Hothotレビュー
本日発売の「VAIO Phone A」の使い勝手を確かめる
~LTE+3GのDSDSに対応した2万円半ばのAndroidスマホ
2017年4月7日 06:00
VAIOは、SIMロックフリースマートフォン「VAIO Phone A」を発表した。2016年に発売されたWindows 10 Mobile搭載スマートフォン「VAIO Phone Biz」と同じ筐体で、スペックもほぼ同等ではあるが、OSとしてAndroid 6.0.1を採用する点が大きく異なっている。
価格はオープンプライスで、税別直販価格は24,800円(税込26,784円)、本日(4月7日)が発売日となる。
本体外観はWindows 10 Mobile搭載VAIO Phone Bizと同じ
「VAIO Phone A」は、VAIOブランドのスマートフォンとして3製品目となる。2016年に登場した2製品目の「VAIO Phone Biz」は、OSにWindows 10 Mobileを採用した、法人を中心としたビジネス向けスマートフォンとして位置付けられていた。それに対しVAIO Phone Aでは、OSにAndroidを採用しており、ビジネスユーザーだけでなく、一般ユーザーも含めより広いユーザー層をターゲットとしている。ただ、VAIO Phone Aはハードウェアから新たに設計したものではないようだ。
本体の外観は、先代のVAIO Phone Bizと同じとなっている。背面がアルミニウム素材の削り出しで、サンドブラスト加工によるつや消し仕上げとなっている点や、中央にレーザーエッチングによるVAIOロゴの彫り込みといった特徴も同じ。
背面上部と下部の一部は、アンテナなどを収納するために樹脂素材を採用しているが、シンプルながらスタイリッシュで飽きの来ないデザインは、相変わらず好印象。確かに、VAIO Phone Bizと見た目は同じだが、2万円台半ばと安価な価格のスマートフォンとは思えない高級感があり、質感は同価格帯の格安スマートフォンの中でもトップクラスだ。
もちろん、VAIO Phone Biz同様に、長野県安曇野のVAIO本社工場で技術者が全製品を検査して出荷する、”安曇野FINISH”も同じだ。海外生産製品にありがちな品質のばらつきを解消できるため、出荷製品の品質に不安はない。
サイズは約77×156.1×8.3mm(幅×奥行き×高さ)とまったく同じ。5.5型液晶パネルを搭載しているため、筐体はやや大ぶりとなっている。手の小さな女性などは、少々手に余るかもしれない。ただ、側面はほぼ垂直に切り落とされているが、背面は側面付近がなだらかなカーブとなっているため、サイズのわりには手に馴染むという印象だ。
重量は約167g、実測では165.7g(Micro SIM1枚装着時)だった。サイズの大きさに加えて、筐体にアルミ素材を採用していることを考えると、妥当な重さと言える。実際に手にすると、サイズの大きさもあって数字ほどは重く感じない。
DSDS対応やVoLTE対応などの強化を実現
外観だけでなく、スペックもVAIO Phone Bizとかなり似通っている。搭載するSoCは、QualcommのSnapdragon 617、メモリは3GB、内蔵ストレージは16GBと、VAIO Phone Bizと同じ。
外部ポートは、下部側面にMicro USBポート(USB 2.0)、左側面にSIM/microSDカード装着用トレイ、上部側面にオーディオジャックを備えるとともに、右側面には電源ボタンとボリュームボタンを備える。これもVAIO Phone Bizと変わらない。ディスプレイも同じで、5.5型フルHD(1,080×1,920ドット)液晶となっている。
OSは、冒頭でも紹介しているようにAndroidを採用。バージョンは6.0.1で、追加アプリやオリジナルアプリなどは一切インストールされておらず、ピュアな状態となっている。上級者やビジネスユーザーにとって、自由なカスタマイズが可能というだけでなく、不要なアプリが一切ないという点は魅力となるだろう。
そして、OS以外にもVAIO Phone Bizとの違いがいくつか見られる。まず、モバイル通信の仕様が一部変更されている。
サポートするLTEバンドは、Band 1/3/8/19/21とVAIO Phone Bizと同じだが、W-CDMA(3G)のサポートバンドはBand 1/5/6/8/11/19と、Band 5が追加となった。日本の通信事業者はW-CDMAのBand 5を使用していないが、アメリカなど海外の通信事業者では使用例が多くあり、海外で利用しやすくなったと言える。
なお、通信速度はLTE側が下り最大225Mbps(NTTドコモ回線でのBand 1+19、Band 1+21、Band 3+19でのキャリアアグリゲーション時)、W-CDMAが下り最大42.2 Mbpsと、この点はVAIO Phone Bizと同じ。
