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もはや変態ではなく個性。2画面ノート「Zenbook Pro 14 Duo OLED UX8402」実機レビュー

ASUS JAPAN「Zenbook Pro 14 Duo OLED UX8402」直販価格は39万9,800円から

 ASUS JAPANはデュアルディスプレイ搭載ノートPC「Zenbook Pro 14 Duo OLED UX8402」を発表した。発売日はGeForce RTX 4060 Laptop搭載の上位モデルが4月21日、RTX 4050 Laptop搭載の下位モデルが5月12日で、価格はそれぞれ44万9,800円、39万9,800円。

 本製品はメインディスプレイに14.5型OLED、セカンドディスプレイに12.7型TFTカラー液晶を搭載。CPUに第13世代のCore i9、ディスクリートGPUにGeForce RTX 4000番台を採用しつつ、17.9mm(最薄部)、1.75kgという薄型軽量ボディを実現している。デュアルディスプレイ&ハイパフォーマンスの恩恵をあらゆる場所で受けられる、もはや「変態ノートPC」とは言えない個性を確立したマシンだ。ライバルの存在しない異色のマシンをじっくりと検証していこう。

ディスクリートGPUのみが異なる2モデルをラインナップ

 最近のASUSのラインナップはシンプルだ。CPUが第13世代(Raptor Lake)のCore i9-13900H、メモリが32GB LPDDR5-4800、ストレージが1TB SSD(PCIe 4.0 x4接続)という点は共通。異なるのはディスクリートGPUのみ。上位のUX8402VV-P1028WがGeForce RTX 4060 Laptop、下位のUX8402VU-P1024WがGeForce RTX 4050 Laptopを搭載している。ディスクリートGPUのみで購入すべきマシンを選べるわけだ。

 なお2022年モデルとの違いは、CPU、ディスクリートGPU、Wi-Fi、Webカメラ、バッテリ駆動時間など。Wi-FiはWi-Fi 5からWi-Fi 6E、Webカメラは92万画素から207万画素にアップグレードされている。ディスプレイのスペック、インターフェイスの構成、ボディデザインなどは同じ。価格差を考えると2022年モデルを購入するというのも堅実な選択だ。細かなスペックについては下記表を参照してほしい。

【表1】Zenbook Pro 14 Duo OLED UX8402のスペック
製品名Zenbook Pro 14 Duo OLED UX8402
型番UX8402VV-P1028WUX8402VU-P1024W
OSWindows 11 Home
CPUCore i9-13900H(Pコア×6+Eコア×8、20スレッド、最大5.4GHz、PBP 45W)
GPUGeForce RTX 4060 Laptop(8GB)
Iris Xe Graphics(1.5GHz)
GeForce RTX 4050 Laptop(6GB)
Iris Xe Graphics(1.5GHz)
メモリLPDDR5-4800 32GB
ストレージ1TB PCIe 4.0 x4 SSD
ディスプレイ14.5型OLED(2,880×1,800ドット、234ppi、16:10、550cd/平方m、120Hz、DCI-P3 100%、VESA DisplayHDR True Black 500認証、PANTONE認証、光沢、ペンおよびタッチ対応)
12.7型TFTカラー液晶(2,880×864ドット、237ppi、500cd/平方m、120Hz、DCI-P3 100%、非光沢、ペンおよびタッチ対応)
ワイヤレス通信Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.1
WWAN-
インターフェイスThunderbolt 4×2、USB 3.1、HDMI 2.1、microSDカードスロット、3.5mmコンボジャック
カメラ207万画素IR(赤外線)カメラ
サウンドステレオスピーカー(1W×2)、クアッドアレイマイク
バッテリ容量76Wh
バッテリ駆動時間約8.4時間(JEITA2.0準拠)
バッテリ充電時間約1.7時間
本体サイズ約323.5×224.7×17.9~19.6mm
重量約1.75kg
セキュリティWindows Hello対応顔認証カメラ
オフィスアプリWPS Office 2 Standard Edition(3製品共通ライセンス付き)
同梱品ACアダプタ、電源ケーブル、ASUS Pen 2.0、スタンド、説明書類
価格44万9,800円39万9,800円
カラーはテックブラック(Tech Black)。本体サイズは約323.5×224.7×17.9~19.6mm
米国軍用MIL規格「MIL-STD-810H」に準拠したテストをクリア。ステレオスピーカーはharman/kardonと協業。Dolby Atmosに対応している
メインディスプレイは14.5型OLED(2,880×1,800ドット)、セカンドディスプレイは12.7型TFTカラー液晶(2,880×864ドット)
キーボードは86キーの日本語配列。Enterキーが非常に大きく日本語変換時の確定操作をしやすい
本体背面にはHDMI 2.1、microSDカードスロット、電源端子を配置
右側面にはThunderbolt 4×2、USB 3.1、左側面には3.5mmコンボジャックを装備。Thunderbolt 4は左右に1つずつ配置してほしいところだ
メインディスプレイの最大展開角度は実測143度、セカンドディスプレイの角度は実測12度
メインディスプレイを開くとセカンドディスプレイ「ScreenPad Plus」が最大20mmせり上がり、画面に12度の傾斜がつく。この機構を「Active Aerodynamic System Ultra(AAS Ultra)」と呼ぶ。メインとセカンドディスプレイの境目が少なくなり、冷却効果も向上する
ACアダプタのコード長は実測183cm、電源ケーブルの長さは実測90cm
ACアダプタの型番は「ADP-180TB K」。仕様は入力100-240V~2.34A、出力20V/9A、容量180W
スタンドは底面に貼り付ける。何度も脱着可能だ
スタンドを上げるとキーボード、セカンドディスプレイ面にさらに角度をつけられる。底面の熱のこもりも低減できるだろう
4,096段階の筆圧検知に対応するスタイラスペン「ASUS Pen 2.0」が同梱
異なる硬さのペン先が4種類付属。欲を言えば予備もほしいところだ
本体の実測重量は1,777g
ACアダプタと電源ケーブルの合計重量は実測541.5g。前モデルのACアダプタ(容量150W)より約115.6g重くなっている
パッケージには、本体、ACアダプタ、電源ケーブル、ASUS Pen 2.0、スタンド、説明書類が同梱。前モデルにあった専用スリーブは省かれた

