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「Xperia 5 IV」は新たなコンパクトハイエンドスマホ。発売前に実機レビュー
2022年9月20日 06:12
ソニーは、最新スマートフォン「Xperia 5 IV」を日本を含むワールドワイドで発売すると発表した。国内モデルの仕様や発売日についてはまだ未発表だが、今回いち早くグローバルモデル相当の評価機を試用する機会を得た。
ただし、今回試用したのは評価機ということもあり、SIMを装着できず、ベンチマークテストなどのアプリも利用できない状態での評価だったことをご了承いただきたい。そのため、ファーストインプレッションとしてハード面を中心に紹介する。
従来モデルと画面サイズは同じで、ボディはさらに小さくなった
まず始めに、Xperia 5 IVの外観から見ていこう。
ボディの仕様は、従来モデルのXperia 5 IIIや、フラグシップモデルのXperia 1 IVなどと同じように、側面メタルフレームにディスプレイ面と背面にガラスを使用する、Xperiaシリーズおなじみの仕様となっている。
ただ、デザインは若干の違いが見られる。Xperia 5 IIIでは、側面フレームが全体的になだらかなカーブとなっていたのに対し、Xperia 5 IVでは前面や背面との接合部付近はなだらかなカーブを残しつつ、側面がフラットな形状となった。これによって、見た目にはよりシャープな印象が強まっていると感じる。
また、手にした時の印象も変化し、Xperia 5 IIIと比べるとややゴツゴツとした印象の手触りとなった。かと言って持ちにくいわけではなく、個人的にはXperia 5 IVの方がよりしっかりホールドできると感じる。
もう1つデザイン面で異なっているのが側面フレームや背面ガラスの処理だ。Xperia 5 IIIでは、一部カラーで側面フレームと背面ガラスとも光沢仕上げとなっていたのに対し、Xperia 5 IVでは3種類用意されるカラーすべてが側面フレーム、背面ガラスともマット調のフロスト加工仕上げとなった。
個人的には、指紋の痕が付きにくいフロスト加工仕上げが好みだが、光沢感の強いボディの方が好みという人もいるだろう。このあたりは評価が分かれるため、実際に国内モデルが発表され、量販店などでの展示が行なわれた段階で、実機を見て判断してもらいたい。
ボディカラーは、ブラック、エクリュホワイト、グリーンの3色を用意。今回の試用機はエクリュホワイトだったが、明るいながらも落ち着いた印象で、このカラーも個人的に好印象だった。
なお、ガラスには米Corning製強化ガラス「Gorilla Glass Victus」を採用している。これはXperia 1 IVで採用しているのと同じ強化ガラスで、従来モデルと比べて強度が高められている点も嬉しい。
ディスプレイは、Xperia 5 IIIと同じアスペクト比21:9の6.1型有機ELを採用。それでいてボディサイズは67×156×8.2mm(幅×奥行き×高さ)と、Xperia 5 IIIから幅、奥行きともに1mmずつ短くなっている。
横に並べてようやく分かるほどの差ではあるが、同じディスプレイサイズで、のちほど紹介するように内蔵バッテリ容量も増量しつつ、ボディの小型化を実現している点は大いに評価したい。
Xperia 5 IVをコンパクトスマホと呼ぶのに違和感のある人がいるかもしれないが、近年のスマートフォンの大型化の流れの中では、十分コンパクトと言っていいと思う。Xperia 1 IVと比べると横幅は約4mmも短く、実際に手に持ってみるとXperia 5 IVはかなり小さく感じる。このあたりは、今後展示機が用意された段階で手に持って確認してもらいたい。
ただ、重量は172gと、Xperia 5 IIIと比べて4g重くなっている。SIM被装着時の実測の重量は172.6gだった。200gを大きく下回る重量ではあるが、ボディサイズもあって、やや重く感じる。バッテリ容量の増量なども影響しているものと思われるが、できればもう少し軽いと嬉しいところだ。
主なスペックはXperia 1 IVとほぼ同等
Xperia 5シリーズは、同世代のXperia 1シリーズとほぼ同等スペックを、よりコンパクトなボディに詰め込んだ製品となっている。Xperia 5 IVも、Xperia 1 IVとスペックが全く同じということはないものの、SoCを始め共通となっている部分が多い。
今回試用したXperia 5 IVの主なスペックを下表にまとめたが、SoCはXperia 1 IVと同じSnapdragon 8 Gen1を採用。メモリは8GBとXperia 1 IVより少ないが、内蔵ストレージは256GBと十分な容量を搭載。外部ストレージとしてmicroSDカードが利用できるため、ストレージ不足も容易に改善できる。OSはAndroid 12だ。
