Hothotレビュー

3万円台でこんなに高性能!Alder Lake-N搭載ミニPC「Beelink EQ12」

Beelink EQ12

 Beelinkから、CPUにAlder Lake-NことIntel Processor N100(以下N100)を搭載した小型PC「EQ12」シリーズが発売となった。Amazonでの価格は3万8,800円(現在3,000オフクーポン配布中)だ。今回Beelinkよりサンプル提供があったためレビューをお届けしよう。

【11時10分訂正】記事初出時、異なる価格を掲載しておりました。お詫びして訂正します。

待望の“Eコアだけ”のエントリープロセッサ

 EQ12に採用されているN100は、Alder Lake-Nというコードネームで知られているIntelの新世代エントリー向けCPUで、2021年に発表/投入したJasper Lakeの後継に当たる。Coreプロセッサが5万円台~であるのに対し、2万円~3万円台という低価格帯を担う。

 振り返ってみると、Jasper Lake自体が2021年1月に発表されたものの、搭載PCがなかなか一般市場に投入されなかった。これは、ちょうどコロナウイルス感染症によるサプライチェーンの影響、世界的な半導体への需要の高まりで、なかなか生産されなかったためだと想像される(加えてJasper Lakeで採用されているIntelの10nmプロセスの立ち上がりも遅かった)。そのため、その前の世代にあたるGemini Lakeが予定よりも長い期間使われ続けてきたように思う。

 一方でAlder Lake-Nは2023年1月に発表となったわけだが、既に日本でも3月あたりから普通に販売が開始されていることを考えると、今後も順調なペースでJasper Lakeからの移行が進むと思われ、PC市場の刷新と性能の底上げが期待される。

 Alder Lake-Nに採用されているCPUコアは、第12/13世代Coreに内蔵されているEコアこと「Gracemont」アーキテクチャとなっており、Gracemontは、かつてメインストリームで使われた“Skylake級の性能”を低消費電力で実現しているとIntelが豪語していたからだ。

 Skylakeアーキテクチャは第10世代Coreまで長らく使われており、今なお主力機として据え置いているユーザーも少なくないだろう。それに相当する性能(と言っても4コアで2コアのSkylake相当だが)が2~3万円台に降りてきたというのは、なかなか衝撃的である。

 ちなみにPC Watchでは以前にも、第12世代CoreのPコアを無効化したり、スレッドを割り振るソフトを用いたりして、なんとかGracemontの性能“だけ”一足先に計測しようとして努力を試みたのだが、Eコアだけで構成されるAlder Lake-Nの実際の結果とは乖離が生じざるえない状況だった。具体的には以下の点である。

  • Pコアが1コアだけ生きている(BIOSでオフにできない)ため、指定したベンチマークのプロセスに関わらないプロセスがPコアで行なわれ、結果的にEコアのみより良くなる可能性
  • Pコアと共有のL3キャッシュが生きているため、30MBのL3キャッシュが利用でき有利だった可能性(N100は6MB)
  • 当時メモリをDDR4-2133で計測していたが、今回テストしたEQ12はDDR5-4800を搭載

 よって、以前はEコアだけの性能はある程度予測できても、真の性能や実力を計測できなかったのである(もっともこの時点ではAlder Lake-Nの存在は明らかにされなかったのだが)。今回のベンチマークでようやくEコアの実力が計測できるというわけだ。

 なお、Alder Lake-N世代からは、長年続いた「Celeron」と「Pentium」ブランドが廃止され、「Intel Processor」となった。Intelはブランド廃止/変更の理由として「PC事業部全体のブランド体系を明確化し、各製品の提供価値を伝えるカスタマーコミュニケーションを有効かつ強化するとともに、購買体験をよりシンプルなものにする」としているが、長年CeleronやPentiumを愛用していたユーザーにはやや寂しいものがある。

“もっさり感”が抜けたAlder Lake-N

 というわけで注目のベンチマークから入ろうと思う。今回試用するBeelink EQ12の仕様は下記の通り。低価格な割にMicron製DDR5を採用したり、Intelのネットワークアダプタを採用していたりと、なかなかの安定志向である。比較用に、廉価な小型PCで定番のGemini Lakeを搭載したCHUWIの「LarkBox」、そしてJasper Lakeを搭載したCHUWIノート「MiniBook X」(旧モデル)を用意した。

