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フルサイズビデオカードを装着できる小型PC「Intel NUC 11 Extreme Kit」。机に置いても邪魔にならない魅力のサイズ
2021年8月11日 06:55
Intel はCPUに第11世代Coreを採用し、好みのビデオカードを装着可能なベアボーンキット「Intel NUC 11 Extreme Kit」(コード名:Beast Canyon)を7月29日(米国時間)に発表した。第3四半期に提供開始予定で、Core i7搭載モデルが1,150ドルから、Core i9搭載モデルが1,350ドルからの価格帯で販売される。
今回発売前の実機をIntelより借用したので、メンテナンスのしやすさ、パフォーマンスと静音性などを中心にレビューしていこう。
CPUは第11世代(Tiger Lake)のCore i9/i7を採用
「Intel NUC 11 Extreme Kit」には、第11世代(Tiger Lake)のCore i9-11900KB(8コア16スレッド、3.3~5GHz、65W)を搭載した「NUC11BTMi9」、Core i7-11700B(8コア16スレッド、3.3~4.9GHz、65W)を搭載した「NUC11BTMi7」の2モデルが用意されている。
CPU以外のスペックは全て共通。ビデオカードはデュアルスロットを使用するカード長最大304.8mmのPCIe 4.0 x16対応製品を装着可能だ。ただし、きわどいサイズの大型ビデオカードは装着できない可能性があるので注意。
メモリはDDR4-3200 SO-DIMMが2スロット用意されており、最大64GBを搭載可能。M.2スロットは5基(内1基はWi-Fiカード「AX210NGW」が専有)搭載されており、最大で4枚のM.2 SSDを装着可能だ(内2基がCPU直結でPCIe 4.0 x4対応、内2基がPCH経由でPCIe 3.0 x4/SATA 6Gbps兼用)。
インターフェイスは、Thunderbolt 4×2、USB 3.1 Type-A×8、HDMI 2.0b×1、有線LAN(2.5Gigabit Ethernet)×1、SDメモリカードリーダ(UHS-II SDXC)、3.5mmコンボジャックを用意。ワイヤレス通信機能は前述のWi-Fiカード「AX210NGW」により、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2をサポートする。
本体サイズは約120×357×189mm(幅×奥行き×高さ)、重量は非公表だがメモリを2枚、M.2 SSDを1枚、ビデオカードを装着した状態で5kgをわずかに上回る程度だった (筆者が所有している5kg対応デジタルスケールではぎりぎり測れなかった)。
型番 | NUC11BTMI9 | NUC11BTMI7 |
---|---|---|
OS | - | |
CPU | Core i9-11900KB(8コア16スレッド、3.3~4.90GHz、65W) | Core i7-11700B(8コア16スレッド、3.2~4.8GHz、65W) |
GPU | -(PCIe 4.0 x16接続デュアルスロットビデオカードを装着可能) | |
メモリ | -(DDR4-3200 SO-DIMM、最大64GB) | |
ストレージ | M.2スロット×4(PCIe 4.0×2、同3.0×2) | |
無線通信 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2 | |
インターフェイス | Thunderbolt 4×2、USB 3.1×8、HDMI 2.0b×1、2.5Gigabit Ethernet×1、SDメモリカードリーダ(UHS-II SDXC)、3.5mmコンボジャック | |
本体サイズ | 約120×357×189mm(幅×奥行き×高さ) | |
重量 | 非公表 | |
同梱品 | 電源ケーブル | |
カラー | ブラック | |
価格 | 1,350ドルから | 1,150ドルから |
本製品を分解して中身をチェック
まず前提情報としてお伝えするが、本製品には一般的なデスクトップPCとはパーツ構成が異なる。本体底面にマザーボードの代わりに「Baseboard(ベースボード)」が配置されており、そこに、CPU、メモリ、ストレージなどを内包するユニット「Intel NUC Extreme 11 Compute Element」がPCIe 4.0 x16スロットに装着されている。
分解の手順は下記で説明しているが、メモリやストレージを装着するだけならそれほど難しくはない。ただシャーシが小さいため手を入れにくく、また組み立て時に冷却ファンのケーブルを上手く取り回す必要があった。ケーブルをガイドに合わせないと、正しく閉められないので注意してほしい。
ストレージの取り付けは容易だが、CPU右側はPCIe 4.0 x4対応M.2スロット(2280)、CPU左側はPCIe 3.0 x4/SATA 6Gbps兼用M.2スロット(2242/2280)、本体底面はPCIe 4.0 x4対応M.2スロット(2280/22110)と、規格と対応サイズが異なる点には留意してほしい。
