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1kg切りどころじゃない! 634gの超軽量13.3型ノート「富士通 UH-X/E3」。軽さと高性能モバイルは両立可能なのか?

富士通クライアントコンピューティング「LIFEBOOK UH-X/E3」

 富士通クライアントコンピューティング(FCCL)が発売する、世界最軽量モバイルノート「LIFEBOOK UH-X」シリーズ。その最新モデルとなる「LIFEBOOK UH-X/E3」では、重量が634gと従来モデルからのさらなる軽量化を実現。そのうえで、Tiger Lakeこと第11世代Coreプロセッサ採用による性能強化も実現し、魅力が大きく高められている。すでに発売中で、実売価格は21万円前後。

約634gとほかの追随を許さない軽さを実現

 LIFEBOOK UH-Xシリーズの特徴は、なんと言っても軽さだ。競合と世界最軽量を競う場面もあったが、初代から13.3型モバイルノートとして世界最軽量を実現という一貫した姿勢を貫いている。そして、最新モデルとなる「LIFEBOOK UH-X/E3」(以下、UH-X/E3)では、その軽さをさらに突き詰めてきた。

 従来モデルのLIFEBOOK UH-X/D2は、重量が698gと、13.3型モバイルノートながら700gを切る軽さを実現するという点で、登場当初はおおいに驚かされた。しかしUH-X/E3では、そこからさらに64gもの軽量化を実現し、634gを実現してきた。もちろん世界最軽量の更新となる。

重量は公称634g、実測ではさらに軽く632gだった

 この軽量化がどのように実現されているのかは、山田祥平氏の以下の記事で詳しく紹介されているが、とくに大きい点が、天板にカーボンファイバーを採用している点と、ディスプレイ上下のベゼル幅を減らすことなどによる筐体サイズの低減だろう。

 従来までは、天板素材にマグネシウムリチウム合金を採用していたが、それをカーボンファイバーに変更することで、天板だけで約20gの軽量化を実現している。さらに、ディスプレイ上下のベゼル幅を狭めることによって筐体全体のサイズを小さくして軽量化。このほかにも、キーボードや内部パーツなどの細かな軽量化を積み上げることで従来モデルから64gの軽量化を実現しているという。

ディスプレイを開いて正面から見た様子。ディスプレイが3辺狭額ベゼル仕様となり、本体サイズが従来よりもコンパクトになっている
このように片手でつまんで軽々持ち上げられるほどの軽さには驚かされる

 13.3型モバイルノートは近年軽量化が進んでおり、1kg切りはもちろん900g切りもめずらしくなくなっているが、UH-X/E3の軽さはやはり次元が違う。実際にUH-X/E3を手に持つと、これで本当にパソコンとして動作するのか疑ってしまうほどの軽さで、これには従来モデル同様に驚かされる。

 軽さの追求で気になる堅牢性も、約76cmからの落下試験や200kgfの面加圧試験、35kgfの1点加圧試験、振動試験などをクリアしており、モバイルパソコンとして申し分ないレベルとなっている。これなら毎日の持ち運びも安心だ。

 筐体デザインは従来モデルと大きく変わっていない。カラーはブラックで、フラットかつ比較的直線的なデザインと、モバイルノートととしてオーソドックスなデザインと言える。

 従来モデルは天板部に無線LANのアンテナを搭載するため一部が樹脂製となり、その切れ目があった。UH-X/E3でも天板に無線LANのアンテナを搭載するため一部が樹脂となっているものの、その境目が見えないように加工されており、天板は1枚板にしか見えない。これにより従来モデルよりもスッキリとした印象になっている。

天板にはカーボンファイバーを採用することで、強度を保ちつつ軽量化を実現。無線LANアンテナ部の樹脂カバーも見分けがつかないため、スッキリとした印象だ

 サイズは307×197×15.5mm(幅×奥行き×高さ)。従来モデルと比べると幅は2mm、奥行きは15mm短くなっている。重量は冒頭で紹介したように634gで、実測では632gと公称よりもさらに2g軽かった。

正面
左側面。高さは15.5mmと従来モデルと同じ
背面
右側面
底面。フットプリントは307×197mm(幅×奥行き)と、従来モデルからかなりコンパクトとなっている

