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個性的な背面とイルミネーションに惹かれる「Nothing Phone (1)」

Nothing Phone(1)。特徴的な透明ガラスを採用した背面

 英Nothing Technologyから発売になったAndroidスマートフォン「Nothing phone (1)」。今年(2022年)3月に開発が予告されて以降、徐々にベールを脱ぐようにコンセプトやデザインが発表され、遂に日本国内でも8月19日から家電量販店やECサイトでの販売もスタートした。

 「Nothing phone (1)」が最も注目を集めたのは理由は透明の背面と、そこに仕込まれた特徴的なLED照明の存在だろう。

 スマートフォンの外観として、背面パネルやサイドフレームにガラスや金属を用い、さらに高級感のあるカラーリングやフィニッシュを施すことも珍しくはないのだが、それも今や当たり前となってしまい珍しさはない。

 過去にも中身の見えるフィーチャーフォンやスマートフォンも存在したが、SIMフリースマートフォンが買い替え先の選択肢として気軽に選べるようになり、ソフトウェアやハードウェアの成熟した今だからこそ、ほかにない中身が見える、さらに光る外観はガジェット好きなら気になって当然ともいえる。

 そんな「Nothing phone (1)」について、発売に先駆け試用する機会を得ることができたのでレビューをお送りする。

特徴的な背面以外は2022年のド真ん中にまとまったスペックや外観

 「Nothing Phone (1)」はAndroidスマートフォンとしてはミドルレンジ~ミッドハイレンジに属する1台だ。チップセットにQualcomm Snapdragon 788+を搭載し、メインメモリは8GBと12GBから選択できる。

 ディスプレイもパンチホール型の前面カメラを備えた6.55型の有機ELディスプレイで、120Hzまでの可変リフレッシュレートに対応している。

 外観についても特徴的な背面以外は普通といえるだろう。

ディスプレイの発色は鮮やかで、ベゼルの四辺が統一されているため見た目がスッキリしている
透明の背面パネルには特徴的なフォントでロゴが印字されている
ロゴだけでなく認証マークや型番も印字されている

 本体周囲を囲うように設けられたサイドフレームは金属製で、エッジも立っていないため手触りや握り心地もいい。

 生体認証もディスプレイ内蔵の指紋認証を搭載しているため、特徴的なボタンが設けられていたりといったこともない。

 SIMカードスロットはnanoSIMカードが2枚挿せるデュアルSIM仕様で、DSDVにも対応する。

 2枚目のSIMカードの代わりにmicroSDカードなどを取り付けることはできないため、内蔵ストレージ容量は購入時の128GB、または256GBが上限となる点は注意が必要だ。

本体側面はマットな質感の金属フレームで、右側面は電源ボタンのみ
左側面は大きめのボリュームボタンが配置されている
外部インターフェイスはUSB Type-Cで、SIMカードスロットも本体下部にある
本体上部はマイクのみ、サイドフレームにはアンテナラインがあるが本体カラー同色にまとめられている
SIMカードスロットはピンで取り出すタイプ、スロットの両面にnanoSIMカードが取り付けできる
カメラ部の出っ張りは大きめ

 実際の使用感についても、フラグシップモデルほどのパワーはないが、ブラウジングのスクロールは可変リフレッシュレートも相まって非常にスムーズ。動作全般で引っかかりを感じることもなく、複数のアプリの切り替えや軽いゲームであればまずストレスを感じることはない。

 6.55型と比較的大型のディスプレイを搭載しているが、サイドフレームの質感や仕上げのおかげで持ちやすくもあり、性能と相まって使っていて「ちょうどいい」と感じられる。

 強いてだめ出しをするならば、おさいふケータイ(FeliCa)に対応しない点や5Gの対応バンドにNTTドコモのn79が含まれていないことなどが挙げられるが、前者はバーコード決済アプリやGoogle PayのNFCでのタッチ決済で代用したり、後者も5Gエリアの広さと実効速度で考えれば極端に通信速度が遅くなるわけでもないため、実用上そこまで困ることはないだろう。

 ソフトウェアも独自の「Nothing OS」を搭載しているが、これは独自OSではなくAndroidに独自のUIを被せただけのものと言ってもいいだろう。

 またカスタマイズの範囲も少なく、基本的にはAOSPやGoogle PixelのようなピュアAndroidに近いため、操作に際してAndroidのお作法が通用しないようなこともない。

