Hothotレビュー

10コア化でRyzenとどこまで渡り合える? 「Core i9-10900K」を検証

 Intelは5月20日より、Comet Lake-Sことデスクトップ向け第10世代Coreプロセッサの販売を開始する。今回、発売に先立ってComet Lake-Sの最上位モデル「Core i9-10900K」と、「Core i7-10700」および「Core i5-10600K」をテストする機会が得られたので、ベンチマークテストで性能を検証した。

ラインナップに10コアCPUが加わったComet Lake-S

 IntelのComet Lake-Sことデスクトップ向け第10世代Coreプロセッサは、Comet Lakeアーキテクチャに基づいて14nmプロセスで製造されたCPU。

 第9世代CoreプロセッサであるCoffee Lake-Sと同じくSkylakeアーキテクチャを改良したCPUだが、最上位のCore i9のCPUコア数は8コアから10コアに増加し、CPUソケットもLGA1200に変更された。

Core i9-10900K(左)と、Core i9-9900K。ソケットの変更に伴い、切り欠きの位置が変更されている
LGA1200対応のCore i9-10900Kと、LGA1151対応のCore i9-9900Kではランドの位置や数が異なっている

 今回テストするComet Lake-Sは、最上位モデルとなる10コア20スレッドCPU「Core i9-10900K」のほか、TDP 65Wの8コア16スレッドCPU「Core i7-10700」、6コア12スレッドCPU「Core i5-10600K」の3モデル。各CPUの主なスペックは以下のとおり。

【表1】Core i9-10900K/Core i7-10700/Core i5-10600Kのおもな仕様
モデルナンバーCore i9-10900KCore i7-10700Core i5-10600K
CPUアーキテクチャComet Lake
製造プロセス14nm
コア数1086
スレッド数201612
L3キャッシュ20MB16MB12MB
ベースクロック3.7GHz2.9GHz4.1GHz
最大ブーストクロック5.3GHz4.8GHz4.8GHz
Turbo Boost Max 3.05.2GHz4.8GHz
Thermal Velocity Boost5.3GHz
対応メモリDDR4-2933 (2ch)DDR4-2933 (2ch)DDR4-2666 (2ch)
PCI ExpressPCIe 3.0 x16PCIe 3.0 x16PCIe 3.0 x16
内蔵GPUIntel UHD Graphics 630Intel UHD Graphics 630Intel UHD Graphics 630
TDP125W65W125W
対応ソケットLGA1200LGA1200LGA1200
価格488ドル323ドル262ドル
10コア20スレッドCPU「Core i9-10900K」
Core i9-10900KのCPU-Z実行画面
8コア16スレッドCPU「Core i7-10700」
Core i7-10700のCPU-Z実行画面
6コア12スレッドCPU「Core i5-10600K」
Core i5-10600KのCPU-Z実行画面

Intel Z490チップセット搭載マザーボード「ASUS TUF GAMING Z490-PLUS (WI-FI)」

 新CPUソケットであるLGA1200を採用するComet Lake-Sには、LGA1200向け新チップセットであるIntel 400シリーズチップセットを搭載したマザーボードを組み合わせる必要がある。

 今回のテストでは、ASUSより借用したIntel Z490チップセット搭載マザーボード「TUF GAMING Z490-PLUS (WI-FI)」を使用して、Comet Lake-Sの検証を行なう。

Intel Z490チップセット搭載マザーボード「ASUS TUF GAMING Z490-PLUS (WI-FI)」
新CPUソケットのLGA1200。CPUクーラーの固定方法は従来同様で、LGA115x系ソケット対応CPUクーラーが利用できる

 ASUS TUF GAMING Z490-PLUS (WI-FI)は、高耐久ゲーミングブランドである「TUF GAMING」シリーズに属するATXマザーボードで、販売価格は約26,800円(税込)。

 ゲーミングシリーズとしてはエントリークラスに位置するTUF GAMINGだが、DrMOS採用の12+2フェーズVRMや、Wi-Fi 6(Intel Wi-Fi 6 AX201)を搭載しており、第10世代Coreプロセッサに相応しい機能と品質を備えている。

大型ヒートシンクを搭載したVRMは、DrMOSを採用した12+2フェーズ仕様
バックパネルインターフェイス側にWi-Fi 6モジュール「Intel Wi-Fi 6 AX201」を搭載