フルHD表示対応の13.3型IGZO液晶を搭載

 ディスプレイは、従来モデル同様に13.3型のIGZO液晶を採用している。表示解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)表示に対応。高輝度、高色純度、広視野角のIGZO液晶と公表されているが、具体的なパネルの種類や表示能力などは公開されていない。この点は従来モデルと同様だ。

 実際に映像などを表示させてみても、発色は鮮やかで、モバイルノートとして十分満足できるレベル。写真のレタッチや映像の鑑賞などもほとんど問題を感じなかった。パネル表面は非光沢処理となっているため、外光の映り込みがほとんど感じられず、快適な文字入力が行なえる点もうれしい。

従来モデル同様に、フルHD表示対応の13.3型IGZO液晶を採用。また、上下のベゼル幅が従来モデルからかなり狭められている
具体的は表示能力は非公開ながら、十分に鮮やかな映像が表示される
ディスプレイが180度開く点も従来モデル同様だ

従来モデル同様のフルサイズキーボードを搭載

 キーボードは、従来モデルとほぼ同等で、キーの間隔が開いたアイソレーションタイプとなっている。主要キーのキーピッチは縦横約19mmフルピッチで、ストロークも約1.5mmと、薄型ノートパソコンとしては十分な深さを確保。

キーボードはアイソレーションタイプで、配列なども含めて従来モデルとほぼ同等。ただしバックライトは搭載しない
主要キーのキーピッチは19mmフルピッチを確保

 キータッチは、硬すぎず柔らかすぎず、適度な硬さで、クリック感もしっかりしており、打鍵感は良好。合わせて、日本語キーボードの標準的な配列を実現するとともに、近年では少数派になりつつあるカーソルキーを1段下に配置するなどの配慮もあり、扱いやすさはモバイルノートのなかでも群を抜いている。

ストロークは1.5mmと深く、適度な硬さにしっかりとしたクリック感で打鍵感も良好。打鍵音が静かな点もうれしい
配列は標準的で、カーソルキーがが1段下がった場所に配置している点も非常に扱いやすい

 このほか、打鍵時の操作音もかなり静かで、カチャカチャという耳障りな打鍵音は皆無。これなら静かな場所での利用も問題ないはずだ。なお、キーボードバックライトは従来同様非搭載だ。この点は軽さ追求ということで仕方がないだろう。

 ポインティングデバイスは、従来同様のクリックボタンが独立したタッチパッドを搭載する。従来モデルよりも奥行きが短くなったことで、パームレストの幅も狭くなっているが、クリックボタンの幅をやや狭めることで、タッチパッドの面積は従来モデルとほぼ同じサイズを確保。合わせて、キーボードのホームポジションを中心として搭載されている点も、利便性を高める特徴となっている。

ポインティングデバイスは、独立したクリックボタンを備えるタッチパッドを搭載。従来よりクリックボタンを小さくすることで従来モデルとほぼ同等のパッド面積を確保している
キーボードのホームポジションを中心としてタッチパッドを搭載しているため、非常に扱いやすい

Tiger Lake搭載でスペックも充実

 では、UH-X/E3のスペックを確認しよう。CPUはTiger LakeことCore i7-1165G7を採用。メモリはLPDDR4X-2466を8GB、内蔵ストレージは容量1TBのPCIe/NVMe SSDを搭載する。できればメモリは標準で16GBを搭載していてもいいとは思うが、モバイルノートとしてはまずまず標準的で大きな不満はない。

 無線機能は、IEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)準拠無線LANとBluetooth 5.0を標準搭載。生体認証機能は、電源ボタン一体型の指紋認証センサーを搭載する。電源投入時に1度電源ボタンに触れると、その時点で指紋が読み取られ、起動からWindowsログオンまでが完了する点は便利だ。

 ただ、従来モデルに搭載されていた顔認証IRカメラは非搭載となっている。新型コロナウイルスの影響でマスクをつけたまま作業を行なう場面が増えており、顔認証がなくても大丈夫という声も聞こえるが、どうせなら指紋認証と顔認証を同時に搭載して場面に応じて双方を使い分けられたほうが便利なのは間違いないため、できれば双方搭載してもらいたかった。

