Hothotレビュー

モバイルもOKな10万円切りのRyzen搭載マウス製15.6型スリムノート

マウスコンピューター「mouse X5-B」

 株式会社マウスコンピューターから15.6型スリムノート「mouse X5-B」が登場した(税別直販価格89,800円から)。Ryzen 5 Mobileを搭載することに加え、マグネシウム合金を筐体に採用したことでスリムかつ軽量に仕上がっている。そして長時間駆動を実現するとともにおしゃれな赤い天板は、モバイルでも使えるノートPCとして注目を集めそうだ。

 製品としては持ち運べるスリムノートとするのが正しいところだが、今回実機を触った感触としてはモバイルノートとしての可能性も感じることができた。そのため、ここでは一般的なモバイルノートと比べつつ、その視点でレビューを行なっている。

赤い天板がチャームポイントのスリム&軽量筐体

 ひと昔前のショップブランドのノートブックPCと言えば、黒か白い筐体というイメージだった。ところがmouse X5-Bは派手なレッドの天板を採用した個性的なモデルとなっている。「mouse」のテキストロゴではなく、「かじられたチーズ」アイコンを採用しているところもかわいらしい。キーボード面からは、液晶ベゼルの縁取りと、ヒンジ部分に赤い部分が見え、こちら側も黒一色のありきたりなノートPCとせずに個性を表現している。

赤い天板が個性的
キーボード側からもところどころ赤い部分が見える
狙ったものだと思われすが、チーズのアイコンは少し粒状の光沢があり盛り上がって道路標識のよう

 赤い天板カラーは「mouse X400シリーズ」から受け継いだものになる。X400は14型モデル、X5が15.6型モデルという位置づけだ。15.6型の液晶パネルはモバイルノートと比べると少し大画面だが、今回のX5-Bでは狭額縁ベゼルを採用し、本体サイズを約356×233×17.9mm(幅×奥行き×高さ)に抑えている。

 ベゼル幅を詰めたことで全体的なフットプリントが小さくなり、ざっくりイメージすれば15.6型画面でありながら従来の14型ノートのサイズ感で実現しているということになる。そのため15.6型向けのカバンにはすんなり入って各部に余裕もある。

15.6型の大画面でありながら狭額縁ベゼルでコンパクト

 その上、スリムさもなかなかよい。本体の厚みは2cmを下回る17.9mmを実現しているので、カバンがぶ厚くならないで済む。もちろんモバイルノートを見渡せば、1cm台前半のスリムさを実現したモデルはたくさんある。しかし、その筐体設計や製造コストは高く、手ごろな価格で購入できる製品とは言いにくい。X5-Bは、10万円前後の価格でこの厚みを実現しているところが魅力だ。実際に17.9mmなら十分にスリムと言える。

厚みは17.9mm。15.6型にしてはなかなかスリム

 重量は約1.4kg。ここも持ち運んで使うノートを検討するさいにポイントに挙げられる部分だ。モバイルノートと比べれば重いが、15.6型として考えれば十分に軽い。1.5kgを下回っているので、長時間の徒歩の外回りということでもなければずっしりくるような感覚はない。この軽さは筐体素材にマグネシウム合金を採用しているためとされる。軽さとともに、肉厚を削げるという点ではスリムさにも貢献し、金属による強度の点でもメリットがある。

実測では若干軽い1.377kg

 また、本製品ではバッテリの大容量化も実現している。同社の15.6型ノートで第8世代Core搭載のm-Book B509シリーズと比べて2.5倍に増量しているとのことだ。公称値で15.4時間(JEITA 2.0)。実際のバッテリベンチマークの結果は後ほど見ていただくとして、びっくりするくらいバッテリ駆動時間が長い。そのため、ACアダプタを持ち歩くのは1泊2日以上の用事くらいではないだろうか。1.4kgという重量にACアダプタが加算されずに済むのはうれしいところだ。

搭載されていたバッテリは91.24Wh

 電源管理については、OS側からはつねにバランスに設定されているように扱われるが、専用のユーティリティ「Control Center」からシーンに応じた変更ができる。なお、「ハイパフォーマンスモード」を選ぶと「ターボモード」も選べるが、これはファンの回転数がつねに最大になる。さすがにこれで常用することは現実的ではないので、ベンチマーク時はターボモードは使わなかった。また、バッテリ駆動時間計測では「省エネ」を選んでいる。

