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本日発売の「VAIO Phone A」の使い勝手を確かめる

~LTE+3GのDSDSに対応した2万円半ばのAndroidスマホ

VAIO Phone A

 VAIOは、SIMロックフリースマートフォン「VAIO Phone A」を発表した。2016年に発売されたWindows 10 Mobile搭載スマートフォン「VAIO Phone Biz」と同じ筐体で、スペックもほぼ同等ではあるが、OSとしてAndroid 6.0.1を採用する点が大きく異なっている。

 価格はオープンプライスで、税別直販価格は24,800円(税込26,784円)、本日(4月7日)が発売日となる。

本体外観はWindows 10 Mobile搭載VAIO Phone Bizと同じ

 「VAIO Phone A」は、VAIOブランドのスマートフォンとして3製品目となる。2016年に登場した2製品目の「VAIO Phone Biz」は、OSにWindows 10 Mobileを採用した、法人を中心としたビジネス向けスマートフォンとして位置付けられていた。それに対しVAIO Phone Aでは、OSにAndroidを採用しており、ビジネスユーザーだけでなく、一般ユーザーも含めより広いユーザー層をターゲットとしている。ただ、VAIO Phone Aはハードウェアから新たに設計したものではないようだ。

 本体の外観は、先代のVAIO Phone Bizと同じとなっている。背面がアルミニウム素材の削り出しで、サンドブラスト加工によるつや消し仕上げとなっている点や、中央にレーザーエッチングによるVAIOロゴの彫り込みといった特徴も同じ。

 背面上部と下部の一部は、アンテナなどを収納するために樹脂素材を採用しているが、シンプルながらスタイリッシュで飽きの来ないデザインは、相変わらず好印象。確かに、VAIO Phone Bizと見た目は同じだが、2万円台半ばと安価な価格のスマートフォンとは思えない高級感があり、質感は同価格帯の格安スマートフォンの中でもトップクラスだ。

 もちろん、VAIO Phone Biz同様に、長野県安曇野のVAIO本社工場で技術者が全製品を検査して出荷する、”安曇野FINISH”も同じだ。海外生産製品にありがちな品質のばらつきを解消できるため、出荷製品の品質に不安はない。

 サイズは約77×156.1×8.3mm(幅×奥行き×高さ)とまったく同じ。5.5型液晶パネルを搭載しているため、筐体はやや大ぶりとなっている。手の小さな女性などは、少々手に余るかもしれない。ただ、側面はほぼ垂直に切り落とされているが、背面は側面付近がなだらかなカーブとなっているため、サイズのわりには手に馴染むという印象だ。

 重量は約167g、実測では165.7g(Micro SIM1枚装着時)だった。サイズの大きさに加えて、筐体にアルミ素材を採用していることを考えると、妥当な重さと言える。実際に手にすると、サイズの大きさもあって数字ほどは重く感じない。

本体正面。VAIO Phone Bizとほぼ同じ筐体にAndroid OSを搭載している
背面。デザインはVAIO Phone Biz同様で、アルミニウム素材の削り出し筐体はシンプルでスタイリッシュ。優れた堅牢性も兼ね備えている
側面はほぼ垂直に切り落とされているが、背面は側面付近はなだらかなカーブで、比較的手になじむ。またサンドブラスト加工で手触りもなめらかだ
背面中央にはVAIOロゴが彫り込まれている
背面の下部と上部付近のみ、アンテナを内蔵する関係で樹脂素材を採用
重量は、Micro SIMを1枚装着した状態で165.7g。サイズが大きいこともあって、手にすると数字ほど重くは感じない

DSDS対応やVoLTE対応などの強化を実現

 外観だけでなく、スペックもVAIO Phone Bizとかなり似通っている。搭載するSoCは、QualcommのSnapdragon 617、メモリは3GB、内蔵ストレージは16GBと、VAIO Phone Bizと同じ。

