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デルの重量1kg切り13.3型モバイルノート「Latitude 7330 Ultralight」を試す

デル「Latitude 7330 Ultralight」

 デルが発売する法人向けモバイルPC「Latitude 7330 Ultralight」は、デルの法人向けノートPCとして初めて1kgを切る軽さを実現しており、Latitude 7330シリーズの中でもプレミアムモデルとして位置付けられている。また、日本のビジネスユーザーからのフィードバックをもとに開発されたとのことで、軽量モバイルPCの需要が大きい日本市場を強く意識した製品となっている。すでに発売中で、8月17日現在の直販価格は22万725円から。

マグネシウム合金を採用し、堅牢性を損なうことなく軽量化を実現

 Latitude 7330 Ultralightの最大の特徴となるのが、デルの法人向けノートPCとして初めて1kgを切る軽さを実現している点だ。公称の重量は967gからとなっている。試用機は仕様が最小構成ではないこともあり、実測の重量は981gだったが、それでも1kgを切っていた。

 日本で発売されている13型モバイルノートPCとしては1kgを切る軽さを実現する製品が数多く登場しているが、デルのようなグローバルメーカーの製品でこの軽さを実現するのはめずらしい。

 実際に本体を手にすると、その軽さを十分に実感できる。もちろん、より軽量な競合製品と比べると重いのは事実だが、1kg前後という重量は13型クラスのモバイルノートPCとして納得できる軽さなのは間違いなく、軽快に持ち歩けると考えていいだろう。

 Latitude 7330 Ultralightでは、この軽さを実現するためにボディ素材としてマグネシウム合金を採用している。同じLatitude 7330シリーズの他モデルでは、ボディ素材にカーボンファイバーやアルミニウム合金を採用しているが、それらと比べて160g以上の軽量化を実現している。

 また、軽量化を実現するだけでなく、堅牢性もシリーズ同等となっている。耐加圧や耐落下などの具体的な指標は公表していないものの、社内基準の堅牢性テストをクリアしているとのことで、モバイルノートPCとして申し分ない堅牢性を実現。実際に、本体やディスプレイ部をやや強くひねってみても十分な強度を実感でき、安心して持ち運べると感じる。

 本体デザインは、デルの法人向けノートPCとして標準的なものとなっているが、法人向けPCでよく見られる安っぽさは感じられない。天板は強度を高める意味もあり、わずかに弓形に湾曲しているが、側面は直線的で、落ち着いた印象。デルのロゴはやや目立つものの、派手な印象もなく、どのようなビジネスシーンにも違和感なく溶け込みそうだ。

 サイズは306.5×199.95×16.96mm(幅×奥行き×高さ)。13型クラスのモバイルノートPCとして申し分ないコンパクトさとなっている。

ディスプレイを開いて正面から見た様子
試用機の重量は実測で981gと最小構成重量は上回っていたが、それでも1kg切りを実現していた
天板。デザインはシンプルだが安っぽい印象はない。ボディ素材にマグネシウム合金を採用することで、1kgを切る軽さと優れた堅牢性を確保している
正面
左側面
右側面
背面
底面。フットプリントは306.5×199.95mm(幅×奥行き)と、13型クラスのモバイルノートPCとして十分にコンパクトだ

第12世代Core i5搭載で、性能面も申し分なし

 Latitude 7330 Ultralightでは、CPUに第12世代Coreプロセッサを採用。試用機ではCore i5-1245Uが搭載されていた。高性能コアの「P(Performance)コア」を2コアと、高効率コアの「E(Efficient)コア」を8コア内蔵し、10コア/12スレッド処理に対応しており、優れたマルチスレッド処理性能を備えるとともに消費電力も低減し、長時間のバッテリ駆動を実現する。

 また、Core i5-1245Uは「インテルvProプラットフォーム」にも対応。法人向けPCでは、管理者によるPCの管理が容易に行なえることも重要な要素となるが、vPro対応によって管理者が容易にリモート管理できるため、企業にとっても導入しやすいモデルと言える。

