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20時間駆動でたった1,005g!実用モバイルノート「ExpertBook B9400CBA」をレビュー
2022年8月18日 11:00
ASUSは、ビジネスモバイルPC「ExpertBook B9」シリーズの新モデル「ExpertBook B9 B9400CBA」を発表した。従来モデル同様に、14型ディスプレイ搭載ながら軽量モデルでは約880gという軽さと、優れた堅牢性を両立しつつ、CPUに第12世代Coreプロセッサを採用することで、性能面が大きく強化されている。
今回、CPUにCore i7-1255Uを採用し、容量66Whの大容量バッテリを搭載する上位モデルをいち早く試用する機会を得たので、ハード面を中心に紹介する。ExpertBook B9シリーズは8月18日より発売され、価格は19万9,800円から。今回試用した最上位モデルのB9400CBA-KC0218WSの価格は39万9,800円。
大容量バッテリ搭載の上位モデルでも約1kgの軽さ
ASUSのノートPCといえば、天板に同心円状のヘアライン処理が施されるZenBookシリーズなど、デザイン性重視のモデルがおなじみだ。
それらと比較するとExpertBook B9 B9400CBA-KC0218WS(以下、B9400CBA)は、モバイルノートPCとしてオーソドックスなデザインで、ボディカラーにStar Blackと呼ばれるマット調のブラックを採用、ヘアライン処理などの派手な装飾もないため、どちらかというと比較的落ち着いた印象となっている。これは、ExpertBook B9シリーズがビジネスモバイル用途をメインターゲットとしていることが大きく影響していると思われる。
ただ、落ち着いた印象とは言っても、樹脂ボディのマシンのような安っぽい印象は皆無で、デザインや質感に不満を感じることはないだろう。
本体サイズは、320×203×14.9mm(幅×奥行き×高さ)となっている。14型ディスプレイを搭載してはいるが、4辺狭額ベゼル仕様となっていることもあり、14型ノートPCとしてトップクラスのコンパクトさを実現している。
そして、重量は最軽量モデルで約880gと900gを切る軽さを実現。今回試用したB9400CBAは大容量バッテリ搭載の上位モデルということもあり、重量は公称で約1,005g、実測で1,019gだったが、それでもモバイルノートPCとして申し分ない軽さだ。実際に手に持ってみても、片手で軽々と持てる印象で、この重量なら毎日持ち歩くとしても苦にならないと感じる。
合わせて、この軽さでもビジネスモバイルPCとして十分な堅牢性も兼ね備えている。天板にはマグネシウムリチウム合金、底面にマグネシウム合金と、軽さと強度を兼ね備える素材を採用。これにより、落下や圧力、振動などASUS独自基準のさまざまな堅牢性テストをクリアするだけでなく、米国国防総省調達基準「MIL-STD-810H」に準拠する複数の堅牢性テストもクリアしている。これなら、安心して屋外に持ち出せるだろう。
第12世代Coreプロセッサ採用に加え、基本スペックも充実
B9400CBAのもう1つの特徴がスペック面だ。
冒頭でも紹介しているようにB9400CBAシリーズでは、CPUに第12世代Coreプロセッサ、Core i7-1255Uを採用。高性能コアの「P(Performance)コア」を2コアと、高効率コアの「E(Efficient)コア」を8コアの10コア/12スレッド処理に対応。従来よりも優れたマルチスレッド性能を発揮し、大きく処理能力が高められている。また、低負荷時には省電力コアのEコアを積極的に利用することで消費電力を低減し、長時間バッテリ駆動も可能となっている。
そして、CPUだけでなく、メモリや内蔵ストレージといったスペックも非常に充実している。
以下の表1にまとめたのが、今回試用した最上位モデルB9400CBA-KC0218WSの主なスペックだが、これを見ると分かるようにメモリは32GB、内蔵ストレージは容量2TBのPCIe 4.0 SSDを2基、合計4TB搭載と、競合のモバイルノートPCを圧倒する贅沢な仕様を実現。最上位モデルということもあるが、ビジネスモバイルノートPCとして飛び抜けたスペックを実現している点も、大きな特徴と言える。
【表1】ExpertBook B9 B9400CBA-KC0218WS(試用機)の主なスペック | |
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プロセッサ | Core i7-1255U Pコア:2コア4スレッド/ブースト時最大4.70GHz Eコア:8コア/ブースト時最大3.50GHz スレッド数:12 |
メモリ | 32GB |
内蔵ストレージ | 2TB PCIe 4.0 SSD×2 |
ディスプレイ | 14型液晶、1,920×1,080ドット、非光沢 |
無線LAN | Wi-Fi 6 |
Bluetooth | Bluetooth 5.2 |
キーボード | 日本語、約19mmフルピッチ、 キーストローク約1.5mm、キーボードバックライト |