ディスプレイ上部には約92万画素のWebカメラを搭載。顔認証IRカメラが非搭載となった点は残念だ
Webカメラには物理サッターが用意され、利用しないときにはシャッターを閉じることでプライバシーを守れる
電源ボタンは指紋認証センサー一体型で、電源投入時には同時に指紋も読み取り、Windowsログオンまで行なわれる

 なお、ディスプレイ上部には、約92万画素のWebカメラを搭載。こちらは、先ほど紹介したように顔認証には対応しない。ただ、カメラを覆う物理シャッターが新たに用意されたことで、カメラを利用しない場合も安心だ。

 豊富なポート類の搭載は従来同様だ。左側面には、USB 3.1 Type-C×2、HDMI、USB 3.0 Type-A、オーディオジャックを、右側面にはSDカードスロット、USB 3.0 Type-A、Gigabit Ethernetの各ポートを配置している。

左側面には、準拠USB 3.1 Type-C×2、HDMI、USB 3.0 Type-A、オーディオジャックを用意。USB Type-CはDisplayPort Alt ModeおよびUSB PDに対応する
右側面にはSDカードスロット、USB 3.2 Gen1準拠USB Type-A、Gigabit Ethernetを用意する
Gigabit Ethernetは、従来モデルの引き出し式から、ガイド部分を開く形状へと変更され、使いやすくなった

 極限までの軽さを追求するにはポート類を省くという選択肢もあると思うが、そうすることなく多数のポートを標準で用意している点からは、開発陣のこだわりが強く感じ取れる。

 そして、変換アダプタなどを用意することなく周辺機器を接続して利用できるのは、外部ポートが最小限となっている近年のモバイルノートにはない大きな魅力と感じる。

 ただ、USB Type-CポートはTiger LakeでサポートされているThunderbolt 4に対応していない。このあたりは消費電力との兼ね合いで採用が見送られていると考えられるが、やはり残念だ。それでも、DisplayPort Altanate ModeおよびUSB PDに対応しているため、大きな問題はないだろう。

 USB PDは7.5W(5V/1.5A)の入力に対応。7.5W入力はスリープまたは電源断時のみとなるが、たとえば宿泊を伴う出張時などにACアダプタを忘れた場合でも、スマートフォンや携帯電話用のACアダプタを利用して寝ている間に充電、といったことが可能となる。

 なお、付属ACアダプタは出力45Wの小型のものとなっている。重量は付属電源ケーブル込みで253gと、本体の軽さに比べるとやや重く感じる。できれば付属ACアダプタもより小型・軽量なものを付属してくれるとありがたい。

 このほか、気になった部分としては、内蔵ステレオスピーカーの音質があまり良くないという点がある。従来モデルでもそうだったが、UH-X/E3のステレオスピーカーは人の声はクリアに聞き取れるものの、高音や低音の再生能力が弱く、音楽や映像の鑑賞にはかなり不向きと感じる。

 近年は、このクラスのモバイルノートでもスピーカー音質を高めた製品が増えていることを考えると、もう少しスピーカーにもこだわってほしいように感じる。

付属ACアダプタは出力45Wの小型のものとなっている
ACアダプタの重量は、付属電源ケーブル込みで実測253gだった
USB Type-CポートのUSB PDは7.5W入力に対応しており、スマートフォン用ACアダプタやモバイルバッテリを利用した給電が可能だ

性能は申し分ないが、高負荷時のファンの動作音がややうるさい

 では、簡単にベンチマークテストの結果を紹介しよう。利用したベンチマークソフトは、UL Benchmarksの「PCMark 10 v2.1.2506」、「3DMark Professional Edition v2.15.7113」、Maxonの「Cinebench R20.060」と「Cinebench R23.200」の4種類だ。テストは、CPUクーラーの動作モードを「パフォーマンスモード」に設定して実行している。また、比較としてASUSの「ZenBook Flip S UX371EA」の結果も加えてある。