Control Centerから電源設定を行なう

 ACアダプタは65W仕様の小さなものを採用。とはいえ、最近のモバイルノートではUSB Power Delivery(USB PD)がトレンドであり、スマートフォンと兼用とすることで持ち物を減らせるといったメリットがあり、出張時などにもし忘れても、標準規格なので入手性がよく、ここを重要視するモバイラーも多い。その点ではX5-Bは残念だ。

 十分なバッテリ駆動時間があるとはいえ、もしもの時に専用ACアダプタを携行しなければならないのは、多少面倒に思える。USB PDの設計と実装はそれなりにコストがかかると言われるので、今回の価格で実現するのは難しかったのかもしれない。

ACアダプタはコンセントケーブル合わせて370g

インターフェイスも充実。有線LANも搭載

 液晶パネルの表面処理は非光沢。解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)だ。そしてLEDバックライトを採用している。パネル駆動方式は明かされていないが、斜めから見ても色味の変化は小さい。

フルHDでLEDバックライト。非光沢でビジネス向けにもよさそうだ
視野角も十分

 液晶パネルの上部ベゼル内にはWindows Hello対応のWebカメラを内蔵しており、顔認証ログインもできる。そのため、上部ベゼルは左右と比べれば若干幅がある。とはいえ、従来のノートPCほどの幅はなく、この部分も十分に狭額縁だ。

Windows Hello対応で100万画素のWebカメラ。これを搭載してもベゼルはせまめ

 キーボードは88キー日本語配列。アイソレーションになるのだと思うが、角を丸めずキートップを大きくとったのが特徴とされる。好みは分かれるかもしれないが、少し左や少し右、少し上や少し下を押してもしっかりと入力できる入力しやすさは感じられる。もちろん、キーとキーの間には2mm程度のスペースが残されているので、この引っ掛かりによってキーの識別は可能だ。

キーボードは右端中心に多少クセのある配列
ホワイトLEDのキーボードバックライトを搭載する

 88キーということで右Altは省かれている。また、Home/End、PageUp/PageDown、右Ctrlが右端の1列に並んでいる。その部分の隙間もほかのキーと同様なので、使用頻度の高いBackSpaceやEnterを押すさいに、右隣の1列との移動感覚の違いを体に覚え込ませる必要がある。加えて、使用頻度は低いと思われるが、上下左右キーよりも右に右Ctrlがあるのは少し戸惑うかもしれない。

 打鍵感は悪くなく、キーピッチ18mm、ストローク1.4mmとなっており、入力は快適に行なえる。

キーピッチは18mmほど。キーとキーの間は2mm弱
キーストロークも1.4mmほどあるとのこと。反発力もちょうどよい

 少しユニークなのがタッチパッドのオン/オフ機能。タッチパッドの左上隅部分をダブルタップすることでオン/オフを切り替えられる。ユーティリティなどソフトウェアから制御するよりもすばやく切り替えられるので、外付けマウスを利用してタッチパッドを無効化したいユーザーには便利に感じられる機能ではないだろうか。

タッチパッドは約117×73mm(幅×奥行き)で大きい。左上隅のLED部分をダブルタップしてタッチパッドのオン/オフを切り替える
タッチパッドのオン/オフはディスプレイ左上にもOSDで表示される

 側面のインターフェイスは、Gigabit Ethernet、USB×3(3.0×2、2.0×1)、USB 3.0 Type-C×1、HDMI、オーディオ入出力、microSDカードリーダ。セキュリティロックスロットもあるので、事務所への導入などでの盗難防止にもなる。USBの世代は3.0(5Gbps)止まりなので、USB 3.1(10Gbps)のようなより高速のインターフェイスを搭載できていない点は惜しい。ただ、USB 3.1が必要になるのはポータブルSSDやマルチギガのUSBアダプタなど現状ではまだかぎられるため、そこまで重要度の高いものではないだろう。

左側面にはLAN(折りたたみ式)、USB 2.0、USB 3.0、オーディオジャック、microSDカードスロット。右側面にはACアダプタ用ジャック、HDMI、USB 3.0、USB 3.0 Type-C

 無線機能は、Intel Wireless-AC 9260によるWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)とBluetooth 5.0。無理にWi-Fi 6としていないところは価格重視の姿勢を感じる。実際、10万円前後という価格は、2cm以下の厚み、1.5kg以下の重量という本格的な15.6型モバイルノートPCとしては破格と言える。

