Hothotレビュー
約1.09kgを実現した15.6型の第2世代モバイルノート「LG gram」
2017年4月13日 06:00
LGエレクトロニクスから登場した「LG gram 15Z970-GA55J」は、15.6型液晶搭載ノートPCとしては非常に軽い約1.09kgという重さを実現した、モバイルノートPCである。
LG gram 15Z970-GA55Jは、2016年9月に発売された「LG gram 15Z960-G」の後継となる製品であり、CPUの世代が、Skylake(第6世代)からKaby Lake(第7世代)に変更されている。
また、LG gramシリーズの製品ラインナップも拡充され、CPUとしてCore i7-7500Uを搭載した上位モデルの「LG gram 15Z970-GA77J」や、14型液晶を搭載した「LG gram 14Z970-GA55J、13.3型液晶を搭載した「LG gram 13Z970-ER33J」も同時に発表された。
昨年(2016年)登場したLG gram 15Z960-Gは、15.6型液晶搭載ノートPCとして世界最軽量となる約980gを実現したことで話題を集めた。後継のLG gram 15Z970-GA55の重量は、バッテリ駆動時間を重視してバッテリ容量を増やしたため、約1.09kgとやや重くなっているが、それでも15.6型液晶搭載ノートPCの中ではトップクラスの軽さである。
今回は、Core i5-7200Uを搭載したLG gram 15Z970-GA55J(以下、15Z970-GA55J)を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。
なお、13.3型と14型についてはこちらの記事『軽さと長時間駆動を両立した13.3型モバイルノート「LG gram」』でレビューずみなので、合わせてご覧いただきたい。
マグネシウム合金製筐体により軽さと堅牢性を両立
15Z970-GA55Jは、オーソドックスなクラムシェル型ノートPCであり、筐体色はホワイトである。筐体は、軽くて丈夫なマグネシウム合金でできており、堅牢性は十分だ。上面の右下の角に小さめのLGロゴがあるが、それ以外はホワイト1色であり、デザイン的にもすっきりしていて好感が持てる。
本体サイズは、約357.6×228.4×16.8mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.09kgであり、15.6型液晶ノートPCながら、十分モバイルノートPCと言える重量を実現していることが魅力だ。実際に持ってみると、フットプリントが大きいのに重量が軽いため、数値以上に軽く感じた。液晶のヒンジも150度以上開くため、座る姿勢を問わず利用しやすい。
PCとしての基本性能も十分だが、キーボードは英語配列のみ
15Z970-GA55Jは、PCとしての基本性能も十分に高い。CPUとして、Kaby Lakeこと最新の第7世代Core i5-7200Uを搭載する。基本動作クロックは2.5GHzだが、Turbo Boostにより最大3.1GHzまでクロックが向上。
また、デュアルコアだが、Hyper-Threadingテクノロジにより、最大4スレッドの同時実行が可能である。メモリは8GB搭載する。ストレージとしてはSATA接続の256GB SSDを搭載。PCI Express/NVMe対応の高速SSDでないのが残念だが、トータルで見てメインマシンとして使うのにも十分な性能を持っていると言えるだろう。
賛否両論ありそうなのが、キーボードの配列だ。日本で正式に販売される製品としては珍しく、英語配列のみとなっている。これは前モデルや今回追加された14型/13.3型モデルでも同じだ。キーピッチは約19mmで、テンキーも搭載する。キー配列は標準的で、キータッチも良好だが、日本語配列のキーボードしか使ったことがないという人は慣れるまでやや混乱しそうだ。
そのためか、キーボードの右側のパームレスト部には、入力モードの切り換え方法などが書かれた日本語変換早見表のシールが貼られている。筆者はDOS/V黎明期は英語配列のサブノートPCを使っていたことがあるので、15Z970-GA55Jをしばらく使っているうちに、あまり違和感なく入力できるようになった。ただ、かな入力がメインの人にはお勧めできない。
キーボードにはバックライトが搭載されており、暗い場所でも快適に入力できる。キーボードバックライトの輝度も2段階に調整可能だ。また、キーボードの右上は電源ボタンだが、通常のキーよりも高さが低くなっており、誤操作を防げるようになっている。
ポインティングデバイスとしては、タッチパッドが採用されている。薄型ノートPCではお馴染みのクリックボタンと一体化したタイプだが、サイズが実測102×69mm(幅×奥行き)と大きく、操作性は良好だ。
IPS液晶採用で視野角が広い
液晶は15.6型フルHD(1,920×1,080ドット)であり、IPS液晶パネルを採用しているため、視野角が広く、斜めからでも見やすい。表面は光沢タイプなので、外光の映り込みがやや気になることはあるが、発色は自然で、コントラストも高い。また、液晶の左右のベゼル部分の幅が約6mmと狭く、通常の14型液晶搭載ノートPCとほぼ同じ横幅を実現していることも魅力だ。
