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モバイルノートとして完成度が高まった「XPS 13」。16:10の画面でA4用紙以下のポータビリティが魅力
2020年12月29日 09:50
デル・テクノロジーズからIntel第11世代Coreを搭載した「XPS 13」、「XPS 13 2-in-1」が登場している。今世代のXPS 13シリーズはIntel Evoプラットフォームに準拠する製品である。今回は「XPS 13(9310)」クラムシェルモデルを試用する機会を得たので紹介しよう。
なお、直販価格はおおよそ23万円以上だが、執筆時点では年末割引が行なわれており、Core i7-1185G7、メモリ16GB、SSD 512GBのモデルが1万8,780円引きで、それに加えて20%オフクーポンで18万2,712円で購入可能となっている。
最軽量には届かないが13型クラスでは最強クラスの携行性
XPS 13の筐体は、今年(2020年)2月に登場したIce Lake版のXPS 13(9300)と同じだ。10月発売のTiger Lake版は基本的に内部を第11世代Coreにアップグレードした製品である。ただしこのデザインについてはもう一度触れておかねばならないだろう。デルのノートパソコンはデザイン面でつねに最先端をリードしてきた。これまでもUltrabookとして、あるいは2in1として。そしてXPS 13 2020年モデルが衝撃的だったのは画面占有率だ。
モバイルノートではベゼル幅をどこまで詰めることができるのかが競われているが、これにはいくつかの側面がある。1つはノートパソコン本体のサイズを小さいコンパクトにできることだ。ノートパソコンではパネルサイズがおおまかに決まっている。13.3型や15.6型といったものだ。つまりパネルサイズはおおよそ同じなので、可搬性を高める小型化はベゼル幅をどこまで狭められるかにかかっている。
筐体サイズは295.7×198.7×14.8mm(幅×奥行き×高さ)。画面占有率に関するところで底面積のみに注目してみよう。295.7×198.7mmというのは、じつはA4用紙(297×210mm)よりもわずかに小さい。つまり、A4用紙が入るバッグならXPS 13 2020年モデルが入る。ここは大きなポイントだ。おそらく、これでバッグの選択肢が一気に広がるはずだ。
もう1つこれは副次的なものと言えるが、没入感、集中力を高める効果だ。ベゼルというのはディスプレイ画面と現実世界の「境界」だ。その境界が太く大きく存在感が強かったら異質に感じるのは当然である。ベゼルが狭ければ狭いほどスタイリッシュに感じられるのは、こうした違和感が緩和されるためだろう。XPS 13の画面占有率は91.5%。もちろんまだ100%ではないのだから境界は存在するが、かなり気にならないレベルに達している。
XPS 13でとくに印象的なのは、上部、左右ベゼルといった部分の狭さだけでなく、ヒンジ側、下部のベゼルも最小限であるところだ。2019年モデルのXPS 13(7390)はまだこの部分が太く「DELL」のロゴもあったため、キーボード側のベゼル部分の存在が目につく。しかし、2020年モデルのXPS 13ではこれが押さえられ、一体感が増している。
じつのところ、XPS 13はノートパソコンで一般的な16:9のアスペクト比ではなく、16:10を採用している。インチ表記でも13.4型となる。インチ表記は対角なのでここも本体幅を抑える意味で多少の効果があるだろう。13.3型で16:9のXPS 13(7390)は302×199mmだった。幅も6mm少々詰められているが、奥行きについてもXPS 13(7390)ではベゼルだった部分がディスプレイに置き換えられたイメージでほぼ同じ程度に抑えられている。
解像度は1,920×1,200ドットまたは3,840×2,400ドット。わずかだが縦長であるため、Webサイトを表示するさい、テキストエディタで文書を編集するさいなど、数行多く表示できるため、一度に目に入ってくる情報量が増える。文章の前後のつながりなどを確認するのが非常にやりやすく感じる。
ディスプレイはDolby Vision HDR準拠。色再現性でも、sRGB比100%、DCI P3比90%と優れている。コントラスト比は1,500:1、輝度は500cd/平方m。タッチ対応モデルは光沢ありだが0.65%反射防止コーティングが施されている。
重量は1.27kg。13型クラス最軽量級ではないがモバイルノートとしては軽量と呼べるスペックだろう。軽さは強度とトレードオフであり、軽いモデルでは強度を補うために特別な素材を用いるなど価格に反映される。ただ、1kgを切っていないXPS 13が安価な素材、強度不足かというとそんなことはない。筐体の端を持ってもたわむことはない。
ACアダプタはUSB PD対応の出力45Wものが付属する。コンパクトだが、ケーブルは直づけで、ACアダプタ本体とコンセントは3極のIEC320-C5(いわゆるミッキー型)端子のコンセントケーブルを利用するため全体としてはまずまずのサイズになる。持ち運び用というよりは自宅や会社での据え置き時用だろう。モバイル用には別途、USB PD充電器を用意するのがよさそうだ。
Thunderbolt 4×2のみだがモバイルでの使い勝手がよいインターフェイス