【表1】Beelink EQ12試用機の仕様
CPUIntel Processor N100
メモリDDR5-4800 16GB(Micron CT16G48C40S5.M8A1)
ストレージ500GB NVMe SSD(Maxio Technology MAP1202)
SSD自体はPCI Express 3.0 x4接続だが、本機はx1に制限)
ネットワーク2.5Gigabit Ethernet(Intel I225-V×2)
無線LANWi-Fi 6(Intel AX101)、Bluetooth 5.2
インターフェイスUSB 3.1 Type-C(DP Alt Mode対応)、USB 3.1×3、HDMI 2.0×2、音声入出力
本体サイズ約124×112.5×38.4mm
電源12V/3A ACアダプタ
【表2】比較機材の仕様
モデルEQ12MiniBook XLarkBox
CPUN100Celeron N5100Celeron J4115
コードネームAlder Lake-NJasper LakeGemini Lake
製造プロセスIntel 710nm14nm
PL120W10W(ただしパッケージ6W制限)12W
PL225W15W(ただしパッケージ6W制限)不明
メモリDDR5-4800 16GBDDR4-2400 12GBDDR4-2400 6GB
チャネルシングルデュアルデュアル
GPUIntel Core UHD Graphics(Xe)EU数24Intel Core UHD Graphics(Gen 11)EU数24Intel UHD Graphics 600(Gen 9.5)EU数12

 なお、MiniBook X(旧モデル)はファンレスであり、PL1/PL2の値以外に、パッケージ上限が6Wに設定されているためスコア的には不利だ。逆にEQ12に搭載されるN100も本来はTDPは「6W」とされているが、HWiNFO64で確認したところPL1には20Wという値が設定されていた(公式でも謳われている)。そのまま比較するのはアンフェアであり、あくまでも参考とされたい。

 ちなみに、Cinebench R23負荷時のクロックはLarkBoxのCeleron J4115が2.4GHz、MiniBook XのCeleron N5100が2.2~2.7GHz、EQ12のN100が2.8~2.9GHzだった。

 まずはシステム全体の性能を評価する「PCMark 10」からみて行こうと思うが、総合スコアで「3189」という数値を叩き出した。ちなみに、LarkBoxでは「1711」だったので、2倍に迫る勢いの性能向上。Jasper Lake世代では良くても2500前後だ。

PCMark 10の結果

 PCMark 10では全体のスコアが幾何平均によって算出されるため、どれか1つのテストのスコアが抜きん出てもスコアアップしにくいようになっている。そのためAlder Lake-Nは「システム全体が速くなった」と評価できる。

 実際に試用する際も、Windows 11の起動から始まり、Webブラウジング(Edgeの起動)、ソフトウェアのインストール、Windows Updateの実行といった日常的な作業を行なってみたが、N100はもたつくシーンがなく、Skylake世代のシステムと遜色ないレスポンスであった。Gemini Lakeでは、このあたりの処理で“Atomの流れを汲むCPUっぽいもっさり感”が拭い切れなかったが、ようやく一皮剥けた印象だ(Jasper Lakeでも少しはよくなっていたが)。

 純粋なCPU性能を計測するCinebench R23でも、マルチコア(Multi Core)で3098pts、シングルコア(Single Core)で943ptsというスコアを記録。とくにシングルコア性能の向上は目覚しいものがあり、この性能の高さが体感性能の向上に大きく結びつく。

 逆に言えば、シングルコアのスコアは第12世代/第13世代CoreのPコアの最高クロック時のざっくり“半分未満の性能”として見ることもでき、このあたりは絶対性能ではなく電力効率を求めたコアである証拠、とも言える。

Cinebench R23

 各コンポーネントの純粋な性能を計測するのに適したSiSoftware Sandraの結果も掲載するが、こちらもGemini LakeやJasper Lake世代から大きくジャンプしたことが伺える内容となっている。Gemini LakeはそもそもSSE4までしかサポートできないが、Alder Lake-NではAVX2をサポートできたことによる貢献度も大きいだろう。

SiSoftware Sandra プロセッサの性能
SiSoftware Sandra マルチメディア処理

 また、メモリのチャネル数はGemini Lakeの2チャネルから1チャネルに減っているにもかかわらず、メモリバンド幅が大きく向上する結果となっており、新設計と思われるメモリコントローラや高速なDDR5が大きく寄与している。