ベゼル幅を狭くするために、通常は液晶上部に搭載されることが多いWebカメラは、液晶下のヒンジ部分に搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。ただし、このWebカメラは液晶を開く角度に合わせて回転するようになっているので、液晶を垂直よりも奥側に傾けると顔の下側が切れてしまうことがある。
USBを合計4基搭載するなど、インターフェイスも充実
15Z970-GA55Jは、インターフェイスも充実している。まず、USBポートがUSB 2.0×1とUSB 3.0×2、USB Type-C×1と合計4基用意されていることは高く評価できる。
薄さを重視した2in1 PCでは、USB Type-Cが2つ程度しか用意されていない製品が増えており、従来のUSB Type-A対応機器を接続するには変換アダプタなどが必要になるが、15Z970-GA55Jならそのまま接続できる。
また、USB 3.0ポートのうち本体左側面に用意されているものは、高速充電に対応する。さらに、HDMI出力端子を備えているので、外部ディスプレイやプロジェクタなどへの出力にも便利だ。なお、USB Type-Cの転送速度は最大5Gbpsで、USB 3.0までの対応となる。
有線LANのRJ45端子は備えていないが、USB Type-CをRJ45(イーサネット)に変換するアダプタが付属している。この変換アダプタは、100Base-TX対応であり、Gigabit Ethernetには非対応だ。
カードスロットとしては、microSDカードスロットが用意されている。フルサイズのSDカードスロットのほうが、利用範囲は広いと思われるが、最近はmicroSDカード対応機器が増えているので、SDカード対応機器でもアダプタを経由して使うようにすれば問題はないだろう。
ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠の無線LANとBluetooth 4.1に対応。無線LANは2×2のMIMO対応で、通信速度は最大867Mbpsとなる。
バッテリ駆動時間が前モデルの2倍以上に
前モデルと比べたときの15Z970-GA55Jの強化点は、CPUの性能向上だけではない。それは、バッテリ駆動時間が大きく延びたことだ。前モデルのバッテリ駆動時間は、公称約7時間とモバイルノートPCとしては一応合格とは言えるものの、1日たっぷり使おうとするとやや不安が残るものだった。
15Z970-GA55Jは、重量は110gほど重くなった代わりに、公称バッテリ駆動時間が2倍以上の約15時間へと延びている。外出先で使うことが多いモバイラーにとっては、こちらのほうがありがたい。
そこで、実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)、11時間24分という結果になった。無線LAN常時オンでこれだけ持てば十分満足であり、期待どおりのバッテリ駆動時間と言える。また、ACアダプタもコンパクトで軽く、本体と一緒に携帯しても苦にならない。
性能も満足
参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark 8」、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K」、「ファイナルファンタジー XIV 蒼天のイシュガルドベンチマーク」、「CrystalDiskMark 3.0.3b」、「CrystalDiskMark 5.1.2」である。比較用として、日本HP「HP Elite Slice」とLenovo「ThinkPad X1 Carbon」の値も掲載した。
LG gram 15Z970-GA55Jのベンチマーク結果 | LG gram 15Z970-GA55J | HP Elite Slice | ThinkPad X1 Carbon |
---|---|---|---|
CPU | Core i5-7200U(2.5GHz) | Core i7-6700T(2.8GHz) | Core i7-6600U(2.6GHz) |
GPU | Intel HD Graphics 620 | Intel HD Graphics 530 | Intel HD Graphics 520 |
PCMark 8 | |||
Home conventional | 2,714 | 3,262 | 2,635 |
Home accelerated | 3,330 | 3,580 | 3,176 |
Creative conventional | 2,747 | 3,396 | 2,691 |
Creative accelerated | 4,103 | 4,550 | 3,890 |
Work conventional | 3,125 | 3,462 | 2,928 |
Work accelerated | 2,534 | 4,730 | 4,063 |
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K | |||
1,280×720ドット 最高品質 | 5,145 | 6,595 | 6,796 |
1,280×720ドット 標準品質 | 6,347 | 7,153 | 6,844 |