テスト機材

 Comet Lake-Sの比較用CPUには、第9世代Coreプロセッサ(Coffee Lake-S)の8コア16スレッドCPU「Core i9-9900K」のほか、AMDの8コア16スレッドCPU「Ryzen 7 3800X」と、16コア32スレッドCPU「Ryzen 9 3950X」を用意した。

 CPUクーラーには240mmラジエーター搭載オールインワン水冷「ASUS ROG RYUJIN 240」を利用し、メモリは各CPUの最大対応メモリクロックで動作させている。その他の機材については以下のとおり。

【表2】テスト機材一覧
CPUCore i9-10900KCore i7-10700Core i5-10600KCore i9-9900KRyzen 7 3800XRyzen 9 3950X
コア数/スレッド数10/208/166/128/168/1616/32
CPUパワーリミットPL1:125W、PL2:250W、Tau:56秒PL1:65W、PL2:224W、Tau:28秒PL1:125W、PL2:182W、Tau:56秒PL1:65W、PL2:210W、Tau:28秒PPT:142W、TDC:95A、EDC:140A
CPUクーラーASUS ROG RYUJIN 240 (ファンスピード=100%)
マザーボードASUS TUF GAMING Z490-PLUS (WI-FI) [UEFI:0704]ASUS TUF Z390-PLUS GAMING [UEFI:2606]ASUS TUF GAMING X570-PLUS (WI-FI) [UEFI:1407]
メモリDDR4-2933 16GB×2 (2ch、21-21-21-47、1.20V)DDR4-2666 16GB×2 (2ch、19-19-19-43、1.20V)DDR4-3200 16GB×2 (2ch、22-22-22-53、1.20V)
ビデオカードASUS ROG-STRIX-RTX2080-O8G-GAMING (GeForce RTX 2080 8GB)
システム用SSDCORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4)CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4)
アプリケーション用SSDCORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4)CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4)
電源CORSAIR RM850 CP-9020196-JP (850W/80PLUS Gold)
グラフィックスドライバGeForce Game Ready Driver 445.87 DCH (26.21.14.4587)
OSWindows 10 Pro 64bit (Ver 1909 / build 18363.815)
電源プラン高パフォーマンスAMD Ryzen Balanced
室温約25℃
Core i9-9900KのCPU-Z実行画面
Ryzen 7 3800XのCPU-Z実行画面
Ryzen 9 3950XのCPU-Z実行画面
ASUS ROG-STRIX-RTX2080-O8G-GAMINGのGPU-Z実行画面

ベンチマーク結果

 それでは、ベンチマークテストの結果を紹介しよう。

 今回実施したベンチマークテストは、「CINEBENCH R20(グラフ01)」、「CINEBENCH R15(グラフ02)」、「Blender Benchmark(グラフ03)」、「V-Ray Benchmark(グラフ04)」、「やねうら王(グラフ05)」、「HandBrake(グラフ06)」、「TMPGEnc Video Mastering Works 7(グラフ07~08)」、「PCMark 10(グラフ09)」、「SiSoftware Sandra(グラフ10~17)」、「3DMark(グラフ18~22)」、「VRMark(グラフ23~24)」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク(グラフ25)」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(グラフ26)」、「Forza Horizon 4(グラフ27)」、「F1 2019(グラフ28)」、「フォートナイト(グラフ29)」、「レインボーシックス シージ(グラフ30)」、「モンスターハンターワールド : アイスボーン(グラフ31)」。

CINEBENCH

 CPUの3DCGレンダリング性能を測定するCINEBENCH。今回は最新版のCINEBENCH R20と、旧バージョンのCINEBENCH R15でテストを実行した。

 CINEBENCH R20において、Core i9-10900Kはマルチスレッド(All Core)とシングルスレッド(Single Core)の両方で、Ryzen 9 3950Xに次ぐ2番手の結果を記録。マルチスレッドではRyzen 9 3950Xの7割程度のスコアに留まるが、シングルスレッドは遜色ない結果となっている。

 一方、Core i5-10600KはCore i7-10700をマルチスレッドテストでも上回っており、コア数差を覆す下克上を達成している。これは、パワーリミットの設定上、Core i7-10700がTDP 65Wに制限された状態で動作する時間が長いためであると考えられる。ちなみに、Core i9-10900Kはマルチスレッドテストを50秒少々で完了しており、同CPUのスコアは250Wの電力消費を許容するPL2動作のみで記録されたものとなっている。

