Hothotレビュー
Zen 2搭載で120Hz液晶採用の高コスパ多目的ゲーミングノート「Legion 550」
2020年6月30日 10:10
注目のZen 2コアを採用したゲーミングノートPC
レノボ・ジャパンが7月17日に発売予定の「Legion 550」は、CPUにAMDのZen 2コアを採用したRyzen 5 4600Hを搭載するゲーミングノートPC。Zen 2コアは性能の高さで注目されており、搭載製品を待っていたという人も多いだろう。
AMD製のCPU搭載機は性能への期待と同時に、コストパフォーマンスの点でも期待度が高い。本機は想定販売価格を税別130,000円前後としており、ゲーミングノートとしても比較的安価な部類に入る。
今回は本機を発売前にお借りした。性能を確認するとともに、使用感も含めてお伝えしていきたい。
Zen 2だけではない充実のスペック
まずは「Legion 550」のスペックを確認しよう。
CPU(APU) | Ryzen 5 4600H(6コア/12スレッド、3~4GHz) |
---|---|
GPU | GeForce GTX 1650 Ti |
メモリ | 16GB DDR4-3200(8GB×2) |
SSD | 512GB(M.2 NVMe) |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | 15.6型非光沢液晶(IPSパネル、120Hz) |
解像度 | 1,920×1,080ドット |
OS | Windows 10 Home |
汎用ポート | USB 3.0 Type-C×1(DisplayPort出力機能つき)、USB 3.0×4 |
カードスロット | なし |
映像出力 | HDMI |
無線機能 | IEEE 802.11ax、Blunetooth 5.0 |
有線LAN | Gigabit Ethernet |
その他 | 前面100万画素カメラ、マイク、音声入出力など |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 約363.1×259.6×23.6mm |
重量 | 約2.3kg |
税別店頭価格 | 130,000円前後 |
CPUは6コア12スレッドのRyzen 5 4600H、GPUはGeForce GTX 1650 Ti。GPUや想定価格からすると、ゲーミングノートPCとしてはエントリークラスとなるが、16GBのメインメモリや512GBのNVMe SSD、さらには120Hz対応のIPS液晶パネル、IEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)対応の無線LANなど、かなり充実したスペックだ。
重量は約2.3kgで、サイズ的にも昨今のPCとしてはとくに小さいほうではないが、一昔前のゲーミングPCのような巨大・重量級という印象でもない。良くも悪くも「普通の(ゲーミングではない)ノートPC」という印象の外見だ。厚さは23.6mmでソリッドな形状なので、普段の持ち運びには何ら支障ない。
とくに小型をアピールする製品ではないためか、USB端子がType-Cを含めて計5個も用意されているのもユニーク。HDMIやGigabit Ethernetが本体背面に備えられているのも、昨今のゲーミングノートPCにしてはめずらしい(背面はなるべく広く排気口に使いたいため、端子は側面に用意する製品が多い)。
ノートPCの枠を超えたCPU性能
続いて各種ベンチマークテストを試してみる。利用したのは、「PCMark 10 v2.1.2177」、「3DMark v2.12.6949」、「VRMark v1.3.2020」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」、「STREET FIGHTER V ベンチマーク」、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」、「CINEBENCH R20」、「CrystalDiskMark 7.0.0」。
本機には性能に影響を与える「サーマル・モード」の設定があり、「パフォーマンス・モード」、「バランス・モード」、「静音モード」の3段階に切り替えられる。各種ベンチマークテストはこの3つのモードをすべて試した(バッテリライフテストを除く)。
結果を見ると、やはりCPUの性能の高さが光る。とくに「CINEBENCH R20」では、シングルコア・マルチコアの両方でデスクトップPCに引けを取らないほどの性能を発揮している。そのほかのテストでもCPUのテストが全体のスコアを引き上げており、Zen 2コアのすごさを見せつけている。
各モードの差を見ると、「静音モード」の一部で3Dグラフィックス系の性能が低い以外は、ほとんど同等という結果になった。「静音モード」では、テストによってはAPU内蔵のRadeon GPUで処理されていると思われ、一部で実行できないテストもあった。3Dグラフィックスを使うゲームでは「静音モード」にしないほうがいいだろう。
「パフォーマンス・モード」は説明によると、ファンの回転数を高くして性能を上げるとしているので、比較的短時間で終わるベンチマークテストでは差が見られなかったものと思われる。長時間のゲームプレイで、より最適な状態を保ちたい人は使うといい。ただしACアダプタ接続時のみ使用できる。
