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RTX4060搭載、SSD増設対応、ビジネスにもゲームにも強いASUS「Vivobook Pro 16」

ASUS「Vivobook Pro 16 K6602VV」。価格は21万9,800円

 個人ユーザーやビジネスユーザー向けに、エントリーからハイパフォーマンスまで幅広いラインナップを展開するASUSのVivobookシリーズ。

 そこに追加された4月21日発売の「Vivobook Pro 16 K6602VV」は、ほとんどゲーミングPCのようなリッチなスペックで、クリエイターにもフィットしそうなモデルとなっている。早速その実力をチェックしていきたい。

最新CPUとGPUに120Hzディスプレイ、M.2 SSDの追加もOK

ASUS Vivobook Pro 16 K6602VVのスペック
CPUCore i9-13900H
(14コア20スレッド、最大5.4GHz、Processor Base Power 45W)
ビデオチップIntel Iris Xe Graphics
GeForce RTX 4060 Laptop GPU
メモリ16GB(DDR5-4800)
ストレージ512GB SSD(NVMe/M.2、PCIe 4.0 x4)
インターフェイスThunderbolt 4、USB 3.1 Type-C、USB 3.0×2、HDMI、SDカードスロット、ヘッドセット端子
通信機能Wi-Fi 6E、Gigabit Ethernet
Webカメラ207万画素
OSWindows 11 Home
本体サイズ355.3×252×19.5~20mm
重量約1.9kg

 「Vivobook Pro 16」でまず注目したいのは、ハードウェアスペックの豪華さだろう。CPUは第13世代のCore i9-13900H(14コア20スレッド、最大5.4GHz、Processor Base Power 45W、Iris Xe Graphics内蔵)で、GPUにはディスクリートのGeForce RTX 4060 Laptop GPU(メモリ8GB)を搭載する。メモリは最大容量となる16GB(DDR5-4800)。

第13世代のCore i9とGeForce RTX 4060 Laptop GPUを搭載

 ディスプレイもリッチだ。16型のTFT(IPSと考えられる)液晶パネルは、画面占有率87%の狭額縁。WQXGA(2,560×1,600ドット)の高解像度と、ゲーミングモニターのような120Hzのリフレッシュレートを誇り、スクロール時の視認性の高さはもとより、FPS系のゲームにも十分なポテンシャルを持つ。

 輝度は500cd/平方m、DisplayHDRおよびDolby Visionに対応するほか、DCI-P3の色空間カバー率が100%ということで、動画の再生・編集やデザイン作業にも最適と言える。

DCI-P3を100%カバーし、動画編集やデザインにも最適
ディスプレイは180度開いてフルフラット状態にできる

 CPU内蔵とディスクリートの2つのGPUを持つ特徴を活かし、マシンの使用状況に応じて処理担当のGPUを切り替える「MUX スイッチ」という仕組みも備える。

 これは、ディスクリートGPUで処理した内容をCPU内蔵GPUを経由して画面表示する従来の「Optimusモード」を進化させたもので、ディスクリートGPUとディスプレイを直結することもできる、というもの。

 たとえばGPU負荷の低いビジネスアプリをメインに使うときはCPU内蔵GPU(Optimusモード)を活用してパフォーマンスと消費電力のバランスを取り、ゲームやクリエイティブツールがメインの時はRTX 4060でフル稼働させる、といった使い方が考えられる。

 「MUX スイッチ」で動作モードを切り替えることでシチュエーションに応じた最適なパフォーマンスが得られるわけだ。

「MUX スイッチ」の動作はプリインストールアプリの「MyASUS」で設定でき、常にディスクリートGPUで駆動させることも可能

 そうしたCPUとGPUの本来のパフォーマンスを引き出すための工夫として、「ASUS IceCool Plus」という冷却システムを採用している。2本のヒートパイプと2つのファンにより、本体底面と側面2方向の3箇所から排気することで、熱が筐体内にこもりにくい構造だ。

