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ワコムペンつきの「LG gram 2-in-1」は長時間動作する総合力の高めのモバイルノート
2020年8月17日 06:55
LGエレクトロニクス・ジャパンは、14型2in1の2020年モデル「LG gram 2-in-1 14T90N-VR51J1」を7月30日に発表、8月7日に販売を開始した。
LG gramシリーズの2in1は2019年8月23日に初代機が発売されたが、2代目となる本製品ではプロセッサ、SSD、インターフェイス、ディスプレイガラス、無線LANなど多岐にわたり刷新されている。
今回本製品の実機を借用したので、詳細スペック、外観、使い勝手、AV品質、性能について細かく検証していこう。
低コスト化のためにプロセッサはCore i7からCore i5に変更
2019年モデル「14T990-GA75J」と2020年モデル「14T90N-VR51J1」のおもな差分は下記のとおりだ(前が2019年モデル、後ろが2020年モデル)。
- プロセッサ : 第8世代Core i7-8565U→第10世代Core i5-10210U
- SSD接続方式 : SATA 3.0→NVMe
- インターフェイス : USB Type-C→Thunderbolt 3
- ディスプレイガラス : Corning Gorilla Glass 5→Corning Gorilla Glass 6
- 無線LAN : Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)→Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)
- 駆動時間 : 約23時間→約21.5時間
つまりプロセッサは世代が新しくなったもののCore i7からCore i5にダウングレードされ、バッテリ駆動時間もわずかに短くなっている。ただし、そのほかのSSD接続方式、インターフェイス、ディスプレイガラス、無線LANについてはアップグレードされている。
スペックの差分について総括すると、低コスト化のためにプロセッサはCore i5を採用したものの、使い勝手に関わるほかの装備については順当に進化したと言えよう。
軽さとバッテリ駆動時間を両立させている点はLG gramシリーズならでは
おもなスペックについて重複分を含めて列挙すると、OSは「Windows 10 Home 64bit バージョン1909」、CPUは第10世代(Comet Lake)の「Core i5-10210U」(4コア8スレッド、1.6~4.2GHz)を採用。メモリは8GB(DDR4-2666 SDRAM、8GB×1、最大24GB)、ストレージは256GB(PCIe NVMe SSD)を搭載している。
ディスプレイは14型フルHD IPS液晶(1,920×1,080ドット、157ppi、輝度非公表、sRGBカバー率96%、光沢、タッチ対応、スタイラス対応、Corning Gorilla Glass 6)。
インターフェイスは、Thunderbolt 3(映像、音声、充電、データ転送対応)、USB 3.0×2、HDMI、microSDカードスロット、ヘッドセット端子が用意。
本体に内蔵する通信機能はWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)、Bluetooth 5.0だが、有線LAN用に「RJ45変換(USB Type-C)コネクター」(10Base-T/100Base-TX)が付属する。
本体サイズは324.6×210.8×14.85~17.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1,145g。72Whのバッテリを内蔵しており、バッテリ駆動時間は約21.5時間、バッテリ充電時間は約3時間とされている。軽さとバッテリ駆動時間を両立させている点はLG gramシリーズならではの特徴と言えよう。
セキュリティ機能は、Windows Hello対応指紋認証センサー一体型ボタン、セキュリティロックスロットを用意。オフィスアプリは「Office Home & Business 2019」が付属する。このほかの細かなスペックについては、下記の表を参照してほしい。
【表1】LG gram 2-in-1(14T90N-VR51J1)のスペック ※8月14日時点 | |
---|---|
OS | Windows 10 Home 64bit バージョン1909 |
CPU | Core i5-10210U(4コア8スレッド、1.6~4.2GHz) |
GPU | Intel UHD Graphics(300MHz~1.1GHz) |
メモリ | DDR4-2666 SDRAM 8GB(8GB×1、最大24GB) |
ストレージ | 256GB PCIe NVMe SSD |
