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GeForce GTX 1650 Max-Q搭載で1.29kgの軽さが魅力的な「MSI Prestige 14」
2020年5月22日 11:00
エムエスアイコンピュータージャパンは、クリエイター向けノートPC新モデル「Prestige 14-A10SC-165JP」(以下Prestige 14)を発売した。14型液晶、第10世代Core i7、GeForce GTX 1650 with Max-Q Designを搭載しつつ、13型クラスのコンパクト筐体と約1.29kgの軽さを実現する点が大きな特徴となっている。すでに発売済みで、価格は186,780円。
シンプルながら高級感のある筐体
ではまず、Prestige 14の外観からチェックしていこう。
MSIのクリエイター向けノートPCは、基本的にシンプルなデザインを採用する例が多い。Prestige 14についても同様で、筐体色はすっきりとした「ピュアホワイト」となっており、見た目はかなりシンプルだ。しかし、天板側面はダイヤモンドカット加工を施すとともにシルバーを配色し、本体側面にもシルバーのラインを用意することで、シンプルながら高級感も感じられる。
天板はフラットで、こちらもぱっと見はシンプルな印象だが、上部にMSIのゲーミングPCを象徴するドラゴンエンブレムをシルバーで配置している。通常ドラゴンエンブレムはレッドだが、シルバーとすることで全体的なデザイン性を崩しておらず、逆にいいアクセントになっているようにも感じる。
なお、バリエーションモデルとして、筐体色にカーボングレーやローズピンクを採用するモデルもラインナップしている。筐体色にもこだわりたいのであれば、そちらもチェックしてもらいたい。
サイズは319×215×15.9mm(幅×奥行き×高さ)。14型ディスプレイ搭載モデルとしては十分にコンパクトで、数年前の13.3型モバイルノートPCとほぼ同等と考えていい。また重量は公称1.29kg、実測で1,266.5gだった。
軽さを追求したモバイルノートでは、14型クラスで1kgを切る軽さを実現する製品も存在するが、14型で1.3kgを切る重量であれば、十分モバイル用途として競争力がある。なによりPrestige 14は、ディスクリートGPUも搭載しクリエイターをターゲットとした優れた性能を特徴としていることを考えると、この軽さは大きな魅力となるはずだ。
筐体素材にはマグネシウム合金を採用しており、軽さと堅牢性を両立。米国国防総省が定める調達基準「MIL-STD-810G」に準拠する堅牢性試験もクリアしているとのことで、実際にディスプレイ部や本体をやや強くひねってみても歪みは非常に少なく、十分な堅牢性を実感できる。これなら不安なく持ち歩けるはずだ。
フルHD表示対応の14型液晶を搭載
ディスプレイは、1,920×1,080ドット表示対応の14型液晶を採用。パネルの種類はIPSで、十分な広視野角を確保。また、クリエイターをターゲットとしていることもあり、sRGBカバー率100%の広色域表示にも対応。実際にデジカメ写真などを表示してみたが、かなりビビッドで鮮やかな発色が確認できた。また高コントラストで暗い場所から明るい場所まで潰れることなくメリハリのある表示が行なえている点も、クリエイターにとって多いに心強いと感じる。
ディスプレイ表面は非光沢処理となっている。それでも光沢液晶と比べて鮮やかさが失われているとは感じない。もちろん外光の映り込みは最小限に抑えられており、映像処理はもちろん文字入力も快適に行なえる。
なお、上位モデルには4K(3,840×2,160ドット)表示対応の液晶ディスプレイを搭載するものも用意される。高解像度表示が可能なのはもちろん、Adobe RGBカバー率100%を実現している点も大きな特徴となっているため、用途に応じて選択すればいいだろう。
キーボードは一部の配列が気になる
キーボードは、アイソレーションタイプのものを搭載する。主要キーのキーピッチは約19mmフルピッチを確保。ストロークは約1.5mmと薄型ノートPCとして標準的だ。タッチは軽めだが、クリック感はしっかりとしており、打鍵感も良好だ。打鍵時の音は、カチャカチャといった不快な音はほとんどなく、比較的静かな部類に入る。また、標準でキーボードバックライトも搭載するため、暗い場所でも快適にタイピング可能だ。
合わせて、ディスプレイを開くと本体後方が持ち上がり、キーボード面に約5度の角度がつく点も、快適にタイピングが行なえる理由の1つとなっている。
キー配列は、ほぼ標準配列に準拠しているものの、Enterキー付近やスペースキー左右の一部キーは隣のキーと隣接している点が気になる。これは、英語配列のキーボードをベースに日本語配列を実現しているためだが、できればしっかり日本語化してもらいたいと思う。合わせて、Enterキー右にキーを配置する点も少々残念だ。これについては慣れでどうにかなる部分もあるが、やはりEnterキー右側へのキー配置は避けてもらいたいと感じる。
ポインティングデバイスは、クリックボタン一体型のタッチパッドを採用。横に広い、かなり面積の大きなタッチパッドを採用しており、ジェスチャー操作にも対応しているので、操作性は申し分ない。クリエイターをターゲットとしていることを考えると、タッチパッドはそれほど重視されないと思うが、外出時などマウスの利用が難しい場面では、十分に活躍してくれるだろう。もちろん、ワンタッチでタッチパッドの動作をオフにできるため、誤動作の心配もない。
Core i7-10710UとGeForce GTX 1650 with Max-Q Designを標準搭載
