Hothotレビュー
45万円切りの「ConceptD 500」はなに1つ足す必要なしのプロクリエイター向けPC
2020年2月20日 11:00
日本エイサーはクリエイター向けの新ブランド「ConceptD」より、デスクトップPC「ConceptD 500」を1月29日に発表、同日より販売を開始した。
ConceptDは「ゲーミングマシンでは満足できないすべてのクリエイターのために、創造性で世界を超えていくための直感とテクノロジを提供する」ことをモットーとするブランドだ。
「ConceptD 500」は、クリエイター向けアプリを快適に動作させるために「Core i9-9900K」と「Quadro RTX 4000」を組み合わせつつ、デザインスタジオやインテリアに調和するようなホワイトを基調に、トップパネルに木目調を採用。ゲーミング、ビジネスPCとは一線を画した外観を実現している。
今回、日本エイサーより本製品の実機を借用したので、スペック、外観、内部のメンテナンス性、性能を中心にレビューしつつ、同時発売された27型4Kディスプレイ「ConceptD CP7(型番 : CP7271KPbmiphzx)」についても触れていこう。
用意されているのは1モデルのみ、カスタマイズは不可
「ConceptD 500」に用意されているのは1モデルのみ。また2月18日時点でAmazon.co.jpおよびAcer Direct楽天市場店で販売されているがカスタマイズはいっさいできない。
基本スペックは、OSがWindows 10 Pro 64bit、CPUがCore i9-9900K(3.6〜5GHz、8コア16スレッド)、ビデオカードがQuadro RTX 4000(8GB)、メモリがDDR4-2666 SDRAM 64GB(16GB×4、最大64GB)、ストレージが1TB PCIe NVMe SSD+2TB HDD、ワイヤレス通信機能がIEEE 802.11ac、Bluetooth 5.0となっている。ほかの細かな仕様については下記表を参照してほしい。
なお、製品公式サイトのイメージ写真には「ConceptD 500」の本体色に合わせたキーボードとマウスが掲載されているが、パッケージには同梱されていない。また、Acer Direct楽天市場店にも白色のキーボードとマウスは販売されていなかった。もしホワイトでデザインを統一したいのなら、別途サードパーティー製などから似たカラーの製品を探す必要がある。
【表1】ConceptD 500のスペック ※2月18日時点 | |
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型番 | CT500-51A-F94LH/R40 |
OS | Windows 10 Pro 64bit |
CPU | Core i9-9900K(3.6〜5GHz、8コア16スレッド) |
GPU | Intel UHD Graphics 630(350MHz~1.2GHz)、Quadro RTX 4000(8GB) |
メモリ | DDR4-2666 SDRAM 64GB(16GB×4、最大64GB) |
ストレージ | 1TB PCIe NVMe SSD、2TB SATA HDD |
光学ドライブ | - |
ディスプレイ | オプション |
通信 | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11ac、Bluetooth 5.0 |
インターフェイス | USB 3.1×4(1基はType-C)、、USB 3.0×2、USB 2.0×4、PS/2コネクター、SDカードスロット、DisplayPort×3(ビデオカード側)、USB Type-C(ビデオカード側)、マイク入力×2(上面/背面)、ヘッドフォン出力、ライン入力、ライン出力 ※オンボードのDisplayPort×2、HDMI、ミニD-Sub15ピンは使用不可 |
本体サイズ | 230×443×487mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 約11.8kg |
ソフトウェア | システムメンテナンスツール「Acer ControlCenter」、システム管理「ConceptD Palette」、映像ストリーミング「Netflix」、ブラウザー「Mozilla Firefox」、セキュリティ「ノートン セキュリティUltra」(※30日間体験版) |
同梱品 | 電源ケーブル (約1.8m)、DP-HDMI変換アダプター、DP-DVI-D 変換アダプター、USB Type-C-DP 変換アダプター、説明書(セットアップガイド、保証書、修理依頼書、ワイヤレス充電について) |
カラー | The White |
価格 | 448,000円 ※Amazon.co.jpの販売価格 |
目が眩しくなるような真っ白な筐体、クリエイターの用途にマッチした端子類
本体サイズは230×443×487mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約11.8kg。カラー色は「The White」と名づけられており、マット地だが目が眩しくなるような真っ白な筐体が採用されている。デザイン上のアクセントが上面の木目模様。上面手前には電源ボタンと端子類に並び、Qi対応ワイヤレス充電スペースが用意されている。Qi対応のスマートフォンやイヤフォンケースなどを充電するのに便利な装備だ。
インターフェイスは、USB 3.1×4(1基はType-C)、USB 3.0×2、USB 2.0×4、PS/2コネクタ、SDカードスロット、DisplayPort×3(ビデオカード側)、USB Type-C(ビデオカード側)、マイク入力×2(上面/背面)、ヘッドフォン出力、ライン入力、ライン出力と豊富に用意されている。アクセスしやすい上面にUSB 3.1 Type-CとSDカードスロットが用意されている点は、クリエイターの用途に配慮したものと思われる。
