Hothotレビュー

45万円切りの「ConceptD 500」はなに1つ足す必要なしのプロクリエイター向けPC

ConceptD 500(型番 : CT500-51A-F94LH/R40)。Amazon.co.jpでの販売価格は448,000円

 日本エイサーはクリエイター向けの新ブランド「ConceptD」より、デスクトップPC「ConceptD 500」を1月29日に発表、同日より販売を開始した。

 ConceptDは「ゲーミングマシンでは満足できないすべてのクリエイターのために、創造性で世界を超えていくための直感とテクノロジを提供する」ことをモットーとするブランドだ。

 「ConceptD 500」は、クリエイター向けアプリを快適に動作させるために「Core i9-9900K」と「Quadro RTX 4000」を組み合わせつつ、デザインスタジオやインテリアに調和するようなホワイトを基調に、トップパネルに木目調を採用。ゲーミング、ビジネスPCとは一線を画した外観を実現している。

 今回、日本エイサーより本製品の実機を借用したので、スペック、外観、内部のメンテナンス性、性能を中心にレビューしつつ、同時発売された27型4Kディスプレイ「ConceptD CP7(型番 : CP7271KPbmiphzx)」についても触れていこう。

用意されているのは1モデルのみ、カスタマイズは不可

 「ConceptD 500」に用意されているのは1モデルのみ。また2月18日時点でAmazon.co.jpおよびAcer Direct楽天市場店で販売されているがカスタマイズはいっさいできない。

 基本スペックは、OSがWindows 10 Pro 64bit、CPUがCore i9-9900K(3.6〜5GHz、8コア16スレッド)、ビデオカードがQuadro RTX 4000(8GB)、メモリがDDR4-2666 SDRAM 64GB(16GB×4、最大64GB)、ストレージが1TB PCIe NVMe SSD+2TB HDD、ワイヤレス通信機能がIEEE 802.11ac、Bluetooth 5.0となっている。ほかの細かな仕様については下記表を参照してほしい。

 なお、製品公式サイトのイメージ写真には「ConceptD 500」の本体色に合わせたキーボードとマウスが掲載されているが、パッケージには同梱されていない。また、Acer Direct楽天市場店にも白色のキーボードとマウスは販売されていなかった。もしホワイトでデザインを統一したいのなら、別途サードパーティー製などから似たカラーの製品を探す必要がある。

【表1】ConceptD 500のスペック ※2月18日時点
型番CT500-51A-F94LH/R40
OSWindows 10 Pro 64bit
CPUCore i9-9900K(3.6〜5GHz、8コア16スレッド)
GPUIntel UHD Graphics 630(350MHz~1.2GHz)、Quadro RTX 4000(8GB)
メモリDDR4-2666 SDRAM 64GB(16GB×4、最大64GB)
ストレージ1TB PCIe NVMe SSD、2TB SATA HDD
光学ドライブ
ディスプレイオプション
通信Gigabit Ethernet、IEEE 802.11ac、Bluetooth 5.0
インターフェイスUSB 3.1×4(1基はType-C)、、USB 3.0×2、USB 2.0×4、PS/2コネクター、SDカードスロット、DisplayPort×3(ビデオカード側)、USB Type-C(ビデオカード側)、マイク入力×2(上面/背面)、ヘッドフォン出力、ライン入力、ライン出力 ※オンボードのDisplayPort×2、HDMI、ミニD-Sub15ピンは使用不可
本体サイズ230×443×487mm(幅×奥行き×高さ)
重量約11.8kg
ソフトウェアシステムメンテナンスツール「Acer ControlCenter」、システム管理「ConceptD Palette」、映像ストリーミング「Netflix」、ブラウザー「Mozilla Firefox」、セキュリティ「ノートン セキュリティUltra」(※30日間体験版)
同梱品電源ケーブル (約1.8m)、DP-HDMI変換アダプター、DP-DVI-D 変換アダプター、USB Type-C-DP 変換アダプター、説明書(セットアップガイド、保証書、修理依頼書、ワイヤレス充電について)
カラーThe White
価格448,000円 ※Amazon.co.jpの販売価格

