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1kgのOLED採用モバイルノート「Zenbook S 13 OLED」。前モデルより薄型・軽量化に成功

ASUS「Zenbook S 13 OLED UX5304VA(型番: UX5304VA-NQI7WS)」。実売価格は25万9,800円

 ASUSは4月21日、2023年モデルの13.3型モバイルノート「Zenbook S 13 OLED UX5304VA」を発表した。アスペクト比16:10、解像度2,880×1,800ドットのOLED(有機EL)液晶パネルを搭載する点はそのままに、筐体の薄型化・軽量化を進めつつCPUを「Core i7-1355U」に刷新した。

 シリーズとして初めてOLEDパネルを採用した2022年モデルと比較すると、各部をブラッシュアップしてより堅実なモバイルノートに仕上がっている印象だ。

 この記事では「Zenbook S 13 OLED」の製品サンプルをもとに、特徴や使い勝手などのインプレッション、およびベンチマークによる性能チェックを実施していく。

第13世代Core i7搭載、Evo プラットフォーム準拠に

Zenbook S 13 OLED UX5304VAのスペック
型番UX5304VA-NQI7WSUX5304VA-NQI5WSUX5304VA-NQI7WUX5304VA-NQI5W
CPUCore i7-1355(10コア/ 12スレッド/ 1.20GHz/ TB時最大5.0GHz/ 12MBスマートキャッシュ)Core i5-1335(10コア/ 12スレッド/ 0.9GHz/ TB時最大4.6GHz/ 12MBスマートキャッシュ)Core i7-1355(10コア/ 12スレッド/ 1.20GHz/ TB時最大5.0GHz/ 12MBスマートキャッシュ)Core i5-1335(10コア/ 12スレッド/ 0.9GHz/ TB時最大4.6GHz/ 12MBスマートキャッシュ)
GPUIntel Iris Xe グラフィックス
メモリ16GB (LPDDR5-6400、8GB×2)
ストレージ512GB (PCI Express 4.0 x4 SSD)
ディスプレイ13.3型 2,880×1,800ドット OLEDパネル 光沢
OSWindows 11 Home
ネットワークWi-Fi 6E、Bluetooth 5.1
本体サイズ296.2×216.3×10.9~12.3mm
重量約1kg
バッテリ駆動時間約14.1時間
Webカメラ207万画素 赤外線(IR)カメラ
ビジネスアプリMicrosoft Office Home & Business 2021WPS Office 2 Standard Edition
実売価格25万9,800円17万9,800円22万9,800円15万9,800円

 まずは、基本的なハードウェア性能から確認していこう。

 CPUに関して、従来モデルはAMDのモバイル向けRyzen 6000シリーズを搭載していたが、最新モデルでは第13世代Coreのうち、TDP 15WのUプロセッサを採用。

 上位モデルは10コア/12スレッドの「Core i7-1355U」、下位モデルは同じ10コア/12スレッドだが動作周波数を落とした「Core i5-1335U」を搭載する。

 第12世代以降のCoreプロセッサは、2種類のCPUコアを併載し処理に応じて使い分ける「ハイブリッド アーキテクチャ」を採用しており、本製品に搭載されるCPUはどちらもPコア(Performance core)が2基、Eコア(Efficient core)が8基の計10コア構成。

 このうちハイパースレッディングに対応しているのはPコアのみなので、合計のスレッド数は12スレッドということになる。

 特にモバイル向けCPUでは、デスクトップ向けCPUと違いEコアが極端に多い構成となるため総合性能がイメージしにくいが、このあたりは後半のベンチマークセッションを参照いただきたい。

サンプル機のCPUはモバイルノート向けの「Core i7-1355U」。10コア/12スレッド構成で、Pコア2基、Eコア8基とデスクトップ向けよりもEコアの比率が高いのが特徴。動作周波数はPコアが1.7GHz~5GHz、Eコアが1.2GHz~3.7GHz

 GPUはCPU内蔵のIntel Iris Xeグラフィックスで、「Intel Evo プラットフォーム」にも準拠。数世代前のモバイルノートに比べればグラフィックス処理能力は大幅に向上しており、中負荷程度の3Dゲームであればそれなりの快適さで描画できるだけのポテンシャルを備えている。GPU支援が効くような用途にも寄与するため、覚えておいて損はないだろう。