【表】ベンチマーク結果
LIFEBOOK UH-X/E3ZenBook Flip S UX371EA
(UX371EA-HL003TS)
CPUCore i7-1165G7
(ターボブースト時最大4.7GHz)
Core i7-1165G7
(ターボブースト時最大4.7GHz)
GPUIntel Iris Xe GraphicsIntel Iris Xe Graphics
メモリLPDDR4X-3733 SDRAM 8GBLPDDR4X-4266 SDRAM 16GB
ストレージ1TB SSD(NVMe/PCIe)1TB SSD(NVMe/PCIe)
OSWindows 10 Home 64bitWindows 10 Home 64bit
PCMark 10v2.1.2506
PCMark 10 Score4,9614,788
Essentials10,1059,888
App Start-up Score13,53513,073
Video Conferencing Score8,1148,304
Web Browsing Score9,3968,906
Productivity6,8976,618
Spreadsheets Score6,0566,054
Writing Score7,8577,235
Digital Content Creation4,7564,553
Photo Editing Score7,8087,491
Rendering and Visualization Score2,8382,547
Video Editting Score4,8554,948
CINEBENCH R20.060
CPU1,9801,763
CPU (Single Core)550496
CINEBENCH R23.200
CPU4,7953,576
CPU (Single Core)1,4151,058
3DMark Professional Editionv2.15.7113v2.15.7088
Night Raid16,50013,961
Graphics Score21,32718,083
CPU Score7,2996,092
Sky Diver14,19011,927
Graphics Score15,28913,051
Physics Score10,3238,464
Combined score14,53011,558
Time Spy1,7711,542
Graphics Score1,6081,404
CPU Score4,1773,483

 結果を見ると、ほぼスペックは同じながら、UH-X/E3のほうがスコアが上回っていることがわかる。同一スペックながらここまで差が発生しているのは、おそらく熱設計が異なっているからだろう。

 UH-X/E3では従来モデルと比べてConfigurable TDPを高く設定しているとのことだが、それに対応するために冷却システムも強化しており、CPUの性能をより高く引き出せているものと考えられる。少なくとも、軽さを突き詰めながらCPUの性能をしっかり引き出せている点は、かなり大きな魅力となるはずだ。

 ただし、空冷ファンの動作音は、従来モデルと比べるとややうるさくなっている。従来モデルでは高負荷時でもかなり静かだったが、UH-X/E3では風切り音に加えて、キーンといった感じの金属音的なファンの動作音が耳に届くため、やや耳障りに感じる。そのため、静かな場所では高負荷な作業を長時間続けることはややためらわれる印象だ。

 続いてバッテリ駆動時間だ。UH-X/E3の公称の駆動時間は約11時間(JEITAバッテリ動作時間測定法 Ver2.0での数字)とされている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、電源モードを「より良いバッテリー」、バックライト輝度を50%に設定し、無線LANを有効にした状態で、PCMark 10のBatteryテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」を利用して計測したところ、6時間11分だった。

 UH-X/E3では、軽量化を突き詰めるために内蔵バッテリ容量が容量25Whとかなり少ない。おそらく、実際の利用では今回のテストよりもさらに短い駆動時間になるもの思われる。外出先で利用する場合の駆動時間はやや心許ない印象で、ACアダプタの同時携帯は必須と言える。とは言え、ACアダプタを同時に持ち歩いても総重量は1kgを余裕で下回るため、大きな負担とはならないはずだ。

軽さを追求した高性能モバイルノートを探している人におすすめ

 UH-X/E3は、従来モデルからさらなる軽さの追求を行なうことで、13.3型モデルながら634gと圧倒的な軽さを実現。しかも、Tiger Lake搭載によるスペックの強化を実現し、従来同様の豊富なポートもしっかり受け継いでおり、従来モデルから大きく魅力が向上している。

 顔認証カメラが省かれていたり、バッテリ駆動時間が短いなど、軽さを追求するための妥協点があるのは事実だ。また、個人的には高負荷時の空冷ファンの動作音が従来よりも大きくなっている点も少々残念に感じる部分だ。ただ、それらを考慮しても、競合製品に負けない十分な魅力を備えている。

 そのため、とにかく軽さを優先したモバイルノートを探している人はもちろん、軽さだけでなく性能面も十分満足できるモバイルノートを探しているなら、真っ先に考慮すべき製品と言っていいだろう。