Hothotレビュー
電源内蔵で容積5L。高性能ビデオカードも搭載可能な「NUC 9 Pro」を試す
2020年10月22日 06:45
開発コードネーム「Quartz Canyon」こと「Intel NUC 9 Pro」は、「ビデオカードが搭載可能なワークステーション向けNUC」という変わり種のNUCだ。
そのNUC 9 Proの上位モデルにして、Xeon E-2286Mを搭載した「NUC9VXQNX」のレビュアーズキットを借用する機会が得られたので、ベンチマークテストやビデオカードの換装などを試してみた。
Xeon搭載のNUC 9 Pro「NUC9VXQNX」
NUC 9 Pro「NUC9VXQNX」は、Coffee Lake世代の8コア16スレッドCPU「Xeon E-2286M」を搭載したNUC。メモリとSSDを追加することでPCとして機能するベアボーンキットで、筐体サイズは96×238×216mm(幅×奥行き×高さ、容積5L)。
ミニPCとして知られるNUCにしては大きいNUC 9 Proの筐体は、フルハイトの拡張カードを搭載するためのもので、ビデオカードを搭載可能なPCI Express 3.0 x16スロットと、PCI Express 3.0 x4スロットを備えている。
借用したNUC9VXQNXのレビュアーズキットには、DDR4-2666動作のECCメモリ(16GB×2)、SSDの「Optane Memory H10(1TB)」、ビデオカード「Quadro P2200」が搭載された状態で届いた。
今回はこのレビュアーズキットの構成パーツに加え、NUC 9 Proでの互換性確認済みのGeForce RTX 2070搭載ビデオカード「ASUS DUAL-RTX2070-O8G-MINI」を用意。もともと搭載されていたQuadro P2200と換装した場合の性能もテストする。
NUC 9 Proの外装
マットダークグレーでカラーリングされたNUC 9 Proの外装は、派手な装飾を排した落ち着きのあるデザインとなっている。特徴的な両サイドのメッシュパネルは吸気口で、天板に配置された2基の冷却ファンによって、両サイドから天板へのエアフローを構築している。
前面パネルのインターフェイスは、USB 3.1 Gen2(2基)や、UHS-II対応のSDカードスロット、3.5mmヘッドセットジャック。バックパネルインターフェイスには、2系統のGigabit LAN、USB 3.1 Gen2(4基)、HDMI 2.0a、Thunderbolt 3(2基)、3.5mmオーディオ/TOSLINKコンボジャックを備える。
NUC 9 Proは500Wの電源ユニットを内蔵しているため、リアパネルには電源ユニット用のAC入力と、電源ユニットの排気ファンが配置されている。
NUC 9 Proの内装
NUC 9 Proの内部には、トップカバーとサイドパネルを取り外すことでアクセスできる。
NUC 9 Proでは、CPUやチップセットなどを拡張カード形状の「Compute Element」に集約しており、これを拡張スロットやM.2スロットを備える「ベースボード」に接続している。
CPUやチップセットが搭載されているCompute Elementには、メモリスロットやM.2スロットなども搭載されており、冷却ユニットのカバーの一部を取り外すことでアクセスできる。
Compute ElementにメモリやM.2 SSDを取り付けるさいは、シャーシのクロスバーブラケットを取り外しておけば、Compute Elementをベースボードから取り外すことなく取り付け作業が行なえる。Compute Elementをベースボードから取り外す場合、ケーブルで接続されているフロントパネルインターフェイス用(オーディオ、USB)や、無線用のアンテナ、電力供給用のEPS12Vなどを外す必要があり、やや手間がかかる。
ベースボードは、Compute Element接続用スロットのほかに、PCI Express 3.0 x16スロット、PCI Express 3.0 x4スロット、M.2スロットを各1つずつ搭載している。ベースボードのM.2スロットはCompute Elementの下に隠れる位置にあるため、利用するにはCompute Elementを一度取り外す必要がある点に注意したい。
ベースボードの下には電源ユニットが配置されており、ベースボードとCompute Elementに電源を供給しているほか、ビデオカード用の補助電源コネクタが用意されている。このビデオカード用の電源コネクタは、L字型の8ピンコネクタと、ストレートタイプの6+2ピンコネクタが用意されており、ビデオカードの仕様に合わせて使い分けることになる。
ビデオカードの組み込み
今回借用したレビュアーズキットに同梱されていたQuadro P2200は、補助電源コネクタによる電力供給を必要としないため、NUC 9 Proへの組み込みは簡単だ。また、ビデオカードの占有スロットが1スロットであるため、NUC 9 ProのPCI Express 3.0 x4スロットに他の拡張カードを搭載することもできる。
一方、別途用意したASUS DUAL-RTX2070-O8G-MINIを搭載した場合、2スロット仕様のビデオカードであるためPCI Express 3.0 x4スロットが利用できなくなるほか、カードサイズ的にもギリギリであるため補助電源ケーブルの処理に難儀した。Intelが互換性を確認しているビデオカードだけあって、最終的にはしっかり取り付けることができたが、これが搭載可能な最大サイズのビデオカードであると考えてよいだろう。
なお、IntelはNUC 9 Proのテスト済みコンポーネントとして、組み込み可能なビデオカードのリストを公開している。NUC 9 Proに組み込むビデオカードを探す場合は、まずこのリストをチェックすることをおすすめする。
ビデオカードを搭載したNUC 9 Proの性能をベンチマークテストでチェック
NUC 9 ProにQuadro P2200、またはGeForce RTX 2070(ASUS DUAL-RTX2070-O8G-MINI)を搭載して、ベンチマークテストやゲームでのパフォーマンスをチェックしてみた。