デュアルディスプレイは一度使ったら手放せない

 さてZenbook Pro 14 Duo OLED最大の魅力は、メインに14.5型OLED、セカンドに12.7型TFTカラー液晶を搭載したデュアルディスプレイ環境だ。当然、天板を開けばすぐに2画面を利用できるわけでモバイルモニターなどと比べると段違いにお手軽。一度使ったら手放せなくなるほど中毒性のある装備だ。

 それぞれの画面に異なるアプリを表示できるのも便利だが、意外に楽しいのが2画面合わせて1つの大きなディスプレイとして使うこと。特にWebブラウジングや書類作成時には見通しが圧倒的によい。スクロールの回数が激減し、非常に快適である。

 また本製品で特筆すべきがデュアルディスプレイ専用のユーティリティ。ウィンドウのタイトルバーをつかんで少しずらすと、アプリスイッチャーが表示されて、ウィンドウをどちらのディスプレイのどの位置に表示するか選択可能。さらに、あらかじめアプリやウィンドウの配置を記録したタスクグループを作成しておけば、2タッチでまとめて開ける。わざわざアプリを1つずつ起動して、配置する手間が省けるのだ。

 またAdobeのPhotoshop、Lightroom、Illustrator、Premiere Pro、After Effectsなどでは、「ASUS Control Panel」でダイヤルやスライダーを使ってアナログのような操作が可能。ただ現時点では対応アプリが少ない。もっと多くのアプリで利用可能となることを期待したい。

メインとセカンドを1つのディスプレイとして使うと上下の見通しが圧倒的によくなる
実際に使っていると、メインとセカンドディスプレイの境目に違和感はほとんど覚えない
同じ画像をメインとセカンドディスプレイで開いてみると、発色がかなり異なる。それぞれに適したカラープロファイルを用意し、もっと色味を近付けてほしい
視野角はメインのOLEDのほうが、セカンドのTFTカラー液晶より当然広い。しかし個人的には言われなければ気付かない程度の差だと感じた
ウィンドウのタイトルバーをつかんで少しずらすと、アプリスイッチャーが表示される。素早く目的の場所にウィンドウを配置可能だ
アプリやウィンドウの配置を記録したタスクグループを作成しておけば、2タッチで一気に開ける。タスクグループは最大4つまで作成可能だ
「ASUS Control Panel」では、Adobeアプリをダイヤルやスライダーでアナログのような操作できる

