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これが40万円台ゲーミングノートの実力!14コアCPU/GeForce RTX 4070/240Hz液晶の「ROG Zephyrus G16」ならどんくらいゲームができるんだ?

ASUSのゲーミングノート「ROG Zephyrus G16 GU603VI」。型番はGU603VI-I9R4070Wで、直販価格は43万9,800円

 ASUSが2023年6月2日に発売したゲーミングノート「ROG Zephyrus G16 GU603VI」。CPUに14コア20スレッドの「Core i9-13900H」、GPUに「GeForce RTX 4070 Laptop GPU」、ディスプレイは16型でリフレッシュレート240Hzとすべてを高いスペックでまとめた1台。直販価格も43万9,800円とかなりぶっ飛んでいる。その実力を確かめる機会に恵まれたので、早速試していきたい。

Core i9-13900HとRTX 4070のパワフル仕様

 多種多様なゲーミングノートを展開するASUSだが、「ROG Zephyrus」シリーズはスリムでスマートなデザインと高負荷な作業もこなせる高いスペックを備えているのが特徴だ。「ROG Zephyrus G16 GU603VI」はその最新モデルだ。

 まず、CPUにはIntel最新の第13世代Coreシリーズから、ノートPC向けとしては上位になる「Core i9-13900H」を採用。

 パフォーマンス重視のPコアを6基、効率重視のEコアを8基備える14コア20スレッドというメニーコア仕様で、最大クロックは5.4GHz、PBP(Processor Base Power=消費電力の目安)は45Wだ。DDR5/DDR4の両メモリをサポートしており、本機はDDR4-3200が32GB搭載されている。

CPU-Zでの表示。CPUには14コア20スレッドの「Core i9-13900H」を搭載。最大クロックは5.4GHzで3次キャッシュは24MB

 ゲーミングノートの心臓部と言えるGPUは、NVIDIAの最新世代にしてノート向けとしては上位クラスとなる「GeForce RTX 4070 Laptop GPU」を搭載。ビデオメモリはGDDR6が8GB、メモリバス幅は128bitだ。

 デスクトップ版RTX 40シリーズと同じく、従来のアップスケーラー(Super Resolution)に加えて、AIによるフレーム生成(Frame Generation)が可能な「DLSS 3」への対応、第8世代へと進化したNVENCによってAV1のハードウェアエンコードに対応といった特徴を持つ。

 なお、ノートPC向けのRTX 4090/4080はNVENCを2基備えているので同時使用による高速エンコードに対応するが、RTX 4070は1基なので非対応だ。

 GeForce RTX 4070 Laptop GPUはノートPCの設計に合わせてブーストクロックは1,230MHzから2,175MHz、カード電力は35Wから115Wの間で調節できるようになっている。

 本機はブーストクロック2,030MHz、カード電力は80Wに設定されており、スリムなボディながらかなり高いクロックで動作が可能になっていた。

GeForce RTX 4070 Laptop GPUのGPU-Zでの表示。ブーストクロックは2,030MHzとなっていた
カード電力は標準80W、最大120Wに設定されていた

 ストレージはPCI Express 4.0 x4(Gen 4)接続のNVMe SSDで容量は1TBだ。AAA級タイトルでも複数インストールできる余裕がある。

ストレージの速度を測るCrystalDiskMark 8.0.4cの結果。Gen 4のSSDとしてトップ性能ではないが、ゲーム用途なら十分な速度

 そのほか、今回試用したROG Zephyrus G16 GU603VIのスペックは下表の通りだ。

【表1】ROG Zephyrus G16 GU603VIのスペック
CPUCore i9-13900H(14コア20スレッド)
メモリDDR4-3200 32GB
ストレージ1TB NVMe SSD
GPUGeForce RTX 4070 Laptop GPU
液晶2,560×1,600ドット表示対応16型(240Hz)
OSWindows 11 Home
インターフェイスThunderbolt 4、USB 3.1 Type-C(DisplayPort出力、USB PD対応) 、USB 3.1×2、HDMI、microSDスロット、Webカメラ、6スピーカー、音声入出力端子
ネットワークWi-Fi 6E、Bluetooth 5.1、Gigabit Ethernet
本体サイズ355×243.5×19.9~22.34mm
重量約2.1kg

 性能チェックの前に、外観やインターフェイス類をまずはチェックしよう。まず注目したいのは、ディスプレイだ。16型とノートPCとしては大きめで、解像度はWQXGA(2,560×1,600ドット)。

ホワイトを基調としたスリムでシンプルなデザイン。仕事にも使いやすそうだ
ディスプレイは16型のWQXGA(2,560×1,600ドット)

 リフレッシュレートは最大240Hzと非常に高く、ヌルヌルとして描画が楽しめ、FPS/TPSではわずかな敵の動きも把握しやすい。可変リフレッシュレート(VRR)にも対応しており、画面がズレるテアリングや描画がもたつくスタッタリングを防げるのも大きな強みだ。