 外部ポートは、下部側面にMicro USBポート(USB 2.0)、左側面にSIM/microSDカード装着用トレイ、上部側面にオーディオジャックを備えるとともに、右側面には電源ボタンとボリュームボタンを備える。これもVAIO Phone Bizと変わらない。ディスプレイも同じで、5.5型フルHD(1,080×1,920ドット)液晶となっている。

 OSは、冒頭でも紹介しているようにAndroidを採用。バージョンは6.0.1で、追加アプリやオリジナルアプリなどは一切インストールされておらず、ピュアな状態となっている。上級者やビジネスユーザーにとって、自由なカスタマイズが可能というだけでなく、不要なアプリが一切ないという点は魅力となるだろう。

ディスプレイは1,080×1,920ドット表示対応の5.5型液晶。表示品質は申し分なく、このクラスのスマートフォンとしては十分満足できる
上部側面
下部側面
左側面
右側面
下部側面には、USB 2.0対応のMicro USBポートを備える
左側面にはSIMカード/microSDカードを装着するトレイを配置
上部にはオーディオジャックを配置
右側面にはボリュームボタンと電源ボタンを配置
背面下部にスピーカーを搭載
壁紙こそVAIOオリジナルだが、OSはAndroid 6.0.1をピュアな状態で搭載。オリジナルアプリなども一切インストールされていない

 そして、OS以外にもVAIO Phone Bizとの違いがいくつか見られる。まず、モバイル通信の仕様が一部変更されている。

 サポートするLTEバンドは、Band 1/3/8/19/21とVAIO Phone Bizと同じだが、W-CDMA(3G)のサポートバンドはBand 1/5/6/8/11/19と、Band 5が追加となった。日本の通信事業者はW-CDMAのBand 5を使用していないが、アメリカなど海外の通信事業者では使用例が多くあり、海外で利用しやすくなったと言える。

 なお、通信速度はLTE側が下り最大225Mbps(NTTドコモ回線でのBand 1+19、Band 1+21、Band 3+19でのキャリアアグリゲーション時)、W-CDMAが下り最大42.2 Mbpsと、この点はVAIO Phone Bizと同じ。

 また、LTEネットワークを利用した音声通話サービス”VoLTE”にも対応している。競合のSIMロックフリースマートフォンでもVoLTEに対応するモデルが増えているが、VAIO Phone AではNTTドコモのVoLTEに対応しているという点が大きな特徴となっている。

 実際に手持ちのNTTドコモのSIMを装着して確認してみたところ、VoLTE設定メニューが表示され、実際の通話でも高音質通話が確認できた。なお、別途auのVoLTE対応SIMも装着してみたところ、こちらもVoLTE設定メニューが表示され、VoLTE通話が可能だった。

 さらに、2つのSIMを装着して3G+3G、または3G+LTEの同時待受が可能な、”デュアルSIMデュアルスタンバイ”、いわゆるDSDSも可能となった。VAIO Phone Bizでも、SIMトレイはMicro SIMを1つと、Nano SIMを1つ装着可能となっていたが、実はDSDSには対応していなかった。しかしVAIO Phone Aでは、両スロットにSIMを装着し、双方の回線を同時に利用可能となる。なお、LTEはどちらのSIMスロットもサポートしているが、LTEの同時待受はできず、LTEはどちらか一方のSIMでのみ利用可能となる。

 それでも、海外に出掛けたときなどに、日本のSIMと現地で調達したデータ通信用SIMを同時に装着して、日本のSIMは3Gで通話の待受、海外のSIMではLTE高速データ通信を行なうといったことが可能となるため、利便性は大きく高まる。ちなみに、Nano SIMスロットはmicroSDカードとの排他利用となる。

NTTドコモのSIMを装着してみると、「4G LTE拡張モード」VoLTE設定メニューが表示され、VoLTEが利用できた
こちらはau VoLTE対応SIMを装着した状態。こちらも「4G LTE拡張モード」メニューが表示され、VoLTEが利用できた
SIMトレイは、Micro SIMとNano SIMの2つのSIMが装着できる仕様
SIMを2枚装着することで、3G+3Gまたは3G+LTEのDSDS対応を実現している
Nano SIMはmicroSDカードとの排他利用
このように、装着した2つのSIMを認識し、同時待受が可能
DSDS時のLTE通信は一方のSIMでのみ利用可能なため、データ通信を行なうSIMをLTEに設定するのが基本となる