Prestige 14の搭載GPUは、第10世代(Comet Lake)Core i7-10710Uを採用する。TDP 15WのUプロセッサながら6コア12スレッド処理に対応しており、動画エンコードなどマルチスレッド処理を行なう場合には大きな威力を発揮する。メモリはLPDDR3-2133を標準で16GB搭載している。クリエイター向けということで、標準で32GB搭載でもよかったように思うが、16GBでも必要十分といったところだろう。内蔵ストレージは、容量512GBのNVMe/PCIe SSDを搭載する。
ディスクリートGPUは、NVIDIAのGeForce GTX 1650 with Max-Q Design(ビデオメモリはGDDR5 4GB)を搭載。CPU内蔵グラフィックス機能に比べると圧倒的な描画能力を備えている。ハイエンドGPUではないが、筐体サイズや軽さを考えると申し分なく、静止画や動画、3Dグラフィックスを扱うクリエイターにとってこの点が大きな魅力となるはずだ。
薄型PCに高性能CPUやGPUを搭載するときに気になるのが冷却能力だ。Prestige 14では、内部に高性能クーラーを搭載するとともに、底面に大きく用意された吸気口からフレッシュな空気を取り入れ、キーボード後方から排出するエアフローを実現。加えて、ディスプレイを開くと後方がリフトアップすることで底面に大きな空間が確保でき、吸気能力が高められる。そのため、冷却能力についても不安がない。
無線機能は、IEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)準拠の無線LANとBluetooth 5.0を標準搭載する。無線LANはWi-Fi 6接続時で最大2.4Gbpsの高速通信が可能となっており、有線LANを利用せずとも高速なデータ通信が可能だ。
ポート類は、左側面にThunderbolt 3×2とmicroSDカードスロットを、右側面にオーディオジャックとUSB 2.0×2をそれぞれ用意。Thunderbolt 3は2ポートともUSB PD対応で、付属ACアダプタを接続することで内蔵バッテリの充電や本体への給電が可能だ。映像出力もThunderbolt 3ポート経由で行なうようになっており、外部ディスプレイを2台接続して利用可能だ。
ところで、本体に用意されるポート類は必要最小限という印象で、有線LANがなかったり、右側面のUSB Type-AがUSB 2.0となっている点は少々残念に感じる。ただ、標準でGigabit Ethernet、SDカードスロット、USB 3.0×2を拡張する「Type Cマルチポートハブ」が付属しており、そちらを利用することでポート不足は改善できる。
生体認証機能は、ディスプレイ上部にWindows Hello対応の顔認証用カメラと、タッチパッド左上角に指紋認証センサーを搭載する。顔認証と指紋認証のどちらでも認証可能なので、利便性を高められる点はうれしい。
付属ACアダプタは、Thunderbolt 3ポートに接続して利用する、USB PD対応のものが付属する。出力は最大90W。汎用のUSB PD対応ACアダプタも利用可能で、出力61Wのアダプタでも給電は可能だったが、高負荷時には給電能力不足となるため、できるかぎり付属ACアダプを利用したい。
ただし、このACアダプタはサイズが大きいだけでなく、付属電源ケーブルが太く重いものとなっており、実測での重量が電源ケーブル込みで435gとかなり重い点はかなり残念だ。モバイル用途もターゲットとなっていることを考えると、できればもっと小型軽量なACアダプタを用意してもらいたいと思う。
このほか、専用スリーブケースも付属する。合成皮革を利用したケースも本体同様にシンプルな印象だ。本体にジャストフィットし、本体を保護しつつ持ち歩けるはずだ。
ミドルレンジのクリエイター向けPCとして必要十分な性能を発揮
では、ベンチマークテストの結果を紹介しよう。今回利用したベンチマークソフトは、UL LLCの「PCMark 10 v2.0.2177」、「3DMark Professional Edition v2.11.6866」、Maxonの「CINEBENCH R20.060」の3種類だ。比較として、日本HPの「Spectre x 360 13 WWANモデル」の結果も掲載する。
Prestige-14-A10SC-165JP ユーザーシナリオ「バランス」 ファン「自動」 | Prestige-14-A10SC-165JP ユーザーシナリオ「高性能」 ファン「Cooler Boost」 | HP Spectre x 360 13 WWANモデル | |
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CPU | Core i7-10710U(1.10/4.60GHz) | Core i7-1065G7(1.30/3.90GHz) | |
チップセット | ― | ||
ビデオチップ | GeForce GTX 1650 with Max-Q Design | Intel Iris Plus Graphics | |
メモリ | LPDDR3-2133 SDRAM 16GB | LPDDR4x-3200 SDRAM 16GB | |
ストレージ | 512GB SSD(NVMe/PCIe) | 1TB SSD(PCIe) | |
OS | Windows 10 Home 64bit | Windows 10 Pro 64bit | |
PCMark 10 | v2.0.2177 | v2.0.2144 | |
PCMark 10 Score | 4815 | 5421 | 4398 |