スリムさを追求するモバイルノートでは、インターフェイスが犠牲になる。とくにUSB Type-A、HDMIといった端子は高さがあるため非搭載となることが多い。ここはXPS 13も同様だ。XPS 13のインターフェイスは、左側面がThunderbolt 4およびmicroSDカード、右側面がThunderbolt 4およびオーディオジャックだ。なお、USB Type-C→Type-A変換アダプタが1つ付属する。
このように、周辺機器を接続できる端子は最小限だ。モバイルではそこまで困ることはないかもしれないが、自宅で使うさいを考えると片側にUSB PD充電器をつないで残りは1ポート。USB Type-Cをディスプレイ出力に使う、外付けのUSBキーボードを使う、外付けのUSB HDDをつなぐといったことを組み合わせると本体端子のみではムリだ。実際、検証でもここがネックに感じた。USB Type-C HubまたはThunderbolt Hubで補うことを検討したい。
セキュリティに関しては、電源ボタンに指紋認証センサー、Windows Hello対応Webカメラを搭載している。また、スマートフォンと連係できる「Dell Mobile Connect」は、Bluetoothを利用しスマートフォンとペアリングし、XPS 13で電話をかけたりアプリを操作したりできる。
リモートワークが一般化して約1年、筆者はパソコンで完結したWeb会議が必ずしもベストというわけではないことに気づき、アプリによってはスマートフォン版を使いつつパソコンでメモをとるといった方法を編み出したが、Dell Mobile Connectを使えばそこを統合できそうだ。
幅が30cmを切るXPS 13だが、キーボードは19mm程度のキーピッチをキープしている。加えて、日本語キーボードでも比較的スタンダードな配列を実現しているところが好印象だ。気づいたところとしては、右Altがない、PageUp/PageDownは上下左右キーの上下への割り当て、PrintScreen/Home/EndがF10~F12のFn併用、DeleteがBackSpaceの上から1つズレているといったあたり。この程度なら慣れるのも問題ない。
スリムなパソコンだがキーストロークは比較的大きくとられているようだ。反発力も多少強めに調整されているのだろうか、スリムノートパソコンのなかで比較をすればしっかりとしたタイピング感が得られる製品だ。
なお、XPS 13には「リッド センサー」が搭載されている。天板の開閉を検知するもので、これの便利なところは、たとえ電源オフの状態でも天板を開けば電源が入ることだ。天板を開ける=そのパソコンを使うわけで、そこから電源ボタンを押すという操作はよく考えるとムダな一手間と言える。そこを省くのがリッド センサーだ。一般的にノートパソコンで電源をオフにする機会は少ないのだが、あれば便利な機能と言える。
Tiger Lakeを中心に性能重視の構成
内部スペックを見ていこう。評価機はCPUにCore i7-1165G7、16GBメモリ、1TB SSDを搭載する構成だが、カスタマイズモデルが選べるので詳しくは購入・検討のさいに確認してほしい。
まずCPUのCore i7-1165G7は、4コア8スレッドのTiger Lake世代CPUで、定格はTDP-upが28Wの2.8GHz、TDP-downが12Wの1.2GHz、ターボブースト時の最大が4.7GHzといった仕様だ。ただし、執筆時点で製品サイトを調べたところ、すべてがCore i7-1185G7を搭載する構成だった。Core i7-1185G7は1165G7よりも高クロックのモデルだ。
グラフィックス機能はCPUに内蔵されている機能を利用する。Core i7-1165G7ではIris Xe Graphicsだ。これまでのIntel UHD Graphics系からアーキテクチャを変え、より高性能へと進化した統合GPU機能となる。
メモリはLPDDR4x-4267。Core i7-1165G7自体は通常のDDR4-3200もサポートしているが、より性能の高いLPDDR4xを採用しているのがXPS 13のポイントと言える。また、カスタマイズでは32GBまで搭載できるので、メモリ消費の激しいアプリケーションを利用する方はカスタマイズに挑戦してみよう。
ストレージはNVMe対応のSSDで、容量に関してはカスタマイズモデルごとに異なる。Tiger LakeはPCI Express 4.0に対応しているが、評価機のSSDはPCI Express 3.0対応のものだ。ただ転送速度はシーケンシャルリードで3.197GB/sと十分に高速である。性能を求めるならばPCI Express 4.0対応SSDという選択肢もあるが、4.0対応SSDは消費電力や発熱も大きいため、スリムなモバイルノートに搭載するにはまだ難しいのかもしれない。
ネットワークはインターフェイス部分で見たとおり有線非搭載で無線のみとなる。その無線だが、チップはKiller Wi-Fi 6 AX500-DBSとなっていた。Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)対応のチップで、Bluetooth 5.1も統合されている。Wi-Fi 6チップでメジャーなIntel Wi-Fi 6 AX200ではないが、KillerもIntel製であり、Evoを満たす条件にはWi-Fi 6とあるだけでチップは問わないようだ。
Ice Lake→Tiger LakeでCPU&GPU性能ともにアップ!
