Hothotレビュー

Zen 2搭載で120Hz液晶採用の高コスパ多目的ゲーミングノート「Legion 550」

注目のZen 2コアを採用したゲーミングノートPC

Legion 550

 レノボ・ジャパンが7月17日に発売予定の「Legion 550」は、CPUにAMDのZen 2コアを採用したRyzen 5 4600Hを搭載するゲーミングノートPC。Zen 2コアは性能の高さで注目されており、搭載製品を待っていたという人も多いだろう。

 AMD製のCPU搭載機は性能への期待と同時に、コストパフォーマンスの点でも期待度が高い。本機は想定販売価格を税別130,000円前後としており、ゲーミングノートとしても比較的安価な部類に入る。

 今回は本機を発売前にお借りした。性能を確認するとともに、使用感も含めてお伝えしていきたい。

Zen 2だけではない充実のスペック

 まずは「Legion 550」のスペックを確認しよう。

【表1】Legion 550のスペック
CPU(APU)Ryzen 5 4600H(6コア/12スレッド、3~4GHz)
GPUGeForce GTX 1650 Ti
メモリ16GB DDR4-3200(8GB×2)
SSD512GB(M.2 NVMe)
光学ドライブなし
ディスプレイ15.6型非光沢液晶(IPSパネル、120Hz)
解像度1,920×1,080ドット
OSWindows 10 Home
汎用ポートUSB 3.0 Type-C×1(DisplayPort出力機能つき)、USB 3.0×4
カードスロットなし
映像出力HDMI
無線機能IEEE 802.11ax、Blunetooth 5.0
有線LANGigabit Ethernet
その他前面100万画素カメラ、マイク、音声入出力など
本体サイズ(幅×奥行き×高さ)約363.1×259.6×23.6mm
重量約2.3kg
税別店頭価格130,000円前後

 CPUは6コア12スレッドのRyzen 5 4600H、GPUはGeForce GTX 1650 Ti。GPUや想定価格からすると、ゲーミングノートPCとしてはエントリークラスとなるが、16GBのメインメモリや512GBのNVMe SSD、さらには120Hz対応のIPS液晶パネル、IEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)対応の無線LANなど、かなり充実したスペックだ。

 重量は約2.3kgで、サイズ的にも昨今のPCとしてはとくに小さいほうではないが、一昔前のゲーミングPCのような巨大・重量級という印象でもない。良くも悪くも「普通の(ゲーミングではない)ノートPC」という印象の外見だ。厚さは23.6mmでソリッドな形状なので、普段の持ち運びには何ら支障ない。

 とくに小型をアピールする製品ではないためか、USB端子がType-Cを含めて計5個も用意されているのもユニーク。HDMIやGigabit Ethernetが本体背面に備えられているのも、昨今のゲーミングノートPCにしてはめずらしい(背面はなるべく広く排気口に使いたいため、端子は側面に用意する製品が多い)。

天面の端にロゴが入っている。全体としてはシンプルなデザイン
本体奥側はディスプレイ部より少し出っ張った形状になっている
前面には端子類はない
左側面にUSB端子とヘッドフォン端子
右側面にUSB端子と電源ランプ
背面には電源、HDMI、USB×3(うち1つはType-C)、Gigabit Ethernet
ACアダプタは170W出力で、重量が約410g、コードが約108g

ノートPCの枠を超えたCPU性能

 続いて各種ベンチマークテストを試してみる。利用したのは、「PCMark 10 v2.1.2177」、「3DMark v2.12.6949」、「VRMark v1.3.2020」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」、「STREET FIGHTER V ベンチマーク」、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」、「CINEBENCH R20」、「CrystalDiskMark 7.0.0」。

 本機には性能に影響を与える「サーマル・モード」の設定があり、「パフォーマンス・モード」、「バランス・モード」、「静音モード」の3段階に切り替えられる。各種ベンチマークテストはこの3つのモードをすべて試した(バッテリライフテストを除く)。

「サーマル・モード」は3段階に選択できる

 結果を見ると、やはりCPUの性能の高さが光る。とくに「CINEBENCH R20」では、シングルコア・マルチコアの両方でデスクトップPCに引けを取らないほどの性能を発揮している。そのほかのテストでもCPUのテストが全体のスコアを引き上げており、Zen 2コアのすごさを見せつけている。

 各モードの差を見ると、「静音モード」の一部で3Dグラフィックス系の性能が低い以外は、ほとんど同等という結果になった。「静音モード」では、テストによってはAPU内蔵のRadeon GPUで処理されていると思われ、一部で実行できないテストもあった。3Dグラフィックスを使うゲームでは「静音モード」にしないほうがいいだろう。