1,280×720ドット 低品質 | 7,203 | 8,346 | 6,851 |
1,920×1,080ドット 最高品質 | 2,609 | 3,230 | 3,109 |
1,920×1,080ドット 標準品質 | 3,534 | 4,148 | 4,256 |
1,920×1,080ドット 低品質 | 4,147 | 4,927 | 5,835 |
ファイナルファンタジーIXV 蒼天のイシュガルドベンチマーク | |||
1,280×720ドット 最高品質 | 1,385 | 1,653 | 1,713 |
1,280×720ドット 最高品質(DirectX 9相当) | 1,707 | 2,043 | 2,284 |
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC) | 1,444 | 1,788 | 1,975 |
1,280×720ドット 高品質(ノートPC) | 1,765 | 2,238 | 2,288 |
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC) | 2,350 | 3,039 | 3,280 |
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC) | 2,352 | 3,035 | 3,273 |
CrystalDiskMark 3.0.3b | |||
シーケンシャルリード | 464.5MB/s | 483.8MB/s | 1648MB/s |
シーケンシャルライト | 385.5MB/s | 442.9MB/s | 1539MB/s |
512Kランダムリード | 331.4MB/s | 322.3MB/s | 1224MB/s |
512Kランダムライト | 369.7MB/s | 386.4MB/s | 1452MB/s |
4Kランダムリード | 28.25MB/s | 26.55MB/s | 51.05MB/s |
4Kランダムライト | 71.44MB/s | 51.29MB/s | 139.8MB.s |
4K QD32ランダムリード | 392.1MB/s | 342.2MB/s | 555.6MB/s |
4K QD32ランダムライト | 268.5MB/s | 235.6MB/s | 418.7MB/s |
CrystalDiskMark 5.1.2 | |||
シーケンシャルリードQ32T1 | 547.8MB/s | 550.7MB/s | 2592MB/s |
シーケンシャルライトQ32T1 | 383.2MB/s | 515.1MB/s | 1533MB/s |
4KランダムリードQ32T1 | 277.2MB/s | 316.0MB/s | 545.9MB/s |
4KランダムライトQ32T1 | 264.0MB/s | 298.6MB/s | 251.7MB/s |
シーケンシャルリード | 500.2MB/s | 481.1MB/s | 1854MB/s |
シーケンシャルライト | 386.1MB/s | 454.6MB/s | 1528MB/s |
4Kランダムリード | 21.95MB/s | 28.29MB/s | 53.99MB/s |
4Kランダムライト | 72.80MB/s | 58.61MB/s | 164.5MB/s |
PCMark 8のスコアは、Work accelerated以外は、Core i7-6600Uを搭載したThinkPad X1 Carbonを上回っている。さすがにクアッドコアのCore i7-6700Tを搭載したHP Elite Sliceにはおよばないものの、一般的な利用ならまず不満は感じないだろう。
ドラゴンクエストXベンチマークやファイナルファンタジーIXVベンチマークのスコアは、さすがにCPUの動作周波数が高いThinkPad X1 Carbonのほうが上だが、15Z970-GA55Jも健闘している。
CrystalDiskMarkの結果については、同じSATA接続のSSDを搭載するHP Elite Sliceと比べるとそれほど遜色はないのだが、PCI Express/NVMe接続のSSDを搭載するThinkPad X1 Carbonとは大差がついている。しかし、体感ではそこまでの差はなく、十分快適だった。モバイルノートPCとしてはもちろん、メインマシンとしても十分な性能であろう。
英語キーボードに抵抗がない人にお勧め
15Z970-GA55Jは、第2世代のLG gramであり、前モデルよりも多少重くはなったものの、バッテリ駆動時間が2倍以上に延びており、モバイルノートPCとしての完成度はさらに向上している。インターフェイスも充実しており、筐体の質感も高い。
唯一の欠点が、英語キーボードモデルしかないことだが、普段、日本語配列のキーボードを使っている人でも、使っているうちに慣れてくる。英語キーボードのほうが好きだとか、英語キーボードでも気にならないという人には、特にお勧めしたい製品だ。
ただし、モバイルでの利用が中心なら、15.6型という本製品はややフットプリントが大きすぎる感もある。特に女性のバッグなどには入りにくい。フットプリントの小ささを重視するなら、同時に発表された姉妹機の14型モデルや13.3型モデルが有力な選択肢となるだろう。