Hothotレビュー
ファーウェイ初にして尖った仕様の4K+液晶「MateView」を試す
2021年8月26日 06:55
ファーウェイは、同社として初となる液晶ディスプレイ製品を発表した。液晶ディスプレイ初参入ながら、一般事務用途をターゲットとした低価格なフルHDモデルや、ゲーミング用途のワイドモデルなど、当初から幅広い用途のモデルをラインナップ。
そして、最も注目度の高い製品が、今回取り上げる「MateView」だ。今回実機を試用する機会を得たので、MateViewの特徴を紹介していこう。すでに発売中で、直販価格は89,800円。
アスペクト比3:2の28.2型4K+液晶パネルを採用
MateViewの最大の特徴となるのが、アスペクト比3:2の28.2型4K+液晶パネルを採用している点だ。表示解像度は3,840×2,560ドットとなっており、一般的な4Kと比べて縦の解像度が400ドット追加されている。近年、ノートPCではアスペクト比16:10や3:2の縦長ディスプレイを採用する例が増えつつあるが、外付け液晶ディスプレイではまだまだ縦長の製品は少なく、そういった意味でも貴重な存在だ。
実際に利用してみても、やはり縦の情報量が多い点が非常に便利と感じる。Web閲覧はもちろん、ExcelやWordなどのOfficeアプリを利用する場合でも、1度により多くの情報を表示でき、作業効率が高められる。逆に、映像コンテンツを視聴する場合には、上下に非表示の部分ができてしまうものの、4Kコンテンツもクオリティを落とさず表示でき、特に大きな問題ではないはずだ。
【表】MateViewの主な仕様 | |
---|---|
液晶サイズ | 28.2型 |
パネル方式 | IPS方式 |
表示解像度 | 3,480×2,560ドット |
アスペクト比 | 3:2 |
画素ピッチ | 0.155×0.155mm |
表面処理 | アンチグレア |
タッチパネル | なし |
コントラスト比 | 1,500:1(標準) |
輝度 | 500cd/平方m |
表示色 | 約10.7億色(10bitカラー) |
リフレッシュレート | 60Hz |
チルト角度 | 下5度、上18度 |
高さ調節 | 110mm |
スイーベル | なし |
ピボット機能 | なし |
入力端子 | Mini DisplayPort 1.2×1 HDMI 2.0×1 USB Type-C×1(映像入力対応) USB Type-C×1(ACアダプタ接続用、映像入力非対応) |
出力端子 | USB 3.0×2 ヘッドホン出力 |
スピーカー | 5W+5W |
VESAマウント | 非対応 |
電源 | ACアダプタ(135W) |
付属品 | Mini DisplayPort-DisplayPortケーブル USB Type-Cケーブル 専用ACアダプタ |
本体サイズ | 608×182×591~701mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 6.2kg |
画素ピッチは、約0.155mm(164dpi)となる。これは27型4Kパネルと同等で、文字の見え方などは27型4Kディスプレイとほぼ同等と考えていい。等倍表示ではやや文字が小さく見にくいと感じるものの、このあたりはスケーリングを調節することで改善できる。情報量の多さと文字の視認性のバランスをユーザーが自由に調節して利用できるという点は、高解像度ディスプレイの利点だ。
液晶パネルにはIPSパネルを採用。視野角は申し分ない広さがあり、上下左右に大きく視点を移動させても発色や色合いの変化はほとんど感じられない。また、パネル表面は非光沢処理となっているため、天井の照明など外光の映り込みもほとんど感じられない点も嬉しい部分だ。
発色性能は、10bitカラー表示に対応するとともに、DCI-P3カバー率98%、sRGBカバー率100%とされており、申し分ない広色域表示に対応。また、出荷時に全個体でカラーキャリブレーションを行なっているという。合わせて、色差(デルタE)は2未満に抑えられている。コントラスト比は1,200:1、輝度は標準500cd/平方m。発色性能の高さと合わせ、鮮やかかつ正確な発色を期待するユーザーにとっても不安がないだろう。