カメラ | 720p Webカメラ、プライバシーシャッター搭載 |
生体認証 | Windows Hello対応顔認証カメラ、指紋認証センサー |
インターフェイス | Thunderbolt 4×2 USB 3.1 HDMI 2.0b 専用有線LANアダプタ用コネクタ オーディオジャック |
OS | Windows 11 Home |
駆動時間 | 最大16時間 |
サイズ/重量 | 320×203×14.9mm(幅×奥行き×高さ)/約1,005g |
ディスプレイは14型フルHD液晶を採用
ディスプレイには、1,920×1,080ドット表示対応の14型液晶を採用。パネルの種類はIPSで、申し分ない視野角を確保している。ディスプレイ表面は非光沢処理となっており、外光の映り込みは少なく、文字入力作業も快適に行なえる。
輝度は最大400cd/平方m、発色性能はNTSCカバー率72%と、ビジネスモバイルPCのディスプレイとしては標準的な仕様。表示性能は広色域パネル採用のノートPCに及ばないものの、実際に写真や動画を表示してみても、特に不満のない鮮やかな発色と感じる。プロのクリエイターなどは物足りないかもしれないが、ビジネスモバイルPCとしては不足ない表示性能を備えていると言える。
このほか、ディスプレイ部はヒンジが180度開く構造となっている。そのため、対面でのプレゼン時でもディスプレイを水平まで開いて相手に見せられるため、その点も便利だ。
キーボードは暗所でも快適に入力でき、液体が侵入しづらい設計
キーボードは、キーの間隔が開いたアイソレーションタイプの日本語キーボードを搭載する。主要キーのキーピッチは約19mmフルピッチで、キーストロークは約1.5mm。打鍵感は比較的柔らかめだが、クリック感が強めとなっていることから、しっかり押し込むような感覚でタイピングできる印象。標準でキーボードバックライトを内蔵しているため、暗い場所でも軽快な入力が可能だ。
また、従来モデルから引き続き、リフトアップヒンジ構造を採用。ディスプレイを開くとヒンジ部が本体後方を持ち上げ、キーボード面に適度な角度がつくようになっている。この構造も、快適なタイピングにつながっている。
面白い機能としては、数字の1~4にFnキーとの同時押しでショートカットを割り当てる機能を用意。専用ユーティリティを利用することで、各種設定メニューや任意のアプリ、指定したフォルダやURLを開く、といったコマンドを登録できる。操作性を高める機能として活用できそうだ。
このほか、キーボード面に液体をこぼしても内部に侵入しづらい構造を採用。最大330mlの液体に耐え得るという。万が一キーボード面に液体をこぼしても、安全にシャットダウンが行なえる時間を稼げるので安心だ。
キー配列は標準的で、特に無理のあるキー配置は見られない。ただ、スペースキー左右の[無変換][変換]キーと、Backspaceキー左の[¥]キーが、間隔を空けずに配置されている点は気になる。また、[¥]キーを含め、Enter付近の一部キーのキーピッチが極端に狭くなっているのも残念だ。
おそらくこれは、英語配列キーボードをベースとして日本語化しているからと思われる。日本語キーボード開発にコストがかかるのは分かるが、できればしっかりとした日本語キーボードを搭載してもらいたいと思う。
ポインティングデバイスは、クリックボタン一体型で、テンキー機能を内蔵するASUSオリジナルの「NumberPad」を採用。タッチパッド右上角を長押しするとバックライトが点灯しテンキー機能が有効となる。また、テンキー機能を有効にしている状態でもタッチパッドとしての操作は可能だ。
タッチパッド自体は非常に面積が広く、ジェスチャー操作も含めて操作性は非常に良好だ。ただ、搭載位置が本体の中央となっていることで、キーボードのホームポジションからやや右に寄った位置に搭載されている。デザイン的に本体中央に搭載していると考えられるが、できればキーボードのホームポジションを中心として搭載してもらいたいと感じる。
充実したセキュリティ機能やテレワークに便利な機能も搭載
用意される拡張ポートは、左側面にThunderbolt 4×2、HDMI、付属の有線LANアダプタ専用ポートを、右側面にオーディオジャック、USB 3.1の各ポートを用意。数や種類は必要十分で、拡張性は満足できる。付属の有線LANアダプタはGigabit Ethernet対応となる。
通信機能は、Wi-Fi 6準拠無線LANとBluetooth 5.2を標準搭載。無線LANは、ハードウェア自体はWi-Fi 6Eをサポートしているが、現時点では日本では利用できない。ワイヤレスWANは非搭載。
生体認証機能は、Windows Hello対応の顔認証カメラと指紋認証センサーを同時搭載している。利用状況に応じて双方を使い分けられるのはありがたい。また、独自アプリ「ASUS Business Manager」を利用し、USBポートの動作を制限したり、レジストリ編集や日時変更のロック、内蔵ストレージの暗号化、システムの復元といったセキュリティ機能を提供。ASUS Business Managerは起動にパスワードをかけてロックできるのはもちろん、リモートサポートにも対応しているため、管理者がクライアントPCを管理しやすくなるだろう。