SiSoftware Sandra メモリー帯域

 加えて、L1キャッシュからメインメモリに至るまで、ほぼ全域のレイテンシ(特に8MBを超えた辺りから顕著)が削減されているのも特徴だ。特に8MB範囲以降のレイテンシはCeleron J4115の約半分にまで削減されており、CPUコアの素性は大変良いと言っていいだろう。

SiSoftware Sandra メモリーのレイテンシ

3D性能も2倍以上になったが、3Dゲームはやや厳しい

 続けて内蔵GPUの性能を見ていきたい。N100に内蔵されるGPUは「Intel Core UHD Graphics」という名前となっており、実行ユニットは24基、クロックは750MHzなどとなっている。アーキテクチャについては明らかにされていないが、Intelが第10世代以前のGPUを「レガシー」としていて、Intel Xe対応のドライバの中にN100のサポートが含まれているということは、事実上Intel Xeアーキテクチャをベースとしたものだと思われる。

 3DMarkで「Fire Strike」、「Night Raid」、「Wild Life」を実行してみたが、ざっくりCeleron J4115の2倍の性能を示した。EU数増加に加え、アーキテクチャ刷新による性能向上はかなりのものと言ってよく、Skylake世代の内蔵GPUよりも高速であるのは確かだ。

3DMark
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク

 ただ、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」の結果から見れば分かる通り、比較的新しい3Dゲームのプレイは厳しいレベルに留まっている。一方で「FINAL FANTASY XI for Windows オフィシャルベンチマークソフト」のスコアを見ると、20年以上前の3Dゲームならとりあえず動きそうな雰囲気でもある。

FINAL FANTASY XI for Windows オフィシャルベンチマークソフト

消費電力設定を合わせてSkylakeと比較

 以上の比較は低電力コア同士の比較としては妥当だが、「Skylake級の性能かどうか」は判断付かないので、ここでCore m5-6Y57を搭載した「レッツノートRZ5」を用意して比較することとした。

【表3】Skylake比較機材の仕様
モデルEQ12レッツノートRZ5
CPUN100Core m5-6Y57
コードネームAlder Lake-NSkylake
製造プロセスIntel 714nm
PL17W7W
PL210W10W
メモリDDR5-4800 16GBLPDDR3-1866 4GB
チャネルシングル
GPUIntel Core UHD Graphics(Xe)EU数24Intel UHD Graphics 515(Gen 9)EU数16

 ただ、先述の通りEQ12はPL1が20W、PL2が10Wと高く設定されているので、ユーティリティ「ThrottleStop」を用いて、レッツノートRZ5と同じくPL1を7W、PL2を10Wに制限してみた。計測はCPUのみとし、「Cinebench R23」および「SiSoftware Sandra」に絞った。

 結果、Cinebenchのマルチコアでは約49%の性能向上が確認できた。Intel公式としては、マルチコアに関しては2コア/4スレッドのSkylakeに対して、4コア/4スレッドのN100は同じ電力であれば80%以上の性能向上が謳われているのだが、グラフを見れば分かる通りこれはピーク時の比較。一般的に半導体は電力の増加に伴い性能向上が鈍くなり、今回比較に用いたCore m5-6Y57は、当初より効率重視で選別されたものであるため乖離が発生している。しかしその効率重視で選別されたCore m5-6Y57でさえよりも、N100のほうが同じ電力枠内で50%も性能が高いというのは驚異的だ。

Cinebench R23の性能比較

 また、消費電力を大きく絞ってもシングルコアの性能が大きく低下せず、923という高い数値を示している。Core m5-6Y57は602なので、ざっくり53%も高速という計算だ。Intel公式では、同じ電力枠内であればシングルスレッド性能は40%以上になるとされているので、全く嘘偽りない結果となった。

 ちなみにSiSoftware Sandraの結果でも、N100のほうが有利になっている。マルチメディア処理のスコアが低い点は気になるが、これは256bit命令を128bitの2つのμopsに分解して実行するためだろう。逆にDhrystoneとWhetstoneのいずれもCore m5-6Y57を上回っている。さらにキャッシュ~メモリに関してもN100の方が高速だった。