 筐体やハードウェアのスペックが同じということで、基本的にはVAIO Phone Bizと同じ端末にAndroid OSを導入したものと考えて差し支えないだろう。

 しかし、機能面がいろいろと進化していることを考えると、OSがAndroidになったことで、端末が持つ本来の機能をフルに引き出せるようになったと言ってよさそうだ。そして、2万円台半ばという安価な価格帯ながら、DSDSやNTTドコモのVoLTEに対応するという点は、競合製品に対する優位点になりそうだ。

カメラの画質はまずまずも暗い場所での撮影はやや厳しい

 カメラは、裏面のメインカメラが約1,300万画素、液晶面の前面カメラが約500万画素。イメージセンサーは双方ともCMOSで、カメラの仕様はVAIO Phone Bizと同じだ。

 カメラアプリは、Android標準アプリを利用する。静止画、動画、パノラマの撮影が可能で、静止画ではHDR撮影や各種エフェクトが利用可能。また、顔認識や連写など、基本的な撮影機能はひととおり網羅。動画撮影は最大フルHD(1080p)での撮影が可能となっている。

 メインカメラの写真の画質は、格安スマートフォンの部類としてはまずまずといったところだ。晴れた日中の屋外では、ノイズが少なくクリアな写真が撮影できるという印象。しかし、夜など暗い場面では解像力が弱くノイズが多くなり、ピントも合わせにくくなる。

 また、明るい場所でも全体的に色合いの階調が乏しく、全体的にのっぺりとした映像となる点も気になる。とはいえ、2万円台半ばのスマートフォンに、フラグシップスマートフォンと同等のカメラ画質を求めるのはさすがに厳しすぎるだろう。全体としては、同価格帯のスマートフォンのカメラとほぼ同じレベルの画質となっており、メモ程度であれば不満なく利用できそうだ。

裏面には約1,300万画素のメインカメラを搭載。横にはLEDフラッシュも搭載している
液晶面には約500万画素の前面カメラを搭載
メインカメラで撮影。明るい場所ではノイズの少ないクリアな写真が撮影できている
画質はまずまずだが、花びらは全体的にのっぺりとして階調に乏しい印象
暗い場面ではノイズが増え、解像度も低下したような雰囲気となる
カメラアプリはAndroid標準。オート以外にHDRやパノラマなどの各種撮影機能を備える
画像サイズや画質、顔検出、連写など撮影設定項目も豊富に用意
エフェクトも多く備わっており、機能面は標準的
動画は最大フルHD(1080p)での撮影に対応している

ミドルレンジスマートフォンとして納得の性能

 では、参考としてベンチマークテストの結果を紹介する。利用したベンチマークアプリは、「PCMark for Android 2.0.3710」、「3DMark Android Edition 1.6.3439」、「Geekbench 4.1.0 for Android」、「AnTuTu Benchmark v6.2.7」の4種類だ。

 結果を見ると、ミドルレンジスマートフォンとして十分満足できるスコアが得られているといえる。もちろん、より上位のSoCを搭載するハイエンドスマートフォンと比べるとスコアは劣るものの、よほど高負荷のゲームなどをプレイしない限り、性能面で不満を感じることはほぼないはずだ。

 実際に、ブラウザを利用したWebページの閲覧や動画の視聴、Office文書の閲覧などといった用途では、動作の重さを感じる場面はなかった。また、ゲームアプリ「Pokémon GO」をインストールしてプレイしてみたが、マップ画面の描画や画面切り替え時にわずかにもたつきを感じる部分もあるが、全体的には大きな不満なくプレイできた。これなら、人気ゲームアプリのほとんどをほぼ問題なくプレイ可能と言えそうだ。

