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携帯ゲーム機のようなゲーミングUMPC「AYANEO AIR」。スーツの内ポケットにも入る圧倒的なコンパクトさ!

AYANEO AIR

 AYANEOが開発した「AYANEO AIR」は、フルHD解像度の5.5型OLEDディスプレイを搭載するスレート型ゲーミングUMPC。

 これまで同社が発売してきた「AYANEO」シリーズはいずれも7型ディスプレイを採用するモデルばかりだったが、今回の「AYANEO AIR」は同社が5月に発表した新たなコンセプトのシリーズで、5.5型のサイズが物語る通り、非常にコンパクトな筐体と重量約398gと携帯性を重視した作りが特徴となっている。

 性能面についても、CPUにはZen 3コアアーキテクチャの「Ryzen 5 5560U」を採用。最新アーキテクチャの採用により、Zen 2アーキテクチャの「Ryzen 5 5500U」と比較して10%高い性能を発揮できるとしている。今回は4SKU用意されるうち、最軽量の上位モデル「AYANEO AIR -STANDARD VERSION-」を試用した。

とにかく小さい!

 繰り返しになるが、「AYANEO AIR」最大の特徴はその圧倒的な薄型軽量な筐体だ。外形寸法は約224×89.5×26mm(幅×奥行き×高さ)、最薄部18mm、重量398gと非常に軽量かつコンパクトで、初めて見たときはあまりのコンパクトさに衝撃を受けたほどだ。数値だけだとわかりにくいが、実際に携帯ゲーム機の任天堂Switchと比較すると、重量は同等だが本体サイズはSwitchよりも確実に小さい。外観だけで見た場合、より小型の任天堂Switch Liteとほぼ同等のサイズ感となっている。

 試しにスーツの内ポケットに入れて持ち運べるか試してみたが、アナログスティック部が若干引っかかるものの、サイズ的には問題なく収納できた。通勤などの移動時でも手軽に持ち運ぶことができるこのコンパクトさは驚愕の一言だ。

重さは驚異の398g!
任天堂Switch、Switch Liteと並べてみたところ。7型ディスプレイ搭載のSwitchよりは明らかに小さく、サイズ感としてはSwitch Liteに近い
スーツの内ポケットに入れてみたところ、すっぽりと入れる事ができた。ただし、入れる際にアナログスティックが引っかかる場合があるので、その辺りを保護できるケースがあれば常時持ち歩くことも可能なほどのコンパクトさだ

 小型化に寄与している5.5型のOLED(有機EL)ディスプレイは、解像度1,920×1,080ドット表示対応で、NTSC 109%の広色域や10万:1の高コントラスト比が謳われている。実際の画面を見てみると、コンパクトなサイズに高解像度の高精細感があるため、ゲームのエンコード解像度を下げた場合であっても、ゲーム画面がかなり色鮮やかに表示される。

 デフォルトのスケーリングは175%に設定されており、この状態なら画面内の文字などもハッキリ認識できる。ただし、175%のままだと、ソフトによってはボタンなどのインターフェイスが正常に表示されない場合もあるため、スケーリングの設定は悩ましいところ。ちなみにスケーリングを100%に変更すると、さすがに小さな文字などの視認性はかなり困難な状態になるが、5.5型の小さなディスプレイ上でのフルHD解像度表示は、かなりの高精細感があり、使っていてとても心地よい。

解像度1,280×720ドットで表示した状態。画面内の密度は上がるが、視認性は向上する
解像度1,920×1,080ドットで表示した状態。視認性は下がるが、アプリのインストールやブラウジングなどでは、こちらの方が使いやすい印象だ

Zen 3コアアーキテクチャ「Ryzen 5 5560U」搭載!