実際に写真や動画などを表示しても、発色の鮮やかさが実感できる。光沢パネルの液晶ディスプレイのような、ビビッドできつめの発色という感じではないものの、全体的に十分に鮮やかで深みのある発色だ。これなら、写真のレタッチや動画編集でもしっかり色味を確認しながら行なえるだろう。
HDR表示は、VESA DisplayHDR 400をサポートしており、PlayStation 5を接続してHDR表示対応のゲームを表示してプレイしてみたが、明るい場所や暗い場所も潰れることなく表示できていた。リフレッシュレートは最大60Hzで、パネルの応答速度は非公開だが、特に残像を強く感じることもなかった。
狭額ベゼル仕様でシンプルかつスタイリッシュなデザイン
MateViewのデザインは、不要なものをとことんそぎ落とし、必要なものだけを残したといった感じで、とてもシンプルなものとなっている。とはいえ、安っぽさが全く感じられず、逆のそのシンプルな筐体がスタイリッシュにも感じる。同時に、スマートフォンで培ったファーウェイのデザインに対するこだわりも強く感じられる。
正面から見て強く感じられるのがディスプレイ周辺ベゼルの狭さだ。上部および左右のベゼル幅は6mm、やや太い下部でも9.3mmと、いずれもかなり狭められている。正面に対する画面占有率は94%に達しており、正面はほぼ全てが表示領域と感じるほどだ。
また、横から見るとディスプレイ部の薄さも際立って感じるが、ディスプレイ部は奥行きが12.8mmしかない。合わせて、スタンドアームも薄型となっており、こういった部分もスタイリッシュな印象を高める要因となっている。
スタンドには、ディスプレイの高さ調節とチルト角度調節の機構が備わっている。高さは110mmの範囲内で、チルト角度は下5度、上18度(±2度)の範囲内でそれぞれ調節可能。ただし、スイーベルやピボットといった機構は備えないため、機能的にはほどほどと言ったところ。また、ディスプレイ部とスタンドは切り離せないため、VESAマウントに装着しての利用も不可能。このあたりはデザイン性を優先したことによる割り切りと考えていいだろう。
このほか、スタンドアーム前方にステレオスピーカとデュアルマイクを搭載。スピーカーは容量28ccのスピーカーボックスを採用する5Wスピーカーを2個内蔵。外付けの本格的なスピーカーに比べると低音の迫力や高音の伸びは劣るものの、一般的なディスプレイ内蔵スピーカーよりもかなり高音質なサウンドを再生できる。ただ、アーム部に2個のスピーカを内蔵することもあってか、ステレオの広がりは思ったほど感じられなかった。
デュアルマイクは、USB Type-Cで接続したPCから利用でき、Web会議などで活用できる。このマイクはノイズキャンセリング機能を備えるとともに、約4m先の音声もクリアに拾えるという。
本体サイズは、608×182×591~701mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約6.2kg。
接続端子はスタンド下部に集約、電源はACアダプタを採用
接続端子は、スタンドアームの下部背面および右側面に集約されている。背面側には、USB Type-CとMini DisplayPort 1.2、HDMI 2.0の各端子を用意。このうちUSB Type-Cは付属のACアダプタを接続するためのもので映像入力には非対応。映像入力に対応するのはMini DisplayPortとHDMIのみとなる。
右側面にはUSB 3.0×2とUSB Type-C×1、ヘッドホンジャック、電源ボタンを配置している。こちらのUSB Type-CはDisplay Port Alt Modeをサポートしており、映像入力が可能。そのため、MateViewでは後方のMini DisplayPortとHDMI、右側面のUSB Type-Cと3系統の映像入力端子を備えることになる。