また、LTEネットワークを利用した音声通話サービス”VoLTE”にも対応している。競合のSIMロックフリースマートフォンでもVoLTEに対応するモデルが増えているが、VAIO Phone AではNTTドコモのVoLTEに対応しているという点が大きな特徴となっている。
実際に手持ちのNTTドコモのSIMを装着して確認してみたところ、VoLTE設定メニューが表示され、実際の通話でも高音質通話が確認できた。なお、別途auのVoLTE対応SIMも装着してみたところ、こちらもVoLTE設定メニューが表示され、VoLTE通話が可能だった。
さらに、2つのSIMを装着して3G+3G、または3G+LTEの同時待受が可能な、”デュアルSIMデュアルスタンバイ”、いわゆるDSDSも可能となった。VAIO Phone Bizでも、SIMトレイはMicro SIMを1つと、Nano SIMを1つ装着可能となっていたが、実はDSDSには対応していなかった。しかしVAIO Phone Aでは、両スロットにSIMを装着し、双方の回線を同時に利用可能となる。なお、LTEはどちらのSIMスロットもサポートしているが、LTEの同時待受はできず、LTEはどちらか一方のSIMでのみ利用可能となる。
それでも、海外に出掛けたときなどに、日本のSIMと現地で調達したデータ通信用SIMを同時に装着して、日本のSIMは3Gで通話の待受、海外のSIMではLTE高速データ通信を行なうといったことが可能となるため、利便性は大きく高まる。ちなみに、Nano SIMスロットはmicroSDカードとの排他利用となる。
筐体やハードウェアのスペックが同じということで、基本的にはVAIO Phone Bizと同じ端末にAndroid OSを導入したものと考えて差し支えないだろう。
しかし、機能面がいろいろと進化していることを考えると、OSがAndroidになったことで、端末が持つ本来の機能をフルに引き出せるようになったと言ってよさそうだ。そして、2万円台半ばという安価な価格帯ながら、DSDSやNTTドコモのVoLTEに対応するという点は、競合製品に対する優位点になりそうだ。
カメラの画質はまずまずも暗い場所での撮影はやや厳しい
カメラは、裏面のメインカメラが約1,300万画素、液晶面の前面カメラが約500万画素。イメージセンサーは双方ともCMOSで、カメラの仕様はVAIO Phone Bizと同じだ。
カメラアプリは、Android標準アプリを利用する。静止画、動画、パノラマの撮影が可能で、静止画ではHDR撮影や各種エフェクトが利用可能。また、顔認識や連写など、基本的な撮影機能はひととおり網羅。動画撮影は最大フルHD(1080p)での撮影が可能となっている。
メインカメラの写真の画質は、格安スマートフォンの部類としてはまずまずといったところだ。晴れた日中の屋外では、ノイズが少なくクリアな写真が撮影できるという印象。しかし、夜など暗い場面では解像力が弱くノイズが多くなり、ピントも合わせにくくなる。
また、明るい場所でも全体的に色合いの階調が乏しく、全体的にのっぺりとした映像となる点も気になる。とはいえ、2万円台半ばのスマートフォンに、フラグシップスマートフォンと同等のカメラ画質を求めるのはさすがに厳しすぎるだろう。全体としては、同価格帯のスマートフォンのカメラとほぼ同じレベルの画質となっており、メモ程度であれば不満なく利用できそうだ。
ミドルレンジスマートフォンとして納得の性能
では、参考としてベンチマークテストの結果を紹介する。利用したベンチマークアプリは、「PCMark for Android 2.0.3710」、「3DMark Android Edition 1.6.3439」、「Geekbench 4.1.0 for Android」、「AnTuTu Benchmark v6.2.7」の4種類だ。
結果を見ると、ミドルレンジスマートフォンとして十分満足できるスコアが得られているといえる。もちろん、より上位のSoCを搭載するハイエンドスマートフォンと比べるとスコアは劣るものの、よほど高負荷のゲームなどをプレイしない限り、性能面で不満を感じることはほぼないはずだ。
実際に、ブラウザを利用したWebページの閲覧や動画の視聴、Office文書の閲覧などといった用途では、動作の重さを感じる場面はなかった。また、ゲームアプリ「Pokémon GO」をインストールしてプレイしてみたが、マップ画面の描画や画面切り替え時にわずかにもたつきを感じる部分もあるが、全体的には大きな不満なくプレイできた。これなら、人気ゲームアプリのほとんどをほぼ問題なくプレイ可能と言えそうだ。
【ベンチマーク結果】 | |
---|---|
PCMark for Android 2.0.3710 | |
Work 2.0 Performance | 3605 |
Computer Vision | 1768 |
Storage | 2656 |