【表】Xperia 5 IV試用機の主なスペック | |
---|---|
SoC | Snapdragon 8 Gen1 |
OS | Android 12 |
メモリ | 8GB |
内蔵ストレージ | 256GB |
外部ストレージ | microSD |
ディスプレイ | 6.1型有機EL、フルHD+(1,080×2,520ドット)、アスペクト比21:9、HDR、リフレッシュレート最大120Hz |
リアカメラ | 超広角 : 16mm/F2.2、1/2.5型1,200万画素 広角 : 24mm/F1.7、光学式手ブレ補正、1/1.7型1,200万画素 望遠 : 60mm/F2.4、光学手ブレ補正、1/3.5型1,200万画素 全センサー120fps高速読み出し対応 全レンズ リアルタイム瞳AF、リアルタイムトラッキング、HDR対応20コマ/秒 AF/AE連写、4K 120fpsスローモーション/ハイフレーム動画撮影対応 |
フロントカメラ | 1/2.9型1,200万画素 4K HDR撮影対応 |
5Gネットワーク | Sub-6 |
対応SIM | Nano SIM×1、eSIM×1 |
無線LAN | IEEE 802.11ax(Wi-Fi 6) |
Bluetooth | Bluetooth 5.2 |
オーディオ | フロントステレオスピーカー「フルステージステレオスピーカー」(低音域を含めた音圧向上)、3.5mmオーディオジャック DSEE Ultimate/360 Reality Audio/360 Reality Audio Upmix/Music Pro Bluetooth LE Audioにソフトウェアアップデートで対応予定 |
防水・防塵 | IP65/68 |
生体認証機能 | 電源ボタン一体型指紋センサー |
外部ポート | USB Type-C、3.5mmオーディオジャック |
ワイヤレスチャージ・おすそわけ充電 | 対応 |
バッテリ容量 | 5,000mAh |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 67×156×8.2mm |
重量 | 172g |
カラー | エクリュホワイト |
ポート類は、下部側面にUSB Type-Cと、Nano SIM×1とmicroSD×1のトレイ、上部側面に3.5mmオーディオジャックをそれぞれ用意。
物理ボタンは、右側面に集約されており、上からボリュームボタン、指紋認証センサー一体型電源ボタン、シャッターボタンを用意。従来モデルにあったGoogleアシスタントキーは省かれている。
モバイル通信は5G Sub 6対応で、5G ミリ波には非対応。SIMは、Nano SIMとeSIMのデュアルSIM構成。無線LANはIEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)準拠、BluetoothはBluetooth 5.2に対応。
防水・防塵仕様は、IPX5/IPX8準拠の防水性能と、IP6X準拠の防塵性能を備える。生体認証機能は電源ボタン一体型の指紋認証センサーを搭載する。
内蔵バッテリは、容量が5,000mAhとXperia 1 IVと同じ大容量バッテリを搭載。バッテリは3年間劣化しにくい長寿命仕様となり、30分で約50%の容量を充電できる急速充電機能も備えている。
さらに、Qi準拠のワイヤレス充電機能と、Qi対応機器へ電力を供給できるおすそわけ充電機能を、Xperia 5シリーズとして初めて搭載。ボディがコンパクトになりつつ、Xperia 1 IV同等の大容量バッテリを搭載するだけでなく、ワイヤレス充電機能も搭載している点は大きな魅力となるだろう。
フルHD+有機ELディスプレイは輝度が約50%高められ屋外での視認性が向上
ディスプレイは、表示解像度が1,080×2,520ドット(フルHD+)、アスペクト比21:9の6.1型有機ELを採用している。サイズや表示解像度のほか、HDR表示、リフレッシュレート最大120Hz、240Hz相当の残像低減技術、240Hzのタッチサンプリングレート対応タッチパネルといった特徴も、従来モデルと同じだ。
ソニーの大画面テレビ「ブラビア」シリーズで培った高画質化エンジン「X1 for mobile」や、標準品質(SDR)の映像をHDR相当に変換して表示する「HDRリマスター」、ソニーのマスターモニター同様のHDR、BT.2020、10bitカラーの映像データの色調を忠実に表示する「クリエイターモード」なども引き続き搭載。表示される映像のクオリティは非常に優れており、鮮やかな発色はもちろん、映像コンテンツは制作者の意図した色合いを忠実に表示できる点も大きな魅力だろう。