価格を抑えつつ長時間駆動向けの構成

 内部スペックを見ていこう。まずCPUはRyzen 5 3500U。薄型モバイルに搭載されていることからもわかるように、TDPは15Wと低めだ。4コア8スレッドで動作周波数は2.1~3.7GHz、キャッシュ容量は4MBとなる。コア/スレッド数は十分。ただし最大側の動作周波数が4GHzに達していないので、シングルスレッド性能はほどほどと見ておいたほうがよい。

 GPUはCPUに統合された「Radeon Vega 8 Graphics」。シェーダは512基で、ROPは16基。RyzenのRadeon Vega Graphicsは、統合GPU機能としては比較的強力なことで知られる。ただし、それはグラフィックスメモリとしてシェアするメインメモリがデュアルチャネルモードで動作しているときに最大の性能を発揮する。しかし、本製品はここに多少の注意が必要だ。

 X5-Bのメモリは容量が8GBで、DDR4-2400を採用している。ただし、シングルチャネルモードで動作しており、じつはメモリスロットも1本しかないので、デュアルチャネルモードにすることはできない。そのため、Radeon Vega Graphicsの性能を最大まで引き出せない。

メモリはシングルチャネル(1枚)でDDR4-2400
内部を見てもDIMMスロットは1つだけ。ストレージ用のM.2は2つ確認できる。右上に2.5インチドライブを搭載できそうなスペースもあるがSATA端子は確認できなかった

 ただしシングルチャネルモードもデメリットだけというわけではない。メモリはデータを保持するために、つねに電力を必要とし、消費電力への影響はまずまず大きい。シングルチャネルモードでの動作は、性能的に見ればデメリットだが、駆動時間的に見ればメリットになる。

 また、後ほどベンチマークで紹介するが、Radeon Vega Graphicsはシングルチャネルモードでもまずまずの性能だ。ゲーミングノートPCではない本製品の方向性、一般的なPC用途、それもモバイルとなれば、このほうがバランスがよいとも考えられる。

 内部のストレージスペースはM.2スロット×2が確認できた。標準構成では256GBのSATA SSD×1だが、BTOでカスタマイズできることに加えてもう1台搭載することもできる。スペース的にはスリム(7mm)のHDDも搭載できそうなのだが、SATAインターフェイスやその端子用の基板パターンは見当たらなかった。

 搭載されていたM.2 SSDはKingstonのRBUSNS8180S3256GJ。先述のとおりSATA(6Gbps)インターフェイスで、256GBと容量に関しては最小限なので、速度を求めたり容量を求めたりするならBTOカスタマイズしたほうがよい。標準搭載のSSDでも、シーケンシャルリード/ライトに関しては400MB/s台後半が出ており、通常の操作に関しては快適で、引っかかりを感じるようなことはない。

ストレージはSATA 6Gbps接続の256GB SSD
シーケンシャルリード/ライトは400MB/s台後半ほど出ており、PC操作時のレスポンスはよい。Serial ATA SSDは一般的にPCI Express接続のNVMe SSDと比べて省電力かつ発熱が低いメリットもある

とくにGPUが効くシーンで高スコアだが、CPUも十分な性能

 それではベンチマークテストの結果を見ていこう。前述のとおり電源管理に関しては、ベンチマーク時が「ハイパフォーマンスモード」、バッテリ駆動時間計測時は「省エネ」を用いている。

 また、比較用にCore i7-10510Uを搭載するASUSの||nVivoBook S15を用意した。VivoBook S15の詳細については別記事のレビュー(美しいカラーリングでデザイン◎な12万円からのノートPC「ASUS VivoBook S15」)を参照されたい。

 今回使用したベンチマークソフトは、ULの「PCMark 10 v2.0.2144」、同「3DMark v2.11.6846」、MAXONの「CINEBENCH R20」、ペガシスの「TMPGEnc Video Mastering Works 7」、The HandBrake Teamの「Handbreak」だ。