ビデオカードは、デュアルスロットを使用するカード長最大304.8mmのPCIe 4.0 x16対応製品を装着可能とされているが、当然電源ユニットの容量も考慮する必要がある。ケースがコンパクトなので冷却能力も重要だ。今回の試用機に装着されていたASUS製「DUAL-RTX3060-O12G」は、Intelお墨付きのビデオカードということになる。
独自ユーティリティ「Intel NUC Software Studio」を用意
BIOSの設定画面には、電源投入後、ロゴマークが表示されている間にF2キーを連打すると入れる。設定画面は、Main、Advanced、Cooling、Performance、Security、Power、Bootのタブに分けられている。記事執筆時点のBIOSのバージョンは「DBTG579.0039.2021.0518.0715」。Mainタブに「System Language」という項目が用意されているが、英語以外の選択項目は表示されなかった。
本製品には独自ユーティリティ「Intel NUC Software Studio」が用意されており、こちらは日本語化されている。このユーティリティでは以下の3つの機能を用意。
- 「LEDプロファイル」では前面、前面下部、左側面下部、右側面下部ごとにエフェクトや明るさを調整できる。
- 「パフォーマンスの調整」ではパフォーマンス・モード(HIGH PERFORMANCE ENABLED/BALANCED ENABLED/LOW POWER ENABLED)とファンモード(静か/バランス化/冷却)を変更可能。
- 「システムモニター」では、プロセッサ、iGPU、dGPU、メモリ、ストレージのステータスを確認できる。
インストールしなくても動くが、LEDカスタマイズ、パフォーマンス調整のために、忘れずにインストールしておこう。
気になるパフォーマンスは?
最後にパフォーマンスをチェックしてみよう。今回は下記のベンチマークを実施した。
- 総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.1.2519」
- 3Dベンチマーク「3DMark v2.19.7225」
- CPUベンチマーク「Cinebench R23.200」
- CPUベンチマーク「Cinebench R20.060」
- CPUベンチマーク「Cinebench R15.0」
- 3Dゲームベンチマーク「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」
- ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 8.0.4」
- 「Adobe Lightroom Classic」で100枚のRAW画像を現像
- 「Adobe Premiere Pro」で実時間5分の4K動画を書き出し
比較対象としては、Core i9-11900KとGeForce RTX 3080を搭載した三門修太氏のテスト機材のスコアを転載している。TDP 125WのCPUと、格上のビデオカードを搭載している機種に対して、「Intel NUC 11 Extreme Kit」がどこまで迫れるのかという視点からご覧頂きたい。
下記が検証機の仕様と、その結果だ。
Intel NUC11 Extreme Kit | 三門修太氏のテスト機材 | |
---|---|---|
CPU | Core i9-11900KB(8コア16スレッド、3.3~4.9GHz) | Core i9-11900K(8コア16スレッド、3.5~5.3GHz) |
GPU | GeForce RTX 3060 UHD Graphics(350MHz~1.45GHz) | GeForce RTX 3080 Founders Edition UHD Graphics 750(350MHz~1.3GHz) |
メモリ | DDR4-3200 SDRAM 16GB | DDR4-3200 SDRAM 32GB |
ストレ-ジ | 500GB PCIe 4.0 x4 SSD | 500GB PCIe 4.0 x4 SSD |
TDP | 65W | 125W |
OS | Windows 10 Pro 64bit バージョン20H2 | Windows 10 Pro 64bit バージョン20H2 |
サイズ | 約120×357×189mm(幅×奥行き×高さ) | - |
Intel NUC11 Extreme Kit | 三門修太氏のテスト機材 | |
---|---|---|
PCMark 10 v2.1.2519 | ||
PCMark 10 Score | 7,544 | 11,292 |
Essentials | 10,805 | 10,877 |
App Start-up Score | 15,666 | - |
Video Conferencing Score | 7,877 | - |
Web Browsing Score | 10,223 | - |
Productivity | 10,360 | 11,184 |
Spreadsheets Score | 13,409 | - |
Writing Score | 8,005 | - |
Digital Content Creation | 10,407 | 13,057 |
