Hothotレビュー
Google Pixel Watch 2はいま買うべきスマートウォッチか?機能やバッテリの持ちなどを初代と比較、強化点を探る
2023年10月20日 06:15
Googleが10月に発売した新しいスマートウォッチ「Pixel Watch 2」は、昨年登場した「Pixel Watch」の後継モデル。ウェアラブルデバイス向けOS「Wear OS by Google」を搭載し、デザインなどは前機種を踏襲しながらも、新型センサーを採用するなど性能強化を図っているほか、「Fitbit」と連携した健康管理にさらに力が入れられているのがポイントとなる。
そこで実際に初代Pixel WatchとPixel Watch 2を装着し、しばらく使用してみた違いなども含め、健康管理機能を中心にPixel Watch 2の変化した点などを紹介していきたい。
(1) デザインは前機種を継承も重量や使い勝手は改善
(2) デザイン性の高いウォッチフェイスを大幅追加
(3) センサー強化で健康管理が大きく進化
(4) バッテリはやや改善も不満は残る
(5) 健康管理は着実に進化も、値上げと競合の台頭が悩ましい
デザインは前機種を継承も重量や使い勝手は改善
まずは本体とデザインについてだが、外観についてひと言で表すと「Pixel Watchとほぼ同じ」だ。ドーム状にカスタマイズされたコーニング社の「Gorilla Glass5」を採用して頑丈さと高級感を両立しながら、ガラス部分とメタル部分の一体化を進めたデザインはほぼ共通している。
サイズもPixel Watch 2と同様直径41mm、高さ12.3mmで変わっておらず、ウォッチフェイスを変えていなければ、上から見た目で両機種を区別するのはかなり難しい。
ただいくつかの違いもある。1つは重量が31gと、Pixel Watch(36g)と比べ軽量化が図られていること。これは本体素材が80%リサイクルのステンレスから、100%リサイクルのアルミニウム素材に変更された影響が大きいと言える。
2つ目は本体右側面にあるリューズのサイズで、ほんの少しではあるのだがやや大きくなっている。Pixel Watchはアプリなどの使用時にリューズを回転して操作することが多いので、リューズを大きくすることで操作感を向上させているのが分かる。
そして3つ目は背面のセンサーである。Pixel Watchを始めスマートウォッチやスマートバンドには、心拍数などを測定するための光学式センサーが搭載されているのだが、そのセンサーの精度を高めるため、単独のLEDを用いたシングルパスから複数のLEDを用いたマルチパスに変更したことで形状も大きく変わっている。それゆえ両機種を見極める際は、本体をひっくり返すと非常に分かりやすいだろう。
ただその影響もあってか充電にも変更が加えられており、Pixel Watch 2ではワイヤレス充電ではなく、専用の充電器と4つの端子を合わせて設置することで充電できる仕様となっている。その分充電速度はPixel Watchと比べ高速になっており、バッテリが少なくなった状態からより早く充電できるのは満足感が高い。
充電するには端子を正確に合わせる必要があるが、充電器には磁石が入っているのでどの方向に装着すればよいか分かりやすくなっている。しかし充電時の向きは固定となってしまったため、置き方に制約が出てしまったのはやや残念なところだ。
なお付属のバンドはフルオロエラストマー製のアクティブバンドで、バンドはSサイズとLサイズが付属する点もPixel Watchと変わっていない。バンドの接続部分や着脱方法などもPixel Watchと共通しており、Pixel Watchで使っていたバンドを装着して利用することももちろん可能だ。
また本体カラーはPolished Silve(Bayアクティブバンド)、Matte Black(Obsidianアクティブバンド)、Champagne Gold(Hazelアクティブバンド)、Polished Silver(Porcelainアクティブバンド)の4色で、基本的にはメタル部分の色が異なっている。バンドもそれぞれのカラーに合わせたものが付属する。
デザイン性の高いウォッチフェイスを大幅追加
続いてディスプレイとアプリに関して触れていこう。ディスプレイは320ppiのAMOLEDディスプレイを搭載しており、最大輝度は1,000cd/平方mで外でも十分見やすい。またPixel Watch同様ディスプレイの常時表示にも対応しており、バッテリ消費は早くなるが時間の確認などはしやすくなる。