SiSoftware Sandra プロセッサの性能
SiSoftware Sandra マルチメディア処理
SiSoftware Sandra メモリーの帯域
SiSoftware Sandra メモリーのレイテンシ

 残念ながら今回は20Wに設定されているSkylakeマシンを用意できず、真の直接対決は実現できていない。しかし同じ電力枠内であれば、“EコアはSkylake級の性能”どころか「Skylakeよりも高性能」だと断言していいだろう。

インターフェイスが充実。2.5インチドライブ内蔵可能

 Alder Lake-Nの性能が分かったところで、パッケージやそのほかの部分やインターフェイスについて見ていこう。EQ12は基本性能の高さだけでなく、インターフェイス周りも気合が入っている。

 パッケージは小型PCらしく小型で、付属品はマニュアル類、HDMIケーブル2本、ACアダプタ、VESAマウンタとネジ類とあっさりしている。液晶モニター背面にVESAホールが空いていて、それをスタンドで使っていなければモニター背面に固定して一体型PCのように利用できるのが良い。

 本体は4色あるが、今回入手したのはNavy Blue。筐体はプラスチック素材で、素材自体の質感はそれなりだが、天板にキューブが立体的に並んだような模様が彫られており、デザイン的にはかなりおしゃれで、まったくチープさを感じさせない。

製品パッケージと中身
天板はキューブが立体的に重なって並んでいるような模様が立体加工されている

 本体背面にはUSB 3.1 Type-C(DisplayPort Alt Mode対応)、USB 3.1、2.5Gigabit Ethernet×2、HDMI 2.0×2、DC入力を搭載。前面はUSB 3.1×2、3.5mmミニジャックとなっている。Beelinkお馴染みの赤い電源スイッチやCMOSリセットホールも前面に備え付けられている。

 ちなみに背面のUSBは常時電源供給するPowered USBだが、前面はあえて非対応となっているという。これはサスペンド/電源オフ時にキーボード/マウスを接続したままにしても光り続けることがないようにした配慮とのことだ。

本体前面はUSB 3.1×2と3.5mmジャック。赤い電源ボタンとCMOSリセットホールも備えている
本体背面はUSB 3.1 Type-C、USB 3.1、2.5Gigabit Ethernet×2、HDMI 2.0×2、DC入力
本体右と左側面は通気口のみ

 低価格なPCだとUSB 3.0ポートになる設計が多いし、10万円超えのゲーミングノートとて例外ではないのだが、USB 3.2(つまりGen2x2、20Gbps)対応のSSDを接続してCrystalDiskMarkを走らせたところ、USB 3.1の規格通り10Gbpsは出ていた。

 また、Intel I225-Vによる2.5Gigabit Ethernetを2基備えている点もユニーク。そもそもエントリークラスなのに有線LANが2つあること自体珍しいが、さらに2.5G対応ともなればなおのことだ。ユーザーの腕次第では、NASやルーターとして活用させることもできるだろう。なお、無線LANモジュールはIntel AX101であり、Wi-Fi 6とBluetoothをサポートしている。

USB 3.2(20Gbps)対応SSDを接続して計測したところ、USB 3.1(10Gbps)相当の性能は出た

 内蔵するSSDはPCI Express 3.0 x4タイプで、コントローラにはMaxio Technologyの「MAP1202」が使われている。このコントローラはDRAMレスで低価格化を図っているものだが、公称でシーケンシャルリード3,600MB/s、同ライト3,200MB/s、4Kランダムリード60万IOPS、同ライト50万IOPSとまずまずの性能だ。

 ただ、EQ12はM.2が供給できるバス自体がPCI Express 3.0 x1なので速度が制限されており、シーケンシャルリードは854MB/s、同ライトは868MB/sに留まった。とは言えSATA 6Gbpsタイプよりは高速なのは、Beelinkが少しでも良いパーツを採用したかったからだろうか。

内蔵SSDの性能

 なお、底面カバーは4本のネジで外れるようになっており、すぐに2.5インチベイにアクセスできるため、ユーザーが容量を拡張するのは容易である。メモリはSO-DIMM(1スロットのみ)、標準搭載のSSDは先述の通りM.2なので交換は可能だが、2.5インチドライブマウンタを外す必要があり若干手間だ。