【グラフ01】CINEBENCH R20

 CINEBENCH R15では、Core i9-10900Kがシングルスレッドテストでトップスコアを獲得しており、2番手のRyzen 9 3950Xを約6%上回った。マルチスレッドテストではRyzen 9 3950X比で約65%となる2,632を記録して2番手のスコアを記録している。

 Core i7-10700は、CINEBENCH R20で後れを取ったCore i5-10600Kに対して、マルチスレッドテストで約18%差をつけて上回った。CINEBENCH R15は処理時間が短いため、実行時間に対するPL2動作の時間が相対的に長くなった結果だろう。ただ、それでもRyzen 7 3800Xには約27%の差をつけられている。

【グラフ02】CINEBENCH R15

Blender Benchmark

 続いて紹介するのは、3DCGソフト「Blender」のオフィシャルベンチマークソフト「Blender Benchmark」の結果だ。

 最速を記録したのはRyzen 9 3950Xで、Core i9-10900Kはそれに次ぐ2番手のタイムを記録した。3番手のRyzen 7 3800Xに対するアドバンテージは約12~25%で、処理時間の長いテストでは差が縮まっている。

 Core i5-10600Kは、すべてのテストでCore i7-10700より短時間で処理を完了しており、処理速度の差は約1~6%となっている。CINEBENCH R20に続いてCore i5-10600Kがコア数差を覆した格好で、Core i7-10700にとってPL1動作時の65W制限が大きな枷となっていることが伺える。

【グラフ03】Blender Benchmark

V-Ray Benchmark

 レンダリングエンジンV-Rayのオフィシャルベンチマークソフト「V-Ray Benchmark」では、CPUを使用する「V-RAY」の実行結果を取得した。

 V-RAYのベンチマーク実行時間は1分間で統一されていることもあり、大部分をPL2動作で乗り切れるCore i9-10900Kは、3番手のRyzen 7 3800Xに約27%の差をつけ、Ryzen 9 3950Xに次ぐ2番手のスコアを記録した。一方、Core i7-10700はCore i5-10600Kに約9%の差をつけて全体5番手のスコアを記録している。

【グラフ04】V-Ray Benchmark v4.10.07 「V-RAY (CPU)」

将棋ソフト「やねうら王」

 将棋ソフトの「やねうら王」では、KPPT型とNNUE型の評価関数でそれぞれベンチマークコマンドを実行した。ベンチマークコマンド中の「nT」は、各CPUのスレッド数を入力している。

 マルチスレッドテストでトップに立ったのはRyzen 9 3950Xで、Core i9-10900Kは全体2番手の結果を記録した。Core i7-10700はCore i5-10600Kに約3~8%差をつけて5番手となっている。

 シングルスレッドテストでは、Core i9-10900Kが全体ベストのスコアを記録。2番手がCore i9-9900Kで、以下Core i5-10600K、Core i7-10700と続いている。

【グラフ05】やねうら王 v4.89

動画エンコードソフト「HandBrake」

 オープンソースの動画エンコードソフト「HandBrake」では、フルHD(1080p)と4K(2160p)の動画ソースをYouTube向けプリセットでエンコードするのに掛かった時間を測定した。

 Core i9-10900KのタイムはRyzen 9 3950Xに次ぐ2番手で、以下Ryzen 7 3800X、Core i9-9900Kの順で続き、5~6番手となるCore i7-10700とCore i5-10600Kが、ほぼ同タイムを記録している。

【グラフ06】HandBrake v1.3.1

動画エンコードソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 7」

 動画エンコードソフトのTMPGEnc Video Mastering Works 7では、フルHDと4Kのソース動画をH.264形式とH.265形式に変換するのにかかった時間を測定した。

 x264でのH.264形式への変換では、1080p→1080p変換でのみCore i9-10900Kがトップタイムを記録しているものの、CPU使用率や処理時間が長い2160p動画のエンコードではRyzen 9 3950Xに逆転され、2160p→2160p変換では約57%もの大差をつけられている。Core i7-10700とCore i5-10600Kについては、ここでもほぼ同タイムだった。

 x265でのH.265形式への変換では、Core i9-10900KがRyzen 9 3950Xに次ぐ全体2番手のタイムを記録。Core i7-10700はすべての条件でCore i5-10600Kに後れをとっており、速度差は約8~11%となっている。