ディスプレイ | 14型FHD IPS液晶(1,920×1,080ドット、157ppi、輝度非公表、sRGBカバー率96%、光沢、タッチ対応、スタイラス対応、Corning Gorilla Glass 6) |
通信 | Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)、Bluetooth 5.0 |
WWAN | - |
インターフェイス | Thunderbolt 3(映像、音声、充電、データ転送対応)、USB 3.0×2、HDMI、microSDカードスロット、ヘッドセット端子 |
カメラ | HD(720p) |
バッテリ容量 | 72Wh |
バッテリ駆動時間 | 約21.5時間 |
バッテリ充電時間 | 約3時間 |
本体サイズ | 324.6×210.8×14.85~17.9mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 約1,145g |
セキュリティ | Windows Hello対応指紋認証センサー一体型ボタン、セキュリティーロックスロット |
ビジネス統合アプリ | Office Home & Business 2019 |
同梱品 | ACアダプタ、電源ケーブル、LG Stylus Pen(Wacom AES 2.0)、RJ45変換(USB Type-C)コネクター(10Base-T/100Base-TX)、マニュアル類(インストールガイド、指紋認証でログインする方法、アフターサービスのご案内、保証書、Office Home & Business 2019ライセンスカード) |
カラー | ホワイト |
価格 | 実売19万円前後 |
2in1としてはこなれた作り
14T90N-VR51J1(以下、LG gram 2-in-1)は360度回転するヒンジ機構を備えており、ラップトップ、スタンド、テント、タブレットに加えて、ディスプレイを180度開いたフラットモードなど、さまざまなスタイルで利用できる。ディスプレイを270度以上開くとキーボードが無効化されるので、タブレットモードでキーを意図せず触ってしまっても誤入力は発生しない。
デジタルペンのLG Stylus PenはWacom AES 2.0に準拠しており、筆圧検知は4,096段階、傾き検知にも対応する。また、ペン先は交換可能で筆記用×2、描画用×1の合計3本が付属している。メモ書きやPDFの注釈などにとどまらず、イラストを描くのにも利用できるデジタルペンと言える。
キーボードのキーピッチは19.05×18.5mm、キーストロークは1.5mm。キーボードの押圧力は公表されていないが、ニュートン表示のメカ式テンションゲージで計測したところ実測0.6N前後であった。筆者の手持ちのノートブックと比較してみたところほんのわずかに押圧力が高かったが、正直体感できるレベルではない。
Fキー | Enterキー | Spaceキー | |
---|---|---|---|
LG gram 2-in-1 | 0.6N | 0.6N | 0.6N |
16インチMacBook Pro | 0.55N | 0.55N | 0.55N |
ZenBook Duo | 0.56N | 0.54N | 0.55N |
クリック感はしっかり備わっており、打鍵音も低めだ。ただし、キーレイアウトにやや難がある。右側の記号キーが極端に幅を狭められており、「-(音引き)」キーを入力しにくいのだ。長く使っていれば慣れられるだろうが、個人的にはほぼすべてのキーが等幅にそろえられている英語キーボードモデルを使いたいところだ。
全体が沈み込むダイビングボード構造を採用したタッチパッドのサイズは実測105×65mm(幅×奥行き)。Windows 10の各種ジェスチャーを快適に行なえるスペースが確保されている。タッチパッドのストロークは底まで押すと深く感じられるが、クリック自体は浅い位置で発生する。クリック操作しやすいタッチパッドだと思う。
スペック表以上に広いsRGBカバー率99.1%を実測
LG gram 2-in-1には、14型フルHD IPS液晶(1,920×1,080ドット、157ppi、輝度非公表、sRGBカバー率96%、光沢、タッチ対応、スタイラス対応、Corning Gorilla Glass 6)ディスプレイが搭載されている。
実際にカラーキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で計測したところ、sRGBカバー率は99.1%、sRGB比は103.2%、Adobe RGBカバー率は74.7%、Adobe RGB比は76.5%、DCI-P3カバー率は75.9%、DCI-P3比は76.0%という結果が出た。つまりsRGBカバー率はスペック表に記載されている96%よりも3.1%も広かったわけだ。
ロットによって性能の異なる液晶パネルが採用されており、公式スペックは色域が狭い液晶パネルに合わせている可能性はある。しかし、それでもsRGBカバー率で96%を実現しているのなら、Web用コンテンツの色調整に利用できるだけの色域を備えている。