 「パフォーマンス・モード」は説明によると、ファンの回転数を高くして性能を上げるとしているので、比較的短時間で終わるベンチマークテストでは差が見られなかったものと思われる。長時間のゲームプレイで、より最適な状態を保ちたい人は使うといい。ただしACアダプタ接続時のみ使用できる。

 専用のカスタマイズツール「Lenovo Vantage」を使えば、ゲーム中だけ自動的に「パフォーマンス・モード」に切り替えることも可能。またゲーム起動時に不要な常駐ソフトなどを終了させる機能も用意されている。

 バッテリ持続時間は、ディスプレイの明るさ50%の状態で、「PCMark 10」のアイドル時に15時間51分、オフィスユースで11時間42分、ゲームユースで1時間45分となった。オフィスワークなら充電せずに丸1日使えるほど優秀だ。ゲーム利用時はバッテリの消費が激しくなるが、低負荷時の節電性能が優秀なことの表れとも言える。

【表2】ベンチマークスコア
パフォーマンス・モードバランス・モード静音モード
「PCMark 10 v2.1.2177」
PCMark 105,0995,0245,046
Essentials9,0229,0738,957
Apps Start-up score11,07711,18510,881
Video Conferencing Score7,9878,0447,944
Web Browsing Score8,3018,3028,263
Productivity7,2516,8777,303
Spreadsheets Score9,2088,1109,071
Writing Score5,7105,8325,880
Digital Content Creation5,5005,5175,331
Photo Editing Score7,6667,7567,553
Rendering and Visualization Score5,2125,2234,857
Video Editing Score4,1654,1474,132
Idle Battery Life-15時間51分-
Modern Office Battery Life-11時間42分-
Gaming Battery Life-1時間45分2時間35分
「3DMark v2.12.6949 - Time Spy」
Score3,9754,0133,999
Graphics score3,7013,7453,744
CPU score6,8636,7526,528
「3DMark v2.12.6949 - Fire Strike」
Score9,2449,3473,079
Graphics score10.02610,1423,355
Physics score18,37918,43017,508
Combined score3,9684,0181,080
「3DMark v2.12.6949 - Night Raid」
Score27,93228,219N/A
Graphics score39,59439,832N/A
CPU score10,46610,641N/A
「3DMark v2.12.6949 - Sky Diver」
Score27,40327,43611,198
Graphics score31,99732,02410,842
Physics score16,27916,36314,014
Combined score26.05625,90110,616
「VRMark v1.3.2020 - Orange Room」
Score5,2285,2485,257
「VRMark v1.3.2020 - Cyan Room」
Score3,6823,6781,042
「VRMark v1.3.2020 - Blue Room」
Score1,1301,1281,145
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(高品質)
3,840×2,160ドット1,6051,602343
1,920×1,080ドット4,1384,178854
「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(最高品質)
1,920×1,080ドット10,24510,1392,738
「STREET FIGHTER V ベンチマーク」(最高)
1,920×1,080ドット59.99FPS59.99FPS59.99FPS
「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」(簡易設定6)
1,920×1,080ドット26,81826,48023,452
「CINEBENCH R20」
CPU3,382pts3,378pts2,880pts
CPU(Single Core)451pts454pts454pts

 ストレージはSKHynix製「HFM512GDHTNI-87A0B」が使われていた。シーケンシャルリードで2GB/sを超えるなど、十分高速なストレージとなっている。念のためこちらも「サーマル・モード」を切り替えてテストしたが、有意差は見られなかった。

パフォーマンス・モード
バランス・モード
静音モード

キーボードやサウンドなど普段使いにも良質な設計

 続いては使用感をお伝えする。本体はディスプレイ裏の天面部分が完全にフラットな形状で、マットブラックなカラーと相まってとても落ち着いた印象がある。ディスプレイ部より奥に出っ張った部分は少し細くなり段差ができるため、畳んで持つと手の収まりが悪いのが少々残念。

 液晶はIPSパネルを採用しておりどの角度から見ても色相の変化はほぼないが、視野角はIPSパネルにしてはやや狭く、斜めから見ると暗く見えやすい(正面から見る分には何ら問題ない)。発色も鮮やかと言うほどではなく、液晶表面に強めの低反射コートをかけているように感じられる。派手さより実用性を求めている印象だ。

 また120Hzの高リフレッシュレート対応で、ゲームはもちろん、ブラウジングでのスクロールなど普段使いでも滑らかな表示を実感できる。

斜めから見ても色相の変化はないものの、IPSパネルにしては視野角はやや狭い
ディスプレイはほぼ180度開く。本体にそれなりの重量があるので、ディスプレイを大きく開いてもバランスは悪くない

 キーボードは各キーの中央部がかすかにくぼんだ形状になっており、指になじむ。キーストロークはノートPCなりの浅さながら、はっきりしたクリック感がある。キーの端を叩いても入力が引っ掛かるようなこともなく、快適なキータッチだ。