また、右側面のUSB Type-Cは接続したPCに最大65Wの電力供給が可能。合わせて、2ポートあるUSB Type-AはUSB Type-C経由でUSB Hubとして利用できるとともに、MateView内蔵のスピーカとマイクもUSB Type-C経由で利用できる。そのため、USB PDおよびDisplayPort Alt Mode対応のUSB Type-Cを備えるPCであれば、USB Type-Cケーブル1本で接続するだけで、映像出力とMateViewのUSBポートに接続した周辺機器、MateViewでのサウンド再生やマイクの利用、電源供給が同時に行なえる。これは、特にノートPCを接続して利用する場合にかなり便利となるだろう。
MateViewでは電源を内蔵しておらず、付属の専用ACアダプタを後方のUSB Type-Cに接続して利用する。本体の極限までの薄型化やシンプルな構造も、電源にACアダプタを利用することで実現したのだろう。
ところで、このACアダプタは出力が135Wで、ファーウェイ独自の「HUAWEI Super Charge」対応。別途、出力100Wの汎用USB PD ACアダプタを接続してみたがMateViewは起動しなかった。できればUSB PD準拠のACアダプタを利用してもらいたかったようにも思うが、MateViewのACアダプタを汎用で利用することはほぼないと思われるため、大きな問題はないだろう。
このほか、製品にはMini DisplayPort-DisplayPortケーブルとUSB Type-Cケーブルも付属する。
タッチセンサーで操作するOSDはやや機能が弱い
ディスプレイの各種設定を行なうOSDは、このクラスのディスプレイとしてはやや機能が弱い印象。用意されているのは、ブルーライトカット、輝度調節、入力切り替え、色域変更など。画質に関する設定項目は、コントラストやシャープネス、色温度の設定のみとなっているが、色温度は標準、暖色、寒色という設定のみで数値での設定が行なえない。またRGBカラーバランス調節機能も用意されない。MateViewは比較的発色性能に優れる製品であるため、このOSDの機能の弱さはかなり残念に感じる。
それでも、OSDの操作性は悪くない。OSDの操作はディスプレイ下部側面に配置されているタッチセンサーバーを利用する。このタッチパーをタップしたり左右にスワイプすることでOSDを操作できるため、かなり直感的な操作が可能。それだけにOSD自体の機能が弱い点がかなり残念だ。ただ、MateViewはインターネット経由でのファームウェアアップデートに対応しているため、今後OSD機能の強化を実現したアップデートの提供を期待したい。
無線LAN内蔵でワイヤレスディスプレイとして利用可能も、スマホでは問題も
MateViewは、アスペクト比3:2の4K+液晶パネルの採用やスタイリッシュなデザインに真っ先に目が行くが、それ以外にも大きな特徴がある。それは、標準でIEEE 802.11ac(2×2)準拠の無線LANやBluetooth 5.1を標準搭載するとともに、スタンド部にNFCを内蔵しており、「HUAWEI Share」対応のファーウェイ製スマートフォンをタッチすると、MateViewに簡単に接続できる「MateViewベース」と呼ばれる機能を備えるという点だ。
実際に、HUAWEI Share対応スマートフォンの「Mate 30 Pro 5G」を利用して試してみたが、スタンドのNFC搭載部にタッチするだけでMateViewと無線接続し、Mate 30 Pro 5Gの映像が表示された。Mate 30 Pro 5Gには、ディスプレイに接続してPCのように利用する「デスクトップモード」を用意しているが、もちろんそちらも問題なく利用できた。これは、対応するファーウェイ製スマートフォンを利用している人にとってかなり魅力的な機能と感じる。
ただし、無線接続で利用する場合にかなり残念な問題もある。それは、表示映像のアスペクト比が崩れるというものだ。どうやら、アスペクト比を無視して映像を全画面に引き延ばして表示しようとするために発生しているようだが、現時点ではアスペクト比の崩れを修正する機能は用意されていない。そのため、せっかくワンタッチで利用できるとしても、まともに利用できない状況となっている。