リフレッシュレートは最大240Hz
可変リフレッシュレート(VRR)のG-SYNCもサポート

 さらに、幅広い色の表現力が求められるデジタルシネマ向け「DCI-P3」規格のカバー率100%と色の再現力も高く、ゲームだけではなく、動画の視聴も快適に楽しめる。

 このほか、ディスプレイ上部にはWebカメラ(92万画素)、マイクを搭載。インターフェイスは左側面にThunderbolt 4、USB 3.1 Type-C(DisplayPort出力、USB PD対応) 、USB 3.1、HDMI出力、Gigabit Ethernet、ヘッドセット端子を備える。右側面には、USB 3.1、microSDカードスロットを用意。無線LANはWi-Fi 6EでBluetooth 5.1もサポートしている。

上部にはWebカメラとマイクも搭載
ディスプレイはここまで開く
左側面に左からHDMI出力、1000BASE-Tの有線LAN、USB 3.1、Thunderbolt 4、USB 3.1 Type-C(DisplayPort出力、USB PD対応)、ヘッドセット端子を備える
右側面にはUSB 3.1、microSDカードスロットを用意

 キーボードは日本語配列。キーストロークは1.7mmとノートPCとしては深めで、しっかりとしたクリック感がある。nキーロールオーバー対応なので、複数キーの同時押しも可能だ。上部には音量調節やミュートといったショートカットキーがあり、そこにマクロを割り当てることも可能となっている。

キーボードは日本語配列。キーストロークは1.7mmで、キーピッチは筆者の実測で約19mm
LEDバックライトも内蔵されている
ライティングはArmoury Crateアプリでコントロールが可能
タッチパッドはクリックが一体型になっているタイプ。筆者の実測で縦130mm、横85mmと大きめ

 本体のサイズは、355×243.5×19.9~22.34mmで重量は約2.1kg。ACアダプタは240Wを大出力なのでサイズも大きめ、筆者の実測で567gだった。

ACアダプタは240W出力なので、そこそこ大きめ
ACアダプタはケーブル込みで重量は567gだった

13900K+RTX 4060のデスクトップPCと比較

 ここからは一番気になるベンチマークテストに移ろう。本機は管理アプリの「Armoury Crate」にサイレント/パフォーマンス/Turboの動作モードが用意されているが、テストは「Turbo」に設定してる。

 また、比較対象として、CPUに同じ第13世代Coreシリーズで、24コア32スレッドの「Core i9-13900K」、GPUに「GeForce RTX 4060」を搭載するデスクトップPCを用意した。

 CPUは同じ「13900」の文字はあるものの、本機のCore i9-13900Hは14コア20スレッドとCPUパワーは用意したデスクトップPCのほうが上。GPUについてはGeForce RTX 4060はCUDAコアが3,072基、GeForce RTX 4070 Laptop GPUは4,608基なので、本機のほうが上という力関係だ。そこを踏まえてテスト結果を見てほしい。

【表2】テスト機材のスペック
ROG Zephyrus G16デスクトップPC
パフォーマンスモードTurbo-
CPUCore i9-13900HCore i9-13900K
コア数/スレッド数14C/20T24C/32T
CPU電力リミットPL1=PL2=135WPL1=PL2=無制限
マザーボード-MSI MPG Z790 CARBON WIFI
メモリDDR4-3200 16GB×2DDR5-5600 16GB×2
ディスクリートGPU(dGPU)GeForce RTX 4070 Laptop GPUGeForce RTX 4060
dGPUドライバGame Ready 536.99
システム用SSD1TB NVMe SSD(PCIe 4.0 x4)Western Digital WD_BLACK SN850 NVMe 2TB(PCIe 4.0 x4)
電源240W ACアダプタSuper Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold)
OSWindows 11 Home(22H2)
電源プランバランス
室温約26℃

 まずは、CGレンダリングでCPUパワーを測定する「Cinebench R23」、PCの基本性能を測定する「PCMark 10」をチェックしよう。

ExcelのPCMark参照

 Cinebench R23については、マルチコアのテストはコア数で上回る13900Kが強い。しかし、同じ第13世代Coreなのでシングルコアのテストはかなり近くなっている。

 PCMark 10は、Web会議/Webブラウザ/アプリ起動の“Essentials”で4,100以上、表計算/文書作成の“Productivity”で4,500以上、写真や映像編集“Digital Content Creation”で3,450以上が快適度の目安となっているが、すべて2倍以上のスコアとクリエイティブな用途にも対応できるだけの性能を持つ。