新機能としては、Xperia 1 IVで実現された「リアルタイムHDRドライブ」を搭載。動画再生時などにフレームごとの輝度や階調を動的に解析し、白飛びを抑えたり色の再現性を最適化することで、コントラストのはっきりした映像を表示できるという。
実際にXperia 5 IIIと同じ動画を表示して比べてみたが、個人的にはXperia 5 IIIでも十分高品質な映像と感じるものの、Xperia 5 IVの方がより明暗にメリハリのある映像が表示されているように感じた。
また、最大輝度が従来モデルと比べて約50%高められている。実際にXperia 5 IIIと直射日光下での視認性を比べてみたところ、Xperia 5 IVの方が明らかに画面が見やすいことを確認できた。表示される文字や映像も比較的はっきり読み取れるようになっており、屋外での視認性はかなり改善されたと言っていいだろう。
リアカメラは3眼仕様で、望遠レンズは固定焦点レンズを採用
これまでXperia 5シリーズでは、同世代のXperia 1シリーズとほぼ同等のリアカメラを搭載してきた。例えばXperia 5 IIIでは、iToFセンサーは非搭載だが、Xperia 1 IIIと同じ仕様の超広角、広角、望遠の3眼仕様カメラを搭載していた。
それに対しXperia 5 IVでは、iToFセンサーを省いた超広角、広角、望遠の3眼仕様という点は従来と同じだが、Xperia 1 IVのカメラと同仕様となるのは超広角と広角レンズのみとなっている。
Xperia 1 IVでは望遠レンズでの光学望遠ズームレンズの採用が大きな特徴となっていたが、Xperia 5 IVの望遠レンズは短焦点の望遠レンズの採用となっている。
これは、本体サイズの制約によるものとのことだが、Xperia 1 IVと同じ光学望遠レンズの搭載を期待していたユーザーにとっては少々残念な部分だ。
各レンズの仕様は以下の通りだ。
- 超広角レンズ
16mm/F値2.2のレンズ、1/2.5型1,200万画素センサー - 広角レンズ
24mm/F値1.7のレンズ、1/1.7型1,200万画素センサー - 望遠レンズ
60mm/F値2.4のレンズ、1/3.5型1,200万画素センサー
広角レンズには光学手ブレ補正機能を搭載。このほか、全レンズがZEISSレンズで、T*コーティングが施される。
全レンズの撮像素子が120Hzの高速読み出しに対応しており、全レンズでリアルタイム瞳AFや秒間20コマのHDR対応AF/AE追従連写、4K/120fpsスローモーション撮影、ハイフレームレート動画撮影などが可能だ。
また、iToFセンサー非搭載ながら、人や動物などの動く被写体をAIで認識して追い続け撮影できる「リアルタイムトラッキング」に対応。動く人物や動物をAIで認識して追従してくれるので、子供やペットの写真をよく撮影するという人にとって、この強化は嬉しいだろう。
フロントカメラは、従来よりも大型かつ高画素の1/2.9型1,200万画素センサーを採用している。これにより、フロントカメラでの4K HDR撮影が可能となっている。
カメラアプリは、従来同様の「Photography Pro」を採用。Androidの標準カメラアプリ同等の操作性を備えるベーシックモードに加え、プログラムオートやシャッタースピード優先、マニュアルモードなどの高度な撮影機能を用意している。
動画撮影アプリ「Video Pro」も搭載。しかも、Xperia 1 IV同様に、Video Proから直接YouTubeなどへのライブ配信を行なう機能も用意。USBポート経由で接続したカメラの映像をXperia 5 IVのディスプレイに表示する外部モニター機能や、外部モニター機能で接続したカメラを利用したライブ配信が行なえる点も同じだ。
ズーム操作は、静止画撮影時には従来同様レンズごとの操作となるが、動画撮影時にはPhotography Pro、Video Proともに、全レンズを通したシームレスなズーム調整が可能となった。静止画撮影時にはレンズ交換式カメラのような撮影体験を実現しつつ、動画撮影時には全レンズを通したシームレスズーム調整が可能となったことで利便性が高まっている。
ただ、動画をシームレスズームで撮影する場合、レンズが切り替わるときにわずかに画角や色合いががずれる点が気になった。特にレンズが頻繁に切り替わるような撮影を行なう場合には少々気になる可能性が高そうだ。
Xperia 5 IVの作例を紹介
では、実際にXperia 5 IVで撮影した写真や動画を紹介する。
超広角および広角レンズは、レンズ、撮像素子ともにXperia 1 IVと同仕様のため、それらで撮影した写真のクオリティはXperia 1 IVと同等と考えていい。
暗い場所や、逆光になるような場面で撮影してみると、HDR撮影や、ある程度のAI処理によって補正はされるものの、必要以上に色を盛ったり明るく補正したりせず、目で見た情景をそのまま再現するような、比較的ナチュラルな色合いや明るさで撮影できている。