 なお、harman/kardonと協業した1W×2のステレオスピーカーが内蔵されており、OLEDディスプレイの画質に見合った音圧、音質のサウンドを再生してくれる。ディスプレイはDolby Vision、スピーカーはDolby Atmosに対応している。本機は映像コンテンツを堪能するプレーヤーとしても活躍してくれる。

YouTubeで公開されている「前前前世(movie ver.) RADWIMPS MV」を最大ボリュームで再生した際の音圧レベルは最大84.1dB(50cmの距離で測定)

キーボードは前モデルから変更なし、タッチパッドは慣れが必要

 86キーの日本語配列キーボードは2022年モデルから変更はないようだ。キーピッチは実測17mm前後、キーストロークは実測1.5mm前後。キーピッチはやや狭いがキーボード面の剛性は高く、キータッチも良好。Enterキーが大きいので日本語変換時の確定操作も容易。長文入力も快適なキーボードだ。

 右端に配置されているタッチパッドは多少慣れが必要だが、メイン、セカンドディスプレイともにタッチおよびペン操作に対応しているので、意外と不便は感じない。ただクリエイティブ系アプリで細かな操作をするには約53×77mmのタッチパッドではやや窮屈だ。素直に割り切ってマウスを使ったほうがよいと思う。

キーピッチは実測17mm前後
キーストロークは実測1.5mm前後
文字キー(Fキー)の押圧力は実測0.48N前後
キーボードバックライトは明るさを3段階で調節できる
タッチパッドの面積は実測53×77mm。筆者の大きな手で3本指ジェスチャーはちょっと辛い
メイン、セカンドディスプレイともにタッチおよびペン操作に対応。セカンドディスプレイは絵を描くのにはちょっと狭いが、PDFに注釈などを入れるのであれば十分なサイズだ

 Webカメラは前モデルの92万画素から207万画素へと高解像度化。またRGBカメラとIRカメラが独立して搭載されているので、室内灯下でも明るく、発色は自然、なおかつ高精細だ。Web会議用途であれば、外付けWebカメラを用意する必要はない。

ディスプレイ上部には207万画素IR(赤外線)カメラを内蔵。RGBカメラとIRカメラは独立式だ
Windows 11の「カメラ」アプリで撮影(HDRオフ)
Windows 11の「カメラ」アプリで撮影(HDR Proオン)

GPU強化で3Dグラフィックス性能が飛躍的に向上

 最後にパフォーマンスをチェックしよう。今回は比較対象機種として、Core i9-12900HとGeForce RTX 3050 Ti Laptopを搭載する「Zenbook Pro 14 Duo OLED UX8402ZE(UX8402ZE-M3034W)」を採用した。なお、このベンチマークの章では、「Zenbook Pro 14 Duo OLED UX8402(UX8402VV-P1028W)」を2023年モデル、「Zenbook Pro 14 Duo OLED UX8402ZE(UX8402ZE-M3034W)」を2022年モデルと言い換えている。

【表2】検証機の仕様
製品名Zenbook Pro 14 Duo OLED UX8402(UX8402VV-P1028W)
(2023年モデル)
Zenbook Pro 14 Duo OLED UX8402ZE(UX8402ZE-M3034W)
(2022年モデル)
CPUCore i9-13900H
(6P+8Eコア/20スレッド、最大5.4GHz、PBP 45W)
Core i9-12900H
(6P+8Eコア/20スレッド、最大5GHz、PBP 45W)
GPUGeForce RTX 4060 Laptop
Iris Xe Graphics
GeForce RTX 3050 Ti Laptop
Iris Xe Graphics
メモリLPDDR5-4800 32GBLPDDR5-4800 32GB
ストレ-ジ1TB PCIe 4.0 x4 SSD1TB PCIe 4.0 x4 SSD
「HWiNFO64 Pro」で取得したシステムの概要
ベンチマークは「ProArt Creator Hub」のファンモードを「フルスピードモード」、「MyASUS」のMUXスイッチを「ディスクリートGPU」に設定して実施している

 まずCPU性能については、2023年モデルは2022年モデルに対して、「Cinebench R23.200」のCPU(Multi Core)で108%相当、CPU(Single Core)で114%相当のスコアを記録している。第13世代Core Hプロセッサは、コア数やスレッド数などは据え置き。大きく変わったのはクロック周波数の向上だ。今回のスコアは順当な結果と言えよう。