テスト時の構成 | ||
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CPU | Xeon E-2286M (8C16T、2.4~5.0GHz) | |
メモリ | DDR4-2666 16GB×2 (2ch、19-19-19-43、1.20V) | |
システム用SSD | Intel Optane Memory H10 1TB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4) | |
ビデオカード | Quadro P2200 | ASUS DUAL-RTX2070-O8G-MINI(GeForce RTX 2070) |
グラフィックスドライバ | 452.06 (27.21.14.5206) | GeForce Game Ready Driver 456.38 DCH (27.21.14.5638) |
電源 | 500W 80PLUS PLATINUM | |
OS | Windows 10 Pro 64bit (Ver 2004 / build 19041.508) | |
室温 | 約26℃ |
実行したテストは、CINEBENCH R20、TMPGEnc Video Mastering Works 7、Blender Benchmark、V-Ray Benchmark、PCMark 10、3DMark、ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク、フォートナイト、VALORANT、レインボーシックス シージ、Microsoft Flight Simulator。
CPUのXeon E-2286Mは、CINEBENCH R20において「3,400」を超えるマルチスレッドスコアと、「470」を超えるシングルスレッドスコアを記録している。ミニサイズのPCに搭載されたCPUとしては、なかなか優秀と評価できる数値だ。
Blender BenchmarkやV-Ray Benchmarkでは、GeForce RTX 2070がQuadro P2200やCPUでの処理を凌ぐパフォーマンスを発揮している。CPU自体も高いパフォーマンスを備えているが、このように強力なGPUを用いて処理を実行できるのがNUC 9 Proの強みだ。
ゲーム系のベンチマークテストでも、GeForce RTX 2070が素晴らしいパフォーマンスを発揮している。Microsoft Flight Simulatorのような重量級のゲームはもちろん、フォートナイトやVALORANTのように高フレームレートを期待したいタイトルでも高いフレームレートを叩き出しており、CPUのXeon E-2286MがゲーミングシーンでもGeForce RTX 2070の性能を引き出せる実力を備えていることが伺える。
消費電力と動作温度をチェック
ベンチマーク実行中の消費電力をワットチェッカーで測定した結果が以下のグラフだ。
アイドル時の消費電力は、Quadro P2200搭載時が24Wで、GeForce RTX 2070搭載時は33W。CPUベンチマーク実行中の最大消費電力は160W弱で、3Dベンチマーク中はQuadro P2200搭載時で最大218W、GeForce RTX 2070搭載時は最大353Wに達した。
省スペースで省電力なPCというNUCのイメージとはかけ離れた消費電力となっているが、消費電力の大きなデスクトップ向けGPUを組み込んでいるのだから当然の数値だ。これほどの電力を消費するパーツを5Lサイズの筐体で運用できることこそ、NUC 9 Proの長所であると言えよう。
ビデオカードを搭載したNUC 9 Proのパフォーマンスは、5LサイズのPCとしては大変強力なものだが、消費電力の大きなパーツを小さな筐体に組み込んだとき、心配になるのは動作温度だ。十分に冷却できているのかを確かめるべく、動画エンコードを10分間連続で実行した場合と、最大消費電力を記録したFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク中の最大温度を測定してみた。
測定結果をみると、ピークCPU温度はかなり高くなっているものの、サーマルスロットリングの作動温度である100℃には達していない。GPUに関しても、ブースト動作の基準温度であるTemp Targetのリミット値には達していないため、つねにブースト動作を維持できていた。
さきのグラフで最も高い温度を記録していた、GeForce RTX 2070搭載時のFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークについて、モニタリングデータをグラフ化してみた。
グラフを見ると、CPU温度が95℃に達したのは瞬間的なものであり、ベンチマーク中のCPU温度の平均値は80℃少々であることがわかる。CPUクロックも4GHz前後で推移しており、Xeon E-2286Mのベースクロックである2.4GHzを大きく超えるブースト動作が持続していることが見てとれる。
5L筐体に強力なGPU性能を組み込めるミニワークステーション
Xeonを搭載するNUC 9 Pro「NUC9VXQNX」は、5Lサイズの筐体ながらハイエンドクラスのビデオカードを使用できる、ミニサイズのワークステーションだ。ミニPCのGPU性能に物足りなさを感じていたクリエイターやゲーマーにとって、デスクトップ向けの高性能GPUをこの筐体サイズで使えるベアボーンは魅力的だろう。
NUC 9 Proには、CPUにCore i7-9850Hを採用した姉妹モデル「NUC9V7QNX」も用意されているほか、同じフォームファクターを採用するゲーマー向けNUC「NUC 9 Extreme (Ghost Canyon)」も用意されている。コンパクトな筐体で高性能なビデオカードを利用したいと望むなら、これらの製品を検討してみてはいかがだろうか。