本体底面。四隅のネジを外せば内部にアクセスできる
2.5インチドライブマウンタ。マウンタにはファンが装備されている

さらに分解を進めてみた

 せっかく底面を外したので、さらに分解を進めることにした。2.5インチドライブマウンタには小型のファンが搭載されており、マザーボードを表裏から挟み込む形で強制冷却している機構にはなかなか感心した。逆に言えばこの強力な冷却機構があるからこそPL1を20W、PL2を25Wまで引き上げられているのだろう。なお、負荷時の騒音はかなり抑えられている印象で、静かな深夜でも気になることはまずなく、非常に優秀だった。

 2.5インチドライブマウンタは3本のネジで留められているが、フラットケーブルとファンのケーブルがあるため、外す際は慎重に作業しなければならない。これを外したらいよいよマザーボードとご対面となるわけだが、見えるのはメモリモジュールとM.2 SSD、M.2 Wi-Fiモジュールが装着されていて、電源のコンデンサやAPPS ElectronicsのGigabit Ethernetトランスフォーマー「AE-SC24401」が実装された裏面だけだ。

 マザーボードを固定しているネジをさらに2本外せば、ようやくCPUが実装された面にアクセスできるが、CPUにたどり着くためにはファンとヒートシンクを取り外さなければならならずやや面倒だった。もっとも、一般ユーザーはここまで分解する必要はないだろう。ちなみにヒートシンクは銅製ベースと2本のヒートパイプで構成されており、なかなか精巧な印象だ。

2.5インチドライブマウンタを外せば、M.2 SSDとメモリスロットにアクセスできる
マザーボード裏面
マザーボード表面
ファンを取り外したところ

 さてAlder Lake-Nだが、2つのダイで構成されていて、Gemini Lakeより一回り大きいパッケージが印象的だ。パッケージはFCBGA1264とされておりサイズは35×24mm。このパッケージサイズはJasper Lakeと共通だ。

 ちなみに、IntelはJasper Lake以降、公式でチップの写真を公開していない。筆者は以前「BMAX Y11 Plus」を分解した際に、Celeron N5100を撮影する機会があったのだが、それと比べると表面のコンデンサ/抵抗類がなくなって、ダイが若干大型化? しているのが印象的だ。

Alder Lake-N(というかIntel Processor N100)のパッケージ
こちらはJasper Lake(というかCeleron N5100)のパッケージ

 マザーボード自体は洗練されており、ノートPCのようにスペースの制約を受けないためか部品が整然と並んでいる印象だった。

電源は4フェーズのようだ。Sinopowerの「SM7360EKQG」というデュアルNチャネルエンハンスメントモードMOSFETが採用されている
マザーボード上にIntel I225-Vを2基搭載している

新時代のエントリースタンダード

 以上、EQ12をあらゆる点から見てきたが、とりあえず思ったのは、Alder Lake-Nによって2023年は低価格PCの性能が大きくジャンプする年になるだろう、ということだ。前世代のJasper Lakeも演算性能的にはまずまずで、Skylakeの低電圧版に肉薄するものがあったが、それでももたつき感が否めなかった。これは初代Atomを代表するIntelの低電力アーキテクチャがずっと引きずってきたビハインドだったが、Alder Lake-Nで払拭できたように思う。

 というか、そもそもJasper Lakeは半導体不足の真っ只中登場したため供給不足気味で、2021年の1月発表以来まったく搭載製品が見えてこなかった。一方でAlder Lake-Nは今年(2023年)の1月発表以降、既にぼちぼち製品が出回りはじめており、なおかつ値段も3万円を切るものまで登場しているので、このまま順調に行けば今年後半にはGemini LakeやJasper Lakeを駆逐できそうな雰囲気である。

 ともなれば、今後の2万~3万円台のPCも、性能的にはかなり実用的なものとなり、少なくとも2~3年は“戦え”そうだ。これはPCにはじめて触れるエントリーユーザーにとって改めてPCの価値を認識する機会になるだろうし、一方でハイエンドユーザーにとってもセカンドマシンとして魅力的に映えるに違いない。

 その第1波とも言えるEQ12だが、高いCPUの基本性能のみならず、十分なメモリ/ストレージ容量を備えていて、デザインにもこだわり、インターフェイスもそこそこ充実している。それでいて3万円ちょいで買えるのだから、幅広い層におすすめしたいPCだと言える。