では、ベンチマークによってXPS 13(9310)のパフォーマンスを見てみたい。まずシステム性能テストで利用したベンチマークソフトはUL Benchmarksの「PCMark 10 v2.1.2506」、「3DMark Professional Edition v2.16.7094」、Maxonの「Cinebench R23」と「Cinebench R20」、「Handbrake v1.3.0」の5種類だ。比較対象としてIce Lake版のXPS 13(9300)のスコアを加えている。
XPS 13(9310、Tiger Lake) | XPS 13(9300、Ice Lake) | |
---|---|---|
CPU | Core i7-1165G7(4コア/8スレッド) | Core i7-1035G7(4コア/8スレッド) |
チップセット | Tiger Lake-U/Y PCH | Ice Lake PCH |
GPU | Iris Xe Graphics(CPU内蔵) | Iris Plus Graphics(CPU内蔵) |
メモリ | 16GB DDR4 | 16GB DDR4 |
ストレージ | 1TB NVMe SSD | 512GB NVMe SSD |
OS | Windows 10 Home | Windows 10 Home |
XPS 13(9310、Tiger Lake) | XPS 13(9300、Ice Lake) | |
---|---|---|
PCMark 10 | v2.1.2506 | |
Extended Score | 4,530 | 3,593 |
Essentials Scenario | 9,783 | 9,123 |
App Start-up Test | 12,721 | 11,689 |
Video Conferencing Test | 8,202 | 8,185 |
Web Browsing Tset | 8,975 | 7,937 |
Productivity Scenario | 6,706 | 5,570 |
Spreadsheets Test | 6,092 | 4,977 |
Writing Test | 7,383 | 6,235 |
Digital Content Creation Scenario | 4,793 | 3,964 |
Photo Editing Test | 7,807 | 5,589 |
Rendering and Visualization Test | 2,922 | 2,708 |
Video Editing Test | 4,827 | 4,117 |
Gaming Scenario | 3,619 | 2,337 |
Fire Strike Graphics Test | 5,130 | 2,840 |
Fire Strike Physics Test | 9,953 | 10,284 |
Fire Strike Combined Test | 1,447 | 1,064 |
3DMark | v2.11.6846 | |
TimeSpy | 1,504 | 877 |
FireStrike | 4,163 | 2,496 |
NightRaid | 12,059 | 8,646 |
SkyDiver | 12,895 | 8,179 |
Cinebench R23 | ||
CPU(Multi Core) | 4,680 | 3,681 |
CPU(Single Core) | 1,425 | 1,201 |
Cinebench R20 | ||
CPU | 2,041 | 1,435 |
CPU(SingleCore) | 560 | 462 |
HandBrake | v1.3.0 | |
4K/60p/MP4→フルHD/30p/H.264/MP4 Fast SW | 20.19fps | 17.98fps |
4K/60p/MP4→フルHD/30p/H.264/MP4 Fast HW(iGPU) | 26.86fps | 24.27fps |
4K/60p/MP4→フルHD/30p/H.265/MP4 Fast SW | 20.91fps | 19.52fps |
4K/60p/MP4→フルHD/30p/H.265/MP4 Fast HW(iGPU) | 26.03fps | 24.01fps |
PCMark 10ではほとんどの項目でTiger Lake版がIce Lake版を上回るスコアを示している。CPU性能の影響が大きいProductivityシナリオも、GPU性能の影響が大きいDigital Content Creationシナリオもどちらも向上している。
3DMarkでは、これが代表的なベンチマークということもあって最適化が進んでいるのだろう。テストによっては70%以上の向上率を示したものもある。おそらくこのクラスの製品でよくプレイされるだろう軽量なDirectX 11という位置づけのSky Diverは57.7%の向上を見せている。逆にこのクラスでは負荷が高過ぎるだろう高負荷のDirectX 12テストのTime Spyは計測中最大の伸び率で71.5%の向上があった。