一方サウンド面については、立体的な音響効果と、低ノイズで豊かなサウンドを実現する「DTS:X Ultra」への対応が謳われているが、正直ボリュームも解像感も物足りなかった。72Whの大容量バッテリを搭載したり、豊富なインターフェイスを内蔵するために内部スペースが余裕がないのかもしれないが、LG gram 2-in-1の数少ない欠点の1つとして次期モデルではスピーカーが改善されることに期待したい。
総合ベンチマークでCore i7搭載機の約95%の性能を発揮
最後に性能をチェックしよう。今回は下記のベンチマークを実施している。
- 総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.0.2165」
- バッテリベンチマーク「PCMark 10 Modern Office Battery Life」
- 3Dグラフィックベンチマーク「3DMark v2.11.6866」
- CPU/OpenGLベンチマーク「CINEBENCH R15.0」
- CPUベンチマーク「CINEBENCH R20.060」
- 3Dゲームベンチマーク「ファイナルファンタジ-XIV: 漆黒の反逆者 ベンチマ-ク」
- ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 7.0.0」
- Adobe Lightroom Classic CCで100枚のRAW画像を現像
- Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出し
比較対象としては、「ThinkPad X1 Yoga Gen 5」」のベンチマークスコアを引用した。同世代の上位CPU「Core i7-10510U」(4コア8スレッド、1.80~4.90GHz)との性能差を確認するためだ。
下記が検証機の仕様と、その結果となる。
LG gram 2-in-1(14T90N-VR51J1) | ThinkPad X1 Yoga Gen 5 | |
---|---|---|
CPU | Core i5-10210U(4コア8スレッド、1.6~4.2GHz) | Core i7-10510U(4コア8スレッド、1.8~4.9GHz) |
GPU | Intel UHD Graphics(300MHz~1.1GHz) | Intel UHD Graphics(300MHz~1.15GHz) |
メモリ | DDR4-2666 SDRAM 8GB | LPDDR3-2133 SDRAM 16GB |
ストレ-ジ | 256GB PCIe NVMe SSD | 256GB PCIe NVMe SSD |
ディスプレイ | 14型、1,920×1,080ドット(157ppi) | 14型、3,840×2,160ドット(315ppi) |
TDP | 15W | 15W |
OS | Windows 10 Home 64bit バージョン1909 | Windows 10 Pro 64bit バージョン1909 |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 324.6×210.8×14.85~17.9mm | 323×218×15.5mm |
重量 | 約1,145g | 約1.36kg |
LG gram 2-in-1(14T90N-VR51J1) | ThinkPad X1 Yoga Gen 5 | |
---|---|---|
PCMark 10 v2.0.2165 | ||
PCMark 10 Score | 3,692 | 3,898 |
Essentials | 7,769 | 8,568 |
App Start-up Score | 11,338 | - |
Video Conferencing Score | 6,440 | - |
Web Browsing Score | 6,424 | - |
Productivity | 6,200 | 5,925 |
Spreadsheets Score | 6,938 | - |
Writing Score | 5,542 | - |
Digital Content Creation | 2,837 | 3,166 |
Photo Editing Score | 3,786 | - |
Rendering and Visualization Score | 1,681 | - |
Video Editting Score | 3,589 | - |
PCMark 10 Modern Office Battery Life | 14時間45分 | - |
3DMark v2.11.6866 | ||
Time Spy | 394 | - |
Fire Strike Ultra | 245 | - |
Fire Strike Extreme | 440 | - |
Fire Strike | 908 | 1,239 |
Night Raid | 4,399 | - |