ちょっと変わった装備がヘッドフォン置き場。前面エアーインテーク上部をプッシュするとヘッドフォンクレードルが飛び出してくる。意外と置き場に困るヘッドフォンを常備する場所として重宝しそうだ。
デザイン性を重視したためかメンテナンスはやや面倒
「ConceptD 500」は分解することで、メモリ、ストレージ、ビデオカードなどを交換可能だが、注意点が3つある。
まず1つ目は、背面のシステムカバーに封印シールが貼られていること。日本エイサーに確認したところ、カバーを開けてメモリやストレージを増設しても保証対象外にはならないが、増設におけるユーザーの過失があった場合には有償修理になるとのこと。
2つ目は、左側のシステムカバーを開けると、それをシステムが検知し、次回起動するさいに「Warning! Your chassis has been opened(警告!シャーシが開かれました)」というメッセージが表示されて、起動が一時ストップしてしまう。これを解除するには、BIOSの「Security→Chassis Opened Warning」の「Clear」を選んでリセットする必要がある。これについては意図しない改変がないかを検知する目的で設定された仕様という。
最後の3つ目は、背面のシステムカバーの4つのネジを隠しているケーブルラッチが非常に取り外しにくいこと。ケーブルラッチ取り付け部の先端がクサビ上になっており、不用意に力を込めるとアーム部分が折れてしまいそうだ。そもそも分解を前提とした製品ではないものの、もし開ける場合はできるだけケーブルラッチの根本側に指をかけて、少しずつ引き出すようにしよう。
前述のとおり、個人でのパーツの換装が推奨されていない仕様のため、ケースのメンテナンス性はあまりよくないと感じた。ケーブルは裏配線されていないもののケーブルクリップで取りまとめられているので、M.2のSSDやメモリは簡単に脱着できる。ビデオカードもそれほど難しくはない。
問題は3.5インチHDDの増設と換装。HDDを取りつけるためにはHDDブラケットの両サイドから4本のネジで固定する必要があるので、まずはHDDブラケットをシャーシから取り外す必要がある。そのうえHDDブラケットを取り外すためには、HDDブラケット左側のケーブルクリップからケーブルを外さなければならない。
クリエイターは扱うデータの容量が大きいので、HDDを増設、換装する機会が一般的なユーザーより多い。3.5インチHDDにマウンタを取りつけて、スライドするだけで脱着できるようなメンテナンス性の高い機構を採用してほしかったところだ。
艶めかしく感じるほど鮮烈な赤色が表示される広色域ディスプレイ
今回「ConceptD 500」と同時に発売された27インチ4Kディスプレイ「ConceptD CP7」も一緒に借用した。本製品はPANTONE認証済み、Adobe RGB 99%、DCI-P3 93%というスペックのプロフェッショナル向けディスプレイ。
ディスプレイキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で検証してみたところ、Adobe RGBカバー率99.4%、Adobe RGB比112.3%、DCI-P3カバー率94.2%、DCI-P3比111.7%という広い色域を確認できた。
「ColorAC」で読み込むさいに「注意 : このICCプロファイルのLUT Green Blackにクリップ(値が飽和)の可能性がみられます」という警告メッセージが表示されたので計測誤差が発生している可能性があるが、スペックどおりの広い色域を備えていると言えそうだ。
クリエイティブ用途に十二分な性能を記録
最後に性能をチェックしてみよう。今回は下記のベンチマークを実施している。
- 総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.0.2165」
- 3Dグラフィックベンチマーク「3DMark v2.11.6866」
- CPU/OpenGLベンチマーク「CINEBENCH R15.0」
- CPUベンチマーク「CINEBENCH R20.060」
- OpenGL/DirectX 3Dグラフィックベンチマーク「SPECviewperf 13」
- ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 7.0.0」
- 「Adobe Lightroom Classic CC」で100枚のRAW画像を現像
- 「Adobe Premiere Pro CC」で実時間5分の4K動画を書き出し
下記が検証機の仕様とその結果だ。
【表2】検証したConceptD 500の仕様 | |
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CPU | Core i9-9900K(3.6~5GHz、8コア16スレッド) |
GPU | Intel UHD Graphics 630(350MHz~1.2GHz)、Quadro RTX 4000(8GB) |
メモリ | DDR4-2666 SDRAM 64GB |
ストレ-ジ | 1TB PCIe NVMe SSD(WDC PC SN720 SED SDAQNTW-1T00)、2TB SATA HDD(TOSHIBA DT01ACA200) |
ディスプレイ | 「ConceptD CP7271K」(27型、3,840×2,160ドット) |
TDP | 95W |
OS | Windows 10 Pro 64bit バージョン1909 |
サイズ | 230×443×487mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 約11.8kg |
【表3】ConceptD 500のベンチマ-ク結果 | |
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PCMark 10 v2.0.2165 | |
PCMark 10 Score | 7,010 |
Essentials | 10,156 |
App Start-up Score | 12,883 |