 そのほかのスペックも、ビジネスモバイルPCとして申し分ないものとなっている。以下の表にまとめたのがLatitude 7330 Ultralightの主な仕様だが、メモリは16GB、内蔵ストレージは容量256GBのSSDと、必要十分なものとなっている。カスタマイズでより大容量の内蔵ストレージを搭載することも可能なので、必要に応じて選択すればいいだろう。

 なお、試用機ではOSにWindows 11ライセンス付きのWindows 10 Proがインストールされていたが、Windows 11 Proの選択や、英語版Windowsも選択可能となっている。

【表1】Latitude 7330 Ultralight(試用機)の主なスペック
プロセッサCore i5-1245U
Pコア:2コア/4スレッド、ブースト時最大4.4GHz
Eコア:8コア/8スレッド、ブースト時最大3.3GHz
合計スレッド数:12
メモリ16GB
内蔵ストレージ256GB PCIe 3.0 SSD
ディスプレイ13.3型液晶、1,920×1,080ドット、非光沢
無線LANWi-Fi 6
BluetoothBluetooth 5.2
キーボード日本語、キーピッチ18.05mm、キーストローク約1.5mm
カメラ720p Webカメラ、プライバシーシャッター搭載
生体認証なし
インターフェイスThunderbolt 4×2、USB 3.2、HDMI、オーディオジャック
OSWindows 10 Pro(Windows 11ライセンス付き)
バッテリ容量41Wh
駆動時間非公開
サイズ/重量306.5×199.95×16.96mm(幅×奥行き×高さ)/967gから

13.3型フルHD省電力液晶ディスプレイを搭載

 ディスプレイは、1,920×1,080ドット表示対応の13.3型液晶を採用。この液晶パネルは、パネルの種類は非公開となっているが、Ultralightモデルということで超軽量パネルを採用しているという。また、超低電力パネルとなっているため、消費電力も低減されている。

 視野角は水平、垂直ともに申し分ない広さで、視点を大きく移動させても明るさや色合いの変化はほとんど感じられない。発色性能は、sRGBカバー率100%で、コントラスト比600:1、輝度は最大400cd/平方mとなっており、明るく鮮やかな発色を実現。写真や動画を表示しても、十分に鮮やかに表示されるため、写真や動画の編集にも耐えると感じる。

 また、パネル表面は非光沢処理が施されており、外光の映り込みも気にならない。法人向けということもあり、非光沢液晶という点もポイントが高い。

1,920×1,080ドット表示対応の13.3型液晶を採用。パネルの種類は非公開だが、視野角の広さはIPSレベル。表面は非光沢処理で外光の映り込みは気にならない
sRGBカバー率100%、コントラスト比600:1と、ビジネスモバイルPCのディスプレイとしてはなかなかの発色性能を備えており、写真や動画も鮮やかに表示できる
ディスプレイは180度開くため、対面プレゼンなどにも便利だ

キーボードはフルピッチに届かないものの操作性は悪くない

 キーボードは、キーの間隔が開いたアイソレーションタイプの日本語キーボードを搭載している。主要キーのキーピッチは18.05mmとフルピッチには届いていない。また、Enterキー付近の一部キーはややピッチが狭くなっている。それでも、配列は標準的なこともあり、実際に操作してみるとそこまで窮屈と感じることはなく、タッチタイプも問題なく行なえた。

 キーストロークは約1.5mmを確保。タッチはやや硬めで、クリック感もしっかりしているため、少し強めの力でタイピングを行なう必要があると感じた。ただ、打鍵音は十分に静かなため、強めの力でタイピングしても打鍵音がうるさく感じることはなく、静かな場所でも安心してタイピングできる。

 ポインティングデバイスは、クリックボタン一体型のタッチパッドを搭載。面積は申し分ない広さで、ジェスチャー操作も含めて快適に操作できる。また、キーボードのホームポジションを中心に搭載されており、その部分でも操作性が高められていると感じる。