Webカメラは、720p対応のカメラを搭載。カメラを物理的に覆うプライバシーシャッターを搭載しているため、不要な時にはプライバシーシャッターを閉じることでセキュリティを高められる。
テレワークに便利な機能としては、AIノイズキャンセリング機能を従来モデルから引き続き搭載。内蔵マイクで拾った音声からAI処理で周辺ノイズを除去できる。また、Web会議などで相手から届く音声についてもノイズを除去できるため、非常に快適だ。
付属のACアダプタはUSB Type-C接続で、出力は65W。サイズはあまり小型ではなく、付属の電源ケーブルも太く重いため、本体との同時携帯には向かない印象。もちろん、汎用のUSB PD対応充電器も利用可能なので、別途用意してもいいだろう。
軽量ビジネスモバイルPCとしてトップクラスの性能を確認
では、ベンチマークテストの結果を紹介しよう。今回利用したベンチマークソフトは、UL LLCの「PCMark 10 v2.1.2563」、「3DMark Professional Edition v2.22.7359」、Maxonの「Cinebench R23.200」の3種類だ。
なお、テスト時には独自ツール「MyASUS」を利用し、CPUクーラーの動作モードを、CPUの処理能力がフルに発揮される「パフォーマンスモード」に設定して行なっている。結果は下にまとめた通りで、比較用としてCPUにCore i5-1145G7搭載のレノボ「ThinkPad X1 Carbon Gen9」の結果も加えてある。
【表2】評価機のスペック | ||
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製品名 | ExpertBook B9 B9400CBA | ThinkPad X1 Carbon Gen9 |
CPU | Core i7-1255U(10C/12T) | Core i5-1145G7(4C/8T) |
GPU | Iris Xe Graphics(CPU内蔵) | Iris Xe Graphics(CPU内蔵) |
メモリ | 32GB LPDDR5-5200 | 16GB LPDDR4x-4266 |
ストレージ | 2TB PCIe 4.0 SSD×2 | 256GB NVMe SSD |
OS | Windows 11 Home | Windows 10 Home |
結果を見ると、いずれのテストでも非常に優れたスコアが得られている。比較用のThinkPad X1 Carbon Gen9との比較でも、多くの項目で上回っている。このあたりは、第12世代Coreプロセッサの性能の高さが如実に表れていると言っていいだろう。これだけの性能が発揮されれば、ビジネスシーンで利用するアプリは非常に快適に動作するはずだ。
なお、高負荷時の空冷ファンの動作音は、比較的大きい印象。ゲーミングPCのような爆音というわけではないが、シャーという風切り音がしっかり耳に届く。ただこれは、動作設定を「パフォーマンスモード」に設定していることも影響しているだろう。実際に、Officeなどのアプリを利用している場面では、特にファンがうるさく動作することはほとんどなかったので、高負荷時以外はそれほど動作音が気になることはなさそうだ。
続いてバッテリ駆動時間だ。B9400CBAの公称の駆動時間は約20時間となっている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を50%、無線LANをオン、キーボードバックライトをオフに設定し、PCMark 10のBatteryテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」を利用して計測してみたところ、16時間24分を記録した。
公称を下回る駆動時間が計測されたが、それでも、通常のビジネスモバイルPCとしての利用であれば、12時間は余裕で利用できると考えていいだろう。そのため、外出時でもバッテリ残量をほとんど気にせず利用できるはずだ。
長時間利用でき性能も優れるビジネスモバイルPCとしてお勧め
B9400CBA-KC0218WSは、従来モデルから大きなモデルチェンジを行なっているわけではないが、CPUに第12世代Coreプロセッサを採用することによる性能の強化や長時間のバッテリ駆動、豊富なセキュリティ機能が追加された。さらに、テレワークに便利な機能を搭載することで、ビジネスモバイルPCとしての完成度がさらに高まったと感じる。細かく見ると、キーボードなどに改善してほしい部分も見られるが、それを考慮しても高性能で軽快に持ち運べるビジネスモバイルPCとして優れた魅力を備えている。
もちろん、今回試用したB9400CBA-KC0218WSは、最上位モデルで仕様も贅沢ということもあって、価格は39万9,800円と、そう簡単に手が出せないのも事実だ。ただ、シリーズは19万9,800円から販売されるため、自分が必要とするスペックを満たすモデルを選択すれば、コスト的にも満足できるはずだ。そのため、毎日持ち運んで軽快に利用できるモバイルPCを探しているなら、十分考慮に値する製品としてお勧めしたい。