目が眩しくなるような真っ白な筐体、クリエイターの用途にマッチした端子類

 本体サイズは230×443×487mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約11.8kg。カラー色は「The White」と名づけられており、マット地だが目が眩しくなるような真っ白な筐体が採用されている。デザイン上のアクセントが上面の木目模様。上面手前には電源ボタンと端子類に並び、Qi対応ワイヤレス充電スペースが用意されている。Qi対応のスマートフォンやイヤフォンケースなどを充電するのに便利な装備だ。

 インターフェイスは、USB 3.1×4(1基はType-C)、USB 3.0×2、USB 2.0×4、PS/2コネクタ、SDカードスロット、DisplayPort×3(ビデオカード側)、USB Type-C(ビデオカード側)、マイク入力×2(上面/背面)、ヘッドフォン出力、ライン入力、ライン出力と豊富に用意されている。アクセスしやすい上面にUSB 3.1 Type-CとSDカードスロットが用意されている点は、クリエイターの用途に配慮したものと思われる。

 ちょっと変わった装備がヘッドフォン置き場。前面エアーインテーク上部をプッシュするとヘッドフォンクレードルが飛び出してくる。意外と置き場に困るヘッドフォンを常備する場所として重宝しそうだ。

本体前面。まるで車のエアインテークを彷彿とさせるデザインだ
本体背面。背面側も金属筐体がむき出しにはなっておらず、樹脂製のシステムカバーが装着されている
本体右側面
本体右側面下部には各社ロゴ、認証情報などのシールが貼られている
本体左側面
本体上面。電源ボタンや端子類はトップパネル手前に配置されている
トップパネル手前にはUSB 3.1 Type-C、USB 3.1 Type-A、USB 2.0×2、SDカードスロット、ヘッドフォン出力、マイク入力、電源ボタンなどが配置されている
トップパネル手前左側はQi対応ワイヤレス充電機能が備えられており、対応スマートフォンなどを置くだけで充電可能だ
背面には、USB 3.1×2、USB 3.0×2、USB 2.0×2、PS/2コネクタ、DisplayPort×3、USB Type-C、マイク入力、ライン入力、ライン出力が用意されている。オンボードのDisplayPort×2、HDMI、ミニD-Sub15ピンは利用できない
前面上部をプッシュするとヘッドフォンクレードルが飛び出してくる
下部のケーブルラッチを利用すれば、スマートにケーブルをまとめることが可能だ
システム情報
主要なデバイス
BIOSのメイン画面

デザイン性を重視したためかメンテナンスはやや面倒

 「ConceptD 500」は分解することで、メモリ、ストレージ、ビデオカードなどを交換可能だが、注意点が3つある。

 まず1つ目は、背面のシステムカバーに封印シールが貼られていること。日本エイサーに確認したところ、カバーを開けてメモリやストレージを増設しても保証対象外にはならないが、増設におけるユーザーの過失があった場合には有償修理になるとのこと。

 2つ目は、左側のシステムカバーを開けると、それをシステムが検知し、次回起動するさいに「Warning! Your chassis has been opened(警告!シャーシが開かれました)」というメッセージが表示されて、起動が一時ストップしてしまう。これを解除するには、BIOSの「Security→Chassis Opened Warning」の「Clear」を選んでリセットする必要がある。これについては意図しない改変がないかを検知する目的で設定された仕様という。

 最後の3つ目は、背面のシステムカバーの4つのネジを隠しているケーブルラッチが非常に取り外しにくいこと。ケーブルラッチ取り付け部の先端がクサビ上になっており、不用意に力を込めるとアーム部分が折れてしまいそうだ。そもそも分解を前提とした製品ではないものの、もし開ける場合はできるだけケーブルラッチの根本側に指をかけて、少しずつ引き出すようにしよう。

背面システムカバーの下側に封印シールが貼られている
システムカバーを開けると、次回起動するさいに「Warning! Your chassis has been opened」というメッセージが表示されて、起動が一時ストップする
警告を解除するには、BIOSの「Security→Chassis Opened Warning」の「Clear」を選んでリセットする必要がある
ケーブルラッチ取り付け部の先端がクサビ上になっており、非常に取り外しにくい。また何度も抜き差しすると、いつかアーム部分がポッキリと折れてしまいそうだ

 前述のとおり、個人でのパーツの換装が推奨されていない仕様のため、ケースのメンテナンス性はあまりよくないと感じた。ケーブルは裏配線されていないもののケーブルクリップで取りまとめられているので、M.2のSSDやメモリは簡単に脱着できる。ビデオカードもそれほど難しくはない。

