Hothotレビュー
美しいカラーリングでデザイン◎な12万円からのノートPC「ASUS VivoBook S15」
2019年12月13日 11:00
ASUSのノートPCのなかでも、メインストリーム向けブランドになる「VivoBook」。従来からポップなカラーバリエーション、スリムデザインなど数多いメインストリーム向けモデルで、同社らしい個性的なデザインを特徴としてきた。その最新15.6型モデルが「VivoBook S15 S531FA」だ。
個性的なカラーリングとさらに一歩先に進んだコンパクト設計
まず目を引くのはやはりカラーリングだ。前モデルのVivoBook S15 S530UAも3色のカラーバリエーションで展開されていたが、S531FAは5色。スタンダードカラーと言えるのが「ガンメタル」と「トランスペアレントシルバー」、これに個性的な「コバルトブルー」、「パンクピンク」、「モスグリーン」が加えられている。
評価機はコバルトブルー。液晶天板と底面がこの色だ。かなり鮮やかなインパクトのある色味だ。
前モデルでも側面に差し色を添えていたが、S531FAもこれを引き継いでいる。ただし、前モデルは側面のほぼ全体だったのに対し、S531FAは液晶天板の側面のみ、細めのライン「サイドバーカラー」に変わり、いっそう引き締まった印象を受ける。コバルトブルーモデルのサイドバーカラーはネオンレッドだ。
このように、非常に個性的で色使いにもこだわりの感じられるデザインだ。そして前モデルとはまったくデザインを変えている。
液晶ディスプレイには流行りの狭額縁ベゼルが採用されている。狭額縁ベゼルは前モデルからだが、S531FAはさらに幅を詰めている。前モデルは361.4×243.5mm(幅×奥行き)だったところ、S531FAでは357.2×230.3mm(同)へと、幅4.2mm、奥行き13.2mmほどコンパクトになっている。液晶を開いたさいの見た目もコンパクトだが、机の上で液晶を閉じたときや収納するときにもコンパクトさを感じられる。
厚みは18.5mm。据え置きがメインとなるノートPCでも、スリムであればよりスタイリッシュに感じられるメリットがある。パームレスト部分と机の段差も低くなるからキーボードの打ちやすさもよい。
重量は1.85kg。1kg前後のモバイルノートと比べれば重いが2kgを切っているため、持ち運びも気軽に行なえる。コンセプトとしてはデスクトップ代替、据え置きノートになると思われるが、自宅内での移動、ちょっとしたモバイルは問題ない重量感だ。
ACアダプタも45Wで小型だ。プラグをたたんで収納することには非対応で、最近増えてきたUSB PDタイプではないのが残念だが、このサイズなら自宅で使うさいにもジャマにならないし、目立たないし、本体と一緒に持ち運ぶことも負担にならない。重量も148.3gと軽量だ。
買い換えはもちろん、スマホ世代にも優しいインターフェイス
液晶天板を開くと天板の端がテーブル面に着き、パームレスト部を持ち上げ角度を作る。この「エルゴリフト」はASUSのノートPCの多くが採用しているものだ。傾斜がタイピングのしやすさを高め、底面にある通気孔の効率を上げ冷却性能を高める効果もある。
液晶パネルのスペックは、サイズが15.6型、解像度がフルHD(1,920×1,080ドット)。視野角はスペック上170度。正面からの色味はよい。ただ左右に振ったさいに若干暗くなるのを感じたのでIPSパネルではないと思われる。そしてTNパネルのような色味の変化はなかった。ここはわずかなものなので、大人数で画面を覗き込むようなシチュエーションでないかぎりは問題ない。基本的に、上位モデルのZenBookほどコストの高いパネルではないようだ。
キーボードはテンキー付きの103キー日本語配列。15.6型の十分なサイズがあるためテンキー付きでも窮屈感がなく、ごく一部のキーを除けばクセらしいクセがない。
幅がせまいキーは、おもにスペースキーの右の部分の変換、カタカナ/ひらがな/ローマ字、右Alt、右Ctrl。全角/半角も少し幅狭だが端のキーなので影響は少なく、テンキーも同様だが使用頻度を考えればそこまで不都合には感じなかった。
メインストリーム向けの製品では、できるだけスタンダードなレイアウトであることのほうがが重要だろう。その点で本キーボードは合格点を出せるレイアウトだ。