【表1】検証機のスペック
mouse X5シリーズ X5-BASUS VivoBook S15(S531FA)
CPURyzen 5 3500U(4コア/8スレッド、2.1~3.7GHz)Core i7-10510U(4コア/8スレッド、1.6~4.2GHz)
チップセットCarrizo FCHComet Lake PCH
GPURadeon Vega 8 GraphicsUHD Graphics
メモリ8GB DDR4-240016GB DDR4-2666
ストレージ256GB SATA SSD512GB NVMe SSD+1TB SATA HDD
OSWindows 10 Home 64bitWindows 10 Home 64bit
【表2】定番ベンチマークの結果
mouse X5シリーズ X5-BASUS VivoBook S15(S531FA)
PCMark 10v2.0.2144
Extended Score2,8902,914
Essentials Scenario7,4038,634
App Start-up Test8,39311,564
Video Conferencing Test7,2747,120
Web Browsing Tset6,6477,818
Productivity Scenario5,7467,381
Spreadsheets Test7,9228,467
Writing Test4,1686,436
Digital Content Creation Scenario3,1542,923
Photo Editing Test4,6403,237
Rendering and Visualization Test2,5532,228
Video Editing Test2,6493,463
Gaming Scenario1,4071,046
Fire Strike Graphics Test1,8941,377
Fire Strike Physics Test8,87210,123
Fire Strike Combined Test558422
3DMarkv2.11.6846v 2.10.6797
TimeSpy680495
NightRaid6,9636,124
Fire Strike1,7551,252
Sky Diver6,5304,995
Cloud Gate10,6259,199
Ice Storm63,15366,568
CINEBENCH R20
CPU1,5941,631
CPU(SingleCore)371434
TMPGEnc Video Mastering Works 7
4K/60p/MP4→フルHD/30p/VP94.6fps5.52fps
4K/60p/MP4→フルHD/60p/H.265/HEVC/SW8.69fps
4K/60p/MP4→フルHD/60p/H.265/HEVC/HW22.89fps
HandBreakv1.3.0
4K/60p/MP4→フルHD/30p/H.264/MP4 Fast SW23.45fps26.39fps
4K/60p/MP4→フルHD/30p/H.264/MP4 Fast HW26.5fps
4K/60p/MP4→フルHD/30p/H.265/MP4 Fast SW19.31fps
4K/60p/MP4→フルHD/30p/H.265/MP4 Fast HW24.97fps

 CPU単体の性能で見ると、CINEBENCH R20のCPUスコアが1594、CPU(SingleCore)が371とモバイルノートとして見れば十分によい結果だ。比較対象としたCore i7搭載モデルと比べると、CPU側が98%、CPU(SingleCore)側が86%。CPU(SingleCore)側が若干低めなのは搭載するRyzen 5 3500Uのターボ時のクロック倍率が3.7GHzと低い影響だろう。

 エンコードテストでは、同じ4コア8スレッドのCore i7-10510Uと比べると多少遅い。VP9時の所要時間では、Core i7-10510U搭載PCが1時間55分4秒だったのに対して2時間18分12秒かかっている。ただし、Radeon Vega Graphicsが内蔵するハードウェアエンコーダの「VCE」が利用できる。モバイルで動画編集を行なうような場合は、VCE機能を利用することでCPU負荷を下げるとともに処理時間を短縮するのが望ましい。

 PCMark 10、Extendedスコアは2,900ポイントほどで、モバイルノートPCとしては十分な値だ。個別のシナリオで見ていくと、EssentialsのApp Start-UpはSSDがSATA SSDである点でやや低めのスコアであるほか、以降のスコアにも多少影響をおよぼしていると思われる。

 Digital Content CreationシナリオもモバイルノートPCとしては高めの結果だ。Core i7搭載モデルと比べて、Rendering and Visualization以外はより高いスコアを出している。こうして見ると、GPUが効く用途がとくに強みと言える。CPU処理中心のテストに関してはCore i7搭載モデルにおよばないが、そもそもRyzen 5なのでCore i5がライバルになるといったところだろう。ところどころでCore i7に迫り、追い越している今回の結果はむしろRyzen 5の優れた性能が垣間見える。

 3DMarkに関しては、デュアルチャネルモード時のIntel UHD Graphics(Core i7-10510U)よりも高スコアだ。スコアで下回ったのはIce Stormだけ。ただ、Ice Stormはもっとも負荷の軽いテストだ。これは、後の実ゲームベンチマークでも同様の傾向が見られたので、特徴と言える。

 実ゲームベンチマークでは、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」、「World of Tanks enCore」を用いた。