アイソレーションタイプの日本語キーボードを搭載。配列は標準的で、タッチタイプも問題なく行なえる
主要キーのキーピッチは18.05mmとフルピッチには届いていないが、タイピングしてみるとそれほど窮屈には感じなかった
ストロークは約1.5mmを確保。タッチはやや硬めで、しっかりとしたクリック感もあり、強めの力でしっかりタイピングする印象
Enterキー付近の一部キーはピッチが狭くなっているが、慣れれば大きな問題はないと感じた
クリックボタン一体型のタッチパッドは、十分面積が広く扱いやすい。キーボードのホームポジションを中心に搭載している点もうれしい

シリーズに搭載されるセキュリティ機能が省かれている点は残念

 拡張ポートは、左側面にThunderbolt 4とオーディオジャックを、右側面にThunderbolt 4、USB 3.0、HDMIの各ポートを用意。豊富なポートが用意されているわけではないが、ビジネスモバイルPCとして必要十分で、拡張性に不満を感じることはないだろう。

 通信機能は、Wi-Fi 6とBluetooth 5.2を標準搭載。前者はハードウェア的にはWi-Fi 6Eもサポートしているが、現時点で日本国内では利用できない。

 テレワーク向けの機能としては、AI処理によりマイク音声や相手の音声からノイズを除去するノイズキャンセリング機能、Web会議アプリに最大限のネットワーク帯域幅を与える機能、無線LANと有線LANの同時利用でネットワーク帯域を高める機能などを用意している。

 ところで、Latitude 7330 Ultralightでは、軽さを優先するために、シリーズで搭載されている機能のいくつかが省かれている。

 たとえば、LTE対応のワイヤレスWANモジュールがオプションで用意されているが、Latitude 7330 Ultralightには搭載できない。同様に、生体認証機能としてWindows Hello対応の顔認証用IRカメラと指紋認証センサーがオプションとして用意されているが、Latitude 7330 Ultralightではいずれも非搭載だ。

 また、背後からの覗き見を検知したら画面にぼかしを入れるなどの画面保護機能を提供する「Intelligent Privacy」が利用できる点も、Latitude 7330の特徴の1つとなっているが、Ultralightでは顔認証用IRカメラが非搭載となるため非対応だ。

 こういった機能を利用するには、重量が増える他モデルを選択する必要がある。ワイヤレスWANについては不要という場合も多いかもしれないが、セキュリティ機能が省かれている点は、法人向けモデルと考えても残念な部分だ。できれば、セキュリティ機能を搭載したうえで1kg切りの軽さを実現してもらいたかったように思う。

 付属のACアダプタはUSB Type-C接続で出力は65W。左右どちらのUSB4に接続しても給電が可能だ。サイズはそれほどコンパクトではなくややかさばるうえに、付属の電源ケーブルも太く重い。なお、付属ACアダプタの実測の重量は電源ケーブル込みで306.5gだった。

左側面にはThunderbolt 4とオーディオジャックを配置
右側面にはThunderbolt 4、USB 3.0、HDMIを配置
ディスプレイ上部中央には720p対応のWebカメラを搭載。顔認証用IRカメラは搭載しない
Webカメラにはプライバシーシャッターを搭載する
AI処理でマイク音声や相手の音声からノイズを除去するノイズキャンセリング機能を搭載
Web会議アプリに最大限のネットワーク帯域幅を与える機能、無線LANと有線LANの同時利用でネットワーク帯域を高める機能も用意される
付属ACアダプタは出力65Wで、USB Type-C接続仕様
付属ACアダプタの重量は、電源ケーブル込みで306.5g。サイズも大きく本体との同時携帯には、ややかさばる印象だ

ビジネスモバイルPCとして申し分ない性能。駆動時間はやや短め

 では、ベンチマークテストの結果を紹介しよう。今回利用したベンチマークソフトは、UL LLCの「PCMark 10 v2.1.2563」、「3DMark Professional Edition v2.22.7359」、Maxonの「Cinebench R23.200」の3種類だ。