 メインメモリはLPDDR5-6400対応で、容量は全モデル16GBを搭載。ストレージはPCI Express 4.0 x4接続をサポートする512GB M.2 SSDだ。

 従来モデルから明確なスペックアップはないものの、広帯域なLPDDR5メモリに加え高速なSSDを備えることで、モバイル向けらしい軽快な応答性を実現している。

 なお、ネットワークはWi-Fi 6E無線通信およびBluetooth 5.1に対応する。軽さを生かしたモバイル用途が想定されるため、Bluetoothマウスなどの周辺機器をあわせて持ち歩くといいかもしれない。

 本体のバッテリ容量は63Whで、バッテリ駆動時間は公称約14.1時間。フル充電状態で1日外に持ち出してもまったく問題ないだけの時間を確保できているほか、電源が取れる場所であれば、バッテリがない状態からでも2時間ほどで満充電にまで持っていける。いまどきのモバイルノートらしく、電源まわりは優秀だ。

従来モデルから重量を100g削減、さらに薄型化

 Zenbookシリーズは製品特徴ごとに複数のラインを展開しているが、中でもZenbook Sの歴代モデルは、薄さや軽さなどモバイル向けの特性を備えていることが1つのポイントとなっていた。

 2022年の従来モデルはシリーズ初のOLED採用モデルという意欲的な仕様が注目を浴びたが、OLED採用2世代目となる最新モデルには、より薄型・軽量を志向した改良が加えられている。

天板にはASUSのロゴを思わせるライン加工が施されている
右側面にはHDMI 2.1映像出力、Thunderbolt 4対応のype-Cポート×2を配置。USB PDによる本体への給電もType-Cポートから行なう
左側面にはUSB 3.2 Gen2 Type-Aポート、コンボジャックを配置。2022年モデルにはType-Aポートがなく、別途変換ケーブルを使うことで対応していたが、最新モデルで復活した
前面、背面にはインターフェイス類なし
本体底面。設計変更もあり、従来モデルより通気口がコンパクトになったようだ

 本体のカラバリは建築石材の灰色を思わせる「バサルトグレー」1色のみをラインナップし、独特の滑らかな質感をもつ天板が印象的なデザインを採用。

 本体サイズはおよそ296.2×216.3×10.9~12.3mm。従来モデルがおよそ296.7×210.55×14.9~15.3mmだったことを考えれば、薄さの面ではアドバンテージを得ている。

 奥行が増している点に関しては使用感と可搬性のバランスを考慮した結果だと思うが、カバンなどに入れて持ち運ぶ際は特に薄さの恩恵を感じやすいはずだ。

 本体重量は公称1kgで、実測では約1.03kg。こちらは従来モデルの公称1.1kgから100g軽量化している。

 電源アダプタは実測220gほどで、本体と合わせて持ち運んだ場合の重量は約1.22kgと、十分に軽量と言える範囲だ。

 より薄くなったことを踏まえれば、可搬性は向上していると言っていいだろう。「MIL-STD-810H」に準拠したテストをパスしており、耐久性に配慮している点も見逃せない。

 インターフェイスは、Thunderbolt 4×2、USB 3.1、HDMI 2.1、オーディオコンボジャック。従来モデルはUSBポートすべてがType-C形状だったが、今回はType Aポートが最初から用意された。

 Thunderbolt 4対応ポートが多い点は魅力だが、USBポートとして使用できる合計3端子のうち、1本はUSB PDで本体給電などにも使われるため、多くの周辺機器を活用するなら多少の工夫が必要になる場合はあるだろう。先に述べたようにBluetooth接続の周辺機器を利用するなど、うまくやりくりしたい。

ディスプレイは2,880×1,800ドット、アスペクト比16:10と縦方向に若干長いOLEDパネル。画像や映像の見栄えが非常によく、コンテンツを楽しみたいユーザーとも親和性が高い
フレーム部分は狭額縁設計により、画面占有率を90%近くまで高めている