アイソレーションでキー自体は若干小ささを感じるが、極端に小さいものではなく、ピッチも19mmを確保している。ストロークは気持ち浅く反発力も軽めだが、レイアウトがスタンダードなぶん、打ち間違いなどの頻度は少なく全体としては快適なキーボードという印象だ。その下のタッチパッドも面積をやや大きめにとり操作しやすく、一体型クリックボタンとしたことで見た目がスッキリさせている。
上部液晶ベゼル部分にはWebカメラも搭載されている。92万画素で赤外線機能も備えたWindows Hello対応のものだ。これにより顔認証ログインもできる。スマートフォンでも最近は顔認証が一般的になってきており、スマホ世代ならすんなりと使いこなせるのではないだろうか。
左右側面のインターフェイスは、HDMI、USB 3.0 Type-C、USB 3.0、USB 2.0×2、microSDXCカードリーダ、マイク/ヘッドフォンコンボジャック。およそ必要なものはそろっている。
USB 3.x系はType-A/C各1つずつと物足りなさがあるものの、メインストリーム向け製品としては、両方を標準搭載していることのほうが重要だ。
カードリーダもmicroSDXCで、通常サイズのSDXCに非対応だが、PCよりもスマートフォンがメインになるだろうユーザー層にはアダプタ不要でmicroSDXCを読み込めるほうがよいのかもしれない。
前モデルもそうだったが、S531FAも有線LANを搭載していない。基本的に無線LAN接続をすることになるが、その無線LAN規格が前モデルのWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)からWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)へとアップグレードされている。
Wi-Fi 6はWi-Fi 5やそれ以前の規格もカバーしているため、今お使いの無線LANルーターで問題ない。そして、Wi-Fi 6対応無線LANルーターを用意できれば、Wi-Fi 5時よりも快適で速い接続が可能になる。最新規格に対応していることは、将来的に大きなメリットになるだろう。
最新第10世代Coreを採用。ストレージは2ドライブ構成へ
おそらくデザインのほかでもっとも注目されるアップデートがCPUだ。S531FAは最新の第10世代Coreに更新され、評価機のCore i7搭載モデル(149,800円)のほか、Core i5搭載モデル(124,800円)も展開される。
CPUはCore i7-10510U(4コア/8スレッド、1.8~4.9GHz)か、Core i5-10210U(4コア/8スレッド、1.6~4.2GHz)。第10世代CoreにはComet LakeとIce Lakeという2種類があり、本製品で採用されているのは前者だ。Comet Lakeは従来アーキテクチャの延長上にある製品なので、Ice Lakeほどの先進性はない一方、おそらく本製品のようにメインストリーム向けでコストパフォーマンスも重視するモデルに適している。
検証機が搭載するCore i7-10510Uのスペックは4コア8スレッド。動作クロックは定格1.8GHz、Turbo Boost時最大4.9GHz。4コアは今となっては最大というわけではないが十分と言える。数年前の2コアモデルと比べればマルチスレッド性能が向上し、現在のアプリケーションをより快適に動作させることができる。また、動作クロックもTurbo Boost時が4.9GHzと高い設定のため、シングルスレッドでの性能も高い。
統合グラフィックス機能はIntel UHD Graphics。本製品は外部GPUを搭載しないので、この統合グラフィックスを利用している。ナンバリングがつかなくなった理由は不明だが、基本的に従来のIntel UHD Graphics 630系のGPU機能だ。この点、Ice Lakeで採用されているIris Graphicsとは異なる。
ストレージは2ドライブ構成。前モデルのときはOptane MemoryをキャッシュにHDDを高速化する構成だったが、S531FAではSSD+HDDの一般的な構成になった。評価機のストレージ構成は、SSD側がInel SSD 660pの512GB、HDD側がSeagateのMobile HDDシリーズの1TBモデル「ST1000LM035」だった。
接続はSSDがPCI Express 3.0 x2とされている。SSD自体のインターフェイスはPCI Express 3.0 x4対応なのだが、性能的にx2相当なのでそうした表記にしているのだという。HDD側は従来同様SATA 6Gbps。2ドライブ構成になったことで全体的な容量が増えたことはメリットだろう。
