り込みに気付きにくいこともあるからだ。

 でも、最初からデュアルモニターなZenbook DUOならいちいち外部モニターを用意しなくても、本体のみで解決する。セカンドディスプレイでタイムラインなどをまとめて扱うようにすれば、プレビューはメインディスプレイで大きく表示できるのだ。

フォトレタッチでもツールウィンドウを別にして快適作業

 Adobe Photoshopのようなフォトレタッチツールも、動画編集ソフトと同じようにツールウィンドウが画像編集エリアを侵食しがち。細部までこだわって加工しようにも、狭いエリアだと画像を拡大・縮小しながら作業しなければならず非効率だ。

 なので、セカンドディスプレイ側にツールウィンドウをごっそり移動して、メインディスプレイにできるだけ画像を大きく表示しながら作業したい。DCI-P3 100%カバーの発色の良さも完成度アップに貢献してくれるはず。

動画再生しながらゲームでも遊ぶ贅沢なデュアルエンタメ

 一方の画面で動画再生しながら、もう一方の画面でゲームをプレーする、なんていう贅沢な使い方がしやすいのもZenbook DUOならでは。

 よくあるデュアルモニター環境は横長画面を左右に並べるスタイルだが、Zenbook DUOは上下に並ぶため、動画とゲーム画面を交互に見るとしても視点の移動が少なく済むのも利点だ。ゲームの配信動画を参考にしつつ同じゲームで遊ぶ、なんていうのもいいかもしれない。

A4電子書籍をほぼ実寸見開き表示

 Zenbook DUOは、タブレットPCのように本体を90度回転させるとデスクトップも回転して適切な向きで表示してくれる。従って、電子書籍を1ページ1画面ずつ、見開きで表示させるのも簡単だ。14型の画面はA4に限りなく近い縦横サイズで、雑誌の小さな文字も読みやすい。

 重量があるので寝そべりながら読むのは難しいが、電子書籍端末としてのポテンシャルは高いと感じる。なお、本体を横置きすると側面にある排気孔がテーブルに面することになるので、完全に塞がってしまわないように注意したい。

ChatGPTを使いながらプログラミング

 サンデープログラマーにもなりきれていないごくライトな趣味グラマーである筆者は、ChatGPTにコード生成をよく手伝ってもらっている。ChatGPTに要望して回答をもらい、そのコードを自分のプログラムに反映させていく繰り返し作業に、本体を横置きして縦長2画面スタイルにしたZenbook DUOは実にぴったりだ。

 ステップ数の多いコードも見通しがしやすく、ChatGPTだけでなくWebリファレンスを参考にするのにも都合がいい。

使い込んで自分なりの活用スタイルを築きたい

 かつて本誌でレビューした折り曲げディスプレイの「Zenbook 17 Fold OLED」は、市販製品で実用面にも配慮されていたとはいえ、技術デモ的な印象が拭えないところもあった。

 しかし、独立2画面のZenbook DUOは若干エキセントリックな雰囲気はありながらも現実的なデザインに落とし込まれており、ソフトウェア・ハードウェア両面のブラッシュアップで活用方法がより分かりやすくなっているように感じる。

2画面でちょっと戸惑ったことと言えば、タッチ操作で画面をまたがったドラッグ&ドロップができないこと、くらい

 特にセカンドディスプレイで入力インターフェイスを代替する部分はしっかり作り込まれている。仮想キーボードを使いこなすのには慣れが必要そうだが、ある意味かなりの“静音”キーボードだ。

 他人が近くにいるテレワーク環境では仮想キーボードで静かに作業し、それ以外のときは長文入力も楽な付属の物理キーボードで普通のノートPCとして使うのもいい。

 物理キーボード、ControlPanelやQuick Key、手書き入力などを駆使し、入力効率の最大化を目指していくのもアリだろう。いろいろな組み合わせであれこれ試行錯誤しながら自分なりのスタイルを作り上げていくのはきっと楽しい作業に違いない。

 ほかのデュアルディスプレイ環境にない使い勝手が得られることを考えれば、34万9,800円という価格も妥当に思えるのではないだろうか。