 問題は3.5インチHDDの増設と換装。HDDを取りつけるためにはHDDブラケットの両サイドから4本のネジで固定する必要があるので、まずはHDDブラケットをシャーシから取り外す必要がある。そのうえHDDブラケットを取り外すためには、HDDブラケット左側のケーブルクリップからケーブルを外さなければならない。

 クリエイターは扱うデータの容量が大きいので、HDDを増設、換装する機会が一般的なユーザーより多い。3.5インチHDDにマウンタを取りつけて、スライドするだけで脱着できるようなメンテナンス性の高い機構を採用してほしかったところだ。

システムカバーをはずした本体左側面
マザーボードのサイズはmicroATX
CPUの冷却ファンにはケース外から直接吸気できるように大型フードが取りつけられている
DIMMスロットに16GBのDDR4-2666 SDRAMが4枚挿さっている。最大容量の64GBを搭載しているので、故障でもしないかぎりはメモリを交換する必要はない
SSDは「Western Digital PC SN720(SDAQNTW-1T00)」
無線LANは「インテルWireless-AC 9560(9560NGW)」
HDDは東芝製「DT01ACA200」。上に空きスロットがあるが、HDDを増設するためにはHDDブラケットを取り外して、両側からネジ締めする必要がある
ビデオカードは「NVIDIA Quadro RTX 4000(8GB)」。それほど重量はないが、ビデオカードを支えて端子の負担を減らすためのステーが用意されている
電源は容量500Wの「PA-4501-1AB-ROHS」
拡張スロットは、PCI Express 3.0 x16×2(空き×1)、PCI Express 2.0 x1×1、PCIスロット×1が用意されている
システムカバーをはずした本体右側面

艶めかしく感じるほど鮮烈な赤色が表示される広色域ディスプレイ

ConceptD CP7(型番 : CP7271KPbmiphzx)。Amazon.co.jpでの販売価格は198,000円

 今回「ConceptD 500」と同時に発売された27インチ4Kディスプレイ「ConceptD CP7」も一緒に借用した。本製品はPANTONE認証済み、Adobe RGB 99%、DCI-P3 93%というスペックのプロフェッショナル向けディスプレイ。

 ディスプレイキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で検証してみたところ、Adobe RGBカバー率99.4%、Adobe RGB比112.3%、DCI-P3カバー率94.2%、DCI-P3比111.7%という広い色域を確認できた。

 「ColorAC」で読み込むさいに「注意 : このICCプロファイルのLUT Green Blackにクリップ(値が飽和)の可能性がみられます」という警告メッセージが表示されたので計測誤差が発生している可能性があるが、スペックどおりの広い色域を備えていると言えそうだ。

「ConceptD CP7」は「ConceptD 500」に合わせて木目模様のスタンドを採用している
Adobe RGB形式で撮影した写真を表示すると、艶めかしく感じるほど鮮烈な赤色が表示される
実測したAdobe RGBカバー率は99.4%、Adobe RGB比は112.3%
実測したDCI-P3カバー率は94.2%、DCI-P3比は111.7%

クリエイティブ用途に十二分な性能を記録

 最後に性能をチェックしてみよう。今回は下記のベンチマークを実施している。

  • 総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.0.2165」
  • 3Dグラフィックベンチマーク「3DMark v2.11.6866」
  • CPU/OpenGLベンチマーク「CINEBENCH R15.0」
  • CPUベンチマーク「CINEBENCH R20.060」
  • OpenGL/DirectX 3Dグラフィックベンチマーク「SPECviewperf 13」
  • ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 7.0.0」
  • 「Adobe Lightroom Classic CC」で100枚のRAW画像を現像
  • 「Adobe Premiere Pro CC」で実時間5分の4K動画を書き出し