ゲームには向かないが、普段使いなら最新Core i7の性能が良スコア
では、S531FA評価機の性能をベンチマークで測ってみよう。今回利用したベンチマークソフトは、まずULの「PCMark 10」、同「3DMark」、MAXONの「CINEBENCH R20」、ペガシスの「TMPGEnc Video Mastering Works 7」、The HandBrake Teamの「Handbreak」だ。
【表1】定番ベンチマーク結果 | ||
---|---|---|
PCMark 10 | ||
Extended Score | 2,914 | 3,328 |
Essentials Scenario | 8,634 | 8,548 |
App Start-up Test | 11,564 | 10,487 |
Video Conferencing Test | 7,120 | 7,679 |
Web Browsing Tset | 7,818 | 7,757 |
Productivity Scenario | 7,381 | 6,417 |
Spreadsheets Test | 8,467 | 7,452 |
Writing Test | 6,436 | 5,526 |
Digital Content Creation Scenario | 2,923 | 3,390 |
Photo Editing Test | 3,237 | 4,508 |
Rendering and Visualization Test | 2,228 | 2,405 |
Video Editing Test | 3,463 | 3,595 |
Gaming Scenario | 1,046 | 1,783 |
Fire Strike Graphics Test | 1,377 | 2,311 |
Fire Strike Physics Test | 10,123 | 11,151 |
Fire Strike Combined Test | 422 | 772 |
3DMark | ||
TimeSpy | 495 | 726 |
NightRaid | 6,124 | 8,399 |
Fire Strike | 1,252 | |
Sky Diver | 4,995 | |
Cloud Gate | 9,199 | |
Ice Storm | 66,568 | |
CINEBENCH R20 | ||
CPU | 1,631 | 1,564 |
CPU(SingleCore) | 434 | 438 |
TMPGEnc Video Mastering Works 7 | ||
4K/60p/MP4→フルHD/30p/VP9 | 5.52 | 5.75 |
HandBreak | v1.3.0 | |
4K/60p/MP4→フルHD/30p/MP4 Fast | 26.39 | 24.13 |
PCMark 10の結果は、EssentialsとProductivityの両シナリオのスコアが高く、DigitalContentCreationとGamingのシナリオは低めだ。統合GPUモデルの傾向と言えばそうなるが、4コア8スレッドのCore i7であるためCPU性能が効くテストでは良好な傾向にある。
一方、GPU性能はそこまで高いものではないため、ゲームはもちろん、一般的なアプリケーションでもGPUを処理に用いるものでのスコアは高くない。もちろんGPUを使う使わないは実際のアプリケーションの実装次第なので利用できないわけではない。
CINEBENCH R20のCPUスコアは1,631で、4コア8スレッドのCore i7モデルなりの得点だ。シングルスレッド側も434ならまずまずだ。いちおう、同じ第10世代のComet Lakeを搭載する本製品と、ほかのIce LakeのCore i7搭載モデルで比較をすると、Ice Lakeのほうがわずかによい。それはIce LakeのほうがIPCが高いということもある。
逆にComet LakeはIce Lakeよりもコア数の多いモデルもあるが、本製品のCore i7-10510Uは4コア止まりのぶん、コスパに優れても性能ではよりクロックの低いIce Lakeと同等かやや劣るあたりに落ち着く。
PCMark 10で指摘したとおり、3DMarkの結果を見ても3D性能は統合GPUなりのものだ。Fire Strikeで4桁に乗っているのはよいが、ゲーム性能を求めるものではない。現実的なのはCloud GateやIce Stormの、DirectX 10や9世代の軽量ゲームになるだろう。