 プロセッサにはZEN 3コアアーキテクチャを採用した「Ryzen 5 5560U」を搭載、メモリは16GB、ストレージは512GB SSDを内蔵するなど、最新ノートPCにも劣らないハイスペックだ。昨今のゲーミングUMPCではよく見かけるスペックとも言えるが、このコンパクトな筐体に内蔵しているところがポイントなのだ。

 冷却機構としては、底面部に広範の吸気口を備え、天面部から排気する。動作中に排気口に手を沿えるとそれなりの熱さの温風が排気口から排出されるが、本体の動作には問題ないし、温風の温度も熱くて触れられないほどの熱さにまでは上がらない。

 ただし、1点注意するべきは、吸気口や排気口が塞がれないようにすることだ。例えば手に持って使用する場合などは特に問題にならないが、足の上に掛けた毛布の上などに本体を置いて操作する場合など、吸気口や排気口が塞がれてしまうと、排熱が正常に行なわれず、本体が持てなくなるほど熱くなってしまう場合があった。また、ケースなどに収納している状態で、スリープが解除されるような場合も、熱がこもってしまうので、大変危険だ。こうした状態が続くと、本体が故障してしまう恐れもあるため、吸排気の位置について意識して使うのがいいだろう。

前面にはディスプレイやゲームコントローラを搭載するなど、パっと見た感じは携帯ゲーム機だ
背面にはかなり大きな吸気口を備える
底面部にはmicroSDカードスロットと3.5㎜音声出力端子、給電やディスプレイ出力も可能なUSB Type-C端子を備える
天面には指紋認証センサー内蔵の電源ボタン、音量コントロール、USB Type-C端子、排気口を装備。RT/LTトリガーやRB/LBボタン、それらの横にはカスタム可能なRC/LCキーも備える

 本体に備えるゲームコントローラは左側にアナログスティックと十字キー、右側にA/B/X/Yボタンとアナログスティック、天面部にはRT/LTトリガーとRB/LBボタンを備える。

 また、天面部のRB/LBボタンの隣には、天面部の縁に沿う形で同社独自のRC/LCキーを備え、ソフトウェアキーボードの出し入れなど、好みの設定が可能なショルダーキーとなっている。ほかにも左十字キー下部にはXInput準拠のビューボタンとメニューボタンが並んで配置され、右アナログスティック下部には後述の「AYA Space」を起動する専用ボタン、その横には押下する事でデスクトップを表示するデスクトップボタンを備える。

 なお、スティック部の根元にはLEDが内蔵されており、通電時やスリープ時などに光るようになっている。光るパターンや色などはカスタムが可能なので、好みに合わせて変更が行なえ、実にゲーミングな雰囲気だ。

 そのほかのインターフェイスは天面と底面部にそれぞれ給電可能なUSB Type-C端子を備えるほか、天面部には音量ボタンと電源ボタンを装備。電源ボタンには指紋認証センサーを内蔵しており、事前に登録しておくことで、電源押下時にログインまでの認証もスムーズに完了できる。底面部にはmicroSDカードスロットや3.5㎜音声出力を搭載。バッテリー容量は7,350mAh。また、傾きなどでゲームを操作できるデュアルジャイロスコープも内蔵する。

 4種類用意されているSKUのうち、今回試用したSTANDARD VERSIONの直販価格は9月5日の段階で12万3,930円、最薄部17㎜でメモリ容量8GB、ストレージが128GB SSDの最安/最薄モデル「AYANEO AIR LITE」は10万7,800円、STANDARD VERSIONのバッテリ容量を10,050mAhに増量し、最薄部が21.6㎜、重量450gとなった「AYANEO AIR PRO」が13万6,980円、数量限定ながら、PROのCPUをより高性能の「RYZEN 7 5825U」にアップグレードした「AYANEO AIR PRO-ADVANCE VERSION-」が18万6,120円となっている。

 本体カラーはSKUにより異なり、AYANEO AIR LITEはオーロラホワイトのみ、AYANEO AIR-STANDARD VERSION-はオーロラホワイトとポーラーブラックのどちらか選択可能。AYANEO AIR PRO/PRO-ADVANCE-VERSION-はポーラーブラックのみとなる。

 別売オプションとしてガラスフィルムやハードケースが用意されているほか、有線LAN端子やUSB端子、HDMI出力なども備える専用クレードルも1万780円で用意する。クレードルを使えば、置くだけでディスプレイ出力やキーボード接続などがスムーズに行なえるので、据え置きのPCのように使うことも可能だ。

アナログスティックの根元が光る。設定を変更することでお好みのパターンや色味に変更することも可能だ
RB/LBボタンの隣にある「…」の部分は同社独自のRC/LCキーとなっており、カスタマイズで好みの機能が設定できる
底面部にはmicroSDカードスロットを備える