Essentials | 8180 | 9192 | 9311 |
App Start-up Score | 9895 | 12200 | 12925 |
Video Conferencing Score | 7258 | 7660 | 8008 |
Web Browsing Score | 7624 | 8312 | 7799 |
Productivity | 6800 | 7197 | 6797 |
Spreadsheets Score | 8392 | 8747 | 7359 |
Writing Score | 5510 | 5922 | 6279 |
Digital Content Creation | 5446 | 6538 | 3648 |
Photo Editing Score | 5651 | 6186 | 5142 |
Rendering and Visualization Score | 7850 | 10800 | 2398 |
Video Editting Score | 3643 | 4184 | 3939 |
CINEBENCH R20.060 | |||
CPU | 1449 | 2045 | 1590 |
CPU (Single Core) | 410 | 418 | 431 |
3DMark Professional Edition | v2.11.6866 | v2.11.6846 | |
Night Raid | 19436 | 24046 | 9048 |
Graphics Score | 32840 | 36338 | 9742 |
CPU Score | 5867 | 8244 | 6446 |
Sky Diver | 18562 | 21755 | 9580 |
Graphics Score | 24792 | 25497 | 9527 |
Physics Score | 8378 | 12367 | 9498 |
Combined score | 17734 | 22622 | 10136 |
Time Spy | 2881 | 3078 | - |
Graphics Score | 2780 | 2855 | - |
CPU Score | 3633 | 5536 | - |
結果を見ると、Ice LakeことCore i7-1065G7搭載の「Spectre x 360 13」に比べて、3Dグラフィックス関連のテストでは大きく上回っているものの、CPU処理が中心のテストでは一部劣っている部分が見られる。CPUのコア数やターボブースト時の動作クロックではPrestige 14のCore i7-10710Uのほうが優れていることを考えると、この結果はやや物足りないという印象だ。
ただ、これは標準設定のままテストを行なったものだ。標準設定では、ユーザーシナリオが「バランス」、空冷ファンが比較的静かに回転する「自動」に設定されており、放熱が追いつかずにCPUやGPUの性能を最大限引き出せていないものと思われる。そこで、専用ユーティリティ「Creator Center」でユーザーシナリオを「高性能」、ファンの動作モードを最強となる「Cooler Boost」に設定して再度計測してみたところ、スコアが大きく上昇。つまり、これがPrestige 14本来の性能というわけだ。このスコアであれば、クリエイター向けPCとして十分納得できる。
ただし、ファンの動作モードを「Cooler Boost」に設定した場合には、当然ながら動作音がかなり大きくなる。とくに風切り音が一気に大きくなり、かなりうるさく感じてしまう。そのため、普段はファンの動作モードを「自動」に設定しておき、高負荷の作業を行なう場合にのみ動作モードを「Cooler Boost」に切り替えて利用するのがおすすめだ。
続いてバッテリ駆動時間だ。Prestige 14には容量4,600mAhのリチウムイオンバッテリが搭載され、公称の駆動時間は最大10時間(JEITAバッテリー動作時間測定法 Ver2.0での数字)とされている。
それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、電源モードを「より良いバッテリー」、バックライト輝度を50%、「Creator Center」はユーザーシナリオを「バランス」、ファン動作モード「自動」に設定し、キーボードバックライトをオフ、無線LANとWWANをいずれも有効にした状態で、PCMark 10のBatteryテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」を利用して計測したところ、8時間16分の駆動を確認した。
本格モバイルPCと比べてやや見劣りするのは事実だが、実測でこれだけの駆動時間があれば、通常外出時の利用で不安を感じることはほぼないはずで、大きな不満は感じない。
高性能PCを持ち運びたい人におすすめ
Prestige 14は、クリエイター向けのミドルレンジノートPCとして十分なスペックを内蔵しつつ、重量1.29kgの小型軽量筐体を実現することで、本格的なモバイルPCとしても十分活用できるノートPCに仕上がっている。キーボードには少々気になる部分もあるが、性能面やディスプレイの発色性能は、プロのクリエイターも納得だろう。
また、モバイルPCでも多少重くてもいいので性能を追求したいと考える人にとっても、魅力的と感じる。合わせて、販売価格が19万円を下回っており、コストパフォーマンスも優秀だ。そのため、クリエイターが仕事に使う十分な性能を備える軽量なPCとしてはもちろん、高性能モバイルPCを探している人など広くおすすめしたい。