専用のカスタマイズツール「Lenovo Vantage」を使えば、ゲーム中だけ自動的に「パフォーマンス・モード」に切り替えることも可能。またゲーム起動時に不要な常駐ソフトなどを終了させる機能も用意されている。
バッテリ持続時間は、ディスプレイの明るさ50%の状態で、「PCMark 10」のアイドル時に15時間51分、オフィスユースで11時間42分、ゲームユースで1時間45分となった。オフィスワークなら充電せずに丸1日使えるほど優秀だ。ゲーム利用時はバッテリの消費が激しくなるが、低負荷時の節電性能が優秀なことの表れとも言える。
パフォーマンス・モード | バランス・モード | 静音モード | |
---|---|---|---|
「PCMark 10 v2.1.2177」 | |||
PCMark 10 | 5,099 | 5,024 | 5,046 |
Essentials | 9,022 | 9,073 | 8,957 |
Apps Start-up score | 11,077 | 11,185 | 10,881 |
Video Conferencing Score | 7,987 | 8,044 | 7,944 |
Web Browsing Score | 8,301 | 8,302 | 8,263 |
Productivity | 7,251 | 6,877 | 7,303 |
Spreadsheets Score | 9,208 | 8,110 | 9,071 |
Writing Score | 5,710 | 5,832 | 5,880 |
Digital Content Creation | 5,500 | 5,517 | 5,331 |
Photo Editing Score | 7,666 | 7,756 | 7,553 |
Rendering and Visualization Score | 5,212 | 5,223 | 4,857 |
Video Editing Score | 4,165 | 4,147 | 4,132 |
Idle Battery Life | - | 15時間51分 | - |
Modern Office Battery Life | - | 11時間42分 | - |
Gaming Battery Life | - | 1時間45分 | 2時間35分 |
「3DMark v2.12.6949 - Time Spy」 | |||
Score | 3,975 | 4,013 | 3,999 |
Graphics score | 3,701 | 3,745 | 3,744 |
CPU score | 6,863 | 6,752 | 6,528 |
「3DMark v2.12.6949 - Fire Strike」 | |||
Score | 9,244 | 9,347 | 3,079 |
Graphics score | 10.026 | 10,142 | 3,355 |
Physics score | 18,379 | 18,430 | 17,508 |
Combined score | 3,968 | 4,018 | 1,080 |
「3DMark v2.12.6949 - Night Raid」 | |||
Score | 27,932 | 28,219 | N/A |
Graphics score | 39,594 | 39,832 | N/A |
CPU score | 10,466 | 10,641 | N/A |
「3DMark v2.12.6949 - Sky Diver」 | |||
Score | 27,403 | 27,436 | 11,198 |
Graphics score | 31,997 | 32,024 | 10,842 |
Physics score | 16,279 | 16,363 | 14,014 |
Combined score | 26.056 | 25,901 | 10,616 |
「VRMark v1.3.2020 - Orange Room」 | |||
Score | 5,228 | 5,248 | 5,257 |
「VRMark v1.3.2020 - Cyan Room」 | |||
Score | 3,682 | 3,678 | 1,042 |
「VRMark v1.3.2020 - Blue Room」 | |||
Score | 1,130 | 1,128 | 1,145 |
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(高品質) | |||
3,840×2,160ドット | 1,605 | 1,602 | 343 |
1,920×1,080ドット | 4,138 | 4,178 | 854 |
「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(最高品質) | |||
1,920×1,080ドット | 10,245 | 10,139 | 2,738 |
「STREET FIGHTER V ベンチマーク」(最高) | |||
1,920×1,080ドット | 59.99FPS | 59.99FPS | 59.99FPS |
「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」(簡易設定6) | |||
1,920×1,080ドット | 26,818 | 26,480 | 23,452 |
「CINEBENCH R20」 | |||