独自ランチャーソフト「AYA Space」が便利

 プリインストールソフトとして、同社開発の専用ランチャーソフト「AYA Space」を搭載。起動時には自動で立ち上がり、コントローラやタッチパネル操作のみで、インストール済みのゲームを選択して起動できるゲームランチャーとして使えるほか、本体の電力制御(TDP設定の変更)、ファン回転数、ディスプレイ解像度などが簡単に調整できる。他にもジャイロスコープ機能のオン/オフや、コントローラのカスタマイズ、アナログスティックのLED設定といった細かい設定も可能だ。

 PCのデスクトップを表示させたい場合は、本体に備える専用ボタンで簡単に切り替えが行なえる。また、正常に起動しなくなった場合はデスクトップのショートカットから起動することでも復帰可能だ。

 AYA Space非アクティブ時は専用ボタンを1度押下することで、一部機能をその場で利用できる「AYAQuickTool」が画面右端に出現し、TDP調整やファンコントロール、ディスプレイの解像度や輝度調整、ボリューム操作、事前に登録したショートカットの機能が利用できる。AYA Spaceを有効にする場合は、専用ボタン長押しで全画面表示となる。

 AYA Spaceについて、機能面では概ね問題ないが、基本的に全て英語のインターフェイスとなっているほか、設定変更後の適用時はキーを押すだけでなく、長押しが必要だったりと若干癖のある作りとなっているので、多少の慣れが必要だ。とはいえ、持ち運ぶ場所に応じてTDPやファンの回転数を手軽に調整できる使い勝手は非常に便利で重宝するのは間違いない。

起動時に自動で起動する「AYA Space」。ホーム画面左はゲームランチャー画面となっており、コントローラ操作やタッチパネル操作だけで登録されたゲームが起動できる
オーム画面右側の「Quick Assistant」では、ファンの回転数制御やTDP設定、ディスプレイ解像度などが簡単に調整できる。なお、ここでの操作はボタン押下、またはタッチするだけで簡単に切り替わる
Assistantメニューでは、本体のスペック情報などが確認できるほか、コントローラのカスタマイズのメニューなどが開ける
Configの設定では、RC/LCキー(この画面ではShoulderKey)のカスタムが行なえるほか、アナログスティック根元のLEDライトの調整もここから行なう
ジャイロスコープ機能の設定やコントローラ各部の調整なども行なえる
AssistantメニューのSoftwareからインストール済みアプリをランチャーに追加できる。STEAMアプリや、EPIC GAMES STOREランチャー、EAランチャーなどをここからインストールできるのはユニーク
デスクトップを表示した状態で1度だけAYA Spaceボタンを押すと「AYAQuickTool」が表示される

 なおTDP設定について、デフォルトは8Wに設定されているが、これを操作することでSKU毎に設定された最大TDPまで上げることができる。最大TDPはAYANEO AIR LITEの場合は最大12W、AYANEO AIR-STANDARD VERSION-は15W、AYANEO AIR PROやAYANEO AIR PRO-ADVANCE VERSION-では18Wまで調整が可能だ。

 実際の動作を見ていても、あまりGPU負荷の高くない軽量なタイトルであれば、TDP設定はデフォルトのままでも問題ない。一方でフレームレートを少しでも上げておきたいタイトル、例えば「APEX Legends」などの対戦型FPSなどの場合は、TDPを最大の15Wまで上げて、解像度を1,280×800ドットに下げ、映像表示オプションをなるべく低く調整、垂直同期をオフにすることで、fpsを60~100前後のギリギリ戦えるフレームレートまで引き出すことができた。

 ほかのタイトルでも3D映像メインのゲームタイトルを遊ぶ場合は、TDPと解像度の調整、および各タイトルの映像表示オプションの調整を行なうことで遊べるようになるものは多い。

「Vampire Survivers」も快適動作でご満悦
「APEX Legends」をフルHD解像度、最高の映像設定で試してみたところ、あからさまに挙動が怪しくなり、カクカク状態に陥ってしまった。フレームレートも5~20fpsくらいしか出ておらず、これでは戦えない
解像度をそのままに映像設定を全て最小に変更したところ、50fps前後で動くようになった。のんびり遊ぶタイプのゲームならこの設定でも満足だが、対戦型FPSでこのフレームレートは少し厳しい
解像度を1,280×720ドットに落としてみたところ、60~100fpsくらいのフレームレートが出るようになった! ディスプレイが小さいので解像度を下げても思ったほど粗く見えないのはうれしいところ

