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フルサイズビデオカードを装着できる小型PC「Intel NUC 11 Extreme Kit」。机に置いても邪魔にならない魅力のサイズ

「Intel NUC 11 Extreme Kit」1,150ドル~

 Intel はCPUに第11世代Coreを採用し、好みのビデオカードを装着可能なベアボーンキット「Intel NUC 11 Extreme Kit」(コード名:Beast Canyon)を7月29日(米国時間)に発表した。第3四半期に提供開始予定で、Core i7搭載モデルが1,150ドルから、Core i9搭載モデルが1,350ドルからの価格帯で販売される。

 今回発売前の実機をIntelより借用したので、メンテナンスのしやすさ、パフォーマンスと静音性などを中心にレビューしていこう。

CPUは第11世代(Tiger Lake)のCore i9/i7を採用

 「Intel NUC 11 Extreme Kit」には、第11世代(Tiger Lake)のCore i9-11900KB(8コア16スレッド、3.3~5GHz、65W)を搭載した「NUC11BTMi9」、Core i7-11700B(8コア16スレッド、3.3~4.9GHz、65W)を搭載した「NUC11BTMi7」の2モデルが用意されている。

 CPU以外のスペックは全て共通。ビデオカードはデュアルスロットを使用するカード長最大304.8mmのPCIe 4.0 x16対応製品を装着可能だ。ただし、きわどいサイズの大型ビデオカードは装着できない可能性があるので注意。

 メモリはDDR4-3200 SO-DIMMが2スロット用意されており、最大64GBを搭載可能。M.2スロットは5基(内1基はWi-Fiカード「AX210NGW」が専有)搭載されており、最大で4枚のM.2 SSDを装着可能だ(内2基がCPU直結でPCIe 4.0 x4対応、内2基がPCH経由でPCIe 3.0 x4/SATA 6Gbps兼用)。

 インターフェイスは、Thunderbolt 4×2、USB 3.1 Type-A×8、HDMI 2.0b×1、有線LAN(2.5Gigabit Ethernet)×1、SDメモリカードリーダ(UHS-II SDXC)、3.5mmコンボジャックを用意。ワイヤレス通信機能は前述のWi-Fiカード「AX210NGW」により、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2をサポートする。

 本体サイズは約120×357×189mm(幅×奥行き×高さ)、重量は非公表だがメモリを2枚、M.2 SSDを1枚、ビデオカードを装着した状態で5kgをわずかに上回る程度だった (筆者が所有している5kg対応デジタルスケールではぎりぎり測れなかった)。

【表1】Intel NUC 11 Extreme Kitのスペック
型番NUC11BTMI9NUC11BTMI7
OS
CPUCore i9-11900KB(8コア16スレッド、3.3~4.90GHz、65W)Core i7-11700B(8コア16スレッド、3.2~4.8GHz、65W)
GPU-(PCIe 4.0 x16接続デュアルスロットビデオカードを装着可能)
メモリ-(DDR4-3200 SO-DIMM、最大64GB)
ストレージM.2スロット×4(PCIe 4.0×2、同3.0×2)
無線通信Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2
インターフェイスThunderbolt 4×2、USB 3.1×8、HDMI 2.0b×1、2.5Gigabit Ethernet×1、SDメモリカードリーダ(UHS-II SDXC)、3.5mmコンボジャック
本体サイズ約120×357×189mm(幅×奥行き×高さ)
重量非公表
同梱品電源ケーブル
カラーブラック
価格1,350ドルから1,150ドルから
本体前面。下部に電源ボタン、USB 3.1×2、SDメモリカードリーダ(UHS-II SDXC)、3.5mmコンボジャックを用意
本体背面。左上からKensingtonロックスロット、電源端子、USB 3.1×6、2.5Gigabit Ethernet×1、HDMI 2.0b×1、Thunderbolt 4×2を配置。DisplayPort×3、HDMI×1はビデオカードのもの
右側面。奥行きは357mm
左側面。透けて見えるのはビデオカード
天面。3つの92mm径の大型ファンが内蔵されている
底面。型番、シリアルナンバー、LANのMACアドレスなどはここに記載されている。底面中央のカバーについては後述する
今回の貸出機には、電源ケーブル、説明書(Safety Information、Regulatory Information)が付属していた
蛇足だが、今回の貸出機は「ENGINEERED TO WIN」と記載された木製のボックスで発送されてきた