 なお、テスト時には独自ツール「Dell Optimizer」を利用し、温度管理の設定を、CPUの処理能力がフルに発揮される「ウルトラパフォーマンス」に設定して行なっている。結果は下にまとめた通りで、比較用としてCPUにCore i5-1145G7搭載のレノボ「ThinkPad X1 Carbon Gen9」の結果も加えてある。

テストは、「Dell Optimizer」の温度管理の設定を、CPUの処理能力がフルに発揮される「ウルトラパフォーマンス」に設定して行なった
【表2】各PCの主なスペック
Latitude 7330 UltralightThinkPad X1 Carbon Gen9(比較用)
Core i5-1245U(10コア/12スレッド)Core i5-1145G7(4コア/8スレッド)
Iris Xe Graphics(CPU内蔵)Iris Xe Graphics(CPU内蔵)
16GB DDR4-320016GB LPDDR4x-4266
256GB PCIe 3.0 SSD256GB NVMe SSD
Windows 10 Pro(Windows 11ライセンス付き)Windows 10 Home
ベンチマーク結果(PCMark 10)
ベンチマーク結果(3DMark Professional Edition)
ベンチマーク結果(Cinebench R23.200)

 結果を見ると、PCMark 10やCinebench R23.200のスコアは、ほとんどの項目で比較用のThinkPad X1 Carbon Gen9のスコアを上回っている。このことから、第12世代Coreプロセッサの性能の高さが伝わってくる。ただ、3DMarkの結果についてはThinkPad X1 Carbon Gen9のスコアを下回っている。とはいえ、ビジネスモバイルPCとして十分なスコアであり、一般ビジネス用途をメインターゲットとするLatitude 7330 Ultralightでは、この点が問題となることはないだろう。

 テスト時のCPUクーラーの動作音は、風切り音がしっかりと耳に届くものの、うるさいと感じるほどではなかった。また、Dell Optimizerで温度管理の設定を「最適化済み」に設定しておけば、CPU性能はやや落ちるものの、高負荷時でもCPUクーラーの動作音はかなり静かとなる。作業内容と利用場所に応じて温度管理設定を変更しつつ利用すれば、性能と動作音のバランスを保てるだろう。

 続いてバッテリ駆動時間だ。Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を50%、無線LANをオンに設定し、PCMark 10のBatteryテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」を利用して計測してみたところ、7時間32分を記録した。

 Latitude 7330 Ultralightでは、軽さ重視で容量41Whの軽量バッテリを搭載している。そのため、重量が重く大容量バッテリを搭載する他モデルと比べてやや駆動時間が短くなっているようだ。ただ、テストで7.5時間ほどの駆動時間が確認されていることから、よほど高負荷な作業を続けない限り、短時間でバッテリが尽きてしまうことはないはずだ。ただ、1日外出して長時間利用する場合には、ACアダプタを同時に持ち歩いた方が安心だろう。

軽さを重視したいなら選択肢として十分考慮できる

 Latitude 7330 Ultralightは、デルの法人向けノートPCとして初めて1kgを切る軽さを実現した軽量ビジネスモバイルPCだが、実際に試用してみると、確かにデルのノートPCとしては圧倒的に軽いことを実感できた。

 ただ、軽さ優先のため、セキュリティ機能やバッテリ駆動時間など、犠牲になっている部分がある点は少々気になる。特に生体認証機能が省かれる点は、法人向けノートPCとして残念な部分だ。とはいえ、重量は200gほど増えるものの、シリーズの他モデルであれば、生体認証機能や大容量バッテリを搭載できるため、そういった欠点も解消できる。

 このようなことからLatitude 7330 Ultralightは、そういった部分に目をつむりつつ、最大限軽さを追求したモデルと言っていいだろう。とはいえ、軽さと堅牢性を両立している点や、優れたCPU性能など、全体的な仕様は十分に優れるため、軽さを追求したビジネスモバイルPCを探しているなら、選択肢として十分考慮に値すると言える。