 Nothing Phone (1)は特徴的な背面に注目が集まっているが、スマートフォンとしての基本の部分の完成度も高いため、見た目に惹かれ購入しても大きな不満を感じないだろう。

特徴的なフォントはロック画面の時計にも使われている
ホーム画面は独自のNothing Launcher
プリインストールアプリはかなり少ない
UIのカスタムはトグルスイッチの一部など、基本的にはピュアAndroidだ
設定画面などにも特徴的なフォントが使われている場所がある
ネットワーク設定で5G SAの項目があるが実際に使えるかは不明だが期待したい
5G SAのみ/NSAのみ/両方を利用といった設定も行える
今回のレビュー機は上位SKU、RAM12GBのモデルだった
GeekBench 5の結果はシングル822/マルチ3063、ミッドレンジのSocとしては十分な性能だろう

特徴的な背面LED「Glyphインターフェイス」は何が行えるのか

 スマートフォンとしての素性の良さがわかったところで、Nothing Phone (1)の最も特徴的な背面デザイン、その中でもLEDイルミネーションの「Glyphインターフェイス」を深掘りしていく。

Glyphライトの点灯時はLEDの粒も見えず美しい光り方をする

 「Glyphインターフェイス」のライン上に仕込まれたLEDの数はなんと974個と、1,000個近いミニLEDが使われている。

 そのため発光時にLEDの粒がわかってしまうような光り方はせず、非常に美しいイルミネーションを楽しむことができる。

 この特徴的な「Glyphインターフェイス」だが、まず点灯するタイミングは「着信時」と「充電時」、それとビデオ撮影時の定常光として点灯させることもできる。

設定からLEDをオフにすることもできる
プリセットされた10曲の着信音それぞれに点灯パターンが用意されている

 点灯パターンは現時点ではユーザー側でカスタマイズすることはできず、プリセットされている着信音にあわせ、それぞれに合わせた点灯パターンが自動的に選択される。

 ここは是非、今後のアップデートでユーザー自身で点灯パターンのカスタマイズができるようになってほしい部分だ。

 Glyphインターフェイスのおもしろい機能としては「Flip to Glyph」がある。

 これはNothing Phone (1)をディスプレイ面を下にして置くことで、着信や通知をGlyphインターフェイスの点灯でお知らせしてくれる機能だ。

 他社のスマートフォンでも同様に画面側を伏せるように置くことでバイブレーションなどをオフにする機能はあるが、通知LEDの多くはディスプレイ面に設けられていることが多く、一切の着信に気づけないという弱点がある。

 これは筆者の経験談だが、作業に集中したくスマートフォンを伏せバイブレーションなどもオフになった状態にし、しばらくしてから着信と通知を確認したところとんでもない数の着信にゾッとしたことがある。

 Nothing Phone (1)であれば背面のGlyphインターフェイスの発光で音とバイブレーションがオフでも着信や通知を把握することができるため、あまりにも高頻度で点灯する場合には先に連絡を確認しておこうといった動機付けになるはずだ。

総じて描写力の高いカメラ、超広角の色味にだけは注意したい

 続いてNothings Phone (1)のカメラをチェックしていく。

 Nothing Phone (1)のカメラは広角+超広角の2眼構成で、どちらも5,000万画素のセンサー搭載されている。

 広角側にはソニーの「IMX766」にF1.88の明るいレンズを、超広角側にはサムスンの「JN1」にF2.2のレンズを組み合わせている。

 またNothing Phone (1)は上に書いた通り5,000万画素のセンサーを搭載しているが、標準モードでは集光性能をあげるべく隣合った4画素を1画素として扱う4in1ピニングが行なわれ、1,200万画素での撮影となる。

 今回の作例についても特に明記しない限り、1,200万画素モードで撮影を行なっている。

 まずは日中の作例から。

鮮やかな夏空のグラデーションに注目してほしい
超広角側では暖色に振れる傾向がある、葉の色などはわかりやすい
ビル影から煽りで撮影したが暗部が潰れるといったこともない
高層ビルの撮影などダイナミックな絵を撮れるのは超広角カメラならではだろう