本製品を分解して中身をチェック

 まず前提情報としてお伝えするが、本製品には一般的なデスクトップPCとはパーツ構成が異なる。本体底面にマザーボードの代わりに「Baseboard(ベースボード)」が配置されており、そこに、CPU、メモリ、ストレージなどを内包するユニット「Intel NUC Extreme 11 Compute Element」がPCIe 4.0 x16スロットに装着されている。

 分解の手順は下記で説明しているが、メモリやストレージを装着するだけならそれほど難しくはない。ただシャーシが小さいため手を入れにくく、また組み立て時に冷却ファンのケーブルを上手く取り回す必要があった。ケーブルをガイドに合わせないと、正しく閉められないので注意してほしい。

 ストレージの取り付けは容易だが、CPU右側はPCIe 4.0 x4対応M.2スロット(2280)、CPU左側はPCIe 3.0 x4/SATA 6Gbps兼用M.2スロット(2242/2280)、本体底面はPCIe 4.0 x4対応M.2スロット(2280/22110)と、規格と対応サイズが異なる点には留意してほしい。

 ビデオカードは、デュアルスロットを使用するカード長最大304.8mmのPCIe 4.0 x16対応製品を装着可能とされているが、当然電源ユニットの容量も考慮する必要がある。ケースがコンパクトなので冷却能力も重要だ。今回の試用機に装着されていたASUS製「DUAL-RTX3060-O12G」は、Intelお墨付きのビデオカードということになる。

背面四隅のプラスネジを抜くと、背面パネルを取り外せる。左右パネルは後方にスライドするだけですんなりと外れる
左側面の上部を掴み、下のへりを手前に引っ張りながら引き上げれば開ける。特にネジなどは使われていない
背面の左上のプラスネジをはずすと、拡張カードのネジを隠しているカバーを手前に開ける
今回は試用機なのでビデオカードが装着済み。取り外す要領はデスクトップPCと同じだ
今回の試用機にはビデオカードとしてASUS製「DUAL-RTX3060-O12G」が搭載されていた
「Intel NUC Extreme 11 Compute Element」に新鮮な空気を取り込むためのエアダクトを取り外す要領もデスクトップPCと同じだ
これが「Intel NUC Extreme 11 Compute Element」
「Intel NUC Extreme 11 Compute Element」だけを取り外すことも可能だが、かなり多くのケーブルを着脱する必要があるので、今回はこのままケースを開いた。上部のネジ2つをはずせば、手前側に開ける
「Intel NUC Extreme 11 Compute Element」のカバーを開いたところ。カバー側に冷却ファンと、SSD用サーマルパッドが取り付けられている
組み立ての際には、カバーを閉じる直前に冷却ファンのケーブルをガイドの間に入れる必要がある。本製品試用時のマニュアルには記載がなく、正しく閉められない可能性があるので注意してほしい
これが「Intel NUC Extreme 11 Compute Element」の内部。右から、メモリスロット(SO-DIMM)×2、PCIe 4.0 x4対応M.2スロット(2280)×1、CPU、PCIe 3.0 x4/SATA 6Gbps兼用M.2スロット(2242/2280)×2が並ぶ。左下にあるのはRTC Battery(CR2032)
黒の端子がPCIe 4.0 x4スロット、青の端子はPCIe 4.0 x16スロット。さらに奥には「Intel NUC Extreme 11 Compute Element」を装着するためのPCIe 4.0 x16スロットが存在する
「Intel NUC Extreme 11 Compute Element」の上面には銅製と思われるヒートシンクが装備されている
エアダクトはプラスチック製
ケース前面側に650W電源ユニット「FSP650-57SAB-A」が配置されている
底面のパネルを開けるとPCIe 4.0 x4対応M.2スロット(2280/22110)が現われる

独自ユーティリティ「Intel NUC Software Studio」を用意

 BIOSの設定画面には、電源投入後、ロゴマークが表示されている間にF2キーを連打すると入れる。設定画面は、Main、Advanced、Cooling、Performance、Security、Power、Bootのタブに分けられている。記事執筆時点のBIOSのバージョンは「DBTG579.0039.2021.0518.0715」。Mainタブに「System Language」という項目が用意されているが、英語以外の選択項目は表示されなかった。

 本製品には独自ユーティリティ「Intel NUC Software Studio」が用意されており、こちらは日本語化されている。このユーティリティでは以下の3つの機能を用意。