【グラフ07】TMPGEnc Video Mastering Works 7 v7.0.15.17「H.264形式へのエンコード」
【グラフ08】TMPGEnc Video Mastering Works 7 v7.0.15.17「H.265形式へのエンコード」

PCMark 10

 PCMark 10では、もっともテスト項目が多い「PCMark 10 Extended」のスコアを比較した。

 総合スコアでトップに立ったのはCore i9-10900Kで、2番手のRyzen 9 3950Xを約2%上回った。

 Core i9-10900Kは「Gaming」以外のすべてのジャンルでトップのスコアを記録している。最大で5.3GHzに達する高クロック動作が、アプリの起動や編集作業といったCPUコアを常時フル活用するわけではないシーンでの性能を高めているという印象だ。

【グラフ09】PCMark 10 Extended (v2.1.2177)

SiSoftware Sandra 20/20「CPUベンチマーク」

 SiSoftware Sandra 20/20のCPUテストから、「Arithmetic」、「Multi-Media」、「Image Processing」の実行結果を紹介する。

 CPUの演算性能を測定するArithmeticでは、Core i9-10900KはRyzen 9 3950Xに次ぐ2番手のスコアを記録。Core i7-10700は、Core i5-10600Kに約3~10%の差をつけて5番手のスコアを記録した。

 CPUのマルチメディア性能を測定するMulti-Mediaでは、Core i9-10900Kが全体2番手のスコアであることに変わりはないが、Core i7-10700はいくつかの項目でCore i5-10600Kの逆転を許している。

 画像処理性能を測定するImage Processingは、処理の内容によってIntelとAMDの間で得手不得手が分かれている。Intel製CPUが優勢なディフュージョン(Diffusion)では、いまひとつスコアが伸び悩んだRyzen 9 3950Xに対してCore i9-10900Kがダブルスコアをつける一方、エッジ検出(Edge Detection)やノイズリダクションではRyzen 9 3950Xに完敗している。

【グラフ10】SiSoftware Sandra v30.41 「Processor Arithmetic (プロセッサの性能)」
【グラフ11】SiSoftware Sandra v30.41 「Processor Multi-Media (マルチメディア処理)」
【グラフ12】SiSoftware Sandra v30.41 「Processor Image Processing (画像処理)」

SiSoftware Sandra 20/20「メモリベンチマーク」

 メモリ帯域幅を測定するMemory Bandwidthでは、DDR4-2933メモリに対応したCore i9-10900KとCore i7-10700が、それぞれ30.83GB/sと31.40GB/sを記録し、DDR4-2666メモリまでのCore i5-10600Kは29.40GB/sだった。DDR4-3200メモリに対応する第3世代Ryzenは35.82~38.30GB/sを記録しており、メモリ帯域幅に関してはRyzenに軍配が上がるようだ。

 一方、Cache & Memory Latencyで測定したメモリレイテンシは、Intel製CPUが30ns前後でほぼ横並びの結果を記録している。この数値は、約46nsだった第3世代Ryzenよりも明らかに小さいものだ。

【グラフ13】SiSoftware Sandra v30.41 「Memory Bandwidth」
【グラフ14】SiSoftware Sandra v30.41 「Cache & Memory Latency (メモリレイテンシ)」

SiSoftware Sandra 20/20「キャッシュベンチマーク」

 CPUが備えるキャッシュの性能を測定できる「Cache & Memory Latency」と「Cache Bandwidth」の結果をグラフ化した。

 キャッシュ容量や動作クロック、コア数に応じた帯域幅やレイテンシの変化はみられるものの、前世代となるCore i9-9900Kと比べても特筆に値するほどの違いはみられない。両CPUのアーキテクチャがSkylakeを改良してきたものであることを考えれば、キャッシュの特性に違いが見られないという結果は妥当なものであると言えよう。

【グラフ15】SiSoftware Sandra v30.41 「Cache & Memory Latency (レイテンシ)」
【グラフ16】SiSoftware Sandra v30.41 「Cache & Memory Latency (クロック)」
【グラフ17】SiSoftware Sandra v30.41 「Cache Bandwidth」