CPU性能を見るCinebench R23/R20でも、すべてのテストでスコアが向上していた。Cinebench R23ではおおむね20%の向上。シングルスレッドテストよりもマルチスレッドテストのスコア向上率のほうが高い。
Handbrakeでのエンコードテストも向上が確認できた。CPU処理も向上しているが、Quick Sync Videoでの処理速度も向上しているようだ。
XPS 13(9310、Tiger Lake) | XPS 13(9300、Ice Lake) | |
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ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク | ||
1,920×1,080ドット、最高品質 | 2,959 | 2,198 |
1,920×1,080ドット、高品質(ノートPC) | 4,417 | 3,125 |
1,920×1,080ドット、標準品質(ノートPC) | 6,101 | 4,329 |
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト | ||
1,920×1,080ドット、最高品質 | 11,770 | 7,906 |
1,920×1,080ドット、標準品質 | 12,409 | 9,061 |
1,920×1,080ドット、低品質 | 14,835 | 10,975 |
World of Tanks enCore RT | ||
超高(1,920×1,080ドット、RTオフ) | 4,889 | 2,899 |
中(1,920×1,080ドット、RTオフ) | 10,062 | 6,900 |
最低(1,366×768ドット、RTオフ) | 47,079 | 36,081 |
ゲーム性能テストは、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」、「World of Tanks enCore RT」で行なった。もちろん、計測したすべてのテストでスコアが向上している。
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークに関しては、各プリセットでXPS 13のTiger Lake版はIce Lake版よりも1つ上の評価まで向上するようだ。快適がとても快適へ、やや快適が快適へ、普通がやや快適へといった具合だ。1,920×1,080ドット、最高品質では2,959ポイントのやや快適にとどまったが、高品質では4,417ポイントの快適評価(30fps前後)を得ている。
ドラゴンクエストX ベンチマークソフトはかなり軽量なので、1,920×1,080ドットならIce Lake版でも最高品質でとても快適評価が得られる。ただしTiger Lake版はより高いスコアで、より重いプリセットほど性能差が大きくなるようだ。
World of Tanks enCore RTは画質超高でも良好な結果という評価が得られている。Ice Lake版では許容可能な結果という評価なので、大幅な向上(68.6%)と言える。
最後にバッテリ駆動時間について見てみたい。PCMark 10のバッテリテスト、Modern Officeシナリオを電源モード(より良いバッテリー)でテストした結果は9時間53分だった。Ice Lake版の結果は10時間42分だったので少し短かったが、代わりにパフォーマンススコアは7,066で、Ice Lake版の5,495よりも高かった。
おそらく同じ(より良いバッテリー)でもその詳細な設定は異なるのだろう。性能を同じ程度とすればIce Lake版に近い駆動時間になるかもしれない。ただしPCMark 10の負荷でこれだけの駆動時間が得られれば実運用では問題ない。ならばパフォーマンススコアが高いほうが快適ということもあるだろう。
完成度の高さで感心したIce Lake版を超える出来
Tiger Lake版XPS 13は、デザイン面では洗練されたIce Lake版を継承しつつ、内部はTiger Lake世代へとリフレッシュし、CPU、とくにGPU機能が大きく向上したところがポイントだ。PCMark 10のバッテリ駆動時間テストが示すとおり、モバイル時の性能もよい。モビリティ性能に加え、モバイルでの生産性が向上したことで、リモートワークやワーケーションに最適なモバイルノートと言えるだろう。
ただし、モバイルでは十分のスペックだが、自宅で運用するさいには機器を追加したほうがよい。ほかのモバイル製品も同様だが、スリムになればインターフェイスが犠牲になる。Thunderbolt 4(USB Type-C)が2ポートなので、USB PDのパススルー充電が可能なUSB Type-C HubないしはThunderboltドックを併用したい。
デルで言えばUniversal Dock - D6000や、パフォーマンス ドック - WD19DC、あるいはUSB Type-C対応ディスプレイなどだ。それらまで含めるとかなり高価になってしまうが、XPS 13本体を含め得られる快適さは1つ上、次世代を感じられるものになるだろう。