 最大の特徴とも言えるディスプレイは13.3型のOLEDパネルで、アスペクト比が16:10とやや縦に長いため、画面解像度は2,880×1,800ドットとなる。

 パネル表面に光沢がある点はこれまでと同じだが、従来モデルにあったタッチパネル機能は非搭載となった。ペン入力もサポートしていないため、この点は注意が必要だ。

専用アプリ「My ASUS」からはASUS OLED Care機能を利用できる。OLEDは静止画面を長く表示した場合に焼き付きが発生しやすく、これらの機能を有効化することでディスプレイを保護している
「My ASUS」内には画面の色最適化といった機能も用意。ブルーライト軽減は画面の色味が変わってしまうため、あまり相性が良くない

 DCI-P3 100%カバーと色域も広く、Pantoneのカラー認証を取得済み。最大輝度は550cd/平方mで、HDR規格の1つである「DisplayHDR 500 True Black」の認証も取得するなど、画面の美しさという点では一般的なモバイルノートを大きく凌駕するスペックだ。

 狭額縁設計で画面占有率が約87.4%と高いこともあり、実際にディスプレイに映像を映してみると、表示の鮮やかさに感心させられる。

 画像・映像を表示する機会が多い、あるいはコンテンツを楽しみたいユーザーにとって、本製品のディスプレイは極めて魅力的なものと言えるだろう。視野角も広いが、パネル表面が光沢処理のため映り込みが気になる場合もあり、ここは好みが分かれそうだ。

 ちなみにOLEDの特性である画面の焼き付きを防止する機能として、専用アプリ「My ASUS」内に「ASUS OLED Care」機能が用意されている。

 一定時間PCを操作せずにいるとスクリーンセーバーを起動するピクセルリフレッシュ、静止画の表示ピクセルを感知できない範囲でずらすピクセルシフト、非アクティブウィンドウの輝度を減光するターゲットモードなどにより、焼き付きを防止してくれるわけだ。

 これらはデフォルトで有効化されているが、購入後に「My ASUS」から設定を確認しておくことをすすめたい。

ベゼル上部のIRカメラにより、Windows Helloによる顔認証ログインなどを利用可能
ノイズリダクション機能のほか、フィルタや背景ぼかしなどの機能も利用できるため、リモート会議向けカメラとしても優れる

 また、ベゼル上部には207万画素赤外線カメラを内蔵しており、Windows Helloによる顔認証を利用できる。従来モデルに引き続きノイズリダクション(NR)も備えており、かなり暗めの部屋でも暗所のノイズを抑えてくれるなど、十分な光量が取れない空間でも一定の画質を確保できる点はありがたい。

日本語配列のキーボードを採用。モバイルノートとしては標準的なキー配列だ
BackspaceキーやEnterキーまわりは配置が若干詰まり気味
画面サイズが縦に長いこともあってか、タッチパッドはやや広めに取られている。

 キーボードは84キー、テンキーなしの日本語配列を採用。キーピッチは実測19mm前後で、キーの配置はモバイルノートとしては一般的な範囲だろう。

 Enterキーやその上部の¥キーおよびBackspaceキー、半角/全角キーはやや圧縮され狭くなっているため、打鍵の際には少し意識しておく必要があるかもしれない。

 とは言えBackspaceキーとEnterキーは右端にあるので、実際にタイピングしてみるとキーの小ささは個人的にはあまり気にならなかった。打鍵感はモバイルノートらしいソフトな感触で、打鍵音が気になるようなことはない。

 LEDバックライトはホワイトのみで、カラー変更などは不可能。タッチパッドはアスペクト比が縦に長い影響もあってやや大型となっており、押せばカチッとしたクリック音が鳴るタイプ。大型であるぶん使いやすく、マウスがない場合に役立つだろう。

 なお、Zenbookシリーズではしばしば見られるタッチパッドにテンキーを表示する「NumberPad」は搭載されていない。

「My ASUS」からスピーカーのサウンドモードを設定可能。プリセットを1つ選べば適したイコライジングを施してくれる
マイクのノイズキャンセリング機能も。シーンにあわせたフィルタを選択することで、雑音を低減する

 そのほか、Harman/Kardonの認証を受けたステレオスピーカー(1W×2)、AIノイズキャンセリングスピーカー/マイク機能なども従来モデルから引き継いでいる。

 マイクとスピーカーに関しては「My ASUS」アプリからフィルタリング範囲のプリセットや有効化/無効化などの設定を変更可能だ。カメラと合わせ、流行のリモート会議を快適にしてくれる点はおおいに評価できる。