【ベンチマーク結果】
PCMark for Android 2.0.3710
Work 2.0 Performance3605
Computer Vision1768
Storage2656
3DMark Android Edition 1.6.3439
Ice Storm Extreme5479
Ice Storm Unlimited9740
Sling Shot 1.0700
Geekbench 4.1.0 for Android
Single-Core Score675
Crypto Score25
Integer Score713
Floating Point Score376
Memory Score1203
Multi-Core Score1916
Crypto Score167
Integer Score2075
Floating Point Score2314
Memory Score1400
RenderScript Score2238
AnTuTu Benchmark v6.2.7
Score44866
3D8320
3D [Marooned]5181
3D [Garden]3139
UX15600
UX Data Secure3670
UX Data process2351
UX Strategy games3013
UX Image process4405
UX I/O performance2161
CPU15550
CPU Mathematics2687
CPU Common Use5230
CPU Multi-Core7633
RAM5396

 続いて、バッテリ駆動時間を検証した。今回は、内蔵ストレージにデジタルカメラで撮影したMP4形式のフルHD動画を保存し、液晶バックライト輝度を50%に設定して、動画再生アプリ「MX Player」を利用してリピート再生させて計測した。

 その結果、約6時間55分と、7時間弱の駆動時間が計測された。VAIO Phone Aには、容量2,800mAhのリチウムイオンバッテリを搭載しており、公称の駆動時間は連続通話が約11時間、連続待受が約500時間とされている。そこから考えても、今回の結果はまずまずといったところだろう。

 また実際に、今回の試用機で、外出時のメールチェックや地図アプリでの地図参照、Webブラウザを利用したWebページの閲覧や各種SNSアプリなどを日常とほぼ同等の感覚で利用してみた。

 利用頻度は、外出時に画面を表示して各種操作を行なったのはトータル1時間30分程度で、それ以外はスタンバイ状態で鞄に入れていたが、午前9時頃に外出して午後9時頃帰宅するとバッテリ残量は30%ほどだった。ヘビーな使い方であれば、1日フルの利用は厳しい場合もあるかもしれないが、一般的な利用であれば、おそらく1日程度は問題なく利用可能だろう。

コストパフォーマンスに優れるSIMロックフリースマートフォン

 VAIO Phone Aは、外観や基本スペックこそVAIO Phone Bizとほぼ同等ではあるが、OSがAndroid 6.0.1となったことで、その魅力が大きく変わったように感じる。

 Windows 10 Mobileにもいいところはたくさんあり、特にビジネス利用では優れたセキュリティ面などかなり魅力的ではあるが、アプリの充実度はAndroidスマートフォンやiPhoneに遠く及ばず、一般ユーザーが利用するにはやや厳しかったのも事実。

 VAIO Phone Bizは、もともとビジネス向けに特化していたことを考えると、それも大きな問題ではなかったと思うが、一般ユーザーもターゲットにするとなると、やはり受け入れられやすい仕様である必要がある。そういう意味で、VAIO Phone AでのAndroid OSの採用は必然だったわけだ。

 その上で、DSDSやVoLTEのサポート、3G対応バンドの拡充というように、機能強化も実現しており、幅広いユーザー層に対応できる、魅力的なスマートフォンへと進化している。

 SoCは最新版ではなく、内蔵ストレージも16GBとやや少なめ、また5.5型液晶搭載のためやや筐体が大きいなど、少々気になる部分があるのも事実。ただ、最新SoCでなくとも性能面での不満はほとんどなく、内蔵ストレージもmicroSDカードの装着で対処できるため、それほど大きな問題とはならないはずだ。

 そして何より、DSDSかつVoLTE対応で2万円台半ばという価格で購入できることを考えると、コストパフォーマンスは十分に優れると言っていいだろう。

 使い方も含めた手厚いサポートや豊富なアプリが必要であれば、キャリアモデルのスマートフォンを選択すべきだが、制約が少なく思いどおりにカスタマイズして利用する手ごろな価格のSIMロックフリースマートフォンとして、魅力的な存在だ。