Sky Diver | 3,571 | 4,895 |
CINEBENCH R15.0 | ||
OpenGL | 41.82 fps | - |
CPU | 532 cb | 698 cb |
CPU(Single Core) | 162 cb | 175 cb |
CINEBENCH R20.060 | ||
CPU | 1,123 pts | 1,622 pts |
CPU(Single Core) | 380 pts | 427 pts |
ファイナルファンタジ-XIV: 漆黒の反逆者 ベンチマ-ク | ||
1,920×1,080ドット 標準品質(ノ-トPC) | 1,545(設定変更を推奨) | 2,616 |
SSDをCrystalDiskMark 7.0.0で計測 | ||
1M Q8T1 シーケンシャルリード | 3,126.831 MB/s | 3,567.25 MB/s |
1M Q8T1 シーケンシャルライト | 985.245 MB/s | 2,986.43 MB/s |
1M Q1T1 シーケンシャルリード | 1315.050 MB/s | 2,198.76 MB/s |
1M Q1T1 シーケンシャルライト | 984.808 MB/s | 2,178 MB/s |
4K Q32T16 ランダムリ-ド | 611.339 MB/s | 898.14 MB/s |
4K Q32T16 ランダムライト | 821.088 MB/s | 420.34 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリ-ド | 47.642 MB/s | 46.66 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 170.585 MB/s | 137.88 MB/s |
Adobe Lightroom Classic CCで100枚のRAW画像を現像 | ||
7,952☓5,304ドット、カラ- - 自然 | 12分27秒45 | - |
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出し | ||
3,840×2,160ドット、30fps | 11分20秒25 | - |
まずCPU単体の性能については大きな差がついた。LG gram 2-in-1はThinkPad X1 Yoga Gen 5に対して、CINEBENCH R15.0のCPUスコアでは約76%に相当する532 cb、CINEBENCH R20.060のCPUスコアでは約69%に相当する1,123 cbにとどまっている。この差はCPU自体の性能差だけでなく、LG gram 2-in-1がピークパワーよりも低発熱や低消費電力を重視したチューニングとなっているためと思われる。
3Dグラフィックス性能も、LG gram 2-in-1はThinkPad X1 Yoga Gen 5に対して、3DMarkのFire Strikeでは約73%に相当する908、Sky Diverでは約73%に相当する3571という結果だ。
しかし総合ベンチマーク「PCMark 10」の総合スコアでは、LG gram 2-in-1はThinkPad X1 Yoga Gen 5に対して約95%に相当する3,692と差を大幅に縮めている。CPUベンチマーク、3Dグラフィックスベンチマークではともかく、実際の利用環境では体感できるほどの差はなさそうだ。
バッテリ駆動時間についてはディスプレイ輝度50%という条件で、PCMark 10 Modern Office Battery Lifeが14時間45分動作した。2in1だけでなく、クラムシェル型のノートパソコンを含めても、トップクラスのバッテリ駆動時間を備えているわけだ。
なお本体の発熱については、キーボード面で最大44.1℃、底面で最大51.9℃を記録した(室温24.3℃で測定)。底面の温度はかなり高いが、極端に高くなっているのは排気口で、底面全体の温度はそれほど上昇していない。膝上で利用するさいも排気口を避ければ、熱を不快に感じることはなさそうだ。
ピーク性能ではなくトータルバランスを重視する方におすすめ
Core i5搭載機のみということで、最上位モデルを指名買いするような方はガッカリしているかもしれないが、LG gram 2-in-1はバランスの取れた2in1だ。もちろん4K動画の書き出しや、RAW画像の現像などの高負荷な処理は荷が重いが、一般的な用途であれば十分な性能を備えている。
なにより2in1としての変形機構を備え、実測で14時間45分ものバッテリ駆動時間を実現し、カタログスペックで約1,145kgという重量に収めているのだから、まさにモバイル用途にピッタリのマシンだ。将来的にメモリ、ストレージ容量が物足りなくなっても、アップグレードサービスが用意されているから安心だ。
ピーク性能ではなく、2in1パソコンとしてのトータルバランスを重視する方に、LG gram 2-in-1(14T90N-VR51J1)は自信を持っておすすめできる1台だ。