 デスクトップPCに対しては、CPUパワーの影響が大きいDigital Contents Creationで差を付けられるのは仕方のないところ。

ベンチマークで性能を見る

 ここからはゲーミング性能を見ていこう。定番3Dベンチマークの「3DMark」から。

 GPUパワーの影響が大きいベンチマークだけに、本機のスコアが上回った。CUDAコア数の差はCPUパワーでは埋められないのが分かる。

 続いて、実ゲームを試そう。本機が画面比率が16:10なので、それに合わせてWUXGA(1,920×1,200)とWQXGA(2,560×1,600ドット)の解像度で測定した。

実ゲームを検証

 まずは、人気FPSから「レインボーシックス シージ」と「Apex Legends」を試そう。レインボーシックス シーズはゲーム内のベンチマーク機能を実行、Apex Legendsはトレーニングモードで一定コースを移動した際のフレームレートを「FrameView」で測定している。

 解像度の低いWUXGAだとGPUがボトルネックになりにくく、CPUパワーの高いデスクチップPCのほうがフレームレートは高くなるが、描画負荷が高くなるWQXGAだとGPUパワーのほうが影響が大きくなり、本機が上回るまたは同等になる。本機の240Hzのリフレッシュレートを生かすならWUXGAでプレイするか、WQXGAなら少し画質を落とすのがよいだろう。

 次は人気格闘ゲームの「ストリートファイター6」だ。このゲームは120fpsまで設定できるが対戦時は最大60fpsになる。CPU同士の対戦を実行した際のフレームレートを「FrameView」で測定している。このゲームは16:10比率の解像度が選べないので、フルHDとWQHDでテストした。

 本機なら、WQHD解像度でもほぼ平均60fpsに到達できている、解像度や画質設定を気にせず快適にプレイできると言ってよいだろう。

レイトレーシング対応ゲームを検証

 次にレイトレーシングとDLSS 3の両方に対応する重量中ゲームも試そう。「ホグワーツ・レガシー」と「サイバーパンク2077」を用意した。ホグワーツ・レガシーは寮内の一定コースを移動した際のフレームレートを「FrameView」で測定、サイバーパンク2077はゲーム内のベンチマーク機能を実行した。どちらもDLSSはアップスケーラーとフレーム生成の両方を利用している。

 WQXGAでは、GPUパワーの差もあって本機のほうがフレームレートが上回る。また、重量級ゲームを高画質設定&レイトレーシング有効にしてプレイしてもWQXGAで快適に遊べるだけのフレームレートを出せるのは素晴らしい。

AI性能を検証

 続いて、Procyonの「AI Interface Benchmark」をやってみよう。これは、複数の推論エンジンを実行してAI性能を測るというものだ。テストによってはCPUとGPUから選べるが、今回はすべてGPUを選択して実行している。

 AI処理においてもGeForce RTX 4070 Laptop GPUは、デスクトップ版のRTX 4060を上回るのが分かる結果だ。

消費電力を検証

 システム全体の消費電力も測定してみよう。OS起動10分後をアイドル時とし、Cinebench R23とサイバーパンク2077実行時の最大値を測定した。電力計にはラトックシステムの「REX-BTWATTCH1」を使用している。サイバーパンク2077は画質をレイトレーシング : ウルトラで解像度はWQXGAとした。

 本機はACアダプタが240Wなので、高負荷時は200W前後になるのは順当な結果だ。ACアダプタの電力内でうまく性能を引き出していると言ってよいだろう。

 デスクトップPCは、CPUのパワーリミットが無制限ということもあって、Cinebench R23で強烈な消費電力となっている。サイバーパンク2077では、CPUの全コアに負荷がかかるわけではないので、GPUの負荷が強烈と言っても、Cinebench R23ほどではなくなっている。

薄型でもCPUとGPUもキッチリ冷やす

 最後にゲームプレイ中の動作クロックと温度をチェックしておこう。「サイバーパンク2077」を10分間プレイしたときのCPUとGPUの動作クロックと温度の推移を「HWiNFO Pro」で測定している。

 CPUクロックは、Pコアが3.1GHz前後、Eコアが2.4GHz前後で推移、GPUクロックは2,280Hz前後で推移と、設定されているブーストクロックの2,030MHzよりちょっと高めで動作していた。

 温度に関してはじわじわ上がっているが、CPUが最大76℃、GPUが最大78.3℃はまったく心配のない温度で、薄型のゲーミングノートとして考えれば、十分冷えていると言える。十分な冷却力は確保されていると考えてよいだろう。


 「ROG Zephyrus G16 GU603VI」は価格は高いが、すべてがハイレベルにまとまった1台だ。ゲーミングノートとして重量級ゲームを快適に遊べるだけのパワーがあり、ディスプレイは高解像度&広色域で動画の鑑賞やクリエイティブな作業にも向いている。

 高負荷時の動作音こそ大きめだが、スリムでスマートなデザインはゲーム以外の用途にも使いやすく、高性能なノートPCを求める幅広いユーザーにおすすめだ。