3DMark

 3DMarkでは、「Time Spy」、「Fire Strike」、「Night Raid」、「Sky Diver」、「Port Royal」の5テストを実行した。

 DirectX 12テストのTime SpyとNight Raidでは、Core i9-10900Kがトップスコアを獲得しているが、DirectX 11テストのFire StrikeとSky DiverではRyzen 9 3950Xにトップの座を譲っている。リアルタイムレイトレーシング性能を測定するPort Royalでは、すべてのCPUの結果がほぼ横並びとなっている。

【グラフ18】3DMark v2.11.6866「Time Spy」
【グラフ19】3DMark v2.11.6866「Fire Strike」
【グラフ20】3DMark v2.11.6866「Night Raid」
【グラフ21】3DMark v2.11.6866「Sky Diver」
【グラフ22】3DMark v2.11.6866「Port Royal」

VRMark

 VRMarkでは、「Orange Room」、「Cyan Room」、「Blue Room」の3テストを実行した。

 もっともGPU負荷が軽く、CPUがボトルネックとなりがちなOrange Roomでは、Core i9-10900Kが全体ベストの結果を記録。2~3番手は第3世代Ryzenで、以下Core i7-10700、Core i5-10600K、Core i9-9900Kの順で続いている。

 DirectX 12を用いるCyan Roomでは、Core i9-10900Kがトップで、以下Core i7-10700、Core i5-10600K、Core i9-9900Kと続いている。Orange Roomで2~3番手だった第3世代Ryzenが5~6番手となったことで、順位が入れ替わった格好だ。

 もっともGPU負荷が高いBlue Roomについては、各CPUのスコアがほぼ横並びとなっており、有意な差はついていない。

【グラフ23】VRMark v1.3.2020「スコア」
【グラフ24】VRMark v1.3.2020「平均フレームレート」

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク

 ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークでは、描画品質を「最高品質」に設定し、フルHDから4Kまでの画面解像度でテストを実行した。

 CPUの違いがスコア差に反映されたのはフルHDとWQHD解像度で、全体ベストを記録したCore i9-10900K以下、Core i7-10700、Core i5-10600Kと続き、Comet Lake-Sが上位を独占した。Core i9-10900KとRyzen 9 3950Xの差はWQHDで約9%、フルHDでは約17%だった。

【グラフ25】ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク

 FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでは、描画品質を「高品質」に設定し、フルHDから4Kまでの画面解像度でテストを実行した。

 ベンチマーク結果は、ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークほどの差はついていない。比較的スコアのバラツキが大きいベンチマークテストでもあるため、今回比較したCPUでは大きな差がつかなかったと見るべきだろう。

【グラフ26】FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク v1.2

Forza Horizon 4

 DirectX 12専用のオープンワールドレーシング「Forza Horizon 4」ではベンチマークモードを利用して、描画設定「ウルトラ」でフルHDから4Kまでの画面解像度をテストした他、高fps設定としてフルHD解像度で描画設定「ミディアム」の結果も測定した。

 描画設定「ウルトラ」では、フルHD解像度でCore i9-10900Kが2番手のCore i9-9900Kに約4%の差をつけてトップに立っているが、WQHD解像度ではIntel CPUが完全な横並びとなり、4K解像度になるとCPUの性能差がフレームレートに反映されているとは言い難い結果となった。

 一方、高fps設定ではCore i9-10900Kが2番手のRyzen 9 3950Xに7%差をつけ、比較製品の中で唯一200fpsを超えるフレームレートを記録。高フレームレートでの強さが伺える結果だ。

【グラフ27】Forza Horizon 4 (v1.410.986.2)

F1 2019

 F1 2019ではベンチマークモードを利用して、描画設定「超高」でフルHDから4Kまでの画面解像度をテストしたほか、高fps設定としてフルHD解像度で描画設定「ミディアム」の結果も測定した。なお、グラフィックスAPIはDirectX 12を利用している。

 描画設定「超高」でのフルHDとWQHD解像度では、Intel製CPUが第3世代Ryzenをやや上回る性能をみせており、4K解像度では全CPUがほぼ横並びの結果となった。

 一方、高fps設定ではCore i9-10900Kが287fpsでトップを記録。2番手のCore i7-10700に約7%、同じ数値で3番手で並んだCore i5-10600KとCore i9-9900Kには約10%の差をつけた。第3世代Ryzenとの差は約19~21%で、ここでもCore i9-10900Kが高フレームレート動作での優位性を示している。