 テンキーがやや縦長の形状になっているものの、キー配置はオーソドックスで余裕がある。ノートPCの日本語キーボードとしてはかなり良質なレイアウトだと感じる。また方向キーを一段下にずらし、フルサイズで独立して確保しているのが好印象。指をホームポジションに置いた時、右手の邪魔になるのではとも思ったが、実際にさわってみるとまったく気にならない。

 キーボードバックライトは全キーに白色LEDが搭載されており、キーの端から光が漏れるかたち。色や明るさの調整はできず、全キー一律でのオン/オフの切り替えのみとなる。派手さを求めたものではなく、暗所での視認性を高めるための実用性重視のものだ。

テンキーを狭めて方向キーを1段下げるなど、日本語入力への配慮が感じられるキーボードレイアウト
キーボードバックライトは白単色で、全体のオン/オフ切り替えのみ
タッチパッド部はボタンが内蔵されたタイプ。リストレスト部はしっとりしたラバーコートが施されている

 サウンドは左右の側面前方にあるスピーカーから流れる。小型のスピーカーで低音はほとんど出ていないものの、人の声はクリアで、左右のステレオ感もしっかりある。さらに「Lenovo Vantage」でDolbyオーディオを有効にすれば(初期値で有効だった)、とても良好なサラウンド感が得られ、低音の出なさもうまくまぎれている。ちょっとした動画鑑賞やゲームプレイなら、とくに不満なく利用できる品質だ。

 またマイクも「Lenovo Vantage」の設定で、キーボードノイズ(キーを叩く音)の抑制や、使用者が個人か複数人かなど状況に応じた最適化もできる。ボイスチャットを使用しながらのゲームプレイや、テレワークでの利用などでも効果を発揮しそうだ。

「Lenovo Vantage」でサウンドの調整ができる
マイクの最適化も可能

 エアフローは底面から吸気、背面と側面後方から排気となっている。オフィスワーク等の低負荷時にはほぼ無音だが、3Dゲーム等の高負荷時にはファンが高回転で回る。ファンノイズは昨今のノートPCにしては大きめで、音質はホワイトノイズのなかに甲高いものが少し混じる。スピーカーからゲームの音を大きめに出せばある程度はまぎれるが、快適に利用したいならヘッドフォンを使うほうがいい。

 そのぶん排熱はがんばっている印象で、高負荷時でもキーボードの中段より上がほんのり温かくなる程度。W/A/S/Dキー付近はわずかに熱を感じるが、リストレスト部はほぼ温度変化がなく、ゲームプレイ時にも熱による不快感はほとんどない。

底面は大きくメッシュ状の穴があり、左右にファンが見える
背面と側面後方から排気される

ゲーム以外の用途も考慮された無難なまとまりが魅力

 本機はゲーミングPCにありがちな華美な装飾には目もくれず、実用性一辺倒で作り上げた、という印象だ。そこにはコストカットという大きな狙いも見えるが、実際に使ってみると、ゲーム以外の用途も考慮したためではないかと感じられる。

 学校や会社に持ち込んでも違和感のない地味な外見、たわみのない程度に硬質な筐体、派手な色味はなくとも120HzのIPS液晶、入力しやすいキー配置の日本語キーボード、必要十分なキーボードバックライト、適度に良質なサウンド、「Lenovo Vantage」による個人個人のカスタマイズ性。決して最高級を感じさせるわけではないものの、“用途に合わせた具合の良さ”を狙っているのがわかる。

 レノボは極めて幅広いPC製品を扱うなかで、さまざまなユーザーのニーズを把握し製品を改善してきた、膨大なノウハウを持っているはずだ。ゲーミングPCを作るさいにも、それらのノウハウを必要に応じて持ち込み、ローコストで実用性を高める努力をしているのだろう。

 一見すると、無骨・無難・地味という印象を持つ本機だが、ターゲットユーザーのニーズを読み取って、コストと折り合いを付けつつ必要なものはギリギリのラインで盛り込み、1つのパッケージにまとめてきているのがわかる。少なくとも、コストのためにあきらめました、と感じさせる部分はどこにもない。世界一のPCメーカーの底力を見せつけられた気分だ。

 とは言え、Zen 2 APUの圧倒的なパワーに疑いの余地はなく、本機の大きな魅力に違いない。そこそこな価格のゲーミングノートPCが欲しい人はもちろん、プログラミングなどでノートPCでも高性能なCPUが欲しい人、ゲーム以外にもPCの用途の幅が広い人には本機がマッチする。「製品選びに迷ったらこれでいいじゃん」となりそうな無難さが、密かに輝く1台だと思う。