Video Conferencing Score | 8,895 |
Web Browsing Score | 9,142 |
Productivity | 8,999 |
Spreadsheets Score | 10,073 |
Writing Score | 8,041 |
Digital Content Creation | 10,230 |
Photo Editing Score | 13,088 |
Rendering and Visualization Score | 12,799 |
Video Editting Score | 6,393 |
PCMark 10 Modern Office Battery Life | - |
3DMark v2.11,6866 | |
Time Spy | 7,521 |
Fire Strike Ultra | 4,907 |
Fire Strike Extreme | 9,365 |
Fire Strike | 18,523 |
Night Raid | 47,006 |
Sky Diver | 45,896 |
Cloud Gate | - |
Ice Storm Extreme | - |
Ice Storm | - |
CINEBENCH R15.0 | |
OpenGL | 233.97 fps |
CPU | 1,792 cb |
CPU(Single Core) | 210 cb |
CINEBENCH R20.060 | |
CPU | 4,082 pts |
CPU(Single Core) | 495 pts |
SPECviewperf 13 | |
3dsmax-06 | 202.88 |
catia-05 | 260.66 |
creo-02 | 240.77 |
energy-02 | 35.86 |
maya-05 | 267.09 |
medical-02 | 75.12 |
showcase-02 | 102.96 |
snx-03 | 287.96 |
sw-04 | 161.1 |
SSDをCrystalDiskMark 7.0.0で計測 | |
1M Q8T1 シーケンシャルリード | 3,431.154 MB/s |
1M Q8T1 シーケンシャルライト | 2,787.446 MB/s |
1M Q1T1 シーケンシャルリード | 1,646.323 MB/s |
1M Q1T1 シーケンシャルライト | 2,436.349 MB/s |
4K Q32T16 ランダムリ-ド | 2,040.674 MB/s |
4K Q32T16 ランダムライト | 1,678.018 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリ-ド | 20.389 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 133.725 MB/s |
HDDをCrystalDiskMark 7.0.0で計測 | |
1M Q8T1 シーケンシャルリード | 206.538 MB/s |
1M Q8T1 シーケンシャルライト | 205.896 MB/s |
1M Q1T1 シーケンシャルリード | 205.962 MB/s |
1M Q1T1 シーケンシャルライト | 206.969 MB/s |
4K Q32T16 ランダムリ-ド | 1.775 MB/s |
4K Q32T16 ランダムライト | 1.883 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリ-ド | 0.699 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 1.169 MB/s |
Adobe Lightroom Classic CCで100枚のRAW画像を現像 | |
7,952☓5,304ドット、カラ- - 自然 | 3分44秒18 |
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出し | |
3,840×2,160ドット、30fps | 5分16秒73 |
8コア16スレッドのCore i9-9900Kを搭載しているだけに、「CINEBENCH R15.0」のCPUスコアは1,792cb、「CINEBENCH R20.060」のCPUスコアは4,082ptsとクリエイティブ用途に十二分な性能を記録している。OpenGLに特化されたQuadroビデオカードを搭載しているため、「3DMark」はDirectXに特化されたGeForce系よりやや性能は低いが、体感できるほどの開きはなさそうだ。
1つ気になったのが「Adobe Premiere Pro CC」で4K動画の書き出しに実時間以上の時間がかかっていること。GeForce系の上位ビデオカードを搭載していれば3分台で書き出しが完了する。ソフトウェア側の相性問題かもしれないが、少なくとも現時点では「Adobe Premiere Pro CC」を使うのであれば、GeForce系ビデオカードを搭載したPCを選んだほうがよさそうだ。
クリエイティブ系に特化して税込み45万円切りはコスパ高し!
Windows 10 Pro、Core i9-9900K、Quadro RTX 4000、64GBメモリ、1TB SSD&2TB HDDというスペックで、税込み45万円を切っている「ConceptD 500」は、文句なしにコスパに優れたマシンだ。モデルを1つに絞り、またカスタマイズモデルを用意しなかったからこそ、この価格を実現できたのだろう。
もちろん、ゲームを主目的にするのであればGeForce系を搭載するゲーミングPCを選ぶべきだ。しかし、CADをはじめとしたクリエイティブ向けのデスクトップPCを探しているのなら、デザイン性にも優れた「ConceptD 500」は魅力的な選択肢。スペックの充実した「ConceptD 500」は、なに1つ足す必要のないクリエイティブ特化型PCと言える。