 底面から熱が伝わってくるので膝に載せて使うのはおすすめできないが、デスク上で使う分には熱気を感じることは少ないだろう。

2つのヒートパイプとファンによる冷却システム「ASUS IceCool Plus」
ヒートパープを伝わってきた熱は、ファンにより底面や側面から排気する

 比較的大がかりな冷却システムを内蔵しつつも、それでも筐体に余裕があるためか、一定の拡張性も確保している。ストレージ用のM.2 SSDスロットが2つあり、ユーザー自身の手で増設できるようになっているのだ。

 1スロットは標準のPCIe 4.0 x4接続のNVMe SSDで消費しており、もう1スロットに一般的なサイズのM.2 2280のSSDを追加可能。

 今回の試用機のストレージ容量は512GBとなっており、長く使い続けることを考えると心もとないが、1TBや2TBのSSDを増設すれば安心だ。もちろん増設は自己責任だろう。

 増設するには星形トルクスねじで固定されている底面カバーを外すという作業が必要になる(薄いプラスチックリムーバーもあると外しやすい)ため、十分な注意が必要。

底面カバーは9本のトルクスねじで固定されている。さらにツメで全体がはめ込まれているので、外すときはプラスチックリムーバーを使うと良い
本体内部の左右にM.2 SSDスロットが用意されている。こちらは標準搭載のSSD付近(シルバーの放熱プレートに隠れている)
反対側に増設用のスロット。一般的な2280サイズに対応する

高耐久で清潔さをキープ、インターフェイスも充実の筐体

ボディカラーはCool Silver

 「Vivobook Pro 16」の本体色は、シャープさを感じさせる「Cool Silver」1種類のみが用意される。ほぼB4サイズの縦横幅、20mmを切る薄さ、約1.9kgの重量は、16型クラスとしてはコンパクトに感じられ、機動力もそこそこ期待できそう。

 外出時に持ち運ぶことはそう多くないとしても、「ミリタリーグレードのテスト実施」を謳う高い耐久性を持っており、自宅とオフィスの往復時に持ち運んで仕事するハイブリッドワークにもある程度対応しやすい。

「ミリタリーグレード」のテストを実施し、高い耐久性を持つ

 またユニークなのが、「ASUS アンチバクテリア ガード」という表面処理をキーボードからタッチパッド、パームレストにかけて施している点。銀イオンコーティングによって24時間以上に渡り細菌の増殖を99%以上抑制する効果を3年間維持するという。

 「抗菌」であって「抗ウイルス」ではないことを理解しておきたいが、これも安心して使い続けられる要素と言えるだろう。

「ASUS アンチバクテリア ガード」による抗菌が施され、長く安心して使える

 その抗菌処理が施されたキーボードは基本的にフルピッチで、静粛性も高く、よく使う文字・数字キーの打鍵感は良好だ。

 しかし、テンキー付きにして詰め込んでいるせいか、一部のキー(「¥」や「変換・無変換」、上下左右キーなど)が小さい、もしくはアイソレーションがない構造となっていて、タイプしていて戸惑う瞬間もあるかもしれない。

 もちろん慣れも関係してくる部分だけれど、16型クラスだけに、個人的にはもう少し余裕のあるキーレイアウトになっていてほしいと感じなくもないところ。

16型のサイズを活かしたフルキーボード。タッチパッドも大きめ
一部のキーが小さかったり、アイソレーションが実質ない状態だったり、レイアウトがイレギュラーだったりするのは仕方のないところか

 一方、本体が備えるUSB系のインターフェイスはThunderbolt 4(40Gbps)、USB 3.1 Type-C(10Gbps)、USB 3.0(5Gbps)×2の4つ。

 このうちThunderbolt 4とType-CはいずれもUSB PDとDisplayPort Alternate Modeに対応しており、付属の150WのACアダプタだけでなく、汎用のUSB PD充電器でもノートPC本体への給電が可能だ。