  1. 「LEDプロファイル」では前面、前面下部、左側面下部、右側面下部ごとにエフェクトや明るさを調整できる。
  2. 「パフォーマンスの調整」ではパフォーマンス・モード(HIGH PERFORMANCE ENABLED/BALANCED ENABLED/LOW POWER ENABLED)とファンモード(静か/バランス化/冷却)を変更可能。
  3. 「システムモニター」では、プロセッサ、iGPU、dGPU、メモリ、ストレージのステータスを確認できる。

 インストールしなくても動くが、LEDカスタマイズ、パフォーマンス調整のために、忘れずにインストールしておこう。

電源投入後、ロゴ画面が表示されているときにF2キーを連打するとBIOS設定画面に入れる
BIOSのMainタブの画面
BIOSのAdvancedタブの画面
BIOSのCoolingタブの画面
BIOSのPerformanceタブの画面
BIOSのSecurityタブの画面
BIOSのPowerタブの画面
BIOSのBootタブの画面
「Intel NUC Software Studio」のホーム画面
「LEDプロファイル」では前面、前面下部、左側面下部、右側面下部ごとにエフェクトや明るさを調整できる
「パフォーマンスの調整」ではパフォーマンス・モード(HIGH PERFORMANCE ENABLED/BALANCED ENABLED/LOW POWER ENABLED)とファンモード(静か/バランス化/冷却)を変更できる
「システムモニター」では、プロセッサ、iGPU、dGPU、メモリ、ストレージのステータスを確認できる
LEDの点灯方法はきめ細かくカスタマイズできる
前面のロゴのフィルムは取り外し可能。テンプレートを利用してカスタムマスクを作成できる。また、LEDコントローラのファームウェアを書き換えることで独自のエフェクトを作成、追加することも可能だ

気になるパフォーマンスは?

 最後にパフォーマンスをチェックしてみよう。今回は下記のベンチマークを実施した。

  • 総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.1.2519」
  • 3Dベンチマーク「3DMark v2.19.7225」
  • CPUベンチマーク「Cinebench R23.200」
  • CPUベンチマーク「Cinebench R20.060」
  • CPUベンチマーク「Cinebench R15.0」
  • 3Dゲームベンチマーク「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」
  • ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 8.0.4」
  • 「Adobe Lightroom Classic」で100枚のRAW画像を現像
  • 「Adobe Premiere Pro」で実時間5分の4K動画を書き出し

 比較対象としては、Core i9-11900KとGeForce RTX 3080を搭載した三門修太氏のテスト機材のスコアを転載している。TDP 125WのCPUと、格上のビデオカードを搭載している機種に対して、「Intel NUC 11 Extreme Kit」がどこまで迫れるのかという視点からご覧頂きたい。

 下記が検証機の仕様と、その結果だ。

【表2】検証機の仕様
Intel NUC11 Extreme Kit三門修太氏のテスト機材
CPUCore i9-11900KB(8コア16スレッド、3.3~4.9GHz)Core i9-11900K(8コア16スレッド、3.5~5.3GHz)
GPUGeForce RTX 3060
UHD Graphics(350MHz~1.45GHz)
GeForce RTX 3080 Founders Edition
UHD Graphics 750(350MHz~1.3GHz)
メモリDDR4-3200 SDRAM 16GBDDR4-3200 SDRAM 32GB
ストレ-ジ500GB PCIe 4.0 x4 SSD500GB PCIe 4.0 x4 SSD
TDP65W125W
OSWindows 10 Pro 64bit バージョン20H2Windows 10 Pro 64bit バージョン20H2
サイズ約120×357×189mm(幅×奥行き×高さ)
【表3】ベンチマ-ク結果
Intel NUC11 Extreme Kit三門修太氏のテスト機材
PCMark 10 v2.1.2519
PCMark 10 Score7,54411,292
Essentials10,80510,877
App Start-up Score15,666
Video Conferencing Score7,877
Web Browsing Score10,223
Productivity10,36011,184
Spreadsheets Score13,409
Writing Score8,005
Digital Content Creation10,40713,057
Photo Editing Score13,003
Rendering and Visualization Score13,678
Video Editting Score6,338
3DMark v2.19.7225
Time Spy Extreme4,147
Time Spy8,89216,951
Port Royal5,038
Fire Strike Ultra5,219
Fire Strike Extreme10,022
Fire Strike19,14332,904
Wild Life49,90699,614
Wild Extreme Life17,563
Night Raid55,814
Cinebench R23.200
CPU(Multi Core)11,893 pts13,677 pts
CPU(Single Core)1,649 pts1,664 pts
Cinebench R20.060
CPU4,567 pts5,894 pts
CPU(Single Core)635 pts650 pts
Cinebench R15.0
OpenGL257.55 fps
CPU2,021 cb
CPU(Single Core)254 cb
FINAL FANTASY XV BENCHMARK
1,280×720ドット、標準品質、フルスクリ-ン17,852(非常に快適)
1,920×1,080ドット、標準品質、フルスクリ-ン12,754(非常に快適)
2,560×1,440ドット、標準品質、フルスクリ-ン8,807(快適)
3,840×2,160ドット、標準品質、フルスクリ-ン4,678(やや快適)
SSDをCrystalDiskMark 8.0.4で計測
1M Q8T1 シーケンシャルリード4,985.483 MB/s
1M Q8T1 シーケンシャルライト2,504.977 MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルリード2,944.116 MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルライト2,505.298 MB/s
4K Q32T1 ランダムリ-ド937.771 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト843.292 MB/s
4K Q1T1 ランダムリ-ド63.481 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト303.718 MB/s
「Adobe Lightroom Classic」で100枚のRAW画像を現像
7,952☓5,304ドット、カラ- - 自然2分58秒03
「Adobe Premiere Pro」で実時間5分の4K動画を書き出し
3,840×2,160ドット、30fps1分11秒49