続いてゲームベンチマークの結果をいくつか紹介しよう。用いたのはスクウェア・エニックスの「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」および「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」、Wargaming Groupの「World of Tanks Encore」だ。
【表2】ゲーム系ベンチマーク | ||
---|---|---|
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト | ||
1,920×1,080ドット最高品質 | 5,420 | 5,550 |
1,920×1,080ドット標準品質 | 6,784 | 7,130 |
1,920×1,080ドット低品質 | 7,770 | 8,636 |
1,280×720ドット最高品質 | 9,263 | 10,158 |
1,280×720ドット標準品質 | 10,569 | 11,397 |
1,280×720ドット低品質 | 12,423 | 13,798 |
World of Tanks enCore | ||
超高品質 | 1,333 | 2,488 |
中品質 | 4,230 | 5,731 |
最低品質 | 30,028 | 38,265 |
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク | ||
1,920×1,080ドット、最高品質 | 1,236 | 1,973 |
1,920×1,080ドット、高品質(ノートPC) | 1,861 | 2,807 |
1,920×1,080ドット、標準品質(ノートPC) | 2,812 | 3,935 |
1,280×720ドット、最高品質 | 2,425 | 3,702 |
1,280×720ドット、高品質(ノートPC) | 3,592 | 5,279 |
1,280×720ドット、標準品質(ノートPC) | 5,177 | 6,718 |
ドラゴンクエストX ベンチマークソフトではフルHD、最高品質でも5,000ポイントを超え「快適」評価が得られている。現実的な設定としては「とても快適」評価が得られたフルHD低品質、HDの最高品質あたりになるだろう。World of Tanksも最低品質での結果は十分に楽しめるものだ。そしてファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークも、HD解像度の標準品質(ノートPC)であれば「とても快適」評価を得られた。
このように、とくに軽量のゲームであればフルHDでのプレイが望めるが、一般的に軽量と言われる程度のゲームはHD解像度に落としたり、画質を最低付近に落とす必要がある。GPU機能はゲームのためというより、映像再生時やトランスコード時のハードウェア支援や高画質化のためのものという位置づけが強い。
最後にバッテリ駆動時間。実測ではPCMark 10のBattery Test、Modern Officeシナリオを用いて6時間8分(輝度最大。バランス)だった。家庭内での据え置き用途を中心にモバイルを考えるならば十分な駆動時間と言える。
自然に感じられ馴染みやすい、基本に忠実でも個性的なメインストリームノート
VivoBook S15 S531FAは、メインストリーム向けモデルとして見るとデザインへのこだわりや使いやすさ、機能へのこだわりも十分に感じられる。Core i7モデルは149,800円なのでさすがにメインストリームのなかではやや上のグレードだが、Core i5モデルは124,800円でメモリが8GBに減っているだけなので、用途によってはこちらでも十分かもしれない。ただ、全体を通して見ればコストをかける部分、コストを抑える部分は明確に分けられており、メインストリーム層の求めるものにまとめあげているように思える。
ほかのカラーバリエーションも見てみたいが、コバルトブルーはとくに個性的に感じられ、とくに青/赤/白(明るいシルバー)の配色は某ロボットアニメにも通じる……かもしれない。機能面では、キーボードや入力系、インターフェースは基本に徹し、それもこれからPCをはじめる世代にも訴求しているように感じられる。はじめてのPCとしても基本に忠実なぶんオススメしやすいだろう。