3DMark Android Edition 1.6.3439 | |
Ice Storm Extreme | 5479 |
Ice Storm Unlimited | 9740 |
Sling Shot 1.0 | 700 |
Geekbench 4.1.0 for Android | |
Single-Core Score | 675 |
Crypto Score | 25 |
Integer Score | 713 |
Floating Point Score | 376 |
Memory Score | 1203 |
Multi-Core Score | 1916 |
Crypto Score | 167 |
Integer Score | 2075 |
Floating Point Score | 2314 |
Memory Score | 1400 |
RenderScript Score | 2238 |
AnTuTu Benchmark v6.2.7 | |
Score | 44866 |
3D | 8320 |
3D [Marooned] | 5181 |
3D [Garden] | 3139 |
UX | 15600 |
UX Data Secure | 3670 |
UX Data process | 2351 |
UX Strategy games | 3013 |
UX Image process | 4405 |
UX I/O performance | 2161 |
CPU | 15550 |
CPU Mathematics | 2687 |
CPU Common Use | 5230 |
CPU Multi-Core | 7633 |
RAM | 5396 |
続いて、バッテリ駆動時間を検証した。今回は、内蔵ストレージにデジタルカメラで撮影したMP4形式のフルHD動画を保存し、液晶バックライト輝度を50%に設定して、動画再生アプリ「MX Player」を利用してリピート再生させて計測した。
その結果、約6時間55分と、7時間弱の駆動時間が計測された。VAIO Phone Aには、容量2,800mAhのリチウムイオンバッテリを搭載しており、公称の駆動時間は連続通話が約11時間、連続待受が約500時間とされている。そこから考えても、今回の結果はまずまずといったところだろう。
また実際に、今回の試用機で、外出時のメールチェックや地図アプリでの地図参照、Webブラウザを利用したWebページの閲覧や各種SNSアプリなどを日常とほぼ同等の感覚で利用してみた。
利用頻度は、外出時に画面を表示して各種操作を行なったのはトータル1時間30分程度で、それ以外はスタンバイ状態で鞄に入れていたが、午前9時頃に外出して午後9時頃帰宅するとバッテリ残量は30%ほどだった。ヘビーな使い方であれば、1日フルの利用は厳しい場合もあるかもしれないが、一般的な利用であれば、おそらく1日程度は問題なく利用可能だろう。
コストパフォーマンスに優れるSIMロックフリースマートフォン
VAIO Phone Aは、外観や基本スペックこそVAIO Phone Bizとほぼ同等ではあるが、OSがAndroid 6.0.1となったことで、その魅力が大きく変わったように感じる。
Windows 10 Mobileにもいいところはたくさんあり、特にビジネス利用では優れたセキュリティ面などかなり魅力的ではあるが、アプリの充実度はAndroidスマートフォンやiPhoneに遠く及ばず、一般ユーザーが利用するにはやや厳しかったのも事実。
VAIO Phone Bizは、もともとビジネス向けに特化していたことを考えると、それも大きな問題ではなかったと思うが、一般ユーザーもターゲットにするとなると、やはり受け入れられやすい仕様である必要がある。そういう意味で、VAIO Phone AでのAndroid OSの採用は必然だったわけだ。
その上で、DSDSやVoLTEのサポート、3G対応バンドの拡充というように、機能強化も実現しており、幅広いユーザー層に対応できる、魅力的なスマートフォンへと進化している。
SoCは最新版ではなく、内蔵ストレージも16GBとやや少なめ、また5.5型液晶搭載のためやや筐体が大きいなど、少々気になる部分があるのも事実。ただ、最新SoCでなくとも性能面での不満はほとんどなく、内蔵ストレージもmicroSDカードの装着で対処できるため、それほど大きな問題とはならないはずだ。
そして何より、DSDSかつVoLTE対応で2万円台半ばという価格で購入できることを考えると、コストパフォーマンスは十分に優れると言っていいだろう。
使い方も含めた手厚いサポートや豊富なアプリが必要であれば、キャリアモデルのスマートフォンを選択すべきだが、制約が少なく思いどおりにカスタマイズして利用する手ごろな価格のSIMロックフリースマートフォンとして、魅力的な存在だ。