ビビッドな色合いに調整したり、暗い場所でも大きく明るさを補正するといったことがないため、どちらかというとおとなしめの写真が撮影されるという印象。これまでのXperiaシリーズ同様、Xperia 5 IVでもデジタルカメラのαシリーズの伝統がしっかり受け継がれていると言っていいだろう。
望遠レンズは、焦点距離60mmの固定焦点レンズとなったことで、60mmより先はデジタルズームのみとなる。ズームの最大は7.5倍の180mm相当となるが、デジタルズームのみのため、Xperia 1 IVに比べると遠くの被写体を撮影する場合の描写力はどうしても劣ってしまう。それでも、最大望遠でもまずまずの画質は確保できており、等倍に拡大して表示したりしなければ、そこまで気になることはなさそうだ。
動画は、本体を手に持って歩きながらラフに撮影してみたところ、手ブレ補正がしっかりと働き、大きなブレなく撮影できた。これだけしっかりブレが抑えられるなら、ジンバルを利用せずとも手持ちで問題なく動画が撮影できそうだ。
ただ、発熱については厳しい部分もある。今回、気温34℃の直射日光下というかなり厳しい状況で試してみたところ、4K動画を4分ほど撮影したところで発熱の警告が表示された。その時点でボディは、素手で持つにはやや厳しいと感じるほど熱くなっていた。
さすがに今回の条件では、Xperia 5 IVでなくとも短時間で発熱による警告が表示され、撮影が継続できなくなるはずだ。ただ、Xperia 5 IVはサイズが比較的コンパクトなこともあって、Xperia 1 IVと比べても高負荷時に高温になりやすい可能性も考えられる。
そこで、比較的高温の環境で長時間の動画撮影を行ないたい場合には、従来モデル同様に用意されている、シューティンググリップ「GP-VPT2BT」などと組み合わせることで高温状態でも撮影を継続できる「撮影持続モード」を利用するなどの配慮が不可欠だろう。
内蔵スピーカーの音質が大きく進化
サウンド関連機能については、3.5mmオーディオジャックの用意やハイレゾオーディオ対応、標準音質のサウンドをハイレゾ相当に高音質化する「DSEE Ultimate」など、従来モデルから引き続き搭載しているものが多い。そういった中、大きく進化しているのが内蔵スピーカーだ。
従来モデルも「フルステージステレオスピーカー」を搭載していたが、Xperia 5 IVでは新構造となったフルステージステレオスピーカーに進化。これにより、音圧最大約30%、低音域(100~200Hz)の音圧はさらに20~50%向上。
また、スピーカーユニットを専用エンクロージャーに搭載し、筐体の振動による不要な音を抑制することでクリアなサウンドを実現しているとのこと。
実際にXperia 5 IIIとXperia 5 IVでスピーカーの音を聞き比べてみると、聞いた瞬間に分かるほどの大きな違いがあると感じる。特に、低音域の迫力が大きく増していて、サウンドの迫力が大きく高められていることがよく分かる。
筆者は、スマートフォンの内蔵スピーカーにそれほど期待していないことがほとんどだが、Xperia 5 IVなら内蔵スピーカーで音楽や動画を再生する場合でもかなり満足できそうだ。
Xperia 1 IVで用意された高音質録音アプリ「Music Pro」も標準搭載している。
例えば、自分の歌声を撮影した場合などに、クラウド処理でバックグラウンドノイズや残響特性を除去するとともに、ソニーの高性能真空管マイクの周波数特性やスタジオ録音機材が持つ繊細で良質な響きを再現できる「Studio tuning機能」を用意する、スタジオレベルの音楽録音を実現するアプリだ。
Studio tuning機能の利用には、初回100MBまで無料、それ以降は月額580円のサービス加入が必要。使う人を選ぶ機能と感じるが、バンド活動などを行なっている人には魅力的な機能となりそうだ。
比較的コンパクトなハイエンドスマートフォンとして魅力
ここまで見てきたようにXperia 5 IVは、上位モデルであるXperia 1 IVの機能がそのまま凝縮されているわけではないが、機能を取捨選択し、申し分ないスペックを実現している。
これまでのXperia 5シリーズの特徴からすると、リアカメラの望遠レンズが光学ズームとなっていない点は少々残念ではある。それでも、5,000mAhの大容量バッテリや、シリーズ初となるワイヤレス充電機能の搭載などもあり、完成度は非常に優れると言っていいだろう。
国内モデルの仕様や価格は、現時点では判明していないものの、グローバルモデルの機能を網羅しつつ、国内向けにおサイフケータイを搭載した上で、国内主要キャリアから登場すると思われる。
個人的には、比較的早い段階でSIMフリーモデルを発売してもらいたいが、比較的コンパクトなボディのハイエンドスマートフォンが欲しいと考えている人なら、キャリアモデルでも十分検討に値する製品だ。