CPU | 3,382pts | 3,378pts | 2,880pts |
CPU(Single Core) | 451pts | 454pts | 454pts |
ストレージはSKHynix製「HFM512GDHTNI-87A0B」が使われていた。シーケンシャルリードで2GB/sを超えるなど、十分高速なストレージとなっている。念のためこちらも「サーマル・モード」を切り替えてテストしたが、有意差は見られなかった。
キーボードやサウンドなど普段使いにも良質な設計
続いては使用感をお伝えする。本体はディスプレイ裏の天面部分が完全にフラットな形状で、マットブラックなカラーと相まってとても落ち着いた印象がある。ディスプレイ部より奥に出っ張った部分は少し細くなり段差ができるため、畳んで持つと手の収まりが悪いのが少々残念。
液晶はIPSパネルを採用しておりどの角度から見ても色相の変化はほぼないが、視野角はIPSパネルにしてはやや狭く、斜めから見ると暗く見えやすい(正面から見る分には何ら問題ない)。発色も鮮やかと言うほどではなく、液晶表面に強めの低反射コートをかけているように感じられる。派手さより実用性を求めている印象だ。
また120Hzの高リフレッシュレート対応で、ゲームはもちろん、ブラウジングでのスクロールなど普段使いでも滑らかな表示を実感できる。
キーボードは各キーの中央部がかすかにくぼんだ形状になっており、指になじむ。キーストロークはノートPCなりの浅さながら、はっきりしたクリック感がある。キーの端を叩いても入力が引っ掛かるようなこともなく、快適なキータッチだ。
テンキーがやや縦長の形状になっているものの、キー配置はオーソドックスで余裕がある。ノートPCの日本語キーボードとしてはかなり良質なレイアウトだと感じる。また方向キーを一段下にずらし、フルサイズで独立して確保しているのが好印象。指をホームポジションに置いた時、右手の邪魔になるのではとも思ったが、実際にさわってみるとまったく気にならない。
キーボードバックライトは全キーに白色LEDが搭載されており、キーの端から光が漏れるかたち。色や明るさの調整はできず、全キー一律でのオン/オフの切り替えのみとなる。派手さを求めたものではなく、暗所での視認性を高めるための実用性重視のものだ。
サウンドは左右の側面前方にあるスピーカーから流れる。小型のスピーカーで低音はほとんど出ていないものの、人の声はクリアで、左右のステレオ感もしっかりある。さらに「Lenovo Vantage」でDolbyオーディオを有効にすれば(初期値で有効だった)、とても良好なサラウンド感が得られ、低音の出なさもうまくまぎれている。ちょっとした動画鑑賞やゲームプレイなら、とくに不満なく利用できる品質だ。
またマイクも「Lenovo Vantage」の設定で、キーボードノイズ(キーを叩く音)の抑制や、使用者が個人か複数人かなど状況に応じた最適化もできる。ボイスチャットを使用しながらのゲームプレイや、テレワークでの利用などでも効果を発揮しそうだ。
エアフローは底面から吸気、背面と側面後方から排気となっている。オフィスワーク等の低負荷時にはほぼ無音だが、3Dゲーム等の高負荷時にはファンが高回転で回る。ファンノイズは昨今のノートPCにしては大きめで、音質はホワイトノイズのなかに甲高いものが少し混じる。スピーカーからゲームの音を大きめに出せばある程度はまぎれるが、快適に利用したいならヘッドフォンを使うほうがいい。
そのぶん排熱はがんばっている印象で、高負荷時でもキーボードの中段より上がほんのり温かくなる程度。W/A/S/Dキー付近はわずかに熱を感じるが、リストレスト部はほぼ温度変化がなく、ゲームプレイ時にも熱による不快感はほとんどない。
ゲーム以外の用途も考慮された無難なまとまりが魅力
本機はゲーミングPCにありがちな華美な装飾には目もくれず、実用性一辺倒で作り上げた、という印象だ。そこにはコストカットという大きな狙いも見えるが、実際に使ってみると、ゲーム以外の用途も考慮したためではないかと感じられる。
学校や会社に持ち込んでも違和感のない地味な外見、たわみのない程度に硬質な筐体、派手な色味はなくとも120HzのIPS液晶、入力しやすいキー配置の日本語キーボード、必要十分なキーボードバックライト、適度に良質なサウンド、「Lenovo Vantage」による個人個人のカスタマイズ性。決して最高級を感じさせるわけではないものの、“用途に合わせた具合の良さ”を狙っているのがわかる。
レノボは極めて幅広いPC製品を扱うなかで、さまざまなユーザーのニーズを把握し製品を改善してきた、膨大なノウハウを持っているはずだ。ゲーミングPCを作るさいにも、それらのノウハウを必要に応じて持ち込み、ローコストで実用性を高める努力をしているのだろう。
一見すると、無骨・無難・地味という印象を持つ本機だが、ターゲットユーザーのニーズを読み取って、コストと折り合いを付けつつ必要なものはギリギリのラインで盛り込み、1つのパッケージにまとめてきているのがわかる。少なくとも、コストのためにあきらめました、と感じさせる部分はどこにもない。世界一のPCメーカーの底力を見せつけられた気分だ。
とは言え、Zen 2 APUの圧倒的なパワーに疑いの余地はなく、本機の大きな魅力に違いない。そこそこな価格のゲーミングノートPCが欲しい人はもちろん、プログラミングなどでノートPCでも高性能なCPUが欲しい人、ゲーム以外にもPCの用途の幅が広い人には本機がマッチする。「製品選びに迷ったらこれでいいじゃん」となりそうな無難さが、密かに輝く1台だと思う。