搭載しているOSは最新の「Wear OS 4.0」となるが、操作感やインターフェイスなどはPixel Watchと大きく変わらない。ウォッチフェイスから左右にスワイプして天気や心拍数、Googleマップなどのタイルを切り替えて利用でき、タイルはスマートフォン上から好みのものを追加したり、入れ替えたりできる。
ウォッチフェイスを入れ替えてのカスタマイズももちろん可能で、標準で用意されているウォッチフェイスの種類はPixel Watchから大幅に増量されている。Pixel Watchのウォッチフェイスはどちらかと言えばシンプルさに重点が置かれていたが、Pixel Watch 2ではより若い世代を意識してか、「アナログ(太字)」など個性やデザイン性を打ち出したものが増えているようだ。
またWear OS by Googleを搭載していることもあり、Google Playのストアからアプリやウォッチフェイスを別途ダウンロードして追加することも可能。ちなみにPixel Watch 2の提供に合わせてGoogleは「Gmail」と「Googleカレンダー」などのアプリを追加提供している。
従来のPixel Watchではメールやカレンダーの通知は確認できたが、詳細な情報を確認できず物足りなさがあった。それだけにスマートフォンで提供されているGmailなどのアプリが提供されたことは、Pixel Watch 2の使い勝手を向上させる上で大きな意味を持つ。無論これらアプリはPixel Watch 2専用ではなく、ほかのWear OS搭載機種でも利用可能だ。
センサー強化で健康管理が大きく進化
Pixel Watch 2での最大の進化ポイントと言えるのが、健康管理に活用されるセンサー類の充実が図られていることだ。先にも触れた通り、心拍数センサーはマルチパス対応となってより精度が高められているほか、皮膚コンダクタンスを測定する電気センサー(cEDA)や皮膚温度センサー、そして気圧計が新たに追加されている。
マルチパス心拍数センサーによって複数の箇所から心拍数を測定し、それにマシンラーニングを組み合わせることでより正確な心拍数が測定可能になるとされている。そこでPixel WatchとPixel Watch2を両腕に装着して数日間生活史、心拍数などを実際に比較してみた。
もっとも正しい心拍数の基準がないので、どちらが正しいのか? という比較は難しいのだが、とりあえず双方で測定したデータを比較すると、グラフにやや違いはあるが大きくずれることなく、近い傾向を示している印象だ。
一方で違いが見られたのがエクササイズ時の心拍数データである。たとえばウォーキングで比べてみると、Pixel Watch 2よりも細かな変動を取得できている印象だ。
またボクササイズのように、腕を大きく動かすようなエクササイズの場合はPixel Watchでは細かな数値の変動が多くブレが見られるのに対し、Pixel Watch 2ではブレが少なくなっている。
酸素飽和度測定するセンサー等も引き続き備えており、装着して寝ることで眠りの深さや睡眠時の血中酸素濃度の記録も可能だ。こちらもデータを比べてみたのだが、眠りの深さなどを示す「睡眠ステージ」や、血中酸素の推定変動量データ等を確認すると、細かな違いは出るものの傾向は近しいように感じる。
そして新たに追加された2つのセンサーだが、皮膚温度センサーは文字通り皮膚温度を測定するもので、睡眠障害等を検出するのに活用されているようだ。ちなみに皮膚温度を測定するには、Pixel Watch 2を少なくとも3日間装着して寝る必要があり、装着してすぐ測定できるわけではない点に注意したい。
もう1つのcEDAは、主としてストレスの検知に活用されるようだ。Fitbitアプリには「ストレスマネジメントスコア」という項目が用意され、心拍数などからストレスを検知してスコア化しているのだが、Pixel Watch 2はcEDAからの情報も追加することでより精度が高められているほか、ストレスを引き起こす体の反応を特定する「身体反応」の測定も可能となっている。
エクササイズに関しては41種類に対応。うち7種類の基本的なエクササイズは、運動を始めると自動で検出して開始・停止する仕組みとなっている。具体的には、同じ運動を一定時間継続することで、Pixel Watch 2が今実行しているエクササイズを提案。適切なものを選択することで計測を開始し、運動を止めて一定時間が経過するとエクササイズを終了したかどうか確認してくる、といった具合だ。