【グラフ28】F1 2019 (v1.22)

フォートナイト

 バトルロイヤルTPSの「フォートナイト」では、描画設定「最高」でフルHDから4Kまでの画面解像度をテストしたほか、高fps設定としてフルHD解像度で描画設定「中」の結果を測定した。なお、グラフィックスAPIはDirectX 11を利用し、3D解像度はつねに100%に設定している。

 描画設定「最高」では、フルHD解像度でCore i9-10900Kが2番手のCore i9-9900Kに約3%の差をつけてトップに立っている。Core i9-10900Kは高fps設定でも最高のフレームレートを記録しており、ここでは2番手のCore i9-9900Kとの差を12%にまで広げている。

【グラフ29】フォートナイト (v12.50)

レインボーシックス シージ

 レインボーシックス シージではベンチマークモードを使って、描画設定「最高」でフルHDから4Kまでの画面解像度をテストしたほか、高fps設定としてフルHD解像度で描画設定「中」の結果も取得した。なお、レンダリングのスケールはつねに100%に設定している。

 すべてのCPUがほぼ横並びとなっている4K解像度を除き、第3世代RyzenよりIntel製CPUの方が高いフレームレートを記録している。Intel製CPU同士でのフレームレート差がはっきりとついているのは高fps設定で、Core i9-10900Kが2番手のCore i7-10700に約3%の差をつけている。

【グラフ30】レインボーシックス シージ (Build 4965462)

モンスターハンターワールド : アイスボーン

 モンスターハンターワールド : アイスボーンでは、描画設定「最高」でフルHDから4Kまでの画面解像度をテストした。なお、グラフィックスAPIはDirectX 12を利用している。

 ここでもIntel製CPUが第3世代Ryzenよりやや優位な結果となっており、Core i9-10900KはRyzen 9 3950Xに4~6%の差をつけている。WQHD解像度以下では、そのCore i9-10900KをCore i7-10700がわずかに上回っているが、1%未満の差であり誤差の範疇とみなしてよいだろう。

【グラフ31】モンスターハンターワールド : アイスボーン (v13.50.00)

消費電力とCPU温度

 システム全体の消費電力をワットチェッカーで測定した結果を紹介する。測定したのはベンチマーク中のピーク消費電力とアイドル時消費電力で、CPUベンチマークと3Dベンチマークの結果を分けてグラフ化している。

 Comet Lake-Sのアイドル時の消費電力は41~42Wで、Core i9-9900Kの39Wより若干高い数値となっているが、第3世代Ryzenの48~51Wより大分低い数値になっている。ただ、各環境はマザーボードやメモリクロックが異なり、第3世代RyzenはSSDがPCI Express 4.0で動作しているという違いもあり、単純にCPUのみの電力比較ではない点に留意してほしい。

 すべてのCPUコアを活用するCPUベンチマークでは、257~266Wを記録したCore i9-10900Kが「やねうら王」以外で最大の消費電力を記録。それに次ぐのがCore i9-9900Kの250~254Wだが、Core i7-10700も232~266Wを記録しており、ピーク電力ではRyzen 9 3950Xをも上回った。

 逆に、ピーク消費電力がもっとも低かったのが、147~162Wを記録したCore i5-10600Kで、179~202Wを記録したRyzen 7 3800Xより24~40Wも引く数値となっている。

【グラフ32】システムの消費電力 (CPUベンチマーク)

 CPUベンチマークではもっとも大きな消費電力を記録したCore i9-10900Kだが、3Dベンチマーク実行中のピーク消費電力で最大値を記録したのはVRMarkのOrange Roomのみで、ほかのテストではRyzen 9 3950Xが最大値を記録している。

 ピーク消費電力が最小だったのはCore i5-10600Kで、Core i7-10700はCore i9-10900KやCore i9-9900Kに近い消費電力を記録している。TDP 125WのCore i5-10600Kより、TDP 65WのCore i7-10700の消費電力が大きいことに違和感を覚えるかもしれないが、これは後述するブースト動作の仕様によるものだ。

【グラフ33】システムの消費電力 (3Dベンチマーク)