 まずCPU性能については、「Intel NUC 11 Extreme Kit」がCinebench R23のCPU(Multi Core)で三門修太氏のテスト機材のスコアの87%に相当する11,893を記録した。TDPが大きく異なるが、意外に健闘している。

 3Dグラフィックス性能については、RTX 3060とRTX 3080の勝負ということで、50~58%のスコアに留まり、大差を付けられている。両ビデオカードのスペックから順当な結果だ。

 とは言え、実際に「PUBG: BATTLEGROUNDS」などをプレイしてみると、画面モードをフルスクリーン、全体的なグラフィックの品質をウルトラに設定した状態で、フルHD時の平均フレームレートは167fps、WQHD時の平均フレームレートは123.6fps、4K時の平均フレームレートは62.3fpsとなった。高画質設定でもWQHDなら十分スムーズな描画でプレイできるわけだ。

 筐体がコンパクトということで動作音が心配だったが、「Cinebench R23」実行中、簡易騒音計で計測した最大音量は43dBに留まった(アイドル状態で33.9dBの環境で計測)。個人的にはこのぐらいなら机の上で使っても、それほど不快な音量ではない。ましてやゲーミングヘッドセットを装着していれば、ほぼ気にならないはずだ。

ベンチマークはパフォーマンス・モードを「MAX PERFORMANCE ENABLED」、ファンモードを「冷却」に設定して実施した
「Cinebench R23」実行中のCPUの平均クロック周波数は3,527.85MHz、最高クロック周波数は4,050.4MHz、平均温度は84.18℃、最高温度は100℃(室温25.1℃で測定)
「PUBG: BATTLEGROUNDS」の画面モードをフルスクリーン、全体的なグラフィックの品質をウルトラに設定した際のフルHD時の平均フレームレートは167fps、WQHD時の平均フレームレートは123.6fps、4K時の平均フレームレートは62.3fps
「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」実行中の前面の最大温度は37.3℃(室温24.1℃)
背面の最大温度は45.8℃(ただしビデオカード部)
右側面の最大温度は42.8℃
左側面の最大温度は38.4℃
上面の最大温度は44.2℃
空調を切った閉め切った部屋で、本製品がアイドル状態(冷却ファンオフ)のときに簡易騒音計が示す値は33.9dB。「Cinebench R23」実行中、最も冷却ファンが高速に回ったときの値は43dB。パフォーマンス・モードが「MAX PERFORMANCE ENABLED」、ファンモードが「冷却」の状態でも意外に静かだ

TV横に設置するゲーミングデスクトップPCにピッタリ

 「Intel NUC 11 Extreme Kit」はフルサイズのビデオカードを装着できるベアボーンキットとしては非常にコンパクト。NUCは外付けのACアダプタで駆動するモデルが多いが、本製品は電源ユニットを内蔵しているので設置性がよいのも大きなメリットだ。

 自分の部屋に置くゲーミングデスクトップPCであれば、拡張性を重視して選んだ方がいい。しかし、TV横に設置するゲーミングデスクトップPCとしては、サイズ、設置性からピッタリの1台と言える。