それゆえ自動で測定と言っても、開始・終了時に操作が必要になる点が気になった。操作不要でエクササイズを自動で測定を開始してくれるスマートウォッチも多いだけに、インターフェイスの面では改良の余地があるというのが正直なところだ。
バッテリはやや改善も不満は残る
ここまでPixel Watch 2のデザインや機能などについて触れてきたが、多くの人が関心を持つところはバッテリの持続時間ではないだろうか。Pixel Watchでは「バッテリが1日持たない」との声も多かっただけに、Pixel Watch 2ではバッテリに関して対策が施されているようだ。
バッテリ容量も294mAhから306mAhへと増量されているが、違いがわずかなことから、より大きな改善点はSoCの変更だろう。実際、Pixel WatchではSamsung製の「Exynos 9110」とやや古いものを採用していたが、Pixel Watch 2ではそれをQualcomm製の「Qualcomm 5100」に変更。性能強化と省電力化を進めたのに加え、Pixel Watch同様、低電力のコプロセッサ「Cortex M33」も搭載することでさらなる省電力化を図っている。
では実際のところ、Pixel Watchと比べどれだけバッテリが持つようになったのだろうか。筆者が両機種を装着したある1日を例に挙げると、Pixel Watchは画面常時表示「なし」でおよそ27時間でバッテリが切れたのに対し、Pixel Watch 2は画面常時表示「あり」の状態でそれより長い29時間バッテリが持続した。
その後もいろいろ比較をしてみたのだが、やはりPixel Watchよりバッテリの持続時間が長いことは確かだと感じる。ただPixel Watch自体バッテリの持ちが決して良いとは言えなかっただけに、それよりやや長いだけでは不満も残る。充電スピードも早くなっていることから、24時間のどこかで少なくとも1回は充電した方が運用上確実だろう。
それ以外の性能について触れておくと、位置情報に関してはGPSのほかGLONASS、BeiDou、Galileo、そしてQuasi-Zenith Satellite(みちびき)に対応。屋外でのエクササイズや、「Googleマップ」などでのナビゲーションを利用する時などの精度面では安心感が高い。
決済に関してはNFCとFeliCaに対応しており、クレジットカードのタッチ決済だけでなく、FeliCaベースの電子マネーによる決済も利用可能だ。それゆえ「iD」「QUICPay」、そして「Suica」にも対応するのだが、Suicaに関しては従来のPixel Watchと同様、やや複雑な仕様が変わっていない点に注意が必要だろう。
また通信に関しては、スマートフォンと通信するためのBluetooth 5.0と、2.4GHz帯のWi-Fi 4(IEEE 802.11 b/g/n)、そしてLTE対応モデルはLTEによるモバイル通信にも対応する。今回実際に試していないが、Pixel Watch 2を取り扱うNTTドコモ、au、ソフトバンクの各ブランドが提供するスマートウォッチ向け通信サービスを利用して単独での通信も可能な点は安心感がある。
健康管理は着実に進化も、値上げと競合の台頭が悩ましい
まとめると、Pixel Watch 2はデザインや機能など前機種の基本的な部分は踏襲しながらも、センサーを中心に性能向上や弱点の改善を進めた正当進化モデルと言えるだろう。アプリやウォッチフェイスの充実でスマートウォッチとしての機能充実が図られたのはもちろんだが、センサーとFitbitとの連携強化で、健康やエクササイズに関する機能の充実が図られたのはうれしい。
ただ課題とされてきたバッテリに関しては、改善はされているがいまひとつという印象を脱し切れていないのが正直なところであるし、何より円安の影響を大きく受けてWi-Fiモデルで5万1,800円、LTEモデルで5万9,800円と、Pixel Watch発売時の価格と比べ1万円近く値段が上がってしまったのはつらい。
同じWear OS by Googleを搭載した「Galaxy Watch 6」も価格帯が近い上にFeliCaベースの決済に対応するなど進化しているだけに、値上がりによって競合との選択が悩ましくなったと言えるかもしれない。