ちなみに、USB Type-Cケーブルを利用してMateViewとMate 30 Pro 5Gを接続した場合にはアスペクト比の崩れは発生しないため、無線接続時のみに発生する問題のようだ。この点は、今後のアップデートなどで改善を期待したい。
また、ファーウェイ製以外のスマートフォンは、NFC搭載部にタッチしても、NFCタグを読み取るのみで自動接続などは行なえない。これもかなり残念な部分であり、HUAWEI Shareの機能をほかのスマートフォンでも利用できるように拡張してほしいと感じる。
とはいえ、ファーウェイ製以外のスマートフォンやPCをワイヤレスで接続して利用できないわけではない。MateViewのワイヤレスディスプレイ機能はMiracatをベースとしているため、Miarcastに対応するスマートフォンやPCであれば、手動で接続することで無線で映像を表示できる。
PCでは富士通クライアントコンピューティングのノートPC「LIFEBOOK WU2/E3」で試してみたところ、Windows 10のワイヤレスディスプレイ機能から問題なく接続しデスクトップ映像を表示できた。ワイヤレスディスプレイ接続時には、わずかに遅延が発生するとともに、Miracastの制限もあり表示解像度は最大2,160×1,440ドットとなるものの、アスペクト比の崩れもなく利用できた。
スマートフォンでは、Samsungのスマートフォン「Galaxy Note20 Ultra」で試したところ、こちらも問題なく接続して表示が可能だった。Galaxy Note20 Ultraでは、スマートフォンの画面をそのまま表示するのはもちろん、PCのように利用する「DeX」機能も利用できた。しかし、こちらもMate 30 Pro 5G同様に強制的に全画面表示となるためにアスペクト比が崩れて表示される。Note20 Ultra側にアスペクト比を調節する機能が用意されており、ある程度改善することは可能だったが、完全な解消は不可能だった。
なおこちらもUSB Type-C接続であればアスペクト比の崩れなく表示できる。そのため、スマートフォンを接続する場合には、現時点ではUSB Type-C接続で利用すべきだろう。
また、Miracastに対応する全てのスマートフォンが接続できるわけでもないようだ。今回確認した限りでは、ソニーのスマートフォン「Xperia 1 III」では、接続先としてMateViewは見つかるものの、実際に接続しようとするとエラーとなり接続できなかった。多くのスマートフォンで確認したわけではないが、中にはXperia 1 IIIのように接続できない場合もありそうだ。合わせて、Googleのスマートフォン「Pixel 5」などのPixelシリーズはMiracast非対応のためMateViewへのワイヤレスディスプレイ接続は行なえない。
幅広い用途に活用できるスタイリッシュな4Kディスプレイ
MateViewは、スタイリッシュなデザインや、アスペクト比3:2の4K+液晶パネルの採用、無線LANを内蔵し単体でワイヤレスディスプレイ表示が可能と、競合製品にはない特徴を備えた、オリジナリティあふれる製品に仕上がっている。しかも、DCI-P3カバー率98%の広色域表示に対応し、高品質ディスプレイとしても十分な魅力を備えている。
ワイヤレスディスプレイ利用時にアスペクト比が崩れる場合があったり、OSD機能が弱い点など、少々残念な部分も見られる。こういった部分は、ディスプレイ事業に参入したばかりということでのノウハウのなさが影響してのものだろう。ただ、MateViewはファームウェアをアップデートできる仕様となっているため、今後これら問題が改善される可能性もある。そういった部分も、一般的なディスプレイとは異なる特徴と言える。
このように改善点もあるが、ほかにはない機能を備える部分はかなり魅力的で、競合製品と比べて価格はやや高いものの、その価値は十分にあると言っていいだろう。縦長ディスプレイを探している人や、申し分ない発色性能を備える4K超のディスプレイを探している人、デザイン性を重視したディスプレイを探している人にお勧めしたい。