配信修行僧
防音の不満/不安を家賃10万円台でも解決。配信者CEO考案のリノベ物件を見てきた
2026年5月26日 06:12
高級化する防音マンションと、後付け防音室のジレンマ
近年、動画配信者やゲーマーが増えていることを受け、配信者向けをうたった防音賃貸マンションが増加傾向にある。ゲーム配信中に盛り上がって、うっかり深夜に大声を出してしまって近隣に迷惑をかけたくない。そんなニーズに応えるものだ。
ただ、配信はもとより楽器演奏も可など、配信にはやや過剰な防音性能を持つ物件なども多く、都内だとワンルームで家賃20万円前後になりがちだ。これだと配信をこれから頑張りたいが資金がない若手クリエイターには現実的な選択肢とはなりにくい。
一方で、既存の部屋に設置できる「後付け防音室」もある。こちらもこちらで、本格的なものを導入するには、100万~200万円と高額な初期費用がかかる。さらに、重量があるため木造アパートなどでは床抜けのリスクがあったり、防音室用に火災報知器やエアコンが必要だったり、そもそも大家からの設置許可を得るのが難しいといった物理的・制度的なハードルも存在する。
今回、eスポーツ配信者向けにリノベーションされた「ゲーミングルーム」付き賃貸マンションを取材する機会を得たので紹介したい。建物全体が防音化された配信者専用物件より基本的に家賃が安く、後付けの防音ルームのような面倒さがないという、両者の隙間を埋める興味深い取り組みだ。
家賃10万円前後で手に入る「配信特化のリノベーション賃貸」
今回取材したのは東京・亀戸にある賃貸マンションの1室で、TFOAがゲーマー/配信者向けのリノベーションを手がけた。同社が「CREATORZ WORLD」と呼ぶこのプロジェクトでは、全室防音のマンションを建設するのではなく、部屋単位でのリノベーションとなっている。
前述の通り、配信者向けをうたう物件は増加している。CREATORZ WORLDもある種その流れに乗るものといえるが、同社代表取締役CEOの島津秀和氏自身が配信も行なうゲーマーであり、クリエイターのリアルな悩みを熟知しているからこそ生まれたプロジェクトである。
「自分がプレイするゲームの配信も頻繁に視聴しているんですが、海外では大きな声を出しながら配信するクリエイターが多いです。でも、日本では少ないです」と語る島津氏。その原因である住宅(配信)環境の刷新の一助になろうと、このプロジェクトを立ち上げたという。
石造り、レンガ造り、分厚いコンクリート製の壁も多い諸外国と比べると、日本は木造や軽量鉄骨造が多く、声が抜けやすい。また、住居が密集していることから近隣に声が届きやすいという要素もある。文化的にも日本では深夜の騒音漏れに対しては厳しい目が向けられがちだ。
しかし、CREATORZ WORLDの物件は配信者向けということで、物理的な騒音対策が取られているだけでなく、当然貸主は借り手が配信を行なう前提で貸しているので、心理的な不安も抱えなくても済む。
また、「これから配信を始める、あるいは地方から出てくる若い人の金銭的負担を軽くしたい」という思いもあると島津氏。今回取材した物件は、23区内で駅からもほど近いこともあり、ワンルームで家賃は15万円前後になる見込み。
だが、フルタイムで配信する人は、ほとんどの時間を自宅で過ごすため、交通の利便性はそこまで重視されない。その観点からCREATORZ WORLDが積極的に展開を狙っているのは、駅から徒歩15分前後、築20~30年といった条件の物件。それにより、10万円前後という家賃で配信ルーム付きの物件を提供していく構えだ。
家賃だけでなく、ゲーミングPCの費用も重くのしかかる。その点についても、TFOAでは貸主に対してゲーミングルームに備え付けのPCを付加するオプションも用意している。それにより、物件によっては、借り手側は初期コストなしでゲーミングPCを導入できる場合もある。
「配信映え」するデザインと、入居即配信可能なサポート体制
では、今回拝見した物件を紹介しよう。東京・亀戸にあるワンルームマンションで、建物自体は新築ではないが、部屋は丸々リノベーションされている。
玄関を開け、内扉を開けると、すぐに普通の部屋とは違う空間が目に飛び込んでくる。構造としてはワンルームの部屋の中にもう1つの部屋がある形になっている。ゲーマー向けということで、RGB LEDで縁取られているので目立つというのもあるが、部屋の3分の2程度の体積を別の部屋が専有しているという独特の構造に最初は面食らう。
配信部屋の向かいにクローゼットとキッチンがあるが、ぱっと見のイメージは、配信部屋の横にベッドを置いたら、それですべてが占有される感じだ。しかし、前述の通り、フルタイム配信者なら1日のほとんどの時間をPCの前で過ごす。その意味では、この思い切った構造はある種の“正解"なのだろう。
そして、配信部屋のドアを開けた中も、通常の部屋とは一線を画すデザインとなっている。島津氏によると、宇宙船をイメージし、非日常的でありつつ、配信映えする空間を演出したという。部屋の構造自体も奥行きがある縦長なのだが、正面と背後の上部が鏡面素材になっているので実際の部屋以上の奥行きがあるような錯覚効果も狙っている。
配信部屋の中もRGB LEDが張り巡らされている。同期して色を変えることもできるし、単色で表示もできる。筆者が個人的に目を引いたのが、どこかで見たことがあるような換気ファンだ。実はこれPC用のファンなのだ。島津氏自身がPCゲーマーであり、加えてPCパーツショップとのコネもあることから、このようにPC向けのパーツが使われているのだ。PCケース同様、このファンによって、吸気と排気を行なっている。
広さは2畳ほどだろうか(要確認)。部屋として見ると決して広いとは言えないが、配信スペースとして見ると十分な広さがある。机は備え付けで、アームに取り付けられたモニターが2台あったが、3台目を置くのも問題ない。追加で棚や袖机も置ける。
配信を考慮して、光モデム用の光コンセントも備わっている。回線については物件によって環境、条件が異なるが、今回の物件では借主が個別に回線業者を選んで契約することも可能という。
防音性能については「カラオケルーム程度」としており、ゲーム配信で大声を出しても室外や隣室に声が漏れないレベルになっている。なお、振動対策はされていないので、思わず台パンしてしまうと、振動がほかの部屋に伝わる可能性はあるとのことだ。
防音リノベーションの「パッケージ化」による展開計画
CREATORZ WORLDは、東京・三県を中心に展開を始めたばかりで、今回紹介した物件も原稿執筆時点ではサイトに掲載されていない。ユーザーとしては、物件が増えていくことを待つしかない状況だ。これについては時間が解決するだろう。また、島津氏は、空き室に悩む大家と連携し、貸主・借主双方にメリットのあるインフラとなるべく物件を増やしていく計画だと語る。
もし今、配信環境や騒音トラブルへの不安に悩んでいるなら、こうした「配信特化型賃貸」の引っ越しも視野に入れてみてはどうだろうか。思い切り声を出して笑える環境が、あなたの配信を次のステージへと引き上げてくれるかもしれない。









































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