 下記が検証機の仕様とその結果だ。

【表2】検証したConceptD 500の仕様
CPUCore i9-9900K(3.6~5GHz、8コア16スレッド)
GPUIntel UHD Graphics 630(350MHz~1.2GHz)、Quadro RTX 4000(8GB)
メモリDDR4-2666 SDRAM 64GB
ストレ-ジ1TB PCIe NVMe SSD(WDC PC SN720 SED SDAQNTW-1T00)、2TB SATA HDD(TOSHIBA DT01ACA200)
ディスプレイ「ConceptD CP7271K」(27型、3,840×2,160ドット)
TDP95W
OSWindows 10 Pro 64bit バージョン1909
サイズ230×443×487mm(幅×奥行き×高さ)
重量約11.8kg
【表3】ConceptD 500のベンチマ-ク結果
PCMark 10 v2.0.2165
PCMark 10 Score7,010
Essentials10,156
App Start-up Score12,883
Video Conferencing Score8,895
Web Browsing Score9,142
Productivity8,999
Spreadsheets Score10,073
Writing Score8,041
Digital Content Creation10,230
Photo Editing Score13,088
Rendering and Visualization Score12,799
Video Editting Score6,393
PCMark 10 Modern Office Battery Life
3DMark v2.11,6866
Time Spy7,521
Fire Strike Ultra4,907
Fire Strike Extreme9,365
Fire Strike18,523
Night Raid47,006
Sky Diver45,896
Cloud Gate
Ice Storm Extreme
Ice Storm
CINEBENCH R15.0
OpenGL233.97 fps
CPU1,792 cb
CPU(Single Core)210 cb
CINEBENCH R20.060
CPU4,082 pts
CPU(Single Core)495 pts
SPECviewperf 13
3dsmax-06202.88
catia-05260.66
creo-02240.77
energy-0235.86
maya-05267.09
medical-0275.12
showcase-02102.96
snx-03287.96
sw-04161.1
SSDをCrystalDiskMark 7.0.0で計測
1M Q8T1 シーケンシャルリード3,431.154 MB/s
1M Q8T1 シーケンシャルライト2,787.446 MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルリード1,646.323 MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルライト2,436.349 MB/s
4K Q32T16 ランダムリ-ド2,040.674 MB/s
4K Q32T16 ランダムライト1,678.018 MB/s
4K Q1T1 ランダムリ-ド20.389 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト133.725 MB/s
HDDをCrystalDiskMark 7.0.0で計測
1M Q8T1 シーケンシャルリード206.538 MB/s
1M Q8T1 シーケンシャルライト205.896 MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルリード205.962 MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルライト206.969 MB/s
4K Q32T16 ランダムリ-ド1.775 MB/s
4K Q32T16 ランダムライト1.883 MB/s
4K Q1T1 ランダムリ-ド0.699 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト1.169 MB/s
Adobe Lightroom Classic CCで100枚のRAW画像を現像
7,952☓5,304ドット、カラ- - 自然3分44秒18
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出し
3,840×2,160ドット、30fps5分16秒73

 8コア16スレッドのCore i9-9900Kを搭載しているだけに、「CINEBENCH R15.0」のCPUスコアは1,792cb、「CINEBENCH R20.060」のCPUスコアは4,082ptsとクリエイティブ用途に十二分な性能を記録している。OpenGLに特化されたQuadroビデオカードを搭載しているため、「3DMark」はDirectXに特化されたGeForce系よりやや性能は低いが、体感できるほどの開きはなさそうだ。

 1つ気になったのが「Adobe Premiere Pro CC」で4K動画の書き出しに実時間以上の時間がかかっていること。GeForce系の上位ビデオカードを搭載していれば3分台で書き出しが完了する。ソフトウェア側の相性問題かもしれないが、少なくとも現時点では「Adobe Premiere Pro CC」を使うのであれば、GeForce系ビデオカードを搭載したPCを選んだほうがよさそうだ。

クリエイティブ系に特化して税込み45万円切りはコスパ高し!

 Windows 10 Pro、Core i9-9900K、Quadro RTX 4000、64GBメモリ、1TB SSD&2TB HDDというスペックで、税込み45万円を切っている「ConceptD 500」は、文句なしにコスパに優れたマシンだ。モデルを1つに絞り、またカスタマイズモデルを用意しなかったからこそ、この価格を実現できたのだろう。

 もちろん、ゲームを主目的にするのであればGeForce系を搭載するゲーミングPCを選ぶべきだ。しかし、CADをはじめとしたクリエイティブ向けのデスクトップPCを探しているのなら、デザイン性にも優れた「ConceptD 500」は魅力的な選択肢。スペックの充実した「ConceptD 500」は、なに1つ足す必要のないクリエイティブ特化型PCと言える。