Photo Editing Score | 13,003 | - |
Rendering and Visualization Score | 13,678 | - |
Video Editting Score | 6,338 | - |
3DMark v2.19.7225 | ||
Time Spy Extreme | 4,147 | - |
Time Spy | 8,892 | 16,951 |
Port Royal | 5,038 | - |
Fire Strike Ultra | 5,219 | - |
Fire Strike Extreme | 10,022 | - |
Fire Strike | 19,143 | 32,904 |
Wild Life | 49,906 | 99,614 |
Wild Extreme Life | 17,563 | - |
Night Raid | 55,814 | - |
Cinebench R23.200 | ||
CPU(Multi Core) | 11,893 pts | 13,677 pts |
CPU(Single Core) | 1,649 pts | 1,664 pts |
Cinebench R20.060 | ||
CPU | 4,567 pts | 5,894 pts |
CPU(Single Core) | 635 pts | 650 pts |
Cinebench R15.0 | ||
OpenGL | 257.55 fps | - |
CPU | 2,021 cb | - |
CPU(Single Core) | 254 cb | - |
FINAL FANTASY XV BENCHMARK | ||
1,280×720ドット、標準品質、フルスクリ-ン | 17,852(非常に快適) | - |
1,920×1,080ドット、標準品質、フルスクリ-ン | 12,754(非常に快適) | - |
2,560×1,440ドット、標準品質、フルスクリ-ン | 8,807(快適) | - |
3,840×2,160ドット、標準品質、フルスクリ-ン | 4,678(やや快適) | - |
SSDをCrystalDiskMark 8.0.4で計測 | ||
1M Q8T1 シーケンシャルリード | 4,985.483 MB/s | - |
1M Q8T1 シーケンシャルライト | 2,504.977 MB/s | - |
1M Q1T1 シーケンシャルリード | 2,944.116 MB/s | - |
1M Q1T1 シーケンシャルライト | 2,505.298 MB/s | - |
4K Q32T1 ランダムリ-ド | 937.771 MB/s | - |
4K Q32T1 ランダムライト | 843.292 MB/s | - |
4K Q1T1 ランダムリ-ド | 63.481 MB/s | - |
4K Q1T1 ランダムライト | 303.718 MB/s | - |
「Adobe Lightroom Classic」で100枚のRAW画像を現像 | ||
7,952☓5,304ドット、カラ- - 自然 | 2分58秒03 | - |
「Adobe Premiere Pro」で実時間5分の4K動画を書き出し | ||
3,840×2,160ドット、30fps | 1分11秒49 | - |
まずCPU性能については、「Intel NUC 11 Extreme Kit」がCinebench R23のCPU(Multi Core)で三門修太氏のテスト機材のスコアの87%に相当する11,893を記録した。TDPが大きく異なるが、意外に健闘している。
3Dグラフィックス性能については、RTX 3060とRTX 3080の勝負ということで、50~58%のスコアに留まり、大差を付けられている。両ビデオカードのスペックから順当な結果だ。
とは言え、実際に「PUBG: BATTLEGROUNDS」などをプレイしてみると、画面モードをフルスクリーン、全体的なグラフィックの品質をウルトラに設定した状態で、フルHD時の平均フレームレートは167fps、WQHD時の平均フレームレートは123.6fps、4K時の平均フレームレートは62.3fpsとなった。高画質設定でもWQHDなら十分スムーズな描画でプレイできるわけだ。
筐体がコンパクトということで動作音が心配だったが、「Cinebench R23」実行中、簡易騒音計で計測した最大音量は43dBに留まった(アイドル状態で33.9dBの環境で計測)。個人的にはこのぐらいなら机の上で使っても、それほど不快な音量ではない。ましてやゲーミングヘッドセットを装着していれば、ほぼ気にならないはずだ。
TV横に設置するゲーミングデスクトップPCにピッタリ
「Intel NUC 11 Extreme Kit」はフルサイズのビデオカードを装着できるベアボーンキットとしては非常にコンパクト。NUCは外付けのACアダプタで駆動するモデルが多いが、本製品は電源ユニットを内蔵しているので設置性がよいのも大きなメリットだ。
自分の部屋に置くゲーミングデスクトップPCであれば、拡張性を重視して選んだ方がいい。しかし、TV横に設置するゲーミングデスクトップPCとしては、サイズ、設置性からピッタリの1台と言える。