右側面にThunderbolt 4、USB 3.1 Type-C(10Gbps)、USB 3.0(5Gbps)、HDMI、Gigabit Ethernet、電源入力
左側面にUSB Type-A(5Gbps)、ヘッドセット端子、SDカードスロット
Thunderbolt 4とType-Cの2ポートについては、汎用USB PD充電器での充電に対応するほか、Type-Cケーブル1本で外部モニターの接続が可能
harman/kardonのステレオスピーカーを内蔵。Dolby Atmosにも対応し、迫力のあるサウンドを再現

 ただし、フルパワーで動作させるためには付属ACアダプタからの給電が不可欠。バッテリ駆動時間は約7.4時間と、据え置き向けノートPCとしてはスタミナはあるものの、1日のビジネスアワーをカバーするほどではないため、できるだけ給電可能な環境で利用したい。

付属ACアダプタは150W

 ほかには、映像出力用のHDMIポートとSDXC対応カードスロットがある。SDカードスロットは後述のベンチマークテストを見る限り、UHS-II規格の高速SDカードの性能をある程度引き出せる転送速度を実現している。

 こういった高速なSDカードスロットを備えるノートPCは意外と貴重なので、趣味で写真や動画を撮影する人にとってはありがたいはず。

 Webカメラは207万画素、最大フルHD解像度で、視野角は下記キャプチャ画面をご覧いただくと分かる通り、やや広め。使っていないときは手動で物理プライバシーシャッターを閉じることができる。

 また、電源ボタン一体型の指紋センサーを搭載し、Windows Helloの指紋認証に対応するなど、セキュリティにも配慮している。

207万画素の内蔵Webカメラ。Windows Helloの顔認証には対応していない
物理シャッターを閉じることで無効にできる
ファンクションキーを兼ねるマルチメディアキーの中に、電子的にカメラの有効・無効を切り替えるボタンもある
内蔵Webカメラの映像。視野角は少し広め
RTX 4060搭載ということで、カメラ映像やマイク音声に特殊効果を加えられるツール「NVIDIA Broadcast」を利用できるメリットもある
電源ボタン一体型の指紋センサーはWindows Hello対応

 ネットワークはWi-Fi 6E対応の無線LANに加え、Gigabit Ethernetポートを装備。オンラインミーティングやオンラインゲームなど安定性を重視したいときにも有線LANがあれば安心だ。

 そんなオンラインミーティングでもう1つ役立つのが、「MyASUS」アプリ内で設定できる「AIノイズキャンセリング」機能。

 最近は多くのノートPCが備えるようになってきたこうしたマイク音声のノイズ低減機能だが、「Vivobook Pro 16」では単純なオン/オフだけでなく、自分1人や複数人が会話するときにもクリアに音声を取り込める詳細な設定項目も用意されている。

 会議室に集まったメンバー全員の会話を1台のノートPCのマイクで拾わなければならないシチュエーションでも、聞こえやすい安定した音量で相手に届けられるだろう。

「AIノイズキャンセリング」機能では、ノイズ低減しつつ、自分1人または会議室にいる複数人の声を効果的に拾う詳細な設定が用意されている

実務アプリとマルチメディアの性能は抜群、DLSS 3の効果も大

 続いてベンチマークソフトでパフォーマンスを測定した。第13世代Core i9とRTX 4060の組み合わせが、果たしてどれほどの力を発揮するのだろうか。

 なお、テストにあたっては「PCMark 10」の「Modern Office Battery Test」のみ「MUX スイッチ」を「MSHybrid」(CPU内蔵GPUとRTX 4060を自動で切り替えて使う)に、それ以外は「ディスクリート GPU」(RTX 4060のみを使う)に設定している。

「Cinebench R23」の結果
「PCMark 10 Extended」の結果
「PCMark 10 Applications」の結果
「3DMark」の結果
「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」の結果