Cinebench R23.200

 一方、大幅な性能向上を果たしたのが3Dグラフィックス。GeForce RTX 3050 Ti LaptopからRTX 4060 Laptopにグレードアップされたことにより、「3DMark v2.25.8056」で240~442%(平均385%)相当、「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」で384~455%相当のスコアを叩き出している。「Battlefield V」(1440p Ultra)の推定ゲームパフォーマンスも75~115fps以上を記録しており、多くの3Dゲームを快適にプレイ可能な性能を備えていることが証明された。

3DMark v2.25.8056
FINAL FANTASY XV BENCHMARK

 ストレージ速度については、「CrystalDiskMark 8.0.4」でシーケンシャルリード(1M Q8T1)は6,511.058MB/s、シーケンシャルライト(1M Q8T1)は4,926.663MB/sとなった。ストレージベンチマークでは2023年モデルと2022年モデルで優劣が入れ替わっている項目もあるが、体感できるほどの差ではない。

SSDをCrystalDiskMark 8.0.4で計測
検証機にはPCIe 4.0 x4 SSD「Micron_3400_MTFDKBA1T0TFH」が搭載されていた

 総合ベンチマーク「PCMark 10」では、PCMark 10 Scoreは139%、Essentialsは105%、Productivityは159%、Digital Content Creationは159%相当のスコアを記録。ちなみに最も大きな性能向上が見られたのがRendering and Visualization Scoreで、260%相当のスコアとなった。ディスクリートGPUが大きく貢献したわけだ。

PCMark 10 v2.1.2600

 不可解な結果となったのが実アプリのベンチマーク。「Adobe Premiere Pro 2023」では2023年モデルは2022年モデルの58%相当の所要時間で処理を終えているが、「Adobe Lightroom Classic」ではわずかではあるが2023年モデルのほうが時間はかかってしまった。OS、アプリのバージョンが異なるので、2023年モデルではなんらかの相性問題が発生している可能性がある。

「Adobe Lightroom Classic」で100枚のRAW画像を現像
「Adobe Premiere Pro 2023」で実時間5分の4K動画を書き出し

 バッテリ駆動時間については、ディスプレイ輝度50%という条件で「PCMark 10 Modern Office Battery Life」を実行したところ、2023年モデルは2022年モデルの105%相当の5時間26分動作した。カタログスペックの約8.4時間には届いていないが、メイン、セカンドディスプレイの輝度を調整すれば、さらに長時間利用できるはずだ。

PCMark 10 Modern Office Battery Life

 高負荷時のCPU温度とクロック周波数の推移についても触れておきたい。「Cinebench R23.200」を1回実行したときにはじりじりとCPU温度が上がるもののクロック周波数は安定していたが、10分間連続で実行すると3回目実行中の2分16秒時点で大きくクロック周波数が落ち込んだ。ただ、そこからは平均3,290.04MHzで安定して推移している。緻密にCPU温度とクロック周波数が制御されていると言えそうだ。

「Cinebench R23.200」実行中のCPU温度は最大92℃、平均87.86℃、クロック周波数は最大3,620.6MHz、平均3,593.72MHz
「Cinebench R23.200」を10分間連続実行中のCPU温度は最大96℃、平均88.42℃、クロック周波数は最大3,615.7MHz、平均3,333.01MHz
「Cinebench R23.200」実行中の消費電力は最大132.235W、平均124.4W、アイドル時の消費電力は平均26.16W

 ちょっと気になったのが本体の発熱。「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK ver 1.3」実行中、キーボード面で最大53.6℃、底面で53.2℃とかなり高い数値を記録した。高負荷な処理をする際には、少なくとも膝上で作業するのは避けたほうがいい。

「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK ver 1.3」実行中のキーボード面の最大温度は53.6℃(室温25.2℃で測定)
底面の最大温度は53.2℃
セカンドディスプレイ下の冷却ファン付近の最大温度は46.7℃
ACアダプタの最大温度は35.8℃

もう誰も「変態ノートPC」とは言えない

 2022年モデルより価格がグッと上がった「Zenbook Pro 14 Duo OLED UX8402」だが、より高性能なディスクリートGPUを採用することにより、ゲーミングノートPCとしてのパフォーマンスが大幅に向上している。またCPU、GPU性能が向上しているにもかかわらず、輝度50%でも5.5時間に迫るスタミナ性能を備えている点もポイントが高い。

 持ち運べるデュアルディスプレイ搭載ハイパフォーマンスノートPCという希有な個性を備えた本機。もう誰も「変態ノートPC」とは言えないはずだ。