 気温は35℃を超すような晴天での撮影となり、被写体に明るさを合わせると空が白飛びしないかと不安になったが、しっかりと濃淡まで描写できている。

 ビル影から煽りで撮影した場合も同様に、暗部が潰れる/空が白飛びするといったことはなく、ビルの複雑なディテールまでくっきりと描写してくれている。

 少し気になったのは広角と超広角とでホワイトバランスの違いがあることだ。イメージセンサーのメーカーが違うこと、レンズの明るさが違うことなど理由はいくつか考えられるが、できればここは色を揃えてほしい。

 続いては屋内での作例を。広角、超広角、そしてデジタル2倍ズームの3つをチェックしていく。

屋内の暗い場所でもブレることなく撮影ができた
広角カメラと画素数が同じなので解像度は超広角でも高い
2倍デジタルズームでも細いネットやレリーフのディテールをしっかり捉えている

 肉眼ではかなり暗いと感じる場所なのだが、撮影した写真は明るく、そしてブレていない。またデジタルズーム時も2倍程度であればディテールはしっかりと残っており鮮明だ。

 Nothing Phone (1)に50mm以上の望遠レンズを搭載していない点が気になる人もいるだろうが、普段のスナップでデジタルズームを使う限りならそこまで問題にならないだろう。

 夜景についても手持ち撮影でかなりキレイに撮影することができる。拡大してもノイズは目立たず、イルミネーションのLEDの粒までハッキリと描写してくれた。

手持ちでもブレなく夜景の撮影が可能だ
超広角での夜景撮影はオレンジ被りが気になる

 ただ、日中の作例でも触れたように広角と超広角でのホワイトバランスの違いが特に夜景では目立ち、イルミネーションなど光を楽しむような風景を撮る際には、超広角側ではオレンジ被りが気になるかもしれない。

 またスマートフォンのカメラに期待したいのは食事の撮影が、どれだけ美味しそうに撮れるかだろう。

キンキンに冷やされた島オクラの瑞々しさが伝わるだろうか
沖縄そばナポリタンのこってりとした感じもバッチリ

 屋内での撮影、それも飲食店では照明の光量が不足することも多く、スマートフォンによってはシズル感の足りない写真になってしまうことも珍しくない。

 Nothing Phone (1)での食事の撮影はその点は問題なし。

 作例の通り、島オクラの瑞々しさも沖縄そばナポリタンのコッテリ具合も美味しそうに捉えられている。

 最後に1,200万画素モードと5,000万画素モードでの作例を。左が1,200万画素モード、右が5,000万画素モードだが、パッと見での差はほとんどないことが分かる。

1,200万画素モードで撮影
5,000万画素モードで撮影

 等倍まで拡大すると5,000万画素モードで撮影した方がディテールがハッキリしている部分もあるが、Nothing Phone (1)の画面で見たりSNSへアップする程度ではわからない。

 またファイルサイズも倍以上になるため、基本的には1,200万画素モードでの撮影を行なうのがいいだろう。

 Nothing Phone (1)のカメラは十分にキレイに撮影できるのだが、撮影モードの種類も豊富な点もぜひ紹介したい。

エキスパートモードではさまざまな設定をマニュアルで設定して撮影できる
撮影モードの種類も多いため、使いこなせれば楽しいだろう

 エキスパートモードではシャッタースピードなどを設定することもでき、保存形式としてRAWデータを記録するようにもできる。

 マクロモードや動画のタイムラプス撮影もできるため、ちょっと手の込んだ撮影に挑戦することも可能だ。

奇抜な見た目以上に基本がしっかりした1台

 透明の背面にLEDイルミネーションと、個性的な見た目がまず第一に気を惹くNothing Phone (1)だが、見た目と違い中身はかなり堅実に作られたスマートフォンだ。

 最近のスマートフォンといえば、安価でも十分に動くものを選ぶか、高価だが特に撮影機能に振った機種が多い中で、見た目という個性で勝負してきたのもおもしろいといえるだろう。

 もちろんNothing Technologyとしては1台目のスマートフォンなので所々に気になる部分はあるが、レビュー期間中だけでも2度のソフトウェアアップデートが行なわれたり、長期間に渡りソフトウェアアップデートを行なうことも発表されているなど、初物に対する不安のようなものはあまりない。

 普通に使えるスマートフォンで、周りとは違う個性がほしい人、また昔々スケルトンボディの携帯ゲーム機に憧れた人であれば是非手に取ってほしい1台だ。