 「Cinebench」や「PCMark 10」の実務アプリに関わるテスト項目は、第13世代Core i9の実力通りと言える。が、やはりマルチメディアやゲームなどGPUの影響が大きいテストでの強さが目を引く。

 「ファイナルファンタジーXIV」についてはディスプレイ解像度そのまま、かつ「最高品質」設定でも快適な動作が見込めるようだ。

RTX 40シリーズでは「DLSS 3」の「フレーム生成」機能が利用できる
「サイバーパンク2077」のベンチマーク結果(DLSSの効果比較)
「F1 22」のベンチマーク結果(DLSSの効果比較)

 RTX 40シリーズが持つ「DLSS 3(フレーム生成)」の有無によるパフォーマンスの差を測るテストでは、「サイバーパンク2077」で25~50%近いフレームレートの向上が見られる。「クオリティ」や「パフォーマンス」設定でフレーム生成をオンにするか、「ウルトラパフォーマンス」にすれば、実プレー時も十分な画質で快適に遊べるだろう。

 「F1 22」は「クオリティ」設定でこそ明確な差はないものの、「ウルトラパフォーマンス」で2割近く改善している。とは言え、どの設定でも60fpsを超えるパフォーマンスを叩き出しているため、深く考えず最高画質にしてもストレスフリーで楽しめるはず。

 DLSS 3を有効にすれば「Vivobook Pro 16」の高リフレッシュレートのディスプレイ性能を活かしきることもできる。こうしたヘビーなゲームも実用的なパフォーマンスでプレイできるのは、RTX 4060を搭載しているからこそだ。

「Crystal Diskmark」による内蔵NVMe SSD(512GB)の速度計測結果
「Crystal Diskmark」によるSDカードスロットの速度計測結果(最大300MB/sのSDカードを使用)

 内蔵SSDの特に書き込み速度は、やや物足りない結果かもしれない。

 とは言え、試用機ではMicron 2400シリーズのSSDを搭載しており、その512GB版の仕様はリード4,200MB/s、ライト1,800MB/sとなっているため、スペックシート+αの性能は出ている。

 ここを強化したいなら、より高性能なSSDを増設するのも手だろう(ちなみに同じMicron 2400でも1TB版や2TB版であれば書き込み速度は大幅に改善される)。

 ハイパフォーマンスなCPUとGPUを搭載していることもあり、気になるのは動作音。しかし「ASUS IceCool Plus」による2つのファンの動作音については、低負荷時であれば「MUX スイッチ」の設定に関わらずほぼ無音だ。

 中程度の負荷で「サー」というノイズが聞こえるが、不快さはまったくない。さすがにゲーム中などの高負荷時は騒音と思えるほどになってしまうものの、高音成分の少ないノイズのため、大きなストレスを感じることはないだろう。

 ただ、動作中にHDDのシーク音のようなカリカリ、あるいはチリチリといったノイズがかすかに聞こえることがあった。個体の問題という可能性も捨てきれないが、静かな環境だとそれなりに気になる音ではある。

メモリ容量に不安は残るが、多方面でハイレベルに活躍

 Vivobookはあくまでも一般的な個人・ビジネス向けのシリーズではあるが、スペックや実力を見ると、「Vivobook Pro 16」はその枠を大きく越えているように思える。

 唯一、惜しいのはメモリ容量だろうか。メインメモリは標準で16GB(DDR5-4800)となっており、増設は不可。ビジネスアプリやゲームであれば十分だが、クリエイティブ系のツールを複数同時に駆使するような用途だと不足する可能性がある。

 この点において、クリエイターもガンガン使えるノートPC、と言い切れないのがもどかしい。けれど、それでもさまざまな用途で活躍するパワフルさを持ち、仕事もゲームもハイレベルでこなせるマシンであることは間違いない。

 ビジネスシーンで無難に使えそうなシンプルな筐体デザインが受け入れやすい人もいるはず。最新装備の据え置き向けノートPCとして、魅力の多い1台だ。