【表3】ゲーム系ベンチマークの結果
mouse X5シリーズ X5-BASUS VivoBook S15(S531FA)
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト
1,920×1,080ドット最高品質4,7495,420
1,920×1,080ドット標準品質6,1906,784
1,920×1,080ドット低品質6,5457,770
1,280×720ドット最高品質8,2229,263
1,280×720ドット標準品質9,74210,569
1,280×720ドット低品質10,17512,423
World of Tanks enCore
超高品質2,1161,333
中品質5,6004,230
最低品質21,41730,028
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク
1,920×1,080ドット、最高品質1,4211,236
1,920×1,080ドット、高品質(ノートPC)1,8701,861
1,920×1,080ドット、標準品質(ノートPC)2,3212,812
1,280×720ドット、最高品質2,5592,425
1,280×720ドット、高品質(ノートPC)3,3743,592
1,280×720ドット、標準品質(ノートPC)4,1095,177
1,920×1,080ドット、最高品質9.04297.66488
1,920×1,080ドット、高品質(ノートPC)12.336912.18182
1,920×1,080ドット、標準品質(ノートPC)15.5160418.592
1,280×720ドット、最高品質17.36816.19519
1,280×720ドット、高品質(ノートPC)23.4361724.6383
1,280×720ドット、標準品質(ノートPC)29.0530536.03439

 World of Tanks enCoreで見ると、超高~中画質に関してはシングルチャネルの統合GPUとしてはよいスコアで、Intel UHD Graphicsよりも高い。ところが、先の3DMarkのIce Stormと同様、もっとも負荷の軽い最低品質に関してスコアが伸び悩んでいる。

 ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークもWorld of Tanks enCoreと同様の傾向が見られる。ただし、全体的な負荷が高いため、1,280×720ドット、標準品質(ノートPC)以外では、すべてIntel UHD Graphicsで計測した値よりも高い。

 ドラゴンクエストX ベンチマークソフトのスコアはどれもIntel UHD Graphicsより低かった。このベンチマークは、Intelの統合GPUに最適化されていることも理由の1つだが、これまでの傾向を見ると、全体的な負荷が軽すぎることもスコアが伸び悩んだ理由ではないかと思われる。

 こうした低負荷時にスコアやフレームレートが伸び悩む場合、一般的には、GPU以外の部分、接続バスの帯域やCPU処理性能などにボトルネックが生じていると考えられる。本製品の場合、CPU性能はCore i7ほどではないにせよ高い。より疑わしいのはメモリのシングルチャネルモードと考えるのが自然であるように思う。

 もっともドラゴンクエストX ベンチマークソフトでも高画質の1,920×1,080ドット、最高品質が「普通」評価で、1つ画質を落として標準品質にすれば「快適」評価が得られるので楽しめるという点に変わりはない。

 最後にバッテリ駆動時間。PCMark 10のバッテリベンチマークにあるModern Officeシナリオでのバッテリ駆動時間テストでは、JEITA2.0での公称値とさほど変わらない14時間52分を記録した。これだけのバッテリ駆動時間があれば、ACアダプタを持ち歩かなくても1日持つことが多いだろう。

 バッテリ駆動時にディスプレイ輝度がやや暗くなるが、室内光で十分に識別できるレベルの輝度はあった。Modern Offieスコアに関しては、若干スコアが低いように感じる。「ハイパフォーマンスモード」と比べると「省エネ」モードでは、大胆にクロックを落としているようだ。それでも4,889ポイントあるので、モバイルで動画編集のような重い処理をさせなければ問題ないだろう。十分なバッテリを搭載しているので、必要に応じて、「標準」モード、ハイパフォーマンスモードに切り替えればよい。

15.6型でモバイル可能、コスパもかなりよい

 ここまで見てきたように、筐体デザインはスリム&軽量で、10万円前後のモデルとしてはかなりがんばっている。15.6型の大画面を持ち運んで使いたいという人には好適と言える。赤い天板とチーズアイコンは特徴的も含め、女性も使いやすそうだ。

 その上で、Ryzen 5 3500Uの性能も必要十分だ。とくにGPUが強いのが特徴だが、本製品のシングルチャネルモードのメモリでもIntel UHD Graphicsよりも高性能だったところはポイントに挙げられる。ゲーム向きではないが、普段のレスポンスで重要なところである。そしてバッテリ駆動時間。15時間程度のバッテリ駆動を1.4kgの筐体で実現できているところは、モバイル範囲を広げてくれる。部分部分で見れば、価格を重視し機能に妥協したところも感じるが、コストパフォーマンスを追求しつつ、バランスの取れた作りは、低価格ノートとはあなどれない出来だ。