性能をベンチマークでチェック

 では、Zenbook S 13 OLEDの性能をいくつかのベンチマークで計測してみよう。

 今回は「Cinebench R23」「PCMark 10」「3DMark」「CrystalDiskMark 8.0.4」など、定番のベンチマークで計測を実施している。

 計測時の本体動作モードは「パフォーマンス」とし、比較用としてPC Watchに掲載されている「Zenbook 13 OLED」2022年モデルの結果を併載している。一部ベンチマークソフトのバージョンが異なる点については留意いただきたい。

 「Cinebench R23」のスコアは、Multi Coreテストが7,082pts、Single Coreテストが1,678pts。2022年モデルよりもMulti Coreスコアが低い反面、Single Coreパフォーマンスが勝るという結果が出ている。

 思い返せば、2022年モデルは8コア/16スレッドとスレッド数の多いRyzen 7 6800Uを搭載するなど、当時のモバイルノートとしてはかなりのハイスペック路線に舵を切った製品だった。

 その点を考慮すれば、最新モデルはもう少し性能をマイルドにし、本体重量と薄さを確保する設計を行なった、ということなのだろう。

 「PCMark 10」においても2022年モデルとのパフォーマンス差が出ており、総合スコアで10%程度、各テストの結果も全体として従来モデルのほうがパワーに優れている、という結果になった。

 Core i7-1355U搭載PCとしても若干スコアが伸び悩んでいるように見えるが、そもそもマルチスレッド処理時の能力が高いRyzen 7 6800Uとの比較では分が悪い。単体で見ればまったく悪いスコアではなく、基本的なビジネス用途においては快適に利用できるだろう。

 「3DMark」のテスト結果は、WQHD解像度の描画テストである「Time Spy」の総合スコアが1,768、フルHD解像度で描画される「Fire Strike」の総合スコアが4,806。

 「Time Spy」のスコアはやや心もとないものの、「Fire Strike」テスト時のグラフィックス描画の滑らかさを見る限り、フルHD解像度のゲームであれば(画質調整次第で)ある程度は動かせるだろう。出先で軽くオンラインゲームにログインする、ぐらいの用途であれば、本製品でもこなせるはずだ。

 「CrystalDiskMark 8.0.4」では、データサイズ1GiB、テスト5回の条件で計測を実施。特にQ8T1のシーケンシャルリードテストで優れた値が出ており、最高速度は6,500MB/s越えと極めて優秀だ。

 反面、Q8T1のシーケンシャルライトやQ1T1のシーケンシャルリードはそれほど伸びていないが、かと言って低すぎるわけでもなく、十分に優秀なSSDだ。

 最後にバッテリ駆動時間のテスト結果も見てみよう。ここでは「PCMark 10 Professional Edition」の「Modern Office」テストを使用し、ディスプレイ輝度75%、Wi-Fi接続済み、キーボードバックライトオフ、電源設定「バランス」の状態で計測を実施した。

 結果は9時間18分で、パフォーマンススコアは5,562を記録。「Modern Office」は一定間隔でビジネス系のアプリやブラウザを動かすテストだが、スリープに入ることなく9時間ほどバッテリが保つのであれば、ハードに運用しても問題ないと言えそうだ。

美麗な液晶と“薄く、軽い”を求めるモバイルユーザーに

 ここまで見てきた通り、Zenbook S 13 OLEDは、美麗なOLED液晶パネルという大きな特徴を従来モデルから引き継ぎつつ、薄さ最大12.3mm、重量1kgとさらに“薄く、軽い”筐体を実現したモバイルノートだ。

 モバイルノートとしても優秀だが、特に画像・映像の表示にはめっぽう強いため、この点に魅力を感じるユーザーにとっては有力な選択肢と言える。

 反面、搭載CPUが切り替わったために2022年モデルよりもパワーが落ちている点は評価が分かれるかもしれない。

 とは言え単体で見ればビジネスノートとしては性能も悪くなく、さらに高い最大パフォーマンスを求めるのであればほかのZenbookシリーズが用意されている。

 さまざまな要素を天秤にかけ、あくまで可搬性にフォーカスしたのが2023年のZenbook S 13 OLEDということなのだろう。