 続いて、CPU高負荷テスト実行中に取得したモニタリングデータを結果を紹介する。

 負荷テストに用いたのはTMPGEnc Video Mastering Works 7のx264エンコードで、2160p→2160p変換を約10分間連続で実行する。CPU温度を含むモニタリングデータは「HWiNFO v6.24」で取得した。テスト時の室温は約25℃。

 各CPUのモニタリングデータから、ファンコントロールに用いられるCPU温度(Tctl)について、最大値と最低値に加え、CPU使用率40%以上で動作中の平均CPU温度をまとめたものが以下のグラフだ。

 Core i9-10900KのCPU温度はピーク時に69.0℃で、高負荷時平均は56.3℃。同様にCore i7-10700はピーク値が67.0℃で平均43.0℃、Core i5-10600Kはピーク値が59℃で平均57.0℃。240mmラジエーター採用オールインワン水冷クーラーを使用しているとは言え、Core i9-10900KやCore i7-10700のピーク温度は、消費電力から受けるイメージよりだいぶ低い数値であると感じる。

【グラフ34】CPU温度 「HWiNFO v6.24 (CPU Package)」

 各CPUのモニタリングデータをもとに、CPU温度や動作クロック、消費電力(CPU Package Power)の変化をCPU毎にまとめたグラフを確認する。

 Core i9-10900Kがピーク温度である69℃に達したのは、処理開始から56秒間のPL2動作の終端だ。最大250Wの電力消費を許容するPL2動作中、約4.9GHzで動作するCore i9-10900Kの消費電力は約189W程度に達しており、このさいに記録されたシステムの最大消費電力が266Wという数値だ。

 処理が開始してから56秒が経過してPL2動作が終了した後、CPUの消費電力はPL1動作のリミット値で125Wに制限され、CPUクロックも4.4GHz前後にまで低下している。このさいのシステム全体の消費電力は185W前後だった。

【グラフ35】Core i9-10900Kのモニタリングデータ

 Core i7-10700のCPU温度がピーク温度に達したのもPL2動作が完了する間際なのだが、Intel Extreme Tuning Utility(XTU)で確認したPL2の持続時間が28秒であったにも関わらず、Core i7-10700のブースト動作は15秒弱で終了しており、以降はPL1のリミット値である65Wに制限された状態での動作となっている。

 PL2動作中は180W前後の消費電力で4.5GHz動作をしていたCore i7-10700は、65W制限のPL1動作中は3.3GHz前後までクロックが低下している。PL1動作中のシステム全体の消費電力は118W前後。

 PL2動作が設定より短く終了している原因については不明だが、CPUがES品であることや、Intel XTUが正しい設定値を読み取れていない可能性などが考えられる。

【グラフ36】Core i7-10700のモニタリングデータ

 Core i5-10600Kのモニタリングデータをみると、処理開始から一貫して4.5GHz動作を維持しており、消費電力やCPU温度の大きな変化もみられない。先に紹介した2モデルとは明らかに異なるグラフだ。

 このようなグラフとなった理由は単純で、Core i5-10600Kは全CPUコアに高負荷が掛かるエンコード中であっても消費電力が100W弱であるためだ。この数値は、PL2のリミット値である182Wどころか、PL1の125Wよりも低い数値であるため、パワーリミットの制限を受けることなく、つねに最大限ブースト動作が可能というわけだ。

【グラフ37】Core i5-10600Kのモニタリングデータ

 以上のモニタリングデータから、TDP 65WモデルのCore i7-10700がCore i9-10900Kに近い消費電力を記録していたのが、緩めに設定されたPL2のパワーリミット値が原因であることや、Core i7-10700がCPUベンチマークでCore i5-10600Kに遅れをとっていたのが、短いPL2動作とTDP 65W制限時の低いCPUクロックにあることが伺える。

 なお、今回各CPUに設定されていたパワーリミットについては、あくまでテスト時点での「ASUS TUF GAMING Z490-PLUS (WI-FI)」の標準値だ。

 前世代であるIntel Z390チップセット搭載マザーボードの場合、上級製品では標準でパワーリミットを無効化しているマザーボードが珍しくなかったことを考えると、Comet Lake-Sについてもブースト動作の特性はマザーボードによって異なると考えるべきだろう。