CPU性能の向上が感じられるスコア

 それではベンチマーク結果も見ていこう。なお、いずれのベンチマークもデフォルトのTDP8W設定とTDP15Wの2パターンをチェックした。

 まずは「PCMark 10」、「Cinebench R23」の結果から見ていこう。実用アプリケーションでの動作をテストする「PCMark 10」のスコアはZen 3コアアーキテクチャのRyzen 5搭載ノートPCとして考えると、相応の結果が出ているようだ。また、CPU性能を測る「Cinebench R23」も試したが、こちらもマルチ/シングルともに既存のRyzenシリーズと比較して遜色のない結果が出ている。

PCMark 10
Cinebench R23

 一方で「3DMark」と「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」の方は若干厳しめだ。Zen 3コアアーキテクチャのRyzen 5560Uであっても、内蔵するGPUはRadeon RX Vegaで、これまでのRyzenシリーズとほぼ同等のため、3D性能のテスト結果は若干厳しい。

3DMark
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク

 それでもゲームプレイ時の解像度を1,280×720ドットなどHD解像度にまで下げたり、映像品質を下げることで、フレームレートはそれなりに高く調整できるので、映像品質などのカスタマイズ設定が豊富なタイトルほど、快適にプレイできるだろう。

 TDPについても8Wと15Wで比較すると、TDPを上げるほど好スコアになっているのが分かる。なお、TDP 15Wでの利用であれば、ファン回転数を最大にしていれば本体の発熱量はそこまで高温になることはないため、遊ぶタイトルに応じてガンガン上げて使うのがいいだろう。ファンの音については静かな部屋では明確に回転しているのが分かるが、外出先などでは環境音に紛れるので、そこまでは気にならない印象だ。

気になる人は動画でもチェック!

 近年のUMPC市場はキーボード付きモデルは若干の落ち着きを見せているが、それ以上にゲームコントローラを標準装備した携帯ゲーム機形状のスレート型UMPCがかなり盛り上がっている印象だ。トレンドの移り変わりも非常にスピーディで、2021年後半にはCore i7(Tiger Lake)搭載モデルが各社から多数リリースされ、大いに盛り上がっている印象だったが、今年に入ってからAYANEOを含め、各社がRyzen搭載のUMPCを発売する割合が増えてきたように感じる。

 そして今年はいよいよ携帯ゲーム機型UMPCの本命とも言えるVALVEの「Steam Deck」が日本でも購入可能になる予定だ。現時点では予約受付のみだが、年内リリースに向けて動いているようで情報も多く出回ってきている。一方でSteam Deckは圧倒的コスパの高さが魅力ながらも、圧倒的に巨大なアメリカンサイズ感にたじろぐ人も多く見受けられる。

 そんな人にこそAYANEO AIRシリーズは魅力的な選択肢の1つとして目に止まるはずだ。AYANEO AIRシリーズは、Zen 3コアアーキテクチャのRyzen 5 5560Uという高性能のCPUを搭載することで、性能の高さと本体形状、デザイン、その携帯性などトータルの完成度が非常に高く仕上がっている印象だ。2021年末の頃はまだ個々にダウンロードして使用していたランチャーソフト「AYA Space」についても、まだ粗削り作りながら同社製品にプリインストールされるまで成長しており、こうした前向きな姿勢は評価したい。

 同社ではこの先もRyzenシリーズを搭載した新モデルを色々と用意しており、GPUが強化される次世代のRyzen 6000シリーズの登場も予定されている。各社もRyzenシリーズを搭載した製品を続々と発表していることもあり、今後もコントローラ搭載スレート型UMPCは更なる盛り上がりを見せていきそうだ。

 なお、AYANEO AIRが実際に動作する様子が見てみたい人は、以下YouTubeがおススメだ。筆者自らゲームをプレイしたり、AYANEO AIRの魅力を生配信で紹介してみたので、本製品に興味が湧いた人は是非配信の方もご覧になってみてほしい。