内蔵GPUの性能をテスト

 最後に、Comet Lake-SのCPU内蔵GPUを使ってベンチマークを実行した結果を紹介する。

 今回テストしたComet Lake-Sは、いずれも「Intel UHD Graphics 630」を内蔵しており、これはCore i9-9900Kの内蔵GPUと同じものだ。テスト機材については以下のとおり。

【表3】テスト機材一覧 (内蔵GPUテスト)
CPUCore i9-10900KCore i7-10700Core i5-10600KCore i9-9900K
コア数/スレッド数10/208/166/128/16
CPUパワーリミットPL1:125W、PL2:250W、Tau:56秒PL1:65W、PL2:224W、Tau:28秒PL1:125W、PL2:182W、Tau:56秒PL1:65W、PL2:210W、Tau:28秒
CPUクーラーASUS ROG RYUJIN 240 (ファンスピード=100%)
マザーボードASUS TUF GAMING Z490-PLUS (WI-FI) [UEFI:0704]ASUS TUF Z390-PLUS GAMING [UEFI:2606]
メモリDDR4-2933 16GB×2 (2ch、21-21-21-47、1.20V)DDR4-2666 16GB×2 (2ch、19-19-19-43、1.20V)
内蔵GPUIntel UHD Graphics 630Intel UHD Graphics 630Intel UHD Graphics 630Intel UHD Graphics 630
システム用SSDCORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4)
アプリケーション用SSDCORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4)
電源CORSAIR RM850 CP-9020196-JP (850W/80PLUS Gold)
グラフィックスドライバ26.20.100.7637 DCH27.20.100.8190 DCH
OSWindows 10 Pro 64bit (Ver 1909 / build 18363.815)
電源プラン高パフォーマンス
室温約25℃

 実行したベンチマークは、「3DMark(グラフ38~41)」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク(グラフ42)」、「フォートナイト(グラフ43)」。

 ベンチマーク結果については、比較製品すべてが同じGPUを内蔵しているだけあって、特筆すべき性能の違いは見られない。

 AMDのAPUなどではメインメモリのクロックが上がると内蔵GPUのパフォーマンスが向上することが知られているが、DDR4-2933に対応したCore i9-10900KやCore i7-10700に明らかな性能向上が見られるかと言えばそうでもない。GPU自体がゲームをプレイするには非力であり、メモリ帯域がボトルネックになるほどの地力がないためだろう。

【グラフ38】3DMark v2.11.6866「Time Spy」
【グラフ39】3DMark v2.11.6866「Fire Strike」
【グラフ40】3DMark v2.11.6866「Night Raid」
【グラフ41】3DMark v2.11.6866「Sky Diver」
【グラフ42】ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク
【グラフ43】フォートナイト (v12.50)
【グラフ44】システムの消費電力

ゲームでのパフォーマンスが光る第10世代Coreプロセッサ

 Comet Lake-Sの頂点に位置するCore i9-10900Kは、CPUコア数を増やしつつも高クロック動作が可能なようにTDP枠を拡大しており、結果としてゲームにおいてはCore i9-9900Kを凌駕するCPUとなっている。高フレームレートでのゲーミングを楽しみたいユーザーにとってはベストな選択肢となる。

 一方で、CPUコア数の増加で10コア20スレッドCPUとなっても、AMDのメインストリーム最上位モデルであるRyzen 9 3950Xのマルチスレッド性能には及ばない。一応、両CPUの間にはそれなりの価格差があるが、Core i9-10900Kより安価な12コア24スレッドCPU「Ryzen 9 3900X」が存在しており、Comet Lake-Sをもってしても、Ryzenの登場以来続くマルチスレッド性能での劣勢を覆すには至らない。

 ともあれ、最高のゲーミング環境の構築を目指すユーザーにとって魅力的なCore i9-10900Kをはじめ、タイトル次第でCore i9-9900Kに近いゲーミング性能を発揮しているCore i7-10700やCore i5-10600Kなど、ミドルレンジにも面白いCPUが存在するのがComet Lake-Sの魅力だ。ゲーミングPCや、内蔵GPUを使ったシンプルなPCの構築を考えているユーザーなら、検討してみる価値は十分にあるだろう。


 なお、5月20日22時より、「Intel最強ゲーミングCPU「Core i9-10900K」を発売と同時に生解説!MSI MEG Z490 ACEもお見せします!【第10世代Core実力検証】」と題